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2471.さらば自民党 2.11

今回の前書きは雑誌世界3月号(特集はさよなら自民党)からです。

「沖縄という窓、人権をあきらめない」親川志奈子から

…十数年の間に沖縄はどう変わったのか。2008年に国会でアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案が全会一致で可決された頃、沖縄では「自己決定権」という言葉が市民権を得るようになった。ウチナーのことはウチナーンチュが決めていくという決意表明は、民主党時代に,「最低でも県外移設」との言葉を引き出した。これまでリベラルは「どこにもいらない」でコンサバは「容認」と、代理戦争のように言わされてきた言葉を封印し、「基地はヤマトヘ」と叫んだ。自民党沖縄県連さえ公約に「県外移設」を掲げ選挙を戦った。

しかしアメリカの圧力に日本の官僚が付度する形であっという間に鳩山首相は失脚させられた。「復帰」40年目からは「日本を問う」必然性が一段と増してきた。2013年には沖縄の全市町村長ら144人がオスプレイ配備に反対し建白書を携え上京したが、安倍首相に会えたのはわずか四分。デモ行進をすれば路上からウチナーンチュに向け「ゴキプリ」「売国奴」のやじが飛んだ。また沖縄関係の自民党の国会議員が「平成の琉球処分官」と呼ばれた石破幹事長の横に一列に座らされ「辺野古容認」を言わされた姿も忘れられない。翁長知事が誕生し、壇上からウチナーグチも使い演説する彼の「イデオロギーよりアイデンティティ」との言葉に新基地建設反対の決意を新たにした。

だが戦後70年が過ぎても米軍基地が島中にあり、女性が暴行され、殺害され、オスプレイは落ちてくる。何ーつ変わらない現状の横で新基地建設が進む、それは基地があるかぎり続くリスクの建設でもある。・

デニー知事誕生には皆カチャーシーで喜んだ。それでも小さな穴をこじ開けるように、琉球の島々に今度は自衛隊基地が次々と建設された。住民への説明も十分ないまま、開かされていない施設が増え、Jアラートが嗚るたび機能強化が議論された。原因不明の首里城の消失は、私たちが日本になる以前の歴史を確認させる機会となった。(中略)

2022年は「復帰」50年の年だった。日本に武力併合され戦場にされ、日本の独立のためにアメリカヘの質草にされた沖縄が再び「祖国」日本へ「復帰」して半泄紀。「復帰」で日本国憲法の下に入り米軍基地を撒去したかった沖縄、しかし「復帰」によりヤマトにあった米軍甚地が沖縄に移転され、「復帰」前にはなかった自衛隊基地がやってきた。(以下略)

コメント:以下の星浩の論文にも沖縄の記述があります。


「ほろびゆく日本、再生への道」安倍派構造腐敗が招く岸田政権の終焉 星浩から

…自民党は1955年の結党以来多くの危機に直面しながらも、それを乗り越えてきた。私は3つのぺースチェンジと呼んでいる。まず歴史から振り返ってみよう。

・自民党「お家芸」のペースチェンジ
第一の危機は1960年の日米安全保障条約改定をめぐる混乱である。岸信介首相が安保条約の国会承認を強行しようとしたのに対し、学生らが国会周辺で大規模な反対デモを繰り広げた。太平洋戦争での敗戦から15年。日本国内では日米安保の強化で日本が戦争に巻き込まれるという不安が強かったのだが、岸首相は十分な説明を行わなかった。デモに参加した女子学生が死亡する事態となったが、岸首相は強硬姿勢を変えず、改正条約が成立した。政権への批判は収まらず、岸首相は辞任。自民党は後継の総裁・首相に池田勇人氏を選んだ。

池田氏は大蔵官僚出身で、ハト派を自認。同志を募って、派閥「宏池会」を結成していた。首相就任後は「寛容と忍耐」をキャッチフレーズとして、サラリーマンの収入を10年で二倍に増やす「所得倍増論」も打ち上げた。タカ派で強権的とみられた岸路線を転換し、政策目標を「安保」から「経済」に切り替えた。池田政権の支持率は急上昇。自民党支持も高まった。まさに「ペースチェンジ」が自民党を救ったのである。

第二のペースチェンジは1974年。たたき上げの田中角栄氏は蔵相、自民党幹事長などを経て首相に駆け上り、「今太閤」と持ち上げられた。しかし、首相在任中に金権批判が強まり、退陣。後継をめぐって自民党内の暗闘が続いたが、最終的に選ばれたのは「クリーン」を標榜する三木武夫氏だった。三木氏が政治資金で清廉だったかどうかについては異論もあるが、クリーンを売りにしていたことは、間違いない。その三木氏の登場で自民党はイメージチェンジに成功し、危機を逃れた。

第三は2001年。当時の森喜朗首相は世論の批判にさらされていた。2000年四月に当時の小渕恵三首相が病気で倒れた後、自民党の幹部ら五人が密室で協議し、幹事長だった森氏を後継首相に推して、森政権を誕生させた。

「五人組の謀議」で生まれたという点が批判されていた。森首相自身の失言も続いて内閣支持率は低迷した。森氏は幹事長や総務会長などを歴任、派閥の領袖でもあり、典型的な自民党の「ポス」だった。夏の参院選を控えて、自民党内では「森首相では選挙が戦えない」という声が強まり、森首相は退陣。後継の総裁・首相には小泉純一郎氏が選ばれた。小泉氏は「私の改革に抵抗するなら自民党をぶっ壊す」と叫んで、世論の喝采を浴びた。自民党は息を吹き返し、参院選で勝利した。

小泉氏は一貰して自民党の福田派・森派に所属。理念や政策は森氏と変わらないのに、「ぶっ壊す」発言で自民党が大きく変わるかのような印象を与えたのである。

・岸田政権でのペースチェンジは?
岸田首相の登場は「第四のペースチェンジ」のようにも見えた。岸田氏は自民党総裁選で河野太郎、高市早苗、野田聖子各氏を破って当選。首相に就任した。宏池会出身の首相誕生は宮澤喜一氏以来、約30年ぶりだった。だが、 自民党政治の「ペースチェンジ」は起きなかった。それどころか、岸田首相は安倍氏の路線に追従する姿勢を示し続けた。その典型が「国葬」問題だった。(中略)

安倍派内からは「国葬」を求める声が相次いだ。国葬には法的根拠が乏しかった。明治の元煎らの国葬の根拠となっていた「国葬令」は現行憲法の施行とともに、1947年に廃止され、その後は国葬を規定する法律はない。(中略)

岸田首相が株式の配当課税(現行は約二割の分離課税)強化を検討していると報じられると、東京証券取引所の株価が急落。これにおののいた岸田首相は金融所得課税の見直しを断念し、「新しい賓本主義」は中身の乏しいものとなっていく。

財政再建をめぐっては、こんな出来事もあった。岸田政権が発足した直後の「文芸春秋」で、 当時の矢野康治財務事務次官が財政再建を求める論文を発表。「人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む」と訴えた。矢野氏は「国民は本当にバラマキを求めているのでしょうか。日本人は決してそんなに愚かではないと私は思います」とも述べている。

これに対して、安倍氏やアペノミクスを支持するグループが反発。岸田首相は表向き、静観した。ところが、水面下では首相官邸のスタッフが、岸田氏の意向を受けて矢野氏と接触、事務次官の辞表を出すよう迫ったという。最終的には、麻生太郎前副総理・財務相らの仲介で辞任には至らなかったが、岸田首相が安倍氏らの意向を受けて財政再建を唱える矢野氏を交代させようとしたことが分かる。(中略)

積み上がった国債の利払いなどに充てる「国債費」は約27兆円に達している。「借金返済のために新たに借金を重ねる」という財政構造が顕著になっている。宏池会伝統の財政規律の精神は、岸田氏には引き継がれていないようだ。

・安保法制強行採決を支持
財政規律とともに従来の宏池会が掲げてきたのが「護憲」「軽武装・経済重視」の姿勢だった。岸田氏は2012年に発足した第二次安倍政権で外相に就任。安倍首相は持論である集団的自衛権の一部容認に向けた憲法解釈の変更とそれに基づく安全保障法制の整備に向けて突き進んだ。2014年七月には、集団的自衛権の一部を容認する政府見解が閣議決定された。

「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に限って、集団的自衛権の行使が許されるとした。存立の危機につながると判断されるなら、自衛隊は外国軍に対しても武力行使ができるという考え方である。戦後憲法の下で、海外での武力行使を厳格に禁じてきた日本の外交?安全保障にとって大きな転換だった。(中略)

・米国追従で膨張する防衛費
…一連の防衛費増額は、ウクライナヘの軍事・経済支援と中国への抑止力強化を進めるバイデン米大統領の要請にこたえるものだ。日本は憲法の枠内で「専守防衛」の基本姿勢を維持し、アジア諸国に対しても、太平洋戦争への反省から「平和国家」の理念に基づく経済協力を進めてきた。岸田首相はそうした安全保障政策を大きく転換させたが、その理念や経緯、将来展望などについて十分な説明はなされていない。

こんな出来事があった。2023年八月、岸田首相は、バスケットボール男子のワールドカップの試合を観戦するために沖縄を訪問。翌日は火災から復元作業中の首里城を視察し、観光振興などについて地元の関係者と懇談した。しかし、防衛費増額に伴ってミサイル配備などが強化される関連自治体などを訪れることはなかった。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対している玉城デニー知事らとの会談もなかった。同年12月には、沖縄県が辺野古周辺の軟弱地盤を埋め立てる工事に反対する中で、国は設計変更を県に代わって承認する「代執行」に踏み切った。基地負担に苦しむ沖縄の人々に寄り添う姿勢は見られない。(以下略)

コメント:我々は自民党や岸田政権を批判する前に、まず自民党が何をやってきたかを学ぶ必要がある。悪夢のような安倍政治の負の置き土産を確認するとともに、岸田がその後を継いで、何をして来たか(もしくはして来なかったか)を検証しなければ、今後の日本の政治の姿など到底想定は出来ないからである。


「安倍政治の罪と罰」ツケを払うのは誰か? 上野千鶴子から

タイトルを「安倍政治の功と罪」にしようかと思ったが、「功」を思いつくことができなかったので「罪と罰」とした。罪を犯した「天罰」を安倍元首相が不慮の死で受けた、と言いたいのではない。安倍長期政権を維持した罪で、その罰を今日受けているのはわれわれ国民である。

安倍政治とは何だったのか?それを検証するに足る時問が経過したと思う。その帰結が次々に目の前に「見える化」してきたからである。

・臭いもののフタがはずれた
すべては安倍晋三元首相の死から始まった。

安倍氏の死は、あってはならないテロだったが、それ以来、いろんな臭いもののフタがはずれた。歴史のifはないが、もし安倍氏が存命で、かつ自民党最大派閥の数を恃みに、キングメーカーとして公然?隠然の力をふるっていたとしたら…。その後の展開は起きなかっただろう。

臭いもののフタのひとつが開いてわかったのは、自民党と旧統一教会との深い因縁だった。選択的夫婦別姓という誰も合理的な理由では反対しようのない制度が、1996年の法制審議会の答申以来、たびかさなる国連からの勧告にもかかわらず、いつまで経っても実現しない背後に、宗教保守という「不合理な集団」があることが暴露された。国家と家族の価値を守りたいという宗教保守の抵抗は、推進派が考えるよりずっと根深いものだった。不合理な理由で反対する人々を合理的な理由で説得することはできない。しかもこの不合理な人々の集団は、強力な資金力と動員力を持っていた。その資金力と動員力に、保守系政治家の多くが依存していたことが明らかになったのだ。

もうひとつ自民党安倍派に大激震が走ったのは、裏金問題である。パーティ券が政治資金稼ぎに使われていることはいわば公然の秘密だった。しかも一枚数万円もするパーティ券を企業や業界団体が何十枚もまとめて購入していることも知られていた。ノルマ以上に売り上げた分にキックバックがあったこと、それが政治活動の収支報告に記載されていないこと、つまりゆくえが把握できない裏金づくりは脱法行為だが、それも長年の慣行が続いてきた。新人議員にも派閥トップから指示があったという。すでに政治家の一部は、秘書がやったことで自分は関知していない、と見苦しい言い訳を始めた。額面の大小が言われているが、 江東区長選挙をめぐって逮捕された柿沢未途衆議院議貝は、260万の贈賄で逮捕された。安倍派に限らず、クリーンな政治家など、自民党にいるのだろうか。

安倍氏の人事への介入は、内閣法制局長官から、日銀総裁、NHK会長にまで及んだ。官邸が人事を掌握しようという動きは、続く菅政権での日本学術会議の会員人事にも及んだ。「まさか、ここまでやるか」というこの介入は、菅義偉氏が安倍政権の官房長官だった時からすでに胚胎していた。もし安倍氏在任中にその指示のもとに黒川弘務検事総長の人事が成立していたとしたら…。各地から100人の検事を招集したという今回の態勢はとれなかったに違いない。それだけではない。安倍氏への付度がなかったら、伊藤詩織さんが性暴力被害を告発した山口敬之氏に対する逮捕が直前に中止されることもなかっただろうし、森友学園の疑惑で公文書改窟に追いつめられた赤木俊夫さんが自殺することもなかっただろうし、加計学園獣医学部の認可問題がうやむやにされることもなかっただろうし、「桜を見る会」の招待客リストが公選法違反の罪に問われていたかもしれない。

安倍氏の死後に明らかになった東京五輪疑獄で、司直の手は元電通役員の逸見晃治氏や大会運営局元次長、森泰夫氏の逮捕までには伸びたが、組織委貝会トップの元総理大臣、森喜朗氏にまでは及ばなかった。裏金問題では、その森氏にも司直の手は伸びるだろうか。最近になって検察の「付度」が問題になった大川原化工機事件も、安倍政権下で起きた事件である。無辜の被告が勾留中に医療につながることができず、死亡した。安倍政権は、死者を生んでいるのだ。

もし安倍氏の死がなかったら…今でも多くのことが闇に葬られたままだっただろう。

数え上げればきりがない。国債を発行し続けて日本の借金を1000兆円超までに増やすこともなかっただろうし、規制緩和で非正規雇用者をこれだけ増やすこともなかっただろう。あたかも福島の災厄がなかったかのようにエネルギー政策が旧に復しただけでなく、老朽原発の運転期間をさらに再延長することもなかっただろう。官僚がこれほど付度することも、萎縮することもなかっただろう。NHK が政見放送に成り下がることもなかっただろうし、メディアが翼賛することもなかっただろう。安倍氏は首相になる以前から「慰安婦」問題をめぐるNHKETV2001「女性国際戦犯法廷」特集番組に政治介入した過去がある。また小泉政権の官房長官に就任する直前には、自民党「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト・チーム」の座長(事務局長は山谷えり子)として、男女同室着替えなど、事実にもとづかない伝聞情報を収集・拡散した人物である。トランプ前大統領にさきがけて「フェイク・ニュース」を垂れ流した実績がある。(以下略)

コメント:安倍の負の遺産のおさらい。上野女史の舌鋒には適うまい。こういう人を、おひとりさまで亡くしてはならない。



2472.働く高齢者 2.12

今回は少し毛色の違うオピニオンです。キーワードは高齢者です。

雑誌世界3月号

「交通誘導員という社会の縮図」柏耕一から

・交通誘導員とは

―はじめに交通誘導員の仕事内容を簡単にご紹介いただけますか。

柏 警備員の一種で、ビルの駐車場やイベント会場、工事現場などでトラプル、事故が起こらないよう、自動車や歩行者の誘導をする仕事です。重いものを運ぶような力仕事ではありませんが、長時間立ちっぱなしだったり、トイレに行けないこともある、肉体労働ですね。

交通誘導員は、お巡りさんなんかがやる交通整理とは違って、権限を持って指示を出すものではなく、あくまで相手に協力をお願いする立場です。だから、判断力や交通ルールの知識もさることながら、コミュニケーション力が大事なんです。「すみませんけど迂回してください」と言えば、急いでカリカリしてるドライバーなら文句の一つも言いたくなる。そこで「おっしゃることはわかりますが、今回限りはご協力お願いします」と、低姿勢に、なるべくカドが立たないように伝えるわけです。腹が立っても「バカ野郎!」 なんて口にしたらたちまちクレーム、トラブルになりますよ。

私はよく交通誘導員の世界は社会の縮図と言うんですが、年齢も前職も違ういろんな人が集まる現場ですから、あつれきも当然ある。ドライバーや近隣住民だけじゃなく、現場の作業員、親方、監督たちともコミュニケーションをとって、なるべく皆が気持ちよく助けるようにする。それから、とにかくトラプルで作業を止めないようにするのが務めです。私は下手だけど、「帰れ!」と言われたことはまだありません。一度怒って帰っちゃったことならあるけど(笑)。

―65歳で生活の必要から交通誘導員になられたとのことですが、他に検討されたお仕事はありますか.

柏 いや、60過ぎるともうないですね。求人で多いのは清掃か介護ですが、私には交通誘導員のほうがとっつきやすかった。運転免許があれば、配逹等、車を使った仕事ができたのでしょうけど、私は50代の時に更新忘れで免許を失効して、それきりになってまして。そうするとやれることは限られてくるでしょう。

すぐに働ける仕事だと、交通誘導員は必要なら日給でもらえるところもあるし、週給、月給と選べるし。高齢者でもできるんです。いま私がアルバイトでいる会社は八割が70歳以上の高齢者で、中には80以上の人もいます。

本当に切羽詰まった人がいたら、交通誘導員ならすぐお金になります。ちゃんとした警備会社なら訓練もしっかりやってくれるし。そういう意味ではある種、職業的なセーフティネットになっていると思います。日本語がたどたどしかったり、風体があまりにむさ苦しいといったことがない限りは誰でも採用してもらえるでしょう。

―現在、月にどのくらいの頻度で現場に行かれるのでしょうか。

柏 だいたい月に20日くらい。私は本も書きたいし、出版業界との縁も切りたくないから、執筆でどうしても時間とりたいっていうときには、半月くらい休ませてもらうこともある。そうやって多少、融通を利かせたいんです。

だから私なんかは、行くと毎回違う現場で、違う人たちと会うことが多いわけです。でもそういうのが嫌で、警備員ずっとやって、月25日でも出られますという人は、たとえば建築関係の現場だと、施工前から完成するまで、三、四カ月固定で入れるから、そういうところを希望すればいい。人付き合いのストレスを軽減しようと思えば、そういうこともできます。
(中略)

―年金は受給なさっていますか?

柏 私は少なくて、ふた月で六万足らずです。

―生活はいかがでしょうか。

柏 女房は月にパートで10万くらい稼いで、それに年金も多少ありますが、それを合わせても、とても文化的な生活というレベルではないような気がしますね(笑)。病気で同居してる子どももいるから、その食い扶持もなんとかしないといけない。女房は「今はかつかつで食べていけるけど、あんた死んだら私たちどうするの」と言ってきます。「死ぬまでになんとかしてよ」と。

まあ、生きているあいだに、なんとか算段しようと思っていますが、そうは言っても、私ももうすぐ78です。 二年前に軽い脳梗塞をやって、歩くのが倍くらい遅くなってしまったし、やっぱり疲れるわけです。そういうこともあって、交通誘導員はがんばってあと二年、80まででしょう。

―お若い頃に、古稀を過ぎても働き続けることになると想定されていましたか?

柏 40、50くらいまでは、そんな先のことは考えてませんでした。やっばりね、老後を楽にしようと思えば、蟻とキリギリスじゃないけれども、蟻さんみたいにコッコツと、若い時から計画を立てて、金を貯めるなり堅い投資をするなり、そういうことを考えていないとダメですね。私はそういう発想がまったくなくて、収入があると、バンバン使っちゃう。
(以下略)

コメント:高齢者=富裕層または悠々自適ではなく、働かないと生活できない人の方が遥かに多い。この現状を若者を含めた、もっと多くの人に知って欲しい。


片山善博の「日本を診る」、大災害にどう備え、どう向き合うか、から

元日の能登半島地震である。災害はいつくるかわからないと言うが、久しぶりの一家団欒の場が一転して多くの人命を奪うとは、誰が予想しただろう。ただただ、亡くなった方のご冥福を祈り、被災された方々が一日も早く平穏な日常を取り戻されることを願うのみである。

被災自治体は今、困難を抱えながら復旧に全力で当たっている。かくいう筆者も鳥取県で知事を務めていた時、マグニチュード7.3、最大震度6強の鳥取県西部地震に見舞われ、その復旧、復興に取り組んだ経験を持つ。

その時の地震でも被災者の多くは高齢者だった。住む家を失った被災者の多くは絶望し、不安を募らせていた。もとよりその地を離れるのは本意ではない。避難所の高齢者は、今さら都会の息子や娘のところなど行きたくない、みんなで支え合ってきたこの集落で一生暮らしたい、でも家がこんなありさまではどうすることもできない、もう出ていくしかないと涙ぐんでいた。

この災害の復旧と復興を進める上で最も重要なことは一目瞭然だった。それは、被災された方々の絶望を少しでも希望に変え、不安を解消し安心して暮らせるようにするにはどうすればいいかという視点である。

同じ地震災害でも状況は一様でない。ーつの体験が他の地域にも妥当するというつもりはない。ただ、被災者を中心に据えて復旧と復興に当たったことは決して問迩っていなかったと、ふり返ってみて確信している。

それも含めて、災害の発生に備えた事前準備、いざ地震に遭遇した際の対応、その後の復旧と復興に携わった体験を通じて、他の地域の参考になると思われることを記しておきたい。

・平時に着実な準備を

災害に対処するには事前の準備が大切である。準備したからといって、災害を避けることはできない。地震も台風も一方的に襲ってくる。ただ、事前に的確に準備しておくことで被害を小さく抑えることはできる。

筆者は1999年四月に鳥取県知事に就任した際、その四年前の阪神淡路大煤災の印象が強く、もしあのような大地震が起きた時にどうすればいいかを考えざるを得なかった。そこで、知事就任早々その準備に取り掛かった。

手始めに幹部全員で地域防災計画の確認作業をしてみると、首を傾げる記述が随所に見られた。例えば、避難所への食料提供は「国から精米を調達して送る」とある。でも、電気もガスも水道も止まった避難所に精米が届いてどうするのか。そこで計画を見直し、弁当・仕出し業組合と協定を結び、県の要請に基づき必要な数の弁当を作ってもらい、それをヘリコプターで現地に運ぶことにした。

備蓄品では阪神淡路大震災の教訓を踏まえてビニールシートなどを加えた。また、水道が止まった避難所ではトイレが使用できないので、県建設業協会と相談し、業者の工事現場用仮設トイレを優先的に回してもらう手筈を整えた。

こうした見直しは、実際の地震発生時には大いに役立った。のみならず、幹部が計画の点検作業を通じて県の役割を会得していたので、地震発生直後から速やかに初動体制に入ることができた。

点検は一度やればそれで済むものではない。相次ぐ各地の災害から得られる貴重な教訓を逐次共有するためにも、また、幹部の人事異動による機動力の低下を防ぐためにも、例えば毎年定期的に実施することが求められる。

防災訓練も重要である。年中行事化していないか。毎年同じシナリオで原稿を読み合う儀式になっていないか。筆者が知事に就任する前の烏取県の防災訓練では、知事が「自衛隊出動要請状」を卒業証書授与式の如く恭しく自術隊に手渡す場面が設けられていた。

災害時には、やるべきことを速やかに判断しなければならない。その職責を担うのは幹部である。その幹部が原稿を読み、儀式を演じる訓練では、本番では何の役にも立たない。幹部が頭を使って考える訓練に変える必要がある。

・災害復旧と復興には現場主義

復旧と復興については国がそれなりに手厚い支援制度を用意している。ところが、被災地の現場で求められる施策は多様であり、それらは往々にして国の制度の対象にならないことが多い。

そんな時、自治体は国の制度に該当する施策に限り実施する傾向が見られるが、それでは当事者が必要とするものとの間に乖離が生じる。国の支援で巨費を投じたものの、ピント外れでムダ遣いだったということは多い。

それを封じるのが現場主義である。国の制度の有無にかかわらず、現場で必要なことを実施する姿勢である。鳥取県西部地震の際にそれを実践したのが住宅再建支援策である。先の「もう出ていくしかない」と涙ぐんでいた被災者の絶望を癒し、不安を解消する処方箋は、地域に住み続けることができるようにすることであり、それが住宅再建支援策だった。自宅が全壊した被災者が住宅を再建する楊合には300万円支給することとした。

住宅再建支援策には国の財政措置がなかったので、すべて鳥取県の財源で賄うことにした。ところが、国は一銭も出さないのに、「それはできない、させない」と横槍を入れてきた。公共のために徴収した税金を住宅という私的な資産のために使うのはまかりならんというのである。憲法違反だ、財政法違反だという高官もいた。

ならば、憲法と財政法の何条に違反するのかと問い返したところで彼らの言い分は破綻したのだが、それでもあれこれ難癖をつけ、住宅再建支援策を実施させないように画策した。

なぜ、それほどこだわるのか。霞が関の内部から得た情報では、阪神淡賂大震災の時、被災地から住宅再建支援の要請があったが、「憲法に抵触する」との理屈で斥けていた。ところが、ここに至って鳥取県がそれを実施すると、その理屈のまやかしが明らかになるから、実施してもらっては困るというのが真相のようだった。

官僚たちが困る事情は多少理解するが、被災者が住む所を失って困っていることの方がよほど深刻である。こんな 経緯でできあがった住宅再建支援が功を奏し、住む所を失ったことが原因で地域を去った人は一人もいなかった。また、地域のコミュニティが守られたことで、孤独死や自死は一人も出なかった。国の圧力に負けず現場主義を貫いたことの成果だと思う。

島取県が実施した住宅再建支援策は、様々な議論と種々なる経緯の後にほぼそのままの内容で国の施策として制度化された。(以下略)

コメント:被災者の立場で考える。それが正論でしょう。「絶望を少しでも希望に変え、不安を解消する」、そこに支援の精神の原点があります。



2473.独裁者と民衆 2.13

今回の前書きは朝日新聞(2.12)の国際社説です。

序破急「ロシア大統領選 茶番の構図」駒木明義から

「まあ、そうなるよね」という感想しか浮かばない。

来月行われるロシアの大統領選で、ウクライナ侵攻に批判的な候補として注目されたボリス・ナジェージュジン氏の立侯補登録を中央選管が拒否した。届け出に必要な有権者の署名に不備があったことが理由とされた。

十分に予期された事態だ。先月21日に 朝日新聞デジタルが署名集めについて報じた際、私はコメントプラス欄に次のように書き込んだ。

「10万人の署名を集めたとしても『署名に不備があった』などの理由で政権が立候補を阻止することは簡単です。(中略)立候補できるかどうかは、政権の胸三寸です」

25日には、政権に批判的な独立系メディアが興味深い内幕を報道していた。ナジェージュジン氏は事前に旧知の大統領府高官と立候補について調整を終えていたが、その後のナジェージュジン氏の厳しいウクライナ侵攻批判が許容限度を超えたため、大統領府は立侯補を認めない方針に転じた、というのだ。

実際、もっとおとなしくしていれば、立候補が実現していた可能性は大いにある。「反政権派も立侯補した公正な選挙でプーチン大統領が圧勝した」という筋書きを演出するのに役立つからだ。

6年前の前回大統領選でその役割を担った(担わされた)のが、ジャーナリストのサプチャク氏だった。サンクトペテルブルク市の故サプチャク元市長の娘だ。知名度は高いが得票は2%足らずで、リベラル系侯補の不人気を可視化するという政権の狙いが実現した。

結局、来月の大統領選はプーチン氏と「体制内野党」と呼ばれる下院に議席を持つ3党それぞれの侯補、計4人の争いとなる。全員が侵攻を支持し、欧米の制裁対象だ。茶番である。

昨年9月のモスクワ市長選は、これと近い構図で行われた。プーチン氏側近の現職とくだんの3党の侯補プラス1人。

結果は、現職のソビャーニン氏が76% の得票で圧勝した。

これは、大統領選の予行演習という位置づけだったのではなかろうか。リベラルな有権者が多いモスクワでこれなら、本番ではプーチン氏が目指しているとささやかれる80%超の得票は堅そうだ。

コメント:そもそもで言えば、プーチンは政敵を暗殺することをためらわない人物である。野党党首は、言いがかりで逮捕され、有罪判決を受け、あまつさえ獄中で毒を盛られた。一命はとりとめたが、顔に醜い跡が残った。しかもそれ以外にも、政府を批判したジャーナリストが『何十人』も、不慮の事故で殺されている。国家の私物化の最悪・最大の例であり、これに近いのが、イスラエルのネタニヤフ、トルコのエルドアン、米国のトランプだ。プーチンと彼らの違いは、欲が深いだけではなく、悪知恵が働くこと、良く言えば頭が切れることだ。なお同じ独裁政治家でも、習近平は、この4人よりは、道徳観も志も高いように思われる。日本では言うまでもなく自民党、中でも安倍晋三が、私欲の為に法を曲げようとした、独裁政治の最悪の例だろう。野党で言えば、野田佳彦にも愚鈍な独裁者の雰囲気がある。

しかしロシア(や米国)の国民も国民だ。よくもそこまで為政者にだまされ、プーチン神輿を担げるものだ。こうしてみると、ポピュリズムは人気取りと訳されるが、民主主義と呼べるような代物ではないことが、よくわかる。言い方を変えると、米露の国民は、馬泥棒は吊るせと叫ぶ暴徒の群れと同じ程度の知性しかないということになる。しかも現代の日本のTVの報道番組を見れば、米露と大差無いことが分かる。有識者気取りの若手論客が、論理破綻の屁理屈を振り回す。ということは、大衆は彼ら以下だということだ。ところが、熟慮の票でも、愚かな票と同じ一票の価値しかない。それが現実だ。どうすれば、熟慮の票の数を増やせるのか。我々はその方法を考えなければならない。

僅かに断言できることは、愚かな国民と、欲の深い独裁者の組み合わせで実現する国家や社会は、決して住みやすくも、国民の為になる国家でもないということだ。貧富の格差は一掃拡大し、若者がトップの都合で戦争に駆り出される。その国には人権もなければ人道もない。無論公平な裁判もないし、何より憲法は有名無実になる。清潔で民主的で安全で平等な国とは、間違っても言えないような、得体の知れない真っ黒な何かが、全体主義の衣をまとって、ぬっと立ち上がる。そして政権は権力層の利権を求めて、他国との戦争にのめり込む。そこでは話し合いも、協議も、協調もなく、力だけが正義だ。

暗黒の21世紀が幕を開ける。そこでは2000年掛かって人類が積み上げた叡智も社会正義も、論理も哲学も通用しない。ノストラダムスでなくても、そこでは魔界の使者たちが、世界を血で血を洗う戦いを繰り広げることくらい、容易に予言できる。しかもそこではついに核が再び使われるだろう。天の怒りで人類が一掃されるまでもない。放っておけば、人類は自分で自滅する。まさか自分がそんな時代を生きることになろうとは、夢にも思わなかった。

そしてここからがwtwの予言である。独裁者たちが群雄割拠するような不平等な世界に、人間性を備えた人類が、そう長い間耐えることはできない。そしていつか怒りが爆発する。そこで起きるのは、必然的に『革命』であり、ルネッサンス2.0だ。せめてそれが平和的な革命であることを願うにしても、革命の必然性からは誰も逃れることは出来ないと思われる。その時が来たら、集まれ憂国の士、有意の人材よ。人間本位の世界を再構築すために、共に立ち上がろう。非人道的な殺戮は、ウクライナとガザだけで十分だ。これ以上人を殺させてはならない。独裁者の身勝手な理屈や、個人的な都合の為に。

関連記事:トランプの発言に、西側から批判噴出。
https://jp.reuters.com/world/security/FOESDRELNJOMRGDBCW5PNJYFJ4-2024-02-12/
関連記事:共和党からも批判。
https://jp.reuters.com/world/us/MYICCE7E5NJHZEEWFEQYCXN7BE-2024-02-12/



2474.ヒロシです 2.14

私は現役を退いてから、宴会の機会も無くなり、従って急に余興を要求されることもなくなりました。でももし読者諸兄がそんな場合に直面したら、一ついい方法があります。それは以下の言葉をメモしておいて、(残念ながらイタリー語です)祝詞のようにとなえることです。

Che vuole questa musica stasera,
(ケ ヴォーレ クエスタ ムージカ スタセーラ)
意味:この音楽はどうしたいのか。

Che mi riporta un poco nel passato?
(ケ ミ リポルタ ウン ポコ ネル パッサート)
意味:私に少し前の事を思い出させたいのか。

その後で、立ったままうつむき加減に、最近の失敗談を語ります。例えば、
「流行りの電動スケーターに乗ってみました。デモちっとも前に進みません。よく見たら近所の子どものスケーターでした…」。

そして最後にこう付け足します。
「ヒロシです、ヒロシです…」。



2475.扇動者 2.15

今回の前書きは安田浩一の、朝日新聞のインタビューです。シリアで拘束されたのは、同じ安田でも純平です。

朝日新聞(2.14)耕論 「扇動に備える」
「差別助長する中立風態度」安田浩一 ジャーナリストから

人々をそそのかして動かそうとする行為が扇動です。在日コリアンやアイヌ民族らに関して差別的な発言を繰り返し、法務省から人権侵犯を認定された自民党の杉田水脈衆院議員が 「扇動者」とみられるのは、当然と言えるでしょう。

ただ重大なのは、何ら処分もせぬまま放置している自民党の責任です。在日コリアンなどへの差別や差別の歴史に対し、明確な批判の姿勢を示さなければ、結果的に差別者を勢いづか せ、人権を侵害する行為につながるからです。

先日、群馬県が県立公園内の朝鮮人追悼碑を撤去しました。関東大震災で虐殺された朝鮮人艤牲者に対しては、東京都の小池百合子知事が7年連続で追悼文を送りませんでした。

どちらもその理由として、公益性や政治的中立があげられています。でも、差別への態度に政治的中立などありません。

2017年に米国バージニア州のシャーロッツビルで、人種差別に抗議するデモヘ白人至上主義者が車で突入し、死揚者が出ました。当時のトランプ大統領は「双方に非がある」との態度でしたが、州知事は白人至上主義者に対し「恥を知れ。あなたたちの居場所はバージニア州にはない」と明確に批判しました。どのような思想信条を持っていようと、これが政治家や首長がはっきりと言わなければいけない言葉です。

以前、講演に行ったある大学で学生に「安田さんって人権方面の方ですよね?」と聞かれました。「人権方面」という微妙な言葉遣いの向こう側には、日本社会の寒々しい空気を感じ ざるを得ません。

人権を迫害される人たちの立場で調べ報道する人間が、何か特別な「方面」に集まる、あまり関わらないほうがいい偏った人たち、とみなされているのです。

彼らに、ヘイトデモの様子や沖縄の辺野古基地建設現場の座り込みなどの映像を見せると、「怖い」と言うんです。ヘイトでの激しい言葉遣いや国家権力の暴力が怖いのではなく、人々 が争う姿が怖いから見たくない。その感覚からは当然、人権侵害と闘うジャーナリストは、特定の揚所に集まる怖い人になる。

私は、差別に対して、中立風にふるまう国や政治家の態度が、彼らに影轡を与えていると思います。「差別反対」を特別なことと遠ざける、社会の空気を醸成しているのです。それは結 果として、静かなる扇動と違わないという認識が必要です。(聞き手・中島鉄郎)

コメント:人権方面のwtwです。小池百合子、山本一太(群馬県知事)はヘイトを間接的に容認しているようなものです。しかも二人とも戦争を知らない。印象で騙されてはなりません。本質はほぼ極右です。但し小池はおそらく国会議員にはならないでしょう。なぜなら女性候補なら上川が有力なうえに、右翼候補では高市がいるからです。但し、岸田が推せば、話は変わって来る(麻生は上川を推す)かもしれません。但し、知名度とキャラの濃さでは、上川も、高市も、小渕も、到底小池の敵ではありません。

・トランプは悪意のある指導者。
https://digital.asahi.com/articles/ASS2F4K88S29UPQJ00H.html?iref=comtop_International_05
コメント:米国の扇動者。



2476.脱成長幻想 2.17

今回の前書きは朝日新聞(2.16)耕論、経済大国日本、その先は、です。

「脱・成長幻想で幸せ実現を」水野和夫、経済学者から

日本のGDPの水準低下は、短期的には円安の影響ですが、もっと根深い原因があります。ドイツの人口は、日本の約3分の2。しかも、平均労働時間は2割ほど短い。要は日本の労働生産性が低いということですが、それは、付加価値に結びつかない仕事が多すぎるからです。必要性が不明な会議の資料作りとか。

1人当たりのGDPを高めたいなら、最も簡単な方法は、フルタイムで働いていない労働者を減らすことです。いわゆる「年収の壁」を取り除けば、非効率な就業調整はなくなります。

ただ、私はGDP幻想、つまり成長幻想から、もう脱すべきだと思っています。

資本主義は利潤の極大化を目指します。この運動は際限がない。それでも肯定されるのは、国民生活を豊かにすると思われたからです。成長すれば生活水準も上がる、と。でも、そんな時代は終わりました。成長はあくまでも手段のはずなのに、資本の暴走は止まらず、再分配の仕組みは故障し、今や世界の上位1%の、富裕層が個人資産の4割を握っている。民主主義も後退し、環境破壊が進み…と、矛盾だらけです。

もはや、この「ゲーム」から降りるべきです。といっても、社会主義に転換しろということではない。私が考えているのは、私企業や市揚や自由貿易は維持するが、利潤の最大化を目指さなくてもよいのでは、という世界です。

「それでは日本だけが世界で貧しくなる」と心配でしょうが、いずれ欧米や中国も、「ゼロ成長」の日本の後を追うことになるでしょう。英国の思想家ミルも、経済成長は最終的に「定常状態」になるとしています。日本は急速に老いましたが、他の先進国は今は移民によって生産人口を維持しているだけです。

消費者も、毎年モデルチェンジされるスマホの性能に、ほとんど違いがないことに気付いている。成長の限界は明らかで、経済大国であれば国民が豊かで幸福だ、というのは幻想です。

経済の目的は本来、明日のことを心配しなくてもよい社会をつくること。それには働く人の権利を守り、社会保障を充実させることが必要です。育児休業の取得促進も「年収の壁」撤廃も女性活躍も本来、GDPを上げるためではなく、働きやすい環境づくりが目的でなければならない。それは成長至上主義からは決して生まれてこない。政治と国民の力で実現するしかないのです。(聞き手・石川智也)

コメント:水野氏は私が最も尊敬する経済学者の一人です。著書も多数あるので、是非一度書店で手に取ってみて下さい。



2477.メメント・モリ 2.18

今回の前書きはスティーブ・ジョブスのスピーチからです。主題のメメント・モリ(memento mori)という言葉は、私はヨシタケシンスケの本で知りました。我流に意訳すれば「忘れるな、人間は死を免れぬ存在なのだ」となります。ちなみに、NHKBSの番組、ヒューマニエンスの画面に登場する棺桶の中にも、この言葉が書かれています。あまり良い趣味とは言えませんが。

(以下引用)
故スティーブ・ジョブズ氏が2005年の米スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは、現代のメメント・モリの解釈において重要なものとなっている。同氏は次のように述べている。
「自分はまもなく死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役立つのです。なぜなら、永遠の希望やプライド、失敗する不安……これらはほとんどすべて、死の前には何の意味もなさなくなるからです。本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安にとらわれない最良の方法です」。
このことからも分かるように、現代においてメメント・モリは、「避けることのできない死という未来があるからこそ今この瞬間を大切に生きることができる」という意味で捉えられている。
(引用終わり)

関連サイト:角川書店
https://yomeruba.com/feature/ehon/yoshitake-shinsuke/mementomori.html



2478.松鶴屋千とせ 2.19

今回はエンタメの話題です。

アフロヘアにサングラスの漫談家、松鶴家千とせは、2022年に84歳で亡くなりました。最後まで現役でしたが、昭和のセンスで、我々の世代にはなじみの深いものでした。今回は、故人を偲んで、彼の持ちネタを紹介したいと思います。深く考えるような内容ではありません。

夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘がなる

オレがむかし夕焼けだったころ
弟は小焼けだった

父さんが胸焼けで
母さんが霜やけだった
わかんねエだろうナ

信じられないだろうが
人間やる前
夕焼けやってた ワカルカナ?

オレがむかし
夕焼けだったころ

オレを見た子供が
「お父ちゃん!お空みて
お空が真赤に燃えてるよ」

そしたらオヤジが
「大丈夫だよ
いくら燃えたって

火災保埃に入ってンだから」
わかんねエだろうナ

からすと一緒に
帰りましょう

子供が帰ったあとからは
まるい大きなお月さま

オレがむかし満月だったころ
弟は三日月だった

母さんが臨月で
父さんが金欠だった
わかんねエだろうナ

信じられないだろうが
人間やる前
満月やってた ワカルカナ?

オレがむかし
満月だったころ

オレを見た毋さんが
「ねえ坊や大人になったら
あのお月さまのように

世間にいっぱい
灯りをつけるのよ」

そしたらセガレが
「ウン、大丈夫だよ

ポク懐中電灯もってるから」
わかんねエだろうナ

空にはキラキラ
金の星

コメント:わかんねエな。ラップなのか、オヤジギャグなのか。イエイ。



2479.ストと春闘 2.20

今回の前書きは朝日新聞(2.19)記者解説、ストなき賃上げ交渉からです。

「物価に見合う回答へ 問われる協調路線」

物価が上がるスピードに賃金が追いつかず、生活が苦しい人が目立っている。厚生労働省が2月6 日に発表した2023年分の毎月勤労統計調査(速報)は、物価を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年比2.5%減。20 年の水準を100とした指数でみると23年は97.1で下落傾向だ。

労働組合が連携して経営側と交渉する「春闘」は今月から本格的に始まった。労使とも賃上げの必要性ではおおむね一致しているが、上げ幅や規模などでは双方の主張に隔たりもある。

賃金が上がらない理由の1つとして指摘されてきたのが、賃上げを強く要求しようとしない労組側の姿勢だ。

春闘は1955年に始まった。

労組側が要求日や回答日をそろえることで経常側に全体的に圧力をかけて、交渉を有利に進めることが狙いだった。ストライキの日程も戦略的に組まれ、特に鉄道のストが春闘相場の形成に影響した。

かつては当たり前に行われていたストは激減している。厚生労働省によると、半日以上のスト件数は2022年は33件しかない。

ピークの1974年には5197件あった。70年代後半以降、労使の協調路線が定着するにつれて減少。バブル崩壊後、経営合理化を急ぐ会社の姿勢に抗しきれず、多くの労組は賃上げよりも雇用の確保を優先した。非正規労働者が増えるなか労組の組織率は下がり、大規模なストをできる状況ではなくなっている。

いまでは、一 度もストを経験したことのない組合員も珍しくない。

そもそも、ストとは労働者がまとまって働くことを拒否することだ。会社の営業や生産を妨害することで要求の実現をめざす。

本来、賃金などの条件は経営側と労働者が対等に交渉するものだが、労働者は一人ひとりでは力が弱く解雇されるリスクもある。立場が弱い労働者を守り交渉力を強化することは公益につながると考えられ、多くの先進国ではスト権が認められている。日本でも憲法28条で労働組合をつくる団結権、経営側との団体交渉権、ストなどを行う団体行動権の三権を労働基本権として認めている。

ストは会社に損害をもたらしかねないが、正当性があれば損害賠償を求められることはない。

例えば昨年8月末、大手百貨店そごう・西武の労組が東京・池袋の西武池袋本店でストをした背景には、親会社によるそごう?西武の株式売却の動きがあった。労組は親会社も含めて売却に関わる情報開示を求めていたが、親会社が交渉に応じなかったとしてストを計画した。執行部の判断でストが打てる態勢を組合員の9割以上の賛成で確立。会社に譲歩を迫ったが受け入れられず、労働協約にのっとって1日のストをした。西武池袋本店は全館休業となり数億円の売上が失われたと見られるが、会社側が損害賠償を求める動きは出ていない。(中略)

日本の労組の特徴は、ほとんどが企業別に組織されていることだ。労働条件は個別に労使が話し合い、同じ業界の中でも会社によって待遇の差がある。

米国では労組は主に自動車や運輸といった産業別に組織されている。日本の労組は企業の「内」にあるが、米国では「外」にあるようなイメージだ。ストをするかどうかは産業別労組が判断し、賃上げは全体的に波及しやすい。

物価高は米国でも深刻で賃上げを求める声は高まっていた。全米自動車労働組合(UAW)は昨年 9月、ゼネラル・モーターズ(G M)、フォード・モーター、クライスラーを傘下に持つステランティスの「ビッグ3」に、史上初の同時ストに踏み切った。日本ならトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの工場で同時にストが行われるようなものだ。

UAWは6週間にわたってストを実施。最終的に3社の組合員約15万人のうち約4 . 5万人が参加した。4年半で約25%の賃上げを獲得し、新しい労働協約を結ぶことで終結した。入社時期で賃金制度が異なることの解消や、物価上昇に応じて賃金を上げる制度の復活なども引き出した。

賃上げの動きはビッグ3以外にも波及した。トヨタは2024年1月に米国の工場従業員らの賃金を最大9%引き上げると決め、ホンダが11%、日産自動車が10%と続いた。韓国勢でも現代自動車が 28年までに25%引き上げる。

日本でも統一的な要求をする労組の産業別組織もあり、賃上げに向け連携を強めようとする動きは出ている。だが、米国のようにストを武器に経営側に強い姿勢で臨むような動きはあまり見られない。労使には従来の協調路線を維持すべきだとの意見がなお根強い。ストがなくても物価に見合う賃上げを実現できるのか。今年の春闘の結果が注目される。
(以下略)
(編集委員 沢治毅彦、NY支局 真海喬生)

コメント:ストが無いことに加えて、(毎回同じことを言いたくはないが)連合会長の、自分が何を代表しているのか分からない、異質な立ち居振る舞いも気になる。社会党の土井たか子が存命していたら、何と言うだろうか。このような体たらくなら、母体である総評と同盟を、そのままの形で残しておいた方が良かったのではないか。もう一度ストの原点に立ち戻り、その正当性と、意義を見つめ直すべきだ。そしてその根本は、個々の組合員の「意思表示」があることを忘れてはならない。




2480.能登地震の教訓 2.21

今回は防災特集です。題名の付け方には疑問がありますが、能登半島地震対応の反省です。
朝日新聞(2.20)耕論 国土は強靭化したのか


「力及ばず防災の新発想を」土木学会元会長 家田仁から
土木学会の特別調査団の一員として、さまざまな分野の専門家と石川県珠洲市や輪島市などを2月初めに訪れました。この国は「国土強靱化」をうたってきましたが、力及ばずだったことを痛感しました。複合災害に至っていることを半島の特殊性だと指摘する声もありますが、これは日本の地方における典型的な災害だと考えるべきです。

日本全体で人口も減り、財政も厳しくなるからこそ、この能登半島地震の災害を他山の石として、教訓を全国で生かさなければなりません。いつ日本中のどこにやって来てもおかしくない震災に備えるため、次のような点が重要です。

まず災害時に孤立集落が発生するリスクに目を向け、空路と陸路の一体的な物流体制を整えておくことです。ドローン(無人機)の開発も大切ですが、技術的な課題はまだまだ多い。具体的には、道路や鉄道が使えなくなった場合、民間、公共を問わず、比較的小型のヘリコプターを活用することが重要です。

また、緊急時に頼りにされるべき幹線道路に大きな被害が生じていることも反省すべき点です。阪神淡路大震災以来、全国で道路の橋梁を強化してきました。能登半島地震では道路の沢埋め高盛り土が崩れたために、復旧活動のすべてに影響が出てしまっています。全国で幹線道路の耐震性評価と補強に取り組まなければなりません。(中略)

公だけでなく、民間の力を活用しなければ、ということはずっと言われてきましたが、今回も現地でそれを実感しました。たとえばコンビニは民間企業ですが、被災地でコンビニに灯がともっていることがどれだけ人々を助けているでしょう。誰もが頼りにする重要なインフラです。(中略)

新しい時代にふさわしい、防災の発想が求められています。(聞き手・池田伸登)


「無理な計画作りに疲弊」危機管理アドバイザー 国崎信江から
本来、国土強靭化計画は堤防工事のようなハードの整備ばかりでなく、災害が起きた後のソフトな対応を視野に入れた施策です。能登半島地震ではこれが十分に機能せず、計画倒れだったことが最大の問題です。

大災害が起きると、地域防災計画、地区防災計画などの新しい計画づくりやマニュアルの改定が次々に発生します。そのたびに自治体の職員らは疲弊する。政府の検討会議で「実効性のある計画書・マニュアルづくりが必要だ」という提言が繰り返されてきましたが、正直うんざりです。(中略)

高齢者や障害者らが入る「福祉避難所」の数も足りません。訓練はほとんど実施されず、行政と施設の役割分担も明確ではありません。地域の要配慮者を廊下や玄関ホールで受け入れざるを得ず、まるで野戦病院のようです。

一般の避難所も、いつまで体育館で雑魚寝させるつもりなのか。イタリアでは過去の災害で大きなテントの中にシートを敷き、人数分のベッドを入れ、ビュッフェ形式で温かいものを食べられます。「災害時には、しょうがない」「耐えるしかない」という日本の考えが間違っています。災害時こそおいしい食事を提供し、生きる活力にしなければ。

災害関連死を防ぐためにもお風呂は大切です。私は能登半島で入浴支援のプロジェクトをしていますが、限界はあります。岸田文雄首相は「できることはすべてやる」と言いました。
「だったら、すべてやってよ」と心で叫んでいます。 国会議員や政府に訴えても、私が微力すぎて。

人命を守るなら、住宅の耐震化が最優先だと私は思います。生き埋めになる人がいなくなれば津波が来ても避難できる。火災が起きても初期消火ができる。家がつぶれて道路が使えなくなることもなくなる。緊急車両も通れるし、人もモノも入ってくるのです。

どれほどの大地霙でも死者がゼロなら大災害と記憶されることはありません。そのために何ができるか。 国や自治体の職員は本気になってほしい。現場は切羽詰まっています。「計画づくりに疲弊していないで地域とひざをつき合わせて話し合おう」と言いたいです。(聞き手・小村田義之)


「水道投資の意識を住民に」名古屋大減災連携研究センター准教授 平山修久から
能登半島地震では水道が大きな被害を受けました。(中略)
まずは上流部分を復旧しなければならず、断水が長期化しています。

日本では管路などの地震対策の重要性が古くから認識されていました。関東大霰災で横浜市から東京市の近代水道が壊滅的な被害に遭ったことが出発点だと、考えています。それ以降、破断しにくい耐震管や、抜けにくい継ぎ手など様々な技術が開発されました。

水道管路は高度経済成長期に整備が進み、現在は全国で計約74万キロに及びます。老朽化に伴い、各水道業者が耐震性能のある管に入れ替えをしていますが、耐震化率は全国平均で約18%です。年に1%進めばいい方で、コッコツと進めるしかありません。(中略)

また水道の予算も人員も圧倒的に足りていません。人口減や需要量減で料金収入は減っています。(中略)
こうした課題を解決するため、運営を民間に任せる方式も話題になりますが、過疎地では手が挙がらないでしょう。私は、住民が水道システムを支える意識を持つことが大事だと思います。水道料金の支払いは、いわば将来にわたり地域の水を守る「投資」です。今の水道事業者の住民とのコミュニケーションの仕方では到底そうした意識は醸成できません。産業を守るため企業に出資してもらう仕組みも必要です。民間企業から経営を学ぶ。そういう意味での官民連携が急務です。(聞き手・富田洸平)


コメント:失礼な言い方で恐縮だが、いずれのインタビューも、掘り下げが十分とは思えない。しかも上記のオピニオンに対して、政府や役所が言いそうな事も容易に想像がつく。高齢化、過疎化の現実を前にして、膨大な現状回復費用を、どう正当化できるのか。しかもそれが今後どれだけ有効活用されるのか。私が役人ならまずそれを考える。不可能なことは勿論、費用体効果が期待できない事業を検討する訳にはいかないからである。
仮に最大の課題である個々の住宅の耐震化を個人負担原則と割り切れば、政府は公共インフラ補強に集中でき、公の費用負担はかなり楽になるだろう。一方で耐震化工事に掛かる費用は馬鹿にできず、年金生活者にそんな余裕はないだろう。

そこで冷たい言い方になるのを承知で言えば、全壊でなく、最初の揺れをしのげて、火災を出さずに済めば、後は関連死の回避を目標にした方がよい。なぜなら人命救助が最優先の目的だからである
公共のインフラに注目すれば、水道が寸断されれば、水道管の修理の前に、給水車を動員する必要がある。それで終らせる訳にはいかないが、修繕で済めばともかく、設備の再建を前提にしてしまうと、問題はいつまで経っても解決しない。移動用トイレは更に急務である。そしてもう一つ、道路の照明や、病院の電力供給の為に、電源車が必要になる。無論土砂や瓦礫を取り除く建機も必要である。しかもこうした設備は、必要となった場所に動かして、すぐに使えるので、即応性と汎用性が高い。だから近隣地域で話し合って、そういう移動型インフラを予めプールしておくことを検討した方が良い。当面の水と排泄手段を確保できれば、後は腰を据えて合理的な復興方法を模索することになる。当然引っ越しも選択肢の一つになるだろう。寮やホテルの中長期の借り上げも検討対象になるだろう。故郷が無残に破壊されてしまったら、移転しか選択肢がない場合も出て来る。
いやむしろ視点を変え、原状復帰ではなくその先を見据える事があっても良いのではないか。人口減少という避けて通れない現実がある以上、こういう機会に、住めば命の危険のある場所から、より安全な場所に日本の国民を移す事を考える。それは消極的な人口減少対策とも言える。災害で(不幸にも)住む場所を失った日本人は、積極的に移住してもらい、その代わりに衣食住を保証するのである。もし田畑があったのなら、代替地を用意すればいい。なぜなら被災は本人の責任ではないからだ。その認識が前提でないと、復興は個人の力だけでは到底不可能である。被災者側も自分の家や農地は、一度全部失われたという覚悟で再出発することを考えてみて欲しい。危険であることが分かった場所(未だ災害が起きていない地域を含む)からは、一日でも早く移動する事が、二次災害を回避するうえでも重要になる。国がバックアップする衣食住。それが究極の福祉国家の姿でもあるだろう。そういう観点で仮設住宅の意義を見直すと、そこに永住したいという者がいれば、その希望も受け入れるべきだろう。なぜなら安全で快適であることが住の条件だからである。
次は
肝心の病院である。政府は病院船を複数保有することを今からでも遅くないから検討して欲しい。それは厚労省の船という位置づけになるだろう。しかも病院船なら海外派遣も可能になる。そうなれば究極の人命救助、国家的支援になるだろう。但し陸と船の間はヘリでの輸送が前提になるだろう。
目先の震災に限って言えば、当面の対策は校庭などのグラウンドを使った野戦病院だ。それが実際に関連死を救う具体的な方法となる。患者が集まっていれば、医師や看護士の対応も効率が良い。
これは隔離が必要になったコロナの時にも問題になった。ところが残念なことに、東京都の動きは鈍く、民間の施設はともかく、東京都立野戦病院は実現しなかったと記憶している。しかも東京都はなぜか上から目線で、近隣府県との協調精神は限りなくゼロに近い。非常用車両のプールや共用が出来るかどうかも分からない。これも自我肥大の知事の性格の故だとすれば、一都民としては情けないとしか言いようがない。

関連記事:能登、自衛隊救助の6割空から。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240220-OYT1T50010/

関連記事:能登半島地震被災地で大型フェリーが大歓迎される理由。
https://diamond.jp/articles/-/338991