「オンライン・オピニオン」


 「サンデー毎日23.1.8」
 「日中戦争とウクライナ侵攻」
 「民主党の問題。安倍政治の総括」
 「民主主義と見えない外交」
 「防衛装備品の暴走」
 「10年前に何があったか」
 「ウェルビーイング」
 「2023年の課題」
 「ベスト・ミステリー」
 「コロナ感染記」


2261.サンデー毎日23.1.8 12/21

今回の前書きは、おなじみサンデー毎日(1.8日号)からです。朝日新聞が事実上政府への忖度で骨抜きにされてしまった以上、もはや汚染されていないメディアは毎日だけになった感があります。
週刊朝日も一応毎号拝読はしていますが、12.30日号の記事で一つだけ記憶に残ったのは、横尾忠則のコラム(シン・老人のナイショ話)の題名だけです。それは「死後の世界を覗いてみたいが、本番のお愉しみにしよう」というものです。同感です。

さてサンデー毎日の最初の記事は、高村薫のサンデー時評で、最近の電力会社の暴走・迷走を取り上げた内容です。
…会計検査院が大手電力に対して負担金の支払い額を減らした理由を国民に脱明するよう求めたところ、束電は、燃料価格の高騰でこれ以上経営が厳しくなれば、賠償に充てる費用まで稼げなくなってしまうと回答したそうだが、いったいどのくらいの企業努力が真になされたことか。
 一方で、電力小売り自由化で生まれた新電力や地域新電力が陥っている苦境は大手の比ではない。大半が自前の電源をもたず、不足分を高騰する卸電力市場から調達しているため、とくにエネルギーの地産地消や脱炭素、地域振興を掲げてスター卜した約90社の地域新電力は、その 8割が新規の受付を停止している状況だという。
しかし、地方自治体は挫けることなく地域のエネルギー自立を目指して再エネ投資を進めており、将来の地域電力網はけっして夢ではない。本来、国がすべきはこうした地域新電力への支援であり、大手電力が抱えている発電事業者と送配電事業者の完全分離によって透明な競争を促すことであり、何より再エネへの大転換である。そこに数兆円を投じておれば、日本もまだ挽回はできたはずなのだ。

次はこれも御馴染み、青木理のコラムです。
「学術迄屈従させるのか」
…専門知を集めた学術会議は一歩引いて長い時間軸と広い視野を持ちつつビジョンを示し、政権の政策や姿勢へのチェック機能も果たすこと、そこにこそ学術会議の本旨はあり、だから「独立性」が謳われた。
逆に「政府等と問題意識や時間軸等を共有」などすれば、政府や各省庁に数多ある有識者会議や審議会などと同様、政府や各省庁の意向や方針にお墨つきを与えるだけの装置に堕しかねない。いや、今般の「方針」をみれば、軍事研究への動員などを含め、学術会議をそういう装置に作り替えたい政治の本音が露骨に滲む。
と同時にこの国の昨今の為政者は、時の政権から「独立」して監視役を果たす組織や機能等が邪魔で仕方なく、すべてを足下に屈従させたいのだろう。実際、かの長期「1強」政権はその本性を隠しもせず、さまざまな組織、役職の「独立性」を薙ぎ倒した。内閣法制局長官をすげ替えて憲法解釈を覆し、日銀総裁も同様にして「子会社」化し、 N H Kの会長や経営委員にまで「お友だち」を続々送り込み、この国最大の報道機関卜ップには「政府が右というものを左というわけにはいかない」と言い放つ者が座る醜態が一時現出した。
官僚組織も同様であり、幹部人事を牛耳られた霞が関には無残な忖度や萎縮の風潮が蔓延し、客観的であるべき政府統計までが時の政権に都合のいい方向に捻じ曲げられ、公文書は改竄され、ついには検察トップ人事にまで介入が謀られたのは記憶に新しい。
そして日本学術会議である。先の「方針」によれば、「今後、本方針に基づき、(略)早期に関連法案の国会提出を目指す」らしい。末期的というしかない。
コメント:なぜかメディアでこの問題を取り上げているのは、この記事(とwtw)だけのように思われます。

3つ目は、保阪正康「5.15事件の謎を解き明かす。動機が正しければいかなる行為も許される」からです
…(歎願運動は)つまり演出されたのである。その演出はこの国のその時の社会の空気を三つの心理で縛ろうという意味があったように私には思えるのである。三つの心理とは次のようなものではなかったか。
1動機が正しければいかなる行為も許される
2感情はあらゆる論理に優先される
3テロによる死者は国家の救済者である
【暴力支配が前面に出て人々を黙らせる怖さ】
5-15事件を含めて、昭和前期のテロやクーデター未遂の事件は、この 3点を土台にすえながら分析していくとわかりやすいのではないだろうか。 1は「動機至純論」 2は「感情優先論」、そして 3は「暴力礼賛論」になるであろうか。私の見るところ、この三つの論がテロリズムの擁護になるといっていいように思う。犬養首相の気持ちを勝手に忖度して暴力を全面的に肯定するなどは、本来なら言語道断と言っていいはずである。それゆえにテロやクーデタ?の怖さは理屈も冷静さもなく、行き着く先は暴力が支配の前面に出てきて人々を黙らせることになるのであった。

4つ目は、鈴木哲夫の「信教の自由、外交も、政争の具になった臨時国家」から
…財源を増税とする案について財務省 OBが言う。「財務省の復権、逆襲。安倍晋三政権時代は経済産業省政権で財務省は後塵を拝したので、岸田政権に変わったこのタイミングで政権内:の主導権を取り戻したい。元々、防衛費の財源は国債と主張してきたのが安倍元首相や安倍派。そこで国債は発行したくない財務省が、力を見せつけるために堂々と増税による財源確保を打ち出した。一歩も引かないだろう。安倍派へのリベンジでもある。岸田首相は財務省側に乗っかっている。怒った安倍派は反岸田色を強めるだろう」
それにしても兵器の中身や財源など後回しで、なぜ 43兆円という金額を掲げたのか。衝撃的な証言をするのは外務省OBだ。 
「年明けに岸田首相の念願だったホワイトハウスでの日米首脳会談が予定されているが、その際の最大のアピールになる。『43兆円出します』『米国の兵器を買います』と。お土産だ」
党税調の会合では安倍派議員ら増税に反対の意見も出たが、 15日には政府の増税案を了承した。時期などは今後の議論とした。
しかし、43兆円が既成事実のように先行し、いかにも財源論で激しい議論があったように見えるが、実は政府と自民党内だけの話だ。当たり前だが、そもそも予算は国会で審議して初めて成立する。その国会はまだ先、23年だ。防衛費にとどまらず、さらに反撃能力などに踏み込む政府の「国家安全保障戦略」など安保関連 3文書の改定案の協議も、自公のみで行われただけだ。防衛という国家の根幹、増税…。国会の場で議論しなくてどうする。
岸田首相の手順や姿勢は国会・国民軽視以外の何ものでもない。これを看過してはならない。
コメント:全くその通りです。

最後は倉重、田原、佐高の鼎談です。
「岸田、軍拡増税で日本は大丈夫か」から、倉重篤郎、佐高信、田原総一朗
…倉重:それにしても日米同盟強化一辺倒でいいのか。対中国では米国の国益と日本のそれは一致しない部分がある。米国は中国に戦争で勝つこと、経済で包囲することが目的だが、日本は中国との平和と交易が欲しい。つまり、米国から相対的に自立できるかどうかが裏テーマだと私は思う。
…佐高:自立を主張するまで能力ある政治家がいるかは別にして、中国との関係を利用すればいい。米国はその国益からいろいろ言ってくるが、日本の隣国は中国で、そちらも無下にはできない。そう米国に伝えればいい。日米と日中を両方操る。それが外交だ。
田原:日米の軍事的抑止力で台湾有事を封じ込めるというのが、今の日米枢軸の考えだが、僕は違う。日本が直接中国に働きかけ、台湾有事を起こさなくてもいいようにすべきだ。日本にはその潜在能力もある。
倉重:まさに外交の復権が問われている。米国にも中国にも言うべきことを言う。利用すべきは利用する。
佐高:言うべきを言っていた時代もあった。例えば、長崎、広島への原爆投下に対して日本政府は「人類及び文明の名において」米政府を糾弾した ( 1945年8月10日 )。今や米国の核の傘下の同盟国として口をつぐんでいるが、時に牽制すべきだ。
田原:なぜ米国は、降伏するに決まっている日本に対し原爆を投下したか。ソ連に見せ、牽制するためだ。すでに冷戦が始まっていた。
佐高:そういう戦略的な側面と、建前的な側面を両用し、米国に言うべきことを言っておけばいい。そうすれば中国も日本にそんな強く出てこられない。
倉重:米国にそこまで言える政治家がいなくなった。中国にも然り。媚中派評を恐れ、訪中すらしない。
佐高:石橋湛山や田中角栄は米国に遠慮しなかった。湛山は占領下の日本で GHQに盾突いた。角栄はエネルギー自立化を図った。言うべきことも言った。
田原:言ったから角栄は潰された。だからその後の人たちは絶対言えないと。
佐高:もっと言い続けるべきだ。
【旧統一教会シンパと改憲派は重なる】
佐高:安倍にとって教団は祖父の岸信介からの因縁だ。岸はずるいから利用できるものはコントロ?ルしながら利用した。安倍は半分本気になり抜き差しならぬ関係を築いてしまった。
田原:教組の文鮮明が反日であったことを自民党の多くの国会議員は知らないで付き合っていた。選挙運動が大変で、投票してくれる人なら誰でもOKだ。 旧統一教会の一番の問題は選択的夫婦別姓への反対だ。
佐高:家父長制回帰だ。
田原:戦前と一緒の発想だ。
佐高:旧統一教会のシンパと改憲派は重なっている。
倉重:岸田政権としては、宗教法人法に基づく質問権を行使、被害者救済法も成立させた。一件落着ムードを漂わせている。
佐高:収束しないと思う。自民党がどう具体的に絶縁するかがない限り必ず復活する。それだけ根が深い。
田原:救済新法もインチキだ。親の一億献金も子供に一億返す気はない。子供が生活できる額しか返済されない。救済にならない。
佐高:寄付の上限規制も導入できなかった。創価学会に配慮した公明党が敵基地攻撃能力の容認と取引したとしか思えない。被害者のために 35年間闘い続けてきた弁護士たちの意見を取り入れなかった。
倉重:国会での事実解明を期待したが、 2015年の旧統一教会の名称変更問題や年間数百億円と言われるお金の流れは未解明のままだ。メディアも決定的なファクト発掘には遠かった。
【経産省は電力会社の子会社なのか】
佐高:今は逆に電力会社の方が子会社だ。首相官邸の嶋田秘書官(元経産次官)が陰で仕切っている。
田原:天下り利権で経産省はなお東電や関電の言いなりだ。
田原:電力会社は倒産しない仕組みになっている。
佐高:小沢一郎は、いったん出て自民党に戻らなかったという意味では評価する。
倉重:最後に岸田政権、23年はどうなる?
田原:本来ならここまで支持率が落ちたら政権交代だが、取って代わる政党がない。派閥が強かった時代の疑似政権交代能力もない。岸田にやらせるしかない。
岸田はまだ安倍のエピゴ?ネン (亜流)の域を出ていないというのが結論だ。果たして「宏池会の背骨」を取り戻すことができるのか。
コメント:かなり言いたいことを言っている。統一教会の一件が落着していないのはその通り。天下り(OB)を含めた官僚の暗躍も指摘の通り。しかし自身の献金体質を明らかにするべき創価学会(公明党)への切込みは手ぬるい。政党への忖度か。



2262.日中戦争とウクライナ侵攻 12/22

最近、書店の店頭で手に取って、面白そうなので買おうとして、結局踏みとどまった本に、百田の「橋下徹の研究」があります。私はこの二人は同じ穴(極右)のムジナだと思っていたので、興味をそそられました。この本で大いに参考になったのは、いかなる場合でも橋下が巧妙な言い回しをしており、尻尾を掴まれないようにしていることと、百田がその欺瞞をすっぱ抜いていることです。橋下が弁護士の経験を生かした、まさに三百代言そのものだという印象を再度強く持ちました。面白いので、一気に読めそうな本です。
百田尚樹「橋下徹の研究、違和感の正体」飛鳥新社 1500円

今回の前書きは、雑誌世界一月号からです。
「それでも、平和を希求するために」加藤陽子から
…では、国民はなぜ戦争に駆り立てられてしまったのでしようか。(中略)
 人口の増加に生産力が追いつかないと危惧された当時の日本では、満州 (中国東北部)一帯へ農業移民を送ろうと企図されていました。君たちは日本にいても息子たちを、娘たちを中学校、女学校にやれないだろう。満州にいけば地主になれる。だから満州が必要だ、軍はそのように農民らにアジテーションし、満州事変支持への盛り上がりを作っていったのです。
 トインビーによれば、軍は農民たちの貧しさをテコに、対外侵略へと国民を動員しています。満州侵攻が功を奏し豊かな生活が実現できれば、アジテーションは嘘ではなく「真実」となります。しかし、満州国を樹立しても、日本の農村の貧しさは解決されません。満たされることのない夢を軍は語るのですから、軍はどんどん戦線を拡張していくしかない、という状況に陥ってゆきます。トインビーは、(中略)カルタゴがポエニ戦争でローマに滅ぼされたように、日本はアメリカに滅ぼされてしまうだろう、と。また、トインビーに学んだ北京大学教授の胡適は、1935年に「日本の挑発に中国が本格的に応戦しなければ、中国が望む日中戦争の国際化は起きない。米ソを巻き込むため、中国は二?三年の間、単独で絶大な犠牲を覚悟して、日本と闘い続けなければならない」と述べています。彼らは、満州事変という発端が米ソをも巻き込んだ世界戦争になっていかざるをえないことを、この時点で見通していたのです。
 軍や権力によるアジテーション、「嘘」と、その背景にある構造を見きわめること。そのことの大切さを満州事変から太平洋戦争までの歴史は教えてくれます。
 現在進行形の戦争に関しては、ロシア側やウクライナ側双方での報道の検証、兵器の性能や戦況の分析など、安全保障の知見が必要です。けれども私のような日本近代史を専門とする歴史研究者にもできることはあり、それは、大国同士の戦争が生じた際に、そこで何が起きているのかを歴史からのアナロジーで考えられることです。いまウクライナとロシアで130万人ほどの人が戦争に動員されているそうです。では、日本は日中戦争の終戦時に何人ぐらい中国大陸に人を配置していたかというと、80万人です。このような規模で起こる大国同士の戦争という点で、日中における日本軍のふるまいを、現在のロシアに比して考えることは大事でしょう。ロシアとウクライナの関係はもとより複雑です。ウクライナがソ連の一部であったときに、ウクライナはベラルーシなどとは違い第二の軍事強国といってよい地域でした。その国が91年に独立した結果、今回の大国同士の戦争に帰結しました。
今回の戦争は、相手国の「憲法」すなわち、基本となる社会秩序をめぐる戦争になっています。石油を安く買い叩くために戦争をするといつた資源戦争ではありません。ロシアはウクライナの存在を自らの安全保障上の障害だとみなします。そしてウクライナはこのロシアの世界観を認めることはできません。だから、残念なことに戦争は長く続くはずです。
なぜこのような戦争が起きてしまったのか。少なくとも、2014年のクリミア危機以降のロシアに対して、日本を含めた西側は、プーチンがロシア市場を日本企業、多国籍企業に開放してくれるならば状況は良くなっていくと信じていました。しかし、あの頃の私たちはロシアに対する構造的な認識が不十分でした。
 対立そのものをどのような構えで見たらよいのか、それを教えてくれるのが歴史なのだと思います。

コメント:加藤教授の講演の最後の部分です。日本軍がどのようにアジテートしたかの記述が参考になりますし、ウクライナ侵攻が資源を巡る戦いではないこともその通りですが、直接の引き金は、ウクライナがNATOに参加しようとしたことです。確かにそれは安全保障上の障害でしょう。日中戦争同様、戦争が長引く可能性は高いと思います。ウクライナから見れば、ロシアのウクライナ併合を意図した侵略です。だからロシアにとっては一部の切り取りでも勝利となるが、ウクライナにとっては、例え一部分でも。領土を守れるのか、奪われるのかの二者択一でしかないのです。ウクライナにとっては、クリミアを一方的に奪われた苦い経験があり、もう二度と領土は奪われたくないと思っているはずです。安全保障には違いないが、今回の侵攻を領土問題と捉えることで、日中戦争とも整合性が出てきます。でもそう規定すると、逆に落としどころが見えなくなります。しかも、折角ロシアの隣に、くさびを打ち込むことが出来たと思っている、NATOも承服はしないでしょう。そこで、ウクライナがNATOやEUに参加せず、中立を維持するという宣言をして、それをロシアが兵を引く理由(勝利宣言)に、無理矢理にでも持ってゆくことを考える必要があります。これ以上一人でも市民や兵士の犠牲を止めるには、それくらいしか泥沼の消耗戦から両国民を救う方策は思い付きません。そしてその仲介こそ(無力な国連に代わって)米国と中国が共同で行なうべきだと考えます。運命論に流されるのが歴史学の役割ではないはずです。過去の事例から、どうすれば戦争や侵略を止めさせる事が出来るのかのヒントが得られなければ、学問には意味がないと思うのですが、加藤教授はどうお考えでしょうか。但しそれは政治と外交の問題だと言われてしまえば、それまでですが。



2263.民主党の問題、安倍政治の総括 12/23

今回の前書きも、雑誌世界からです。米国の民主党の動きが、どうにも良く理解できなかったのですが、分かり易い解説がありましたので、同じような問題意識を持っている方の為に、その一部をご紹介します。関心のある方は是非本誌をご覧ください。今回の世界(1月号)は読むに値する論文が満載で、その点文春と対照的です。最近の文春は立場があいまいで、ゴシップ寄りに傾いており、真面目に受け取るのが馬鹿馬鹿しくなっています。

「米民主党を覆う二つの難題、新世代左派の苦悩とトランプ依存」渡辺将人から
 …民主党戦略の柱は、第一に人工妊娠中絶で、人工妊娠中絶を選ぶ権利が奪われたと訴えた。第二の柱は、トランプ復権の可否選択だった。
トランプ派の、過激派と富裕層や大企業が支配する世界か、一般の普通の米国人が望む価値かの選択である。インフレについても、政権の対策効果を問わず、消費者の敵としての大企業を批判した。「プーチンの戦争を口実に石油会社が、パンデミックを口実に製薬会社が価格を引き上げている」「企業の価格引き上げを容認するのが共和党」「インフレ抑制法案に共和党議員が全員反対した」といった文言が陣営の応答要領には並んだ。
低い大統領支持率の中で、上院議員と州知事のほぼ全員が再選されたのは、コロナ禍の疲弊で大変化のリスクを望まなくなった有権者心理も指摘される。
しかし、大敗を免れた民主党の眼前には「二つの難題」の暗雲も立ち込める。第一の難題は、水面下で深刻化する党内抗争とその質的変化である。かつて民主党内の派閥争いの軸は穏健 (中道)派とリベラル派だった。90年代に隆盛を誇った穏健派は、イラク戦争支持で味噌をつけ衰退傾向にある。筆者は民主党内派閥を暫定的に四分類してきた。「穏健派A」は財政均衡とビジネス重視のビル・クリントン派、「穏健派 B」は人権や環境重視だが介入外交ではタカ派的なー而もある穏健派内左派 (ヒラリー派 )、「伝統的リベラル派」は労組、女性、黒人、利益団体などのリベラル連合、そして「新世代左派」という2010年代以降に躍進した「党外」グループである。台風の目は「新世代左派」だ。運動としては B L M (ブラック・ライヴズ・マ夕? )、選挙戦としてはバーニ?・サンダース支援の活動家が主体だ。「ウォ?ク・レフト( woke left)」と呼ばれることもある。woke(目覚め)とは社会主義や人種正義を訴える活動家の呼称だが、「ラディカル」「急進」と同様の中傷的含意もあり扱いには注意がいる。ニュートラルな呼び名が固定化しない中、筆者は暫定的に「新世代左派」と称している。
「新世代左派」第一の特徴は、若い黒人の文化的リベラル化である。黒人層はキリスト教信仰では保守的で同性婚にも否定的だった。主な政治指導者も牧師だった。(中略)BLMは黒人運動でありながら単にレイシズムへの抵抗運動ではない、フェミニズムやセクシュアリティの解放も意図した重層的運動である。
第二に、属性と争点の横断性である。(中略)「ウォール街を占拠せよ」運動は白人中心の運動だった。だが、2012年以降「占拠運動」の白人活動家らは、水面下でBLM運動やサンダースとウォーレンの大統領選出馬を支援した。いわば反経済格差運動とLGBTQ権利運動が反人種差別運動に合流した形だ。(中略)
第三に、政党への帰属意識が薄い性質だ。「伝統リベラル」は党派的な忠誠心と動員的投票行動が特徴で、黒人有権者も不満を抱えながらも民主党政治家を支持してきた。だが「新世代左派」は民主党を無条件に支持する旧世代に不満を持つ。党幹部への攻撃は手加減がない。2016年のサンダース運動も反民主党運動で、ヒラリー勝利阻止が目標のひとつだった。 TPP反対では一致するトランプ台頭の幇助を問題視しない空気すらあった。
第四に、安易に第三政党化しない態度だ。消費者活動家ラルフ?ネーダーの緑の党の失敗に学んでいる。岩盤の二大政党制の中で米国を変えるには民主党の内部改革が現実的だと割り切っている。
自分たちを「リベラル」「進歩派」と呼び、「ラディカル」とは呼ばせない。すなわち「リベラル」の性格自体の更新を目論む。2020年大統領選挙では予備選でサンダース善戦の後、本選で邪魔しないことを条件に、バイデン政権にリベラル政策を認めさせてきた。
しかし、主流派 (「穏健派」「伝統リベラル派」)と「新世代左派」との亀裂は広がる一方だ。経済とアイデンティティ政治の均衡が維持できない問題が背後にある。 
米国の二大政党では、経済的な「利益」とは別に文化的な「理念」が亀裂の種になってきた。民主党は労働者層が支持基盤の軸だったが、60年代の公民権蓮動とヴェトナム反戦運動以降、活動家・知的産業従事者が増加し、文化的なリペラル化が深まった。だが、多文化主義的な運動は労働者層の家計争点とのズレも生んだ。反戦リベラル理念は、軍需産業で家族を養う労働者に受け入れられず、炭坑など化石燃料産業の労働者の利益と気候変動対策も両立しない。この民主党内の亀裂を筆者は「アメリカ政治の壁」と名付け、白人労働者の離反によるトランプ台頭の可能性を指摘した。
無治、新世代左派は、経済的正義による格差是正の道を軽視していない。しかし、人種正義への情熱を「暮らしの争点」軽視とみなす穏健派との不和も招いている。(以下略)

コメント:解説は未だ続きますが、上記の説明だけでも民主党の現在位置がある程度理解できます。筆者による4つの派閥分類も参考になります。ヒラリーがトランプに敗れたのも、トランプの、ロシアを撒き込んだ卑劣な中傷合戦だけが原因ではないことが分かります。なおこうした米国の政党内のダイナミックな動きをみると、日本の野党の、理念もなく、戦う姿勢もない態度が、いかに真剣度(執着心)が低いかが良く分かります。それが、政権担当能力がないと国民に思われている、最大の理由ではないでしょうか。

もう一つ紹介したいのは寺島の安倍政治の総括です。既知の情報を含め、安倍政治を分かりやすく、しかも比較的中立の立場で解説しています。自民党政府が絶対にやろうとはしないこと、それが安倍政治の総括です。まして菅や野田の歯の浮くような弔辞など問題外です。
「戦後民主主義と安倍政治、資本主義と民主主義の関係性、その5」寺島実郎から
…安倍は著書の「美しい国へ」で、「はたして国家は抑圧装置か」と題し、国家と国民を対立した概念で捉えるのではなく、「国民の自由を担保するのは国家」という考え方を示し、「放埒な自由ではなく、責任を伴う自由」の大切さを語る。もっともに聞こえるが、「国民の自由を担保できる国家」を維持するためにも民主主義を機能させねばならないわけで、国家が一歩間違えれば抑圧装置になる例を安倍政治が生み出したことを「自殺者さえ出した森友学園を巡る近畿財務局の問題」で我々は目撃している。
結局、安倍政治には「戦後民主主義は病原菌」として切り捨てたい本音が見え隠れする。それは、常に「統治者としての視点からの政治論」だからである。「官邸主導政治」として、内閣人事局が省庁の上級人事を掌握することで忖度官僚の群れを産み出し、検察や日銀の人事にまでも過剰介入することで、民主政治の根幹である権力の分立と相互牽制を崩してしまった。
安倍政治が掲げた「日本を、取り戻す」というスローガンが、戦後民主主義を否定し、戦前の日本への回帰を目指すものであったことを示す典型的事例が2017年3月の「閣議決定」による教育勅語の「副読本化」であろう。1948年6月に衆参両院で「教育勅語等の排除、失効確認決議」がなされたものを閣議決定で覆したのである。「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ…」を語る教育勅語は八割以上が儒教的価値に基づく徳目で、徳育教育は大切という説明だが、教育勅語の狙いは「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ」という国民意識の形成にある。この戦前型天皇制国家の基本理念を「副読本」ではあっても、議会の承認なく「閣議決定」で再び教材化することを決めたのである。「集団的自衛権の容認」も閣議決定による解釈改憲で押し切ったわけで、議会主義を空洞化させてしまったの である。 
「戦後レジームからの脱却」を掲げていた安倍晋三という人物は、自らの死をもってレジ ―ムを支えた保守政治の本質を明らかにした。そして、彼自身が戦後レジームの中核であったことを言い残して逝った。我々には、本当の意味で戦後レジームを克服して未来を拓く責任が残った。戦後民主主義を支えるはずだった産業資本主義を中軸とする経済基盤が変質し、デジタル情報技術革命が進行する中で、我々は主体的に民主主義の在り方を再考察して、あるべき形へと変革しなければならない。 

コメント:御指摘の通りですが、知らなかったのは教育勅語の副読本化です。安倍はコロナ対策などもあるが、
しまえば、それまでですが。



2264.民主主義と見えない外交 12/26

私が朝日新聞を購読して良かったと思うことが4つあります。一番目は4コマ漫画、2つ目は川柳、3つ目は社説、そして4つ目がフォーラムです。今回は最近読んだフォーラムで記憶に残るものから2つ、その要点だけご紹介します。この2つが鳴らしている警鐘こそ、ほぼ全ての国民が抱いている危惧に通じるものがあると確信しています。

朝日新聞22年12月24日オピニオン&フォーラム
「民主主義がはらむ問題、民意の実現求めればポピュリズムに傾く。自壊しかねぬ危うさ」佐伯啓思から

少し大きな書店に入ってみると「民主主義」についての 書物が並んでいる。しかもその大半が「民主主義の危機」や「民主主義の崩壊」を訴えるものだ。この 21世紀に改めて「民主主義」が論じるべきテ?マとなっていること自体が興味深い。
何があっても「自由と民主主義」という国是だけは決して揺るがないはずの米国で、「民主主義を守れ」が選挙の書に掲げられることはやはり異例である。
そもそもこの事態を引き起こしたものは何かといえば、 2 0 1 6年の大統領選挙であった。まさに民主主義がトランプを大統領の座に据えたのである。
トランブ現象は民主主義にとって何を意味していたのだろうか。

トランプは、民主主義にとっての危険人物と見なされている。なぜか。それは、彼が自らに批判的なメディアをフェイクと決めつけ、その主張にいっさい耳を貸そうともしないからである。そして「フェイクメディアは嘘つきだ」という子供っぽい口ぶりを、トランプ支持者は疑おうともしない。反対意見にも耳をすませて論議をつくす政治こそが民主主義であるという由緒正しき信条からすれば、このトランプの姿勢は「民主主義の敵」ということになろう。

確かに、反対派とも論議をつくすという「討議民主主義」は民主主義の理念である。だが、利害が多様化して入り組み、にもかかわらず人々は政治指導者にわかりやすい即断即決を求めるという今日の矛盾した状況にあっては、由緒正しい民主主義では政治が機能しないことは明白である。そしてこの現実こそが、民主政治へのいら立ちや不信感を生み出しているのであり、その政治への不満がトランプ現象を生んだのであった。

戦後の英国を代表する保守派の政治哲学者マイケル・オ?クショットがかつてこういっていた。現代の大衆は、「幸福を追求する権利」など求めてはいない。彼らが求めているのは「幸福を享受する権利」だけである。人々が政治に求めるのは、「幸福を追求する」ための条件ではなく、現実に「幸福を享受すること」なのである。
これは福祉国家化や行政の肥大化を念頭においたものだろうが、政治や行政への依存を強める現代人の心理的性向を論じているともいえる。人々にとっては、おのれを頼みとして自分の幸福を自ら獲得するという「自己決定」などというものは重荷なのだ。だから人々は、政治に対して「安全と幸福」の提供を要求する。その結果、人々は、安全と幸福を与えてくれるような強力な「護民官」的な指導者を求める。

古代ギリシャやローマの政治家がしばしばそうであったように、大衆政治家は、多かれ少なかれポピュリズムへとなびくが、それは民主主義の歪みというよりも、むしろ民主主義の本質といわねばならない。少なくとも、民主主義を民意の実現などと定義すれば、民主政治とは、民意を獲得するための政治、つまりポピュリズムへと傾斜するほかなかろう。民意を敵に回してでも真に重要な決断をすることを政治家に求めるならば、「民主主義は民意の実現」などというわけにはいかないのである。

民主主義の理念が「討議による政治」であり、少数派への配慮が必要とされるのは、何が真理であるかは誰にもわからない、という前提があるからだ。真理は不明であり、絶対的に 間違いのない判断などありえないのである。

経済成長がまだ可能であり、人々の間に社会の将来についてのある程度の共通了解がある間は、民主主義は比較的安定的に機能した。そこには社会を分断するほどの亀裂は現れなかった。多くの人々は経済の波に乗っておれば自然に「幸福を享受」でき、将来に大きな不安を抱くこともない。

ところが近年、経済は行き詰まり、将来展望は見えない。すると人々は政治に対して過大な要求をする。「安全と幸福」を、言い換えれば「パンとサーカス」(生存と娯楽)を求める。政府は「民意」の求めに応じて「パンとサーカス」の提供を約束する。

ローマの皇帝政治を現代の民主主義に重ねることはできないが、民衆の「パンとサーカス」の要求に応えるのが政治であるという事情は、民主主義でも権威主義でも変わらない。それでもパンもサーカスも提供できる余裕があればまだよい。その余裕も失われてくれば、社会に亀裂が走り、党派の対立は収拾がつかず、政治は著しく不安定化する。その場合、危機は、民主主義においていっそう顕著に現れるだろう。 

この閉塞感の中で、西側の民主主義国は、ロシアのウクライナ侵略を契機に、この戦争を、民主主義と権威主義の戦いと見なし、「権威主義の軍事的拡張から平和愛好的な民主主義を守れ」という。もちろん、そのことを否定するつもりはないのだが、それにしてもこれはいささか民主主義に都合のよい作り話、つまり一種のフェイクにも聞こえる。

決してプーチンを弁護するものではないが、それでも権威主義の脅威を掲げて民主主義を擁護するだけでは、民主主義がはらむ問題からわれわれの関心をそらしかねない。民主主義はロシアや中国の権威主義の脅威によって危うくされるというより、それ自体がはらむ脆弱さによって自壊しかねないことを知っておくべきであろう。
コメント:佐伯はこの短からぬフォーラムで、問題は正しく提起しているものの、回答のヒントは示していません。こちらが知りたいのは、ではどうすれば、民意を最大限に反映しつつ、衆愚政治を回避できるのかと言う点なのです。首相/大統領と議会の関係にも言及していない。議会はまさに討議の場であり、民主主義を実現する仕組みなのです。そこで、私の結論から言えば、それは参議院を賢人会議にすることです。今の参議院は、第二の衆院でしかない。それでは存在する意味がありません。もっと独自色を出さなければならない。最低でも米国の上院と同じ位置づけでなければならないと思います。ついでに言えばとにかく議員数が多すぎます。国民数対議員数でみても、日本は米国の2倍近いのです。


二番目は田中均です。
朝日新聞22年12月20日
「外交が見えない、『反撃能力』の取得、周辺国と交わらずビジョンを失う」田中均から 
ー安保関連 3文書が閣議決定されました。
「私は民主主義的な手続きで防衛費を適正レベルまで増やすことに何の異存もありません。ただ、これは戦後の安保政策の大転換であり、十分な説明もなく唐突に G D P (国内総生産 )比 2 %という『額ありき』で予算を倍増させ、何十年も控えてきた反撃能力を取得するというのは驚きです。日本に適切な政策とは到底思えない」
「侵略と敗戦という歴史的な背景をもつ日本は独自の防衛力と日米安保条約で国を守ってきた。日本だけで中国、ロシア、北朝鮮を抑止はできません。常に米国と日本の抑止力のトータルで安全が保たれている。そのうえで周辺諸国を刺激しないよう日本は専守防衛で『盾と矛』の役割分担もしてきた。これからまわりの国々とどう関係をつくり、安保環境をよくするか。そういう外交が見えない」

ー外交が見えませんか。
「ないですよ。『中国に強くあたる』『韓国に強くあたる』という政治家の要請を受けて対外関係をやっているように見えます。『外』と交わることなく国内の意識を外にぶつけているだけです」
「私はいわゆる平和主義者ではありません。日米安保共同宣言や日米防衛協力の指針 (ガイドライン )をつくったのは、アメリカが圧倒的に強い軍事力を持っているので、それを東アジアに引き込むことで国益に寄与すると考えたからです。そのために日本も応分の負担をするのが基本だった。ところが今や日本が反撃能力を持つという。米国は喜びますよ。米国製の武器を買うんだから」

ーやはり、その点も。
「そりゃあ、あるでしょう。だけど、私は戦争を起こさないようにすることが日本の生きる道だと思っている。米国の抑止力を使いながら、地域の脅威レベルを下げることが目標だと思うんです。今の流れはそれに逆行しています」
「ロシアのウクライナ侵攻が日本の世論に影響している。ハト派と言われた宏池会の岸田文雄首相や公明党がかじを切り、野党もナショナリズムの空気に抗することができない。その問に、日本のビジョンが失われている」

ー北朝鮮のミサイル発射が続いていますが。
「国連安保理決議に反する行動であり、糾弾されるべきです。でも、日本が反撃能力を持ったら北朝鮮がミサイルを撃たなくなると思いますか。北朝鮮がさらに強い行動をとり、軍拡を加速させるという推測もたてざるをえない。緊張が高まらないよう、交渉で止めるのが外交じゃないですか」

―6者協議の再開は難しい状況になっています。
「いま難しいのは中国との関係です。米中の競争が至上課題と双方が思っているので、朝鮮半烏は副次的な位置づけになる。激しく対立している時に、朝鮮半島で協力しようとはなりにくい」
「日本は米国に迫従し、米中対立の溝を深める方向で外交をするのか。それは日本の利盗ではないと考えて、米中の建設的な関係をつくるべく努力するのか。後者に取り組まない限り、朝鮮半島問題の解もないということです」

―台湾有事に備えは必要だと思いますが、戦争を回避する外交の具体策を議論すべきでは。
「台湾有事になれば日本有事になるのは当然です。だからこそ、戦争にしてはいけない。 日米とも中国との関係正常化の経緯に鑑みれば積極的に台湾の独立を支援する立場にはない。他方、中国が軍事的解決をするのは座視できない。中国を牽制しつつ、中国と台湾が現状維持を図るよう支援するのが正しい政策だと思う。日本は中台を巻き込んで、機能的な協力を実現していくべきでしょう。例えばTPP(環太平洋経済連携協定)です。台湾や中国が加人する協議のプロセスを始めれば、日本は外交のテコを持つでしょう」
「日本主導で経済外交を進めることが求められています。日米の対中抑止力を強化したり、経済安保も必要ですが、中国と始めるベきなのは経済の対話であり、枠組みづくりです。地球温暖化やコロナ禍への対応など、いくらでもテ?マはあるはずなのに、日本政府はその 気になっていない」

ーなぜですか。
「右派の支配する政治の力でしょう。官僚は政治家に従わないと仕事が出来ないから」

―官僚も軍事をテコに外交をしようとしているのでは。
「制約を外すと、そうなってしまう。それをあえてせず、軍事大国にはならないと安心感を与えつつ、まわりの国と関係をつくってきたのが日本外交の伝統です。自衛隊の関係者が、水を得た魚のように防衛費拡充論をぶつのを見ると、『こわいな』と思いますよ」
「安倍氏が成功したのは『見かけ』をつくることです。アベノミクスと似たところがある。彼のスタイルは自己主張が強い外交で、日本の首相が一目置かれたことは間違いない。存在感を高めたという意味では成功したと思います」
「しかし外交の本旨は、周りの国々と平和で安定した関係をつくること。ロシアとの北方領土交渉はまさに見かけで、首脳会談を重ねても国益は担保されなかった。北朝鮮とは『無条件で首脳会談をやる』と危ういことを言い、韓国には強硬な態度で恨みを買った」
「安倍外交は、結果をつくるという意味では実りある外交とは言えなかったのではないか。典型が、ロシアとの関係であり、北朝鮮との関係であり、韓国との関係だったと思うのです」
(聞き手・小村田義之)
コメント:軍事国家化への警告です。誰もが納得できる形での日本の外交の道筋を示すには至っていません。武器商人たる米国に、盲従する愚を指摘したのは正しいと思います。



2265.十年前に何があったか 12/30

私はそれほど多趣味な方ではないが、下手の横好きならいくつかあって、その一つがミステリーとSF小説です。後者は昨年の大作、メイド・イン・チャイナの三体があります。
ついでに言うと、TV番組では有料の衛星放送、ヒストリーチャンネルの「スキンウォーカー牧場の超常現象」がベストです。これは超常現象をデータで分析し、なんとか科学的な説明を試みようと奮闘する専門家たちの話で、もしそこでなんらかの手掛かりが得られれば、UFO問題の最初の科学的な分析の糸口になるものです。
話をミステリーに戻すと、傑作を選ぶ手掛かりは「このミステリーがすごい、傑作ベスト20」です。その中で、一位をなるべく買うことにしています。22年度はクリス・ウィタカーの「われら闇より天を見る」です。しかしこれが長い。500頁を優に超えます。だからただの謎解きではないだろうと予想はしていました。昨日から取り掛かり、今日はwtwを書く時間がないかと危惧しながら、なんとか15時に読了しました。但し、誰にでも無条件で勧める訳にはいきません。米国の映画やTVシリーズを見慣れていないと、消化不良を起こす恐れがあります。ミステリー、プラス、ロ−ドムービーだからで、米国中西部を車で移動しまくります。まさに読むロードムービーです。但し、米国にいた経験から少しおかしいと思う描写もないわけではないが、筆者が英国在住の若い英国人であることで分かりました。正月にすることがない人はお試しください。ネタバレですか。それはプロの読者のすることではありません。

年末で部屋の大整理をしていたら、10年前の週刊文春が出てきました。
当時何があったかというと、野田佳彦が、独断で解散を言い出した時期です。確か自民党政権が消費増税を実行してくれればその代わりに解散するという、本末転倒の解散だったと記憶しています。
週刊文春の論調では、野田は総選挙で勝てる可能性があると踏んでいたようにも思えます。即ち自分は国民に支持されていると、と言うより、持ち前の自我肥大で、自信過剰になっていた(今でもそうだが)のではないか。自分を客観視できないのは、今に始まったことではないが、その結果、国民がどれほどひどい目にあったのかについての反省があっても、罰は当たらないと思います。
一方安倍は安倍で、自信は見せてはいるものの、周囲が心配しており、圧勝を予想していた訳ではないことが分かります。結果は言うまでもなく、(統一教会の支援を受けて)自民の大勝利、民主の大敗北です。まさに10年前の今頃、その後の民主政治と議会政治と憲法にとっての、悪夢の10年の幕が開くことになったのです。
なお安倍は、当時から金融緩和を掲げており、しかも専門家も、問題点を指摘しています。それがほぼ的中していることは、今の我々なら分かります。
今日はこの1年というよりも、この10年を振り返って頂く機会になればと思います。
政治家は、凶弾に倒れても、存命でも、自身が成した政治で、評価されなければならないという宿命があります。

週刊文春2012年12月6日号から
「総力取材、仁義なき総選挙、安倍総理じゃダメだの大合唱」
【言いたい放題】
「いま自民党の最大の懸念材料が安倍晋三総裁の言動です。野田佳彦首相が電撃解散を宣言した党首討論でも完敗というのが自民党内の評価でした。ただ、当の安倍さんにはその意識がなく、(中略)失言でもあれば、有利な情勢が一変しかねませんから」(自民党関係者)」

世論調査でも優勢が伝えられ、政権復帰が確実視される自民党の安倍総裁。小誌がメールマガジン読者を対象に行った「野田佳彦、安倍晋三、石原慎太郎 総理にふさわしいと思うのは誰ですか?」というアンケー卜でも、安倍氏への支持が一番高かった。

安倍氏は「民主党政権で弱体化した外交?経済を安定させる」などと幅広い支持を集めた。 
一方で厳しい意見も。「安倍さんで意見百出の自民党をまとめきれるのか疑問」、「野田氏との党首討論で力量差が明確に。威厳も胆力も微塵も感じられない」。

年末には総理のイスに座っているはずの安倍氏だが、関係者の間ではその言動に不安の声が高まっている。「最近、マーケット関係者の間で安倍リスクという言葉が普通に使われるようになりました。お粗末極まりない民主覚政権に比べ、経験のある自民党政権は安定感が期待されていますが、最大の不安要素が安倍総裁その人。政権発足前に、自民党や霞が関から、その資質を懸念する声があがるのは尋常ではありません」 (政治部デスク)

はたして、安倍総理で本当に日本は大丈夫なのか。安倍氏が信頼する関係者に漏らした発言を集めてみるとー。

白川方明日銀総裁からも批判された「大胆な金融緩和」発言の真意について、安倍氏はこう説明している。「日銀の独立性についてよく言われるけど、今は野党の党首だから何を言ってもいいんだよ。オレだって総理になったらそんなことは言わないよ。政策目標は言うけど、手段は言わない。それで今、言っているんだ」
六年前の首相在任時にも指摘された、軽さは全く変わっていないようだ。

「単なる野党の党首ではなく、次期総理の発言と受け止められるということへの自覚がなさすぎるんです。金融緩和とともに『建設国債は日銀に全部買ってもらう』とも発言して『暴論だ』と批判を受けると、『 (日銀引き受けではなく)市場買いオペの意味』とすぐ修正しています」 (全国紙政治部記者)

 それでも「かつての金融政策とは次元が違う」と安倍氏は胸を張るが、その意外なネタ元についても明らかにしている。
「本田という元財務官僚がいて、彼がデフレ脱却について結構いろいろアドバイスをくれるんだよ。マネタリーベースを上げて円高を克服すればデフレ脱却と税収増につながるというんだ 安倍氏の言う「本田」とは静岡県立大学国際関係学部教授の本田悦朗氏のことのようだ。本田氏は昭和53年に大蔵省に入省し、世界銀行出向、米国大使館勤務などを経て退官。バリバリのインフレターゲット論者だ。

一方、本田氏の占巣である財務省にはかなり厳しい姿勢のようだ。
「政権に復帰したら経済財政諮問会議を復活させる。事務局を財務省にしたら終りだよね。消費税についても、上げなくてもいいんじゃないの。来年の4-6月期がマイナス成長になったら上げないよ」

得意とされる外交については、こう語っている。「訪米は真っ先にする。中国は後回しでもいいだろう。集団的自衛権については、安保基本法で解釈を変える。ただオバマ政権なので訪米のタイミングではなくて、参議院選挙までとっておいてもいいかな」

親米と評される安倍氏だがオバマ大統領との微妙な距離が感じられる。
(中略)
                                            前出の自民党関係者が苦笑いで解説する。
「11月19日に出た自民党の選挙情勢調査がかなり良い結果で、党幹部から『単独過半数も余裕で行ける』との声も出たほど。安倍さんもすっかり自信を持ってしまっているのです。九月の総裁選の時には『 (前回の辞任で)国民にご迷惑をおかけした』とまず謝罪していた謙虚さはすっかり消えてしまった。ペラペラ話しまくる姿を見て、ある首相経験者は『すぐにムキになるし、他人の受け売りばかりで自分の言葉がない。成長してないよ』とため息をついています」
(中略)

【フェイスブックでネトウヨと共闘】存在の耐えられない軽さ急加速

【主婦・年金生活者直撃、安倍不況がやってくる】荻原博子、藻谷浩介ほか
「安倍氏の経済政策に関する発言には、二つの問題があります。まず言う通りインフレターゲットが達成できるのか。仮に、達成できたとしても日本経済が壊滅的打撃を受ける。どちらにせよ、この経済政策が安倍総理の致命傷になるでしょう」 (大手銀行アナリスト) 

安倍総理を不安視する声が最近、特に高まっているのが、経済関係者だ。その理由が、安倍氏の唱えるインフレタ?ゲット付き量的金融緩和政策。安倍氏は、日銀に2?3 %のインフレ目標を設定し、それに向かって金融を無制限に緩和させるという。(中略)

安倍氏は「もう勝負あった。政策を発表した段階で円高は是正され、株価があがっている」と自信満々。そもそもエコノミストやアナリストの間では、今の日本で2?3 %のインフレを起こすことは相当難しいとの見方が大勢だが、それが達成できた場合、日本に何が起きるのか。慶大大学院准教授の小幡績氏は、こうシミュレーションする。「投資家は、資産を現金からインフレに強い不動産や株式に移すので、地価や株価が上昇する『資産インフレ』が起こります。例えば、持ち家の人はウハウハでしようが、賃貸の人は大変です。家賃が上がるが賃金は上がりませんから。貧富の格差が拡大するでしょう」

経済ジャーナリストの荻原博子氏は インフレの怖さをこう指摘する。
「インフレは、物価と同じように賃金も上がらなければ、増税と一緒です。ただ国際競争が激しい経済情勢で物価と同じように賃金を上げられるかと言えば、かなり難しいでしょう。また年金も物価と同じようには上がりません。派遣で働く人たちや、年金生活者などは大きな打撃を受けます」
景気がよくなっても、賃金が上がらなかったのは、前回の安倍政権時も同じだったと振り返る。

「安倍さんが総理だった06年から07年は、いざなぎ景気を超える戦後最長の景気拡大期間で、富裕層は好況でしたが、民間給与は下がりっぱなしでした。この十年で平均給与は四十万円も減っています。給料に跳ね返らない景気回復が、前回と同じように起こるかもしれません」 (同前 )

(中略)インフレは、主婦にとっても厳しいのだ。もう一つ、円安も食料品価格の値上がりにつながる。

「デフレの正体』の著者で、日本総研主席研究員の藻谷浩介氏も、円安は手放しで喜べないと指摘する。「安倍さんには経済の現実が見えていない。いま日本の貿易収支は赤字ですが、原因は円高による輸出減で、原油・ガス価格の上昇による輸入増です。円安になれば、この赤字が拡大します。また、過度の金融緩和で国債金利が上がれば、国債の価格が下がり、銀行や年金基金は大幅な評価損を抱えます。国債や年金、さらに政府財政の破綻へとつながる政策を、自民党総裁が主張しているのです。日本のメルトダウンも極まったと思いました」(以下略)
コメント:言いたいのはデジャブの一言だけです。未だに黒田は政策変更ではないと突っ張っていますが、自分の面子の方が国民経済より大事であることを示した時点で、総裁は失格です。無論続投する気もないでしょうが。



2266.防衛装備品の暴走 12/31

・防衛装備品の工場を国有に。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6449173
コメント:一体、政府と防衛省は何を考えているのか。民間企業が利益にならないので腰が引けていると見るや、自分で兵器の製造まで乗り出すつもりか。この勢いでは、理由や時期はともかく、実戦があることを前提にした準備が加速するだろう。それは、ひとたび、自制心に乏しく、歴史の知識もなく、価値観のずれた首相が登場した途端、一蝕即発の、武力衝突の危険性を意味する。
いまや日本は、安倍さえ想像もしていなかった、飛んでもない国になろうとしているようだ。防衛省が次に出してくる要求も、既に見えている。自前で核兵器を所有したいと言い出すのではないか。そうしないと世界で発言権が持てないと。彼ら(防衛族、国家主義者)は武力で世界に大和民族の覇を唱えたいと、心から願っているらしい。平和憲法どころか、平和主義でさえない。しかもまずい事に材料(プルトニウム)は、文字通り掃いて捨てるほどある。



2267.ウェルビーイング 12/31

今回の前書きは朝日新聞(12.30)の社説の要約です。
「ウェルビーイングとトー横」塩谷文生
…新宿・歌舞伎町の通称「トー横」。数年前から家庭や学校に居場所がない子どもなどが集まるようになった。私が訪ねたのは、深夜から早朝にかけて中高生ら20人が補導された直後のことだった。
同じような場所は各地にある。「大人は誰も信用していない」と語る子どももいる。そんな中高生たちに、あの言美はどのように受け止められるだろうか。
ウェルビーイング。「心身の健康と幸福」などと訳される英語だ。 23年度から 5年間にわたり教育振興基本計画では、その向上が中心的な理念に据えられる。
教育界には、何年かおきに外来語のキーワードが流行する。少し前には「アクティブ・ラ?ニング」 (能動的な学び )が一世を風扉した。鼠近は「P B L」(課題解決型学習 )などに勢いがある。
「消化不良のまま新しいワードを使う文部科学官僚が増えている。改革の理念やワードはインフレ気味で、現場との乖離が広がりつつある」。そんな文科省関係者の心配をよそに、ウェルビ−イングは教育界の最重要ワードに躍り出た。これからの教育は、「指導」から子どもに「伴走」する教育への転換と言ってもいい。だが実際に全国の教育のあり方を変えるには、先生や自治体、そして保護者がウェルビーイングという言葉をしっかり消化する必要がある。
厳しい状況におかれた子どもは多い。障害がある子にも、日本語の指導が必要な子にも、そして卜―横などに集まる居場所のない子にも、一人ひとりに合った学びの機会を見つけて、寄り添う。そんな教育の姿が各地に定着するのか。それを見極めたい。(以下略)

コメント:筆者には申し訳ないが、この言葉は、多分に従業員の労働環境に使われることが多いようです。以下をごらんください。
https://thanks-gift.net/column/engagement/wellbeing-meaning/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=B002&gclid=CjwKCAiAkrWdBhBkEiwAZ9cdcAL0fyY-x8xmk8ureNB1tVG2aWjRI1h_FnwfKkrELexoOJ0xu5X3ARoC5RwQAvD_BwE
とはいえ、無論、この概念を教育で使うことに、私は異存はありません。



2268.2023年の課題 1/1

【wtwコラム、2023年の課題】

「NHKBSの特番を見た。
大本営発表は歴史的な事実である。
軍人スポークスマンは
幹部の指示、或いは改変通りに、
発表するしかなかった。

後年、スポークスマンは矛盾に
苦しむことになるが、
これで思い出すのは、
森友事件で、自ら死を選んだ、
赤木氏のことである。

戦時中、最も重要なことは、
軍事官僚の力が、誰にも、
どうにもならないほど、
大きくなったことである。

その教訓もあって、戦後、
民意を代表する政治家が、
官僚をコントロー出来るように、
民主党の小沢が、
官邸が官僚幹部の人事を、
掌握するようにした。

ところが民意を意に介さぬ、
自信過剰の野田佳彦が、
消費増税と引き換えに、
政権を投げ出した。

それを棚ぼたで拾った安倍は、
官僚のコントロールを、
本来とは異なる目的の為に利用した。
それは公益目的ではなく、
自分と友人の、
個人的な便宜のためであった。

赤木氏の役人としての良心は、
いくらそれが組織の命令とは言え、
黒を白にする命令を受け入れることを
拒否したのである。

ところが佐川に、それが出来たのは、
しかも、未だに裁判所の召喚を免れているのは、
背後に組織(省庁)があるからだ。
組織の為に、正義も法律も曲げた
佐川を、今度は全力を挙げて、
組織が守っているのである。

これは何を意味しているのだろうか。
日本の官僚組織は、自分の存在の為なら
何でもやる(法を犯すことも厭わない)という
剣呑な団体である事を意味していると、
考えることができるのではないか。

組織の論理が、個人の正義感、順法精神を、
押しつぶし、抹殺した。>
それが森友・赤木事件の裏にある、
省庁の体質なのではないか。

これでは大本営発表をねじまげた、
戦時中の軍部と全く同じであって、
現行の組織で言えば、
警察も、自衛隊も、
同じような危険性があるのではないか。

だからこそ、行政機構に歯向かった小沢を、>
冤罪すれすれまで追い詰めて、
政界から追い出そうとして、
警察も、検察も、なりふり構わずに、
全力を尽くしたのである。

最近の例では、コロナ対策の不備を棚に上げ、
総括さえしようとしない厚労省。
福島のメルトダウンの後始末も終わらず、
使用済み核燃料の処理の目途さえ
付いていないのに、原発再稼働どころか、
新増設まで言い出している経産省。
数字的な根拠も示さずに、倍増を要求し、
防衛装備費を国有企業でと言い出している防衛省。
<br>
その暴走を指摘し、批判し、諫める者がない。
野党は、問題意識も、気合も不十分。
世間(と岸田政権)が、統一教会とウクライナに、
かまけている隙をついて、
省庁は独自路線を突っ走っていたのである。
大衆誌を除く、まともなメディアは、
各省庁が省益を理由に、暴走しないよう、
国民に代わって監視の目を強め、
告発に努めなければならない。

岸田の最大の欠点は、『聞く耳』を官僚と、
派閥だけに向け、省庁の言いなりに、
発言しているように見えることだ。

心ある国民が、今年心掛けなければならないことは、
新興宗教まみれの自民党の退陣と、
官僚機構の意思決定プロセスの見直しである」

・統一教会の韓国イベントに日本の地方議員170名が参加。
https://mainichi.jp/articles/20230302/k00/00m/040/183000c
コメント:これが自民党議員の素顔です。票の為なら良心も信念も捨てる。元々そんなものを持ち合わせていればの話だが。

・教団の無節操に?然。鳩山にも依頼。
https://www.asahi.com/articles/ASR315Q4CR31UTFK00G.html?comment_id=12352&iref=comtop_Appeal1#expertsComments



2269.ベスト・ミステリー 12/29

私はそれほど多趣味な方ではないが、下手の横好きならいくつかあって、その一つがミステリーとSF小説です。後者は昨年の大作、メイド・イン・チャイナの三体があります。
ついでに言うと、TV番組では有料の衛星放送、ヒストリーチャンネルの「スキンウォーカー牧場の超常現象」がベストです。これは超常現象をデータで分析し、なんとか科学的な説明を試みようと奮闘する専門家たちの話で、もしそこでなんらかの手掛かりが得られれば、UFO問題の最初の科学的な分析の糸口になるものです。
話をミステリーに戻すと、傑作を選ぶ手掛かりは「このミステリーがすごい、傑作ベスト20」です。その中で、一位をなるべく買うことにしています。22年度はクリス・ウィタカーの「われら闇より天を見る」です。しかしこれが長い。500頁を優に超えます。だからただの謎解きではないだろうと予想はしていました。昨日から取り掛かり、今日はwtwを書く時間がないかと危惧しながら、なんとか15時に読了しました。但し、誰にでも無条件で勧める訳にはいきません。米国の映画やTVシリーズを見慣れていないと、消化不良を起こす恐れがあります。ミステリー、プラス、ロ−ドムービーだからで、米国中西部を車で移動しまくります。まさに読むロードムービーです。但し、米国にいた経験から少しおかしいと思う描写もないわけではないが、筆者が英国在住の若い英国人であることで分かりました。正月にすることがない人はお試しください。ネタバレですか。それはプロの読者のすることではありません。



2270.コロナ感染記 2/8-9

【コロナ感染記・前編】

とうとうやってしまいました。コロナに感染してしまったのです。無論夫婦揃ってです。
潜伏期間は3日なので、1月2日か、1月3日に、有難くないお年玉をどこかで拾ってきたとすれば、思い付くのは3日の高幡不動の初詣です。但し最初の兆候は鼻水だったので、もっと前の可能性もあり、特に年末は毎日買い物に出ていたので、何処で感染してもおかしくないと言えばそれまでです。

5日の夜から急に容体が悪化し、咳が出始め、喉が痛みます。
早速かねてから用意の抗原検査を使うと、これまで一度も出たことのない陽性の線が現れました。念のために別のメーカーのキットで試すと、やはり線が二本、くっきりと出ています。マスクを離さず、手指消毒をし、ワクチンを5回も打ってきた、この2年は何だったのかと思います。

せめて症状が軽ければいいのですが、それが意外にきつくて、喉が焼けるように痛み、咳が止まりません。コロナは上気道の病気なので、この症状は理屈には合っています。
上気道とは鼻から気管支に掛けての部分です。

それ以外にも鼻水、頭痛、節々の痛みもあります。1年以上続いていた味覚異常も、今回は強く、なんでも苦い味になっています。
無症状や軽症なら、鎮痛剤を飲んで自宅療養でもいいのでしょうが、こちらは持病もある高齢者です。医者の診断と、投薬を受ける必要があります。

そこで行きつけのクリニックの発熱外来を受診したいと思い、6日に予約の電話を掛けましたが、30分経ってもつながりません。たまりかねて直接受付に行くと、発熱外来の予約は電話でと言われました。でもそれがつながらないからと粘って、なとか同日の夕方に診断を受けることができました。

まず確認のPCR検査をと頼んだら、厚労省指定の抗原キットを使っていれば、PCRの必要はないということで、この時に私のコロナの陽性が確定しました。従って、キットの判定結果の写真もしくは、現物を持参する必要があります。

問診表には、症状が最初に出た日や、体温、最後にワクチンを受けた日など記入します。従ってデータを用意しておく必要もあります。発熱外来の対応はクリニックによって異なると思いますが、おそらくこの問診票に書く内容は同じだと思います。この問診票はネットから書式をダウンロードできるようなので、プリントして、必要事項を記入して持って行く方が間違いがありません。

医師からまず言われたことは、最初に症状が出た日から1週間は自宅待機せよということです。薬はと言うと、その場で出してくれました。と言っても完全に対症療法で、解熱薬、喉の薬、鎮痛薬などです。コロナは未だ2類の扱いなので、費用は全部国の負担です。薬局での調剤となると、待合室には入れず外で待つことになります。前科一犯の気持ちです。

翌日から毎日クリニックから電話がかかるので、容体を伝えて欲しいと言われます。具合が悪ければ、その時伝えてほしい。容体が急変したら、最悪救急車を呼んで欲しいとのことでした。

今回辛かったのは、咳が酷いことと、喉が痛く食事が(文字通り)喉を通らなかったことです。ただ不幸中の幸いは高熱が出なかったことです。

受診の翌日になって、少し体調が回復したようなので、念のためにもう一度抗原検査をしたら陰性でした。ちなみに家内も陰性でした。2日目にもう一度検査したらやはり二人と陰性で、これでもう他人に移す危険性は限りなく小さくなったものと判断しました。

なお家内は症状も軽く、鼻水と咳だけで、まさに風邪のような症状でした。一方で、コロナに感染したことは事実なので、回復すれば、これからはマスクも不要と思いたいが、ウイルスも変容を繰り返しているので、そうもいかないのでしょう


【コロナ感染記・後編】

毎日クリニックから容体確認の電話が掛かりますが、8日の電話で体温を訊かれた後で、9日から解熱剤の服用を止め、通常の生活に戻って良いとの指示が出ました。

そこで総括には早いのですが、経験と現状を踏まえて、コロナ対策について意見を述べさせて頂きたいと思います。

1. もはやいつどこで誰が感染してもおかしくない時期に、コロナが入っていると思います。でもそれは、コロナがインフル並みの集団免疫になる為には、避けて通れない段階だと思います。マスクは常用していたので、マスクで予防は出来ないことも分かりました。なお、コロナは基本人人感染、それも空気感染で、モノ人感染ではないので、ドアノブや手指の消毒はあまり役に立たないのではないかと思います。但し私はそれも続けるつもりです。

2. ワクチンを打っていても感染はします。但し6回目がもっと早ければと思いますが、5回目から2か月も経っているので、免疫効果が薄れていても不思議ではありません。それでも、身体の絶不調が2日だけで済み、中でも高熱が出なかったというのは、多分にワクチンの重症化予防効果だと思います。この3年、私も37度台以上の高熱の経験はありません。

3. 症状ですが、もともと頑健な人は無症状の場合もあるようですが、当方は蒲柳の体質ゆえ、風邪やインフルとは明らかに異なる症状がありました。なので、大抵の人は、コロナかどうかは、自分で十分判断がつくと思います。

4. そこで是非用意しておいて頂きたいものが抗原検査キットです。値段にも幅がありますが、ネットでの購入が早くて便利です。価格が高めのもの、特にインフルと一緒に検査できる製品は感度が高く、検査結果が信用できます。でも低価格のものが全く役に立たないということはありません。大量のウイルスがあれば検出します。

5. 検査キットは一回分と言わず、1週間毎日検査できるくらいの量を用意することをお勧めします。ジャブジャブ使うことになるので、精度の高いものと低いものを併用すれば経済的です。

6. そして陽性反応が出たら、行きつけのクリニックや病院に電話をして、その指示に従ってください。すぐに診察が受けられるようなら、陽性反応が出たキットを持参するか、予約が先ならスマホで撮影しておいてください。

7. 診察を受けると、毎日容体確認の電話が入りますが、これが一番重要です。医師の診察を電話で受けるようなものと思ってください。

8. 次にアセトアミノフェン(商品名カロナール、タイレノール)のような鎮痛解熱剤も用意しておいて下さい。直ぐに医師の予約が取れない場合もあり、その間症状を放置するわけにはいかないからです。

9. 異論はあると思いますが、特に症状の軽い方が、市販の風邪薬で何とかしようとするのはお止めください。なぜなら感染力が桁違いだからです。無論風邪薬を飲むのは悪いことではありませんが、素人判断で終わっていると、いつの間にか、自分を震源地にして感染を拡大してしまうことに成りかねないからです。そのうち風邪のように一般的で、より害毒の少ない疾患になるにしても、少なくとも現段階では、まだ用心が必要です。

10. 自分で出来る対策を考えました。私は呼吸器系が弱いので、肺炎になればまず助からないので、酸素発生機を用意しました。これは空気中の酸素を濃縮するものです。人工呼吸器は個人では無理です。予備に使う酸素ボンベも用意しました。

11. 一番大事なものは、抗原検査キットです。キットには簡易版とインフル兼用版があり、兼用版の方が正確です。端的に言えば、線が1本なら陰性、日本なら陽性です。

12. 従来、私は風邪は基本葛根湯で対応してきましたが、今回はさすがに無理でした。なお、昨年、一時怪しかった時に使ったイベルメクチンも、今回はピーク時に服用した
せいか、効き目はなく、モルノピラビルも、感染して直ぐに服用することが条件です。従ってコロナに感染しているかどうかを、早めに判断する事が重要です。そこで医師にかかる前に自分で判定するための抗原検査キットが意味を持ってきます。

13. 医師が一番気にするのがいつ発症したかですが、コロナウイルスは潜伏期間が3日あるし、初期症状は風邪に似ているので、素人の判断では発症日の特定が困難な場合もあります。

14.感染が確認されたら、自主的にご近所に連絡し、交流を控えてください。
買い物をお願い出来るときは、商品とレシートをドアノブに架けておいてもらい、後で、代金を封筒に入れて、買い物を代行してくれた方のポストに入れておけば良いと思います。

それでは皆さんも感染しないようにご注意頂くとともに、たとえ感染しても、負けず、くじけず、果敢にウイルスに立ち向かって下さい。これくらいのことでへこたれる人類ではありません。しかし、自分が短い人生の間に、ペストやスペイン風邪のような、パンデミックと向き合うようになるとは思ってもみませんでした。でもなんとか戦争だけは現実のものになって欲しくない、そう願っております。





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