「オンライン・オピニオン」


「立民が現実路線?」
「コロナと熱中症」
「広げた風呂敷」
「救急車ひっ迫アラート」
「瀬戸際の時代」
「脱税議員は立候補禁止」
「実質金利が低すぎる」
「身の丈越えた防衛費」
「ベネズエラの強権政治」
「株価暴落」


2591.立民が現実路線? 7.29

・立民、安保・原発、現実路線。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d7cb01d8f1af722ced783a5817a03aef032f21b8
コメント:立民ではなく、泉の路線だろう。これだけゆ党の体質丸出しでは、もはや国民民主との区別さえつかない。民意を見ようともしないで散々支持を減らしてきたのに未だ懲りないらしい。そもそも現実路線などは与党になってからの話であり、野党は民意を中心に政策を論じるべきなのだ。泉は自分が次期総理にでもなったつもりでいるらしい。他力本願なのに自我肥大。立憲不人気の理由がはっきりした。要は泉がぶっとんでいるからだろう。鳩山顔負けの宇宙人。

・総裁選、悩む小石河。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6508895

・安倍派、裏金議員10人を公認。政倫審も無視。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/343366
コメント:いかなる反省も修正もない安倍派。前世紀の遺物。それでもなお自民党に投票するとしたら、日本の政治の荒廃は国民の責任。

・なぜ万博が盛り上がらないのか。政治的イベント。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/343394
コメント:そもそもみゃくみゃくからしてフツーじゃない。

・まさか自分が、育児と介護のダブルケア。3人に一人。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6508905
コメント:介護は施設を前提に。人の体力には(精神力にも)限界がある。



2592。コロナと熱中症 7.30

自分が住んでいる地域で、防災活動の末端で、ボランティアのお手伝いをしています。昨年まではコロナ騒動で国全体が影響を受け、多くの人命が失われました。ところが当地域で、大変だーと騒いでいたのはほぼ私一人でした。これは伝染病は災害ではないという意識があるからだろうと思います。だから防災ではなく、防疫だろうと言われればそれ迄です。行政区分で言えば、防災は消防署で、防疫は保健所です。
そのコロナは、思い出の彼方どころか、今また11波の最中で、患者数が確実に増えています。なので具合が悪ければ、どうせ風邪だろうで片付けずに、医師の診断を受けることをお勧めします。
また他人から移されないためにも、また(自覚症状が無くても)他人に移さないためにも、マスクの着用を習慣づけたいものです。
とはいえ、今一番命の危険があるものは、猛暑でしょう。でもこれは疫病ではなく、(天候が原因の)災害だと考えられます。
そこで防災という観点から、自分なりに対策をまとめて見ましたので、参考にして頂ければ幸いです。

@.コロナ

今年6月時点で死者は10万人を超えました
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240606-OYT1T50142/

2023年だけでも3万人を超える死者が出ています。インフルの死者が年間1万人なので、その3倍です。そこから容易に想像されるのは、今年も無傷ではすむまいということです。
以下は2023年1月のデータですが、年齢構成が参考になります。
最多は(私も近い)、80代男性です。
https://scienceportal.jst.go.jp/explore/review/20230116_e01/

5類に移行したことで、検査費が有料(PCRで約2500円)になりました。
但し通販なら、一個500円程度で検査キットを入手できます。
・検査費用の詳細例
https://www.narita-hospital.jp/information/information230501.html

治療薬も使えるが、結構高額(自己負担額が1万5千円)です。
・ゾコーバの費用
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240305.html

なので治療を断る患者も出ています。実際に病院側でも、一般的な風邪薬を投薬して済ませるケースが多いと聞いています。でもそれはコロナが蔓延していた当時でも同じだったのです。私が陽性になった時も、解熱薬を貰って家から出るなと言われただけでした。自分で検査キットを手配し、毎日自分で検査をして、判断していました。但し当地域では、しっかり隔離され、入院された方も複数いました。待遇の差は、罹患状況によるものと判断されますが、私が軽症と判断されたらしいのは、高熱も出ず、咳もなく、喉が痛かっただけだからかもしれません。
今となっては、7回ワクチンを接種し、感染(陽性)まで経験しているので、自分でもよほどのことが無い限り、病院に行く気はしません。

とは言え、病院に行くと激しく咳をしている患者もいます。自分でも高熱が出れば、受診するだろうと思います。しかし、今高熱が出れば、むしろ他の感染症か、以下にお話しする熱中症を疑うべきかもしれません。熱中症なら少なくとも感染はありません。

・コロナがドミノ感染。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6508825
コメント:猛暑による免疫低下が原因。


A.熱中症

熱中症の症状
https://weathernews.jp/s/topics/202406/190215/

私は熱中症とは縁が深くて、小学生の頃、絵を習っており、先生の家に通うのに、保谷の駅からかなり歩くので、途中具合が悪くなって木の下で横になったこともあります。その時は頭痛がして気持ちが悪くなり、胸がドキドキしました。当時は熱中症という言葉はなく、日射病と言っていました。成人してからは、自宅で二回、朝起きた時にめまいがして、まっすぐ歩けないことがありました。二回とも救急車のお世話になりました。いずれも病院ではまず脳梗塞を疑います。その後熱中症の判断、もしくは三半器官の異常で、点滴を受けて帰宅となりました。いずれの場合も、6月で暑い季節の始まる直前、未だ夜間もエアコンを使っておらず、身体の体温調節が効かなかった時期です。熱中症は自宅が一番多いという統計を、そのまま体験しました。

以上の経験で学んだことは、汗をかくこと、かけることが、どんなに大事かということです。自宅の経験では、自分が熱中症に掛かっているという自覚は余りありませんでした。一方、最近の、ドアから一歩屋外に踏み出した時の熱波は、半端ではありません。これは熱中症以前の問題、いわば熱害であって、数分と耐えられません。あわてて車に入ってエアコンを掛けることになります。無論帽子や日傘がないと歩けません。しかし若い人は傘も帽子も使わずに、38度から40度の野外を平気で歩いています。だから高齢者は若い人達とは、熱に対する耐性が全然違うと思わなければなりません。

エアコンを使う場合の、屋内の温度設定は26度くらいが適正だと思います。我慢しても27度が限界でしょう。24度では冷えすぎです。エアコンは電気を食うので、扇風機も併用しています。

応急的には、首にかける輪のようなネッククーラーもあります。冷凍庫で冷やして使いますが、すぐに常温になってしまいます。そこで、いわゆる保冷材を捨てずにとっておき、冷蔵庫で冷やしておきます。めまいや頭痛、吐き気がしたら、首筋や脇の下にあてて、静脈の血流を冷やします。私は未だ実験する勇気がありませんが、冷たいシャワーも効果的かもしれません。熱中症の高温は自分の身体が生み出した温度ではなく、外部から侵入してきた温度なので、解熱剤では下らず、外部から取り去る必要があると、TVでは医師が説明していました。

そして無論大事なのは水分の補給です。これは高齢者には特に重要です。なぜなら高齢者は喉が渇かないからです。まして冷房の効いた部屋にいれば、全く渇きを覚えません。汗もかきません。ところが、体内の水分は、確実に減っているのです。端的にそれが分かるのは、尿の量が少なく、色が濃くなること。もう一つは便秘の時のように、便が堅くなることです。

塩分も一緒にとか、でもスポーツ飲料は体に良くないとか、カフェイン飲料はどうのとか、色々言われていますが、私は、高齢者は大きなペットボトルでガブガブ飲むわけではないので、細かいことは気にせずに、小さいペットボトルに水道水を入れて持ち歩き、喉が渇かなくとも、時々、一口飲むことをお勧めします。血が濃くなれば、脳梗塞や心筋梗塞の可能性も高くなります。「時と場所をわきまえずに」水分補給に努めることが大事です。但し汗がだらだら出るような状況であれば、塩分の入った飲料に意味があると思います。

なお急速冷却の出来る携帯用の扇風機を注文してあるので、外出時にどれほど効果があるのか、追ってご報告する予定です。

関連記事:道路に倒れた女性、熱中症で死亡。愛媛。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6508991
コメント:これは何とか助けられないものか。早く気が付けば良いのに。



2593。広げた風呂敷 7.30

今回の前書きは、かなり前のネタですが、見過ごすのは惜しい内容なので、敢えてご紹介します。サンデー毎日6月9日号のサンデー時評です。

「広げた風呂敷が畳めない国、戦争の準備だけが着々と」高村薫から

(前略)開幕まで1年を切ってなおパビリオン完成の目途もたたない大阪・関西万博の大風呂敷の例をあげるまでもない。セキュリティークリアランス(適性評価)制度を導入する重要経済安保情報の保護・活用に関する法律が先ごろ成立したが、重要情報を扱う民間企業の従業貝の適性評価と称して飲酒習慣や家族の国籍まで立ち入り、情報漏洩には拘禁刑まで科されるにもかかわらず、肝心の重要情報の指定範囲があいまいで、何が秘密かも秘密と揶揄される。経済安保という風呂敷を広げたものの、国はこれを適正に運用する能力も意思も欠いていると言うほかはない。

広げた風呂敷をきちんと畳めないまま放り出しているのは、地方自治法改正案の国の「指示権」拡大も同様である。大規模災害やパンデミックで、個別法で対応できない場合に国が自治体に対して指揮権を発動できるとする規定であるが、具体的にどんなケースを指すのかと問われた国は、あろうことか、現時点で具体的に想定しうるものはないと答えている。

だらだらと時間を空費するばかりの政治資金規正法改正などは、初めから広げた風呂敷を畳む意思すらないように見える。ひたすら既得権を温存したいだけの政治家たちの眼に生活を襲うインフレなど映っていないのはもちろん、無定見なばらまきと財政ファイナンスにあぐらをかくしか能がない彼らに、厳正な金勘定は端から望むべくもないと言うほうが正しい。

広げた風呂敷を畳む能力の欠如といえば、このほど会計検査院の調査で判明したマイナンバーシステムの現状も然り。半数以上の自治体がシステムの全1258機能の3%しか利用しておらず、39% はまったく使われていなかったという。利用が進まない理由は複数あるが、そもそもシステムの設計段階で機能が多すぎた可能性があるほか、作ることを優先するあまり、計画・実行・評価・改善といったシステム運用の基本ができていないという指摘もある。これはデジタル庁の無能ではなく、日本という国にもはやシステムをきちんと動かすだけの人材も意思もないということだろう。こういう体たらくの国が、一方で確実に戦争のできる国になってゆく現実こそ日本人の最大の不幸である。
 
コメント:是非、最後の行をかみしめて頂きたい。自衛隊は在日米軍の指揮下に入らないという。でも実戦の経験が無い上に、武器は米国製。作戦で独自の判断が許されるとは到底思えない。また自衛隊が独自の判断で動くのであれば、米軍が日本を守る理由もない。自民党の政治家は、ベトナムで何が起きたのか(南ベトナム軍の敗走)をきちんと勉強する必要がある。

関連記事:日米2+2,一体化、主体性保てるか、朝日社説7.29
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15996158.html?iref=comtop_Opinion_03

関連記事:岸田の核なき世界と逆の道。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/343574



2594.救急車ひっ迫アラート 7.31

ところで住む地域でも違うでしょうが、救急車ひっ迫アラートが発令されています。多分都内なら皆同じだと思います。

「救急車ひっ迫アラート発令」
現在、東京消防庁管内における救急車の出場率が高まり、ひっ迫している状況が続いています。緊急性がなく自分で病院に行くことができる場合は、公共交通機関や民間救急車を利用するなど、救急車の適時・適切な利用をお願いします。
 なお、救急車を呼ぶか迷った場合や病院への案内を希望される場合は「東京版救急受診ガイド」や「#7119東京消防庁救急相談センター」をご活用ください。

【東京版救急受診ガイド】
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kyuuimuka/guide/main/

コメント:ちなみに救急車を呼んだ方がいいのかどうか迷った時の相談窓口があります。
それは#7119です。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu-adv/soudan-center.htm

なおサポートキャブ情報は下記です。
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/emergency/bousai/m12873/007/p005683.html

ついでに民間救急車の例です。
https://minkan99-rescue.com/lp/hospital99/

もう一つ大雨・洪水対策です。
https://sdgs.yahoo.co.jp/featured/288.html?cpt_n=mailmaga&cpt_m=em&cpt_s=212&cpt_c=&cpt_k=ang_551338_219005901_20240729



2595.瀬戸際の時代 7.31

今回の前書きは、朝日新聞(7.30)オピニオン&フォーラム、基地被害続く不平等 
成功した占領神話が隠す犠牲 阪大教授 藤目ゆき から


―第2次大戦に敗れた日本は米軍を中心とした連合国軍によって6年8カ月間、占領されました。この間、占領軍の事故や犯罪で多くの人々が犠牲になりました。なぜ、この問題に注目するのですか.

「日本は、占領政策のもとで軍国主義から平和な民主主義国家に生まれ変わったと言われます。後にイラク戦争で米国などがイラクを占領した際も、日本が成功モデルとして持ち出されました。しかし、これは大いなる神話です」

―「神話」とは初耳です。なぜですか。

「占領軍による事故や犯罪で、日本人や在日コリアンを含む多くの民間人が犠牲になりました。しかし占領軍当局も日本政府も、自らの権力の正統性を失うことをおそれ、都合の悪い事実をひた隠しにしました」

「戦争は1945年8月15日に終わったとされますが、占領という名の新しい戦争が始まった、あるいは戦争の最終段階が続いたと考えるべきかもしれません」

―どんな被害でしたか。

「多岐にわたります。占領政策の当初の目標は日本軍の武装解除で、弾薬や武器の処理に民間人が動員されました。福岡県添田町では、火薬の焼却処理に失敗して大爆発が起き、住民ら140人余りが亡くなりました。海洋投棄のために船で運んでいた火薬が爆発する事故も起きました」(中略)

「朝鮮半島北部の沖合で掃海作業をした海上保安庁の掃海艇が機雷に触れ、死者が出たことはよく知られています。米軍に動員され、朝鮮半島で荷役や運搬、軍事施設の工事に従事して事故死した日本人労働者も少なくありません。在日米軍基地で働く人が銃を持たされ、戦闘中に死んだ記録もあります。これらは憲法違反のおそれが強く、国際問題になりかねないので多くは隠されました」

―日本政府の対応は。

「責任は占領軍にあるが、敗戦国なので占領当局や米国政府と交渉することはできない、と極めて消極的でした。ただ、一部で被害救済の運動が起きるなどしたため、日本政府は、わずかな額の見舞金を支給しました。」(中略)

―占領軍被害の犠牲者はどのくらいですか。

「日本政府は、占領軍当局から被害を報告するよう求められ、実態を把握していたはずですが、統計は公表されません。61年に政府が見舞金給付のために行った調査では、被害者総数は、死者3903人を含む 9852人とされますが、氷山の一角でしょう」

―日本政符は占領下とはいえ、国民の命を守る立場にあったはずです。

「占領は日本政府を通じた間接統治でした。日本の支配層は、常に米国の意向をうかがい、米国の利害を代表することで生き延びました」

「米国の機嫌を損なえば、戦犯などとして追放される。冷戦が深まるにつれ米国は、日本を反共の防波堤にし再軍備を進める。日本の政治エリートも、呼応するという共存関係が強まります。占領は成功し、その後の日米同盟が日本の平和と繁栄の土台となったという神話は、こうした現実を見えないものにし、私たちを思考停止させます」

―今も、米軍人らによる事件や事故は沖縄などで多発しています。

「米軍に特権的地位を認めている日米地位協定に問題があるのに、日本政府は改正しようと動かない。講和条約を結び、52年に独立した後も政治家や官僚の態度は変わっていません。日米関係は、今も圧倒的に非対称的であり続けているのです」

コメント:日本は今でも米国の実質占領下にあると思うと、さまざまな理不尽の説明ができます。東京都心上空の米軍機低空飛行もその一つです。


朝日新聞は、未来への歴史という壮大なプロジェクトを始めました。初回は序章、瀬戸際の時代で、私たちが感じている世界大戦への不安を取り上げています。具体的な提案には至っていないとはいえ、問題に正面から取り組んでいる姿勢は評価できます。朝日新聞を購読して良かったと思う場合です。但しこの特集、一面と二面の殆どを使う長文の記事であり、どんな抄訳でも、相当長くなっていることをお詫びします。

百年 未来への歴史、序章 瀬戸際の時代
「よみがえる戦間期の悪夢」

きょうも戦火が人々の命を奪う。世界は再び大戟に向かうか、引き返せるかの分かれ目にある。歴史は繰り返さないが、韻を踏む。来年の戦後80年を前に、私たちは二つの世界大戟の間の「戦間期」に着目したい。いったん平和が築かれ崩壊したこの時代から百年規模で歴史を問い直し、現在の立ち位置を見定め、未来に必要なものを探る。

「民主主義と全体主義の戦いでは、後者が間違いなく勝利し、世界を支配する」「民主主義の時代は終わる」。こう主張したのは1940年7月 に外相に就任した松岡洋右だった。当時の駐日米大使が国務長官宛てに送った公電に記されている。松岡は9月に日独伊の「枢軸」による三国同盟を結び、日本は翌年、真珠湾攻撃に踏み切る。

第1次世界大戦後の20 年に国際連盟ができ、世界は国際協調へと歩み始めた。ところが、グローバル化の弊害で格差がもたらされ、29年の世界恐慌で大衆の不満を利用しようとするポピュリズムが台頭。民主主義とファシズムが交錯した。

第1次大戦で敗れたドイツは民主的なワイマール憲法を制定したが、ヒトラー率いるナチスが一党独裁体制を築き、再軍備を宣言。38年のオーストリア併合など欧州で猛 威を振るう。

イタリアでもファシスト党のムソリーニ政権が誕生、エチオピアに侵攻した。アジアでは日本が25年に普通選挙を導入したが、軍部が台頭し、日中戦争に突入した。
資源や植民地の少ない「持たざる国」が欧州・アフリカ・アジアの3地域で起こした局地紛争は、この3国が「枢軸陣営」を形成したことで緩やかに結びつき、第2次世界大戦へ発展した。

今は、民主主義と権威主義が交錯する時代に入り、新たな「枢軸」が語られ始めている。

米国のジョンソン下院議長(共和党)は今月8 日の講演で、第2次大戦 の三国同盟を引き合いに過去を今と重ね、「米国に対抗するため公然と連携する国々が現れ、国際的な脅威のネットワークを構築している」と指摘。中国とロシア、イラン、北朝鮮などの相互連携の動きを「中国主導の枢軸」と断言してみせた。

米歴史学者のハル・ブランズ氏も「別々の地域的な紛争が融合した戦間期と、今日の情勢には類似点がある」とし、「欧州と中東では既に戦争が激化し、(既存の国際秩序に挑戟する)修正主義国家の結びつきが強化されている。西太平洋で衝突が起きれば、もう一つの恐ろしいシナリオがもたらされる」と指摘。アジアで台湾有事があれば紛争が連動し、世界大戦につながると懸念する。

米国は民主主義対権威主義の対立構図を描こうと躍起だが、その民主主義も退潮が著しい。(中略)

「アジア安全保障会議」で演説したオースティン米国防長官は「民主主義」という言葉を2年連続で封印した。米国防総省幹部は「グローバルサウスでは『民主主義』の押しつけを嫌う国も多く、文言を削った」。民主主義は「NGワード」になるほど退潮が進み、両陣嘗の拮抗が強まっている。

欧州政治に詳しい遠藤東大教授は「日独伊が、民主主義を自ら壊していった過程や、人為的に壁を設けて相互依存を遮断し、ポピュリズムのマグマを生んだ『経済のブロック化』は、今との類似性で無視できない現象だ」と指摘する。(編集委員?佐朦武嗣)

世界はいま「戦争の時代」に再び足を踏み入れようとしているのか。第2次世界大戦に突き進む百年前の「戦前」とどこか似ていないか。

注目するべきは、世界が分断、ブロック化し、その片方の陣営が米欧を中心とした既存の国際秩序に強烈な不満を持ち、公然と新たな秩序をつくろうと行動を起こしていることだ。(中略)

私たちは、戦間期の失敗から何を学べるのか。
あの時代にも光はあった。悲惨な大戦の反省から生まれた国際連盟はこのとき、新しい平和の時代を築こうとしていた。「1920年代の連盟体制は着実に紛争を解決して前例を積み上げていた」と関西大の西教授(国際法)は話す。(中略)

戦争へのエスカレートも防いだ。25年10月、ギリシャがプルガリアに侵入した際には、連盟理事会の会合を開き、両国代表を呼ぶ。有無を言わせずに撤退を命じ、原状を回復させたうえで紛争解決案を作った。最終的に両国は受け入れた。

西氏はこのアプローチを2段階方式と呼ぶ。まずは軍隊を撤退させ、その後、互いの言い分を聞いて解決策を探る。「正義」と「正義」がぶつかる国際政治だからこそ、まずは矛を収めさせることが重要になる。「20年代の終わりには、言論を使って平和を達成する連盟体制の完成すら見えていた」

しかし、国際連盟の試み は、世界の平和に責任を持つはずの日本などの常任理事国によって壊された。「満州事変が連盟体制を破壊し、新しい前例を作ってしまった」。西氏はこう指摘する。

1931年、日本の関東軍が満州事変を起こした。 国際連盟はすぐに撤退を命じるも日本は拒絶する。現地調査のために組織されたリットン調査団は侵略と認定したものの、潤州での権益は認める妥協をした。それでも日本は不服として国際連盟を脱退するが、占領は既成事実化された。

こうした対応を見ていたイタリアはエチオピアに侵攻。ナチス・ドイツもチェコスロバキアのズデーテン地方の割譲を要求。戦禍を繰り返したくない英国など欧州主要国はナチスの要求をのんでしまう。「力による現状変更」に対応できず、平和を保つために築いた戦間期の秩序は崩壊した。

「国際社会が止めるべき時に、止められなかったことが大きい」。東大の板橋教授は、戦間期の転換点をこうみる。戟争を繰り返したくないために、大国に譲歩し、悪い前例を重ねてしまった。そして、国際協調の時代から、力こそ正しいという時代に変わった。日独伊3国は「枢軸」を形作り、米英の秩序に挑んでゆくことになる。(中略)

世界は第2次大戦後、再び戦争を防げなかった反省に立ち、国際連合を中心とする国際秩序を作ってきた。国連憲章で他国への武カ行使を禁じ、国連安全保障理事会に世界の平和と安全への主要な責任を持たせた。

ところがいま起きていることは、またもや安保理常任理事国が他国に侵略する事態だ。ウクライナが旧ソ連の核兵器を放棄する代わり、ロシアと米英の核保有国がウクライナの安全を保障し、主権や国境を尊重するという94年の約束をロシアは破った。

常任理事国の5カ国には拒否権が認められ、核保有が条約で認められている。世界の平和と安全への責任があるはずのロシアが核使用で脅しをかける。仮に安保理が制裁や武力介入をしようにも、ロシアの拒否権に阻まれて動けない。

安保理の機能不全を招いているのはロシアだけではない。米国もだ。ハマスの攻撃を受けてパレスチナ自治区ガザ地区を攻撃し3万9千人を超す死者を出すイスラエルを拒否権を使って擁護している。紛争や人道危機を防ぐこともできない。

いま、欧州や中東での紛争が世界に広がるかどうかの岐路に立っているようにみえる。国際社会が戦争を終わらせることを優先してロシアによるウクライナ領土占領を認めれば、力による現状変更を禁じる国際規範は崩壊する。トランプ前米大統領が返り咲けば、ロシアに占領された領土の一部をあきらめろとウクライナに言う恐れがある。占領した者勝ちとなるかどうか、中国や北朝鮮などは注意深く観察しているだろう。

それでも、国連などによる調停や外交交渉で戦争を終わらせる日は来るはずだ。その時に、過去から学べるのは、少なくとも武力による他国の侵略は認めないという規範は守り抜くことだろう。

国連総会はロシアがウクライナに侵攻した直後の2022年3月と翌年2月、侵略を非難し、即時撤退を求める決議をともに141 カ国の賛成で採択した。イスラエルとガザの紛争についても、即時の人道的停戦を求める決議を153か国の賛成で採択した。決議に法的拘束力はない。だが大国の身勝手さに対し、圧倒的多数の国の総意を示す意味はある。

大切なのは、欧米中心の既存秩序から逸脱を図る国々が相次ぐ原因に目を凝らすことだ。百年前も今も、国際秩序には主要国に都合のよい現状を固定する作用がある。それが割を食う国々の不満を膨らませ、暴発を誘うのか。どうすれば公正なメカニズムヘ立て直せるか。日米欧の側も考えることを迫られている。

百年前と今では条件も違う。歴史は同じ形では繰り返さない。しかし、世界が規範を壊し戦争を繰り返してきたのも事実だ。国際社会に生きる我々は、いまどんな時代にあるかを認識し、歴史から学び、規範を守る努力が求められる。(編集委員・奥寺淳、田島知樹)



2596.脱税議員は立候補禁止 8.2

今回の前書きは朝日新聞(8.1)オピニオン&フォーラムです。日本のメディアは3流だと言われますが、それでも朝日を含む3大新聞は結構頑張っており、彼らがいなくなれば、言論の自由は完全に失われます。地方紙、週刊誌を含めて、市民が良質のメディアを育てることが、国民が自分達を政治の暴力から守ることにもなります。若い人には費用が負担かもしれないが、共同でもいいから、なるべく新聞を購読して頂きたい。ちなみに、私は節約の為に教養娯楽が多い夕刊はお断りしています。
ネットは閲覧が簡単ですが、情報量が限られます。また正確性、公平性の保証もありません。更に新聞には、報道以外に、世論形成(現状を分析し、未来を予測し、国民に考える時間と材料を与える)という大事な仕事があります。
今回登場する加藤教授は知らぬ人は少ないと思いますが、もし日本に女性の首相が誕生するとしたら、それは高市や稲田ではなく、無論小池百合子や蓮舫でもなく、こういう人が相応しいと思います。

「周到にしなやかに」東大教授 加藤陽子インタビューから

歴史学者として、日本学術会議の任命拒否問題の当事者として、そして女性として、静かに周りを見つめている。日々の出来事をメモに書き付け、読み返し、歴史に位置づけ直す。傷ついたことも理不尽な経験も。加藤陽子さん、周到に、しなやかに闘うその目隙の先に何があるのですか?

決定権ない母たち 女性ゆえの理不尽 やがて我が身にも

ー研究室の名札は「野島陽子」なんですね。

「現在の戸籍名です。もちろん選択的夫婦別姓論者です」(中略)

―昨年 のNHKの番組「100分de フェミニズム」では関東大震災後、憲兵隊に虐殺されたアナキストの伊藤野枝の著作を紹介していました。

「『乞食の名誉』は、因習的な家庭の中で子を産み、雑誌 『青鞜』編集にもあたっていた野枝の実感に根ざす短編です。(中略)家庭のケアは女性が行うべきだとの社会的規範が昔も今も多くの女性を苦しめています」

「(中略)でも自己実現の機会を奪われてきた女性の苦しみを『不覚な違算』と看破 した野枝にひかれます。自己決定権を持たない女性の姿は家族の中で見てきましたので」

―そういう生き方はしんどいだろうな、と?

「ええ。自分の身の振り方を自分で決められないのは不幸だなと。また1931年生まれの母の兄弟2人は大学に進学できても、姉妹4人は行かせてもらえなかった時代でした。ならば私は、学問の力で人生の選択肢を増やしていこうと早くから決めていました。今思えば、とても優等生でしたね…」

「東大に進学してからも理不尽な壁に出くわします。20歳の時、一つ上の東大生に電車内でげんこつで殴られ、奥歯を2本折るという尋常ならざる体験をしました。また24歳で修士論文を書き終えた時には、その発表会後の懇親会の席上、一回り上の研究者から『女性はどうせ就職できないから、僕と一緒にアメリカに行こう』などと、たわけたことを言われました。どちらも、私はその場では何もできず言い返せもしなかった」

「『奥歯男』を前にして、(中略)頭の中では殴られた理由を列挙していたんですね。『女性ゆえにこんな目に遭う』とは考えず、不当性に思いが至りませんでした」 (中略)

「卒論を書いた時から今まで、ファイルに、『思いつき』『やること』などのタグをつけカードをとじていき、読書の記録、授業準備、ニュースなどを書き込んでいます。他人のSNS上の心ない発言なども記録してあります(中略)」

―えんま帳ですね。2020年に菅義偉政権で日本学術会議の会員への任命を拒否された 件についてもここに?

「もちろんです。20年9月9 日から使い始めたファイルを開ければ、関連するタグ付きカードがすぐ出てきます。(中略)『反政府』というタグは、11 月8日に共同通信が『官邸、反政府運動を懸念し6人の任命拒否』という見出しで報じた一件などを記録してあります」

「相手を調べる、絶対に誤解をしない、軽んじない、過大評価しておく。もし闘う時が来たら絶対に負けないところまで調べ尽くして、相手の退路を断っておくのです」

「任命拒否関係の資料はつづら三つ分ほどになりました。本来は任命拒否という内閣総浬大臣の判断を支えた根拠が、その意思決定過程をも示す文書とともに明らかにされなければならない。私が専門とする歴史学は、一定の時代に現れたり、つくられたりした制度や論理が、なぜその時代に現れたのかを問う学問です。歴史学者としての 私は、官邸がなぜ拒否を決断したのか大変に興味があります。だから記録と資料を残す」(中略)

「政治過程論では、対立する相手方にレッテルを貼ることで自他の集団の利益が象徴的に表されるとされます。まさに今回、任命拒否された学者らを官邸側が『反政府』と位置付けた報道などに接し、現実が学問に重なる瞬間を味わいました」

「並行して、どのような自己情報をもとに任命拒否にいたったのか、自己情報開示請求の手続きを進め、不開示とした処分の取り消しを求める原告の一人として今年2月、国を提訴しました。勝てると思っています」

―東大の教員としての任期も残りわずかですね。

「私は日本近代史の中の女性を描いてきませんでした。外交と軍事を専門としてきたからです。ただ、フェミニズムやジェンダーの理論形成に寄与した人々を欧米のみに求めるのは間違いだと感じています。そこで、例えば日中戦争期以降の時期、新設されたり構成員が増えたりした市町村内の団体は女性団体だけだったことに注目し、大政翼賛会の地方支部における女性と政治をテーマにした新領域にも挑戦したいと考えています」

「幼い頃から自分のことを『特別な任務を背負っている』人間だと気負って生きてきたせいか、過去の女性も同時代の他の女性たちをも、きちんと見てこなかった。(中略)見てこなかったものに気付く時点から新しい関係は始まってゆくはずでした。若くして命を奪われた野枝にはその時間が許されなかったけれども、私も今、勉強しているところです」 (聞き手田中聡子、高橋純子)

コメント:安倍・菅政権の横暴は今思い出しても腹が立ちます。しかも菅官邸には右翼の警察官僚、杉田和博官房副長官がいました。日本を対米隷属にし、日本会議や宗教右翼の天国にしているのは、戦中から連綿と続く国家主義であることがよく分かります。裁判での加藤教授の勝利を願っています。

もう一つはサンデー毎日(8.11)の、牧太郎の青い空白い雲です。
「19歳喫煙で五輪出場できないなら、脱税議員は立候補禁止だ!」

(前略)最近、香典で失敗したのが、自民党を離党した堀井学衆院議員。選挙区内の人に秘書や家族を通じて香典を渡して、東京地検特捜部から公職選挙法違反の疑いで強制捜査を受けた。堀井さんの地元・北海道では、自分の名前と住所、金額を記入してある香典を渡し、受付の人がその場で中身を確認。香典の領収書を手渡す風習?「香典代として」のただし書きがある 領収書が数多く押収されたらしい。

しかしこの犯罪、それほど悪質だろうか?多かれ少なかれ「香典」を利用する議員はいる(堀井さんのことを「極めて遺憾だ」とコメントした自民党の茂木敏充幹事長だって、経済再生相だった2017年、地元の栃木5区の複数の有権者に「香典」を渡したと 週刊誌が報じたこともある)。

はっきり言って、政治家の摘発 に『不公平」を感じてならない。

たとえば、昨年11月からの政治資金パーティー事件。キックバックした襄金を「脱税」した議員の多くが不起訴になった。たとえば、安倍晋三元首相の後援会が「桜を 見る会」前日に主催した夕食会の費用を補填した事件。20年に公設第1秘書が略式起訴されたが、安倍さんは不起訴だった。ウン万円の香典を配った小物は捕まるけど「何千万の大泥棒」は無罪放免?

可笑しいじゃないか!

NHK杯3連覇の19歳の体操女王・宮田笙子さんが「喫煙」でパリ五輪を辞退させられた。腹が立った。投票権も持つ19歳がたばこを吸っただけで…。「以後気をつけなさい!」と指導すべき話じゃないか!

宮田さんが五輪出場を辞退するなら、「裏金の政治家」の面々は即刻、議員辞職!永遠に立候補禁止!それが「平等」というものだ。

コメント:確かにおかしい。(弱者に)ヒステリックになるかと思えば、(権力者には)大盤振る舞い。そうではない(司法が腐敗していない)というのなら、森喜朗と、鹿児島県警本部長を逮捕して見よ。なんなら萩生田、二階、(財務省の)佐川を入れてもいい。堀井だって、元スポーツ選手で、これという政治的な背景を持たないから、検察は「安心して」つかまえたのではないのか。憲法と国民を侮るのもいい加減にしてほしい。



2597.実質金利が低すぎる 8.2

・実質金利が低すぎる。日銀の見方。
https://toyokeizai.net/articles/-/789053
コメント:安倍が輸出企業の為に人為的に作り出した円安。よくもあれでインフレにならなかったものだ。いや本当はもうインフレなのにそれを日銀が認めていないだけかもしれない。でももうこれ以上いびつな経済財政は許されない。日本の企業が破綻し、日本経済が崩壊して恐慌が起きる前に、為替レートを正常化し、水膨れした企業をスリム化して、競争力をつけなければならない。
国民の生活水準とバランスの取れない億ションこそ、現在のいびつな日本経済の象徴だ。堅実な実需ではなく、多分に外国資本の投資対象となり、バブルの様相を呈している。健全な実需が背景にあるわけではないから、中国の経済状況の悪化で、いつ売りに転じるか分からず、中国の鬼城(廃屋)状態になりかねない。一方で(金利も上がるので)個人の負債が大きくなって、個人破産の引き金になる可能性もある。
バブル需要と、かつてない経済格差。こんな状態が望ましい未来なら、日本は既に終っている。今回の為替介入と日銀の金利上昇は、財政の正常化の為の苦しい一歩である。頑張れ日本企業。そして日本の国民。諸悪の根源、アベノミクス(と安倍政治)から抜け出すための辛抱だ。
ちなみに株が下がって損をするのは株式投資をしている富裕層が多いと思われる。しかし庶民を相手に、よくも貯蓄から投資へなどと岸田は言えたものだ。投資の本質はギャンブルだということを伏せていたとしたら、それはもう立派な詐欺である。



2598.身の丈越えた防衛費 8.3

まずは朝日新聞(8.2)の、未来への歴史の続篇です。

「もたざる国逆戻りの日本」身の丈合わぬ防衛費急増

国内総生産(GDP)は1940年代に生まれた。資源や物資など戦争を遂行できる生産力がどれだけあるか正確に把握する指標として、米英が開発した。「第2次世界大戦が生んだ数多くの発明品の一つ」と英ケンブリッジ大のダイアン・コイルは位置づける。

世界に占める日本のGDPは、百年前と同じ水準に逆戻りしている。英国の経済学者アンガス・マディソン氏の研究チームは、西麿1年 から今に至る世界各国の GDPを歴史資料から推計してきた。そこから浮かび上がってきたのは、そんな日本の姿だ。

日本のGDPの世界全体に占める割合は1920年は3.4%。それが戦後の経済成長で急伸。「ジャバン・アズ・ナンバーワン」などと称された。米国の地位をも脅かす経済力を誇った90年には8.6%に上昇した。

だが、その後、中国をはじめ新興国の経済成長が加速。日本は人口減社会に突入して主要7カ国 (G7)で唯一足踏みを続け、2022年には3.7%に落ち込んだ。

現在の日本のGDPは 世界4位。米ゴールドマ ン・サックスによれば、さらに50年に6位、75年に は12位へ転落が予想される。日本は近い将来「経済大国」の看板を下ろすことになるかもしれない。

一方、岸田政権は一昨年末、27年度の防衛質の GDP比を倍増させ、2 %にすることを決めた。 27年度の防衛費は世界5位内に入り、「軍事大国」に仲間入りする可能性がある。問題は、この歴史的増額が果たして「国力」に見合っているのかだ。(中略)

「DIME」という言葉がある。「外交(Diplomacy)」「情報(Information)」「軍事(Military)」「経済(Economy)」の頭文字を取ったものだ。米国が安全保障の指導者育成のため設立し米軍の将校や文官らが在籍する米国防大のテキスト「国家安全保障入門」では国家安全保障の構成要素にこの四つを挙げ、DIMEを駆使して目的を追求するとしている。軍事だけでは国の安全が担保できない。DIMEを統合して国の安保を確保 する、というのが、欧米では常識となっている。

近年では中国に対抗するため、「技術(Technology)」を加えた「DIME+T」とも呼ばれる。日本では安保を考える際、これまで DIMEという言葉はほとんど聞かれなかった。

だが日本はかつて「国力」から目をそむけて軍事偏重に走った結果、人的・物的破局を招いた。 むろん、過去と事情は異なる。安保環境の変化を踏まえた防衛力の要素は必要だろう。だが今、安保を議論するのに、軍事以外の要素が、あまりに軽視されてはいないか。

岐路に立つ今だからこそ、「国力」を重層的に、冷静に見つめる視点が求められている。(大日向寛文・佐藤武嗣)


「軍事偏重 いびつなDIME」
必敗報告 聞き入れられず開戦
足元の国力を見詰めよ なお重く

日本の「安全保障」にDIMEの発想はあるのか。

昨年改定された「国家安全保障戦略」には「外交力・防衛力・経済力・技術力・情報力を含む総合的な国力を最大限活用して、国家の対応を高次のレベルで統合させる戦略が必要」とある。

これまで、安全保障は米国を最重視し、経済面では最大の貿易相手国・中国との協力を深めてきた。だが、その米中の対立は、経済や技術といった非軍事の分野にまで拡大。安全保障の裾野が広がるなか、日本もいや応なく「踏み絵」を迫られている。(中略)

しかし、中身を見ると経済や外交に関する記述は乏しく、経済安保の項目も他の記述とのつながりがない。「戦略」の一部分を担当したある省の幹部は「戦略の全体像の 議論もなく、他の項目の記述も見せてもらえず、一部の項目だけ割り振られた」と不満をもらす。 DIMEを掲げてはいるが、「軍事」に重きが置かれ、政府一体の「総合 的な国力」の底上げを図ろうとの意識は薄い。

歴史的な増額を決めた防衛費の財源も宙に浮いたままだ。岸田文雄首相が確保したとする財源の大半は、1度しか使えない国有財産の売却など安定財源にはほど遠い。

戦略の策定に先駆け首相官邸が設置した有識者会議で、エコノミストの翁百合・日本総合研究所理事長は「防衛力強化には、持続的な経済、財政基盤強化と国民の意識の共有が大変重要だ」と訴えた。エネルギー自給率の低さや、債務残高の国内総生産(GDP)比の高さなどリスクも指摘した。DIMEに通じる考え方だが、会議は3カ月間に4回開かれただけで議論は煮詰まらず、メンバーも不満を口にした。

戦前の日本もDIME的発想で国力を見つめようとしたことがあった。
第1次世界大戦後のワシントン海軍軍縮条約で戦艦の保有制限の受諾を決めた、加藤友三郎海相(後に首相)は「国防は軍人の専有物にあらず」「国防は国力に相応ずる 武力を備うると同時に、国力を涵養し、一方外交手段により戦争を避くることが、目下の時勢において国防の本義なりと信ず」と本国に伝えた。だが日本は1933年の国際連盟脱退に続き、翌年に海軍軍縮条約からも離脱。軍艦建造競争の末、45年に碗局を迎えた。

欧州でナチス・ドイツと英仏が衝突した39年9 月には、帝国陸軍内部に「戦争経済研究班」(秋丸機関)が設置され、秋丸次朗・陸軍中佐が学者に委嘱し、対英米戦に踏み切った場合の勝算を経済的側面から分析。日米開戦半年前の41年7月に「経済戦力の比は20対1 程度と判断するが、開戦後2年間は貯備戦力によって抗戦可能、それ以後は我が経済戦力は下降をたどり、持久戦には耐えがたい」との報告書をまとめている。

40年9月には近衛内閣が「総力戦研究所」を設置した。「武力、思想、政略、経済戦を一元的に総合せる総力戦に関する体系の研究の不十分なる現状を打開すること」を目的とした。だが、こちらも41年8月、対米戦争は「必敗」と報告した。

だが、当時の東条英樹陸相らはこうした分析を聞き入れなかった。秋丸機関を率いた秋丸氏は、敗戦から30年以上経ち、「秋丸機関の顛末」を執筆し、こう語った。
「既に開戦不可避と考えている軍部にとっては都合の悪い結論であり、消極的平和論には耳を貸す様子もなく、大勢は無謀な戦争へと傾斜した」

前述のマディソン氏の研究チームの推計をみると、日本は勝敗にかかわらず経済力にそぐわぬ戦争を繰り返してきた。朝鮮出兵直後の1600 年、中国のGDPは日本の約10倍。日清戦争直前の1890年は同じく約 5倍、日露戦争直前の1900年のロシアは日本の2.5倍だった。

経済協力開発機構(OECD)によると、現在の中国のGDPは日本の 5.3倍で、2050年 に7.4倍に広がる見通しだ。太平洋戦争開戦時の日米格差4.9倍を上回る。外交力を駆使しなくては、防衛力だけで安全保障は成り立たない。

国力を考えるうえで百年前と現代で決定的に違う要因もある。社会保障だ。日本を含む先進国は戦後、国家の役割を拡大。インフラ整備のほか医療や年金などの社会保 障を充実させた。その結果、国民の負担は戦前より大幅に高まっている,

1934〜36年は13.8%だった租税負担率は、今年度は26.7% だ。戦前はほとんどなかった社会保険料を含めた国民負担率は45.1%に及ぶ。防衛力強化のために追加で国民負担を求める余地は乏しい。

1920年には65歳以上の高齢者は20人に1人 しかいなかったが、国立社会保障・人口問題研究所(中位推計)によると昨年は4人に1人を超えた。2070年には38. 7%になる見通しだ。急速な高齢化のなか、医療や介獲をはじめ社会保障費が増え、国民負担が上昇していくのは必至だ。

自民党国防族のなかには借金をあてに防衛費の増額を求める声もある。
岸田首相は22年、戦後初めて建設国債を防衛費に充当することを認めた。
首相が掲げる「GDP比 2%」は北大西洋条約機構(NATO)並みというが、財政はすでに火の車だ。国の借金残高は1 千兆円を超え、GDP比 (24年度末、2.4倍)は、ほぼ2倍だった先の大戦時を上回る。(中略)

通貨の力も落ちている。円の対ドル相場は今年4月、一時160円台に突入した。約34年ぶりの円安水準となる。ユーロなどドル以外の通貨や物価を考慮すると、凋落はより深刻だ。
薄型テレビや半導体の世界シェアは急落し、1Tサービスは、GAFAと呼ばれる米国勢に席巻ざれた。日本経済を先導した技術力も色あせた。

安全保障環境の変化に応じて、防衛費を増やす選択肢はあるだろう。しかし、戦間期〜開戦前にも指摘されていたように、国力に照らして無理のない計画か否かが問わ れる。世界で類を見ないほどの財政状況のなか、借金頼みの防衛費増額に持続性があるのか。

中国からの圧力を甘受せよということではない。自衛隊幹部は「(防衛力を強化しても)抑止力が破られたら、それは敗北だ」と語る。足元の「国力」を見つめ、「外交手段により戦争を避くる」ことに専念すべきだとした加藤友三郎の問題提起は、いまも重い。

米歴史家のハル・ブランズ氏は、日米には台湾侵攻を試みても成功しないと中国に思わせる抑止力を持つ「決意」が必要だと説く。その同氏も「決意と同時に、自制も必要だ」と語る。

石油の対日禁輸など米国による「封じ込め」は 日本の暴発を誘い、日米開戦につながった。この歴史の教訓を念頭に「台湾独立を支捩したり、ピークを迎え、衰退への懸念を抱く中国が直面する課題を利用したりせず、(中国に)安心感を与える必要もある」と語る。

(佐藤武嗣・大日向寛文)

コメント:読みやすい文章だが、それにしても紛争解決の手段としては武力を用いないという平和憲法の精神を、この二名の筆者はどう考えているのだろう。紛争あれば戦争はつきものという見方なのか。日本国の平和憲法こそ、日本が300万人の同胞の尊い命と引き換えに手に入れたものだという意識が余りも希薄だ。言葉を替えると、戦争ありきを前提にした文章に、こちらとしてはどうしても抵抗を感じてしまう。無論侵略を受けたら、防衛するのは当たり前、身の程(GDP)などわきまえている暇はない。私も自分でも銃を取り、腰弁で参戦するだろう。しかし論点はあくまで戦争の回避でなければならない。
図らずも8.2の朝ドラ、寅に翼の中で、総力戦研究所にいた岡田将生が開戦を止められなかったことを悔やむシーンがあった。
要は、どうすれば日本が、今のウクライナやガザのようにならずに済むのかと点に尽きる。必要だからと言って、むやみに軍備を増強すれば、今度はロシアやイスラエル(ともに領土拡大が今回の紛争の真の目的)のようにならないとも限らない。そんなことは日本に限って絶対にないと思う方が間違っている。なぜなら過去に実例があるからだ。しかも最近では国民全体が精神的な余裕を失っており、些細な理由で人を殺める事例が頻発している。またすぐに発砲する警官もいる。
なおこのシリーズの次回のテーマは世論と戦争の関係であり、そこでは現代日本(の精神状態)との類似性が語られるのだろうか。今までの二回分だけでも、現在の日本と戦前のそれが、余りにも似通っていることに、やり切れなさを感じているのだが。



2599.ベネズエラの強権政治 8.4

今回の前書きは朝日新聞(8.3)の社説です。ベネズエラの大統領選挙が酷いことになっています。マドゥロは南米のトランプです。

(社説)ベネズエラ選挙 強権政治の混迷を憂う
 世界最大の原油埋蔵量を誇る国が、空前の経済難にあえぐ。その矛盾への国民の怒りが正当に反映されたとは言い難い。現政権は選挙結果の公正さを証明できなければ、選挙をやり直すべきだ。
 南米ベネズエラで大統領選があり、2013年から政権を率いるマドゥロ大統領の3回目の当選が発表された。不正の指摘が相次ぐが、当局は開票の詳細公表を拒否。他の南米諸国も説明を求めるなど批判が広がる。
 独裁色を強めるマドゥロ氏は選挙前から、自分が敗北すれば「血の海」になると牽制(けんせい)していた。野党連合の有力指導者の候補資格を剥奪(はくだつ)するなど、およそ公正な選挙プロセスではなかった。
 政権交代を求める市民が各地でデモを続け、衝突による死傷者が報じられている。政権はこれ以上、流血の悲劇を重ねてはならない。
 政権は選挙結果について、検証可能な方法で詳細を公表するのが最低限の責務だ。それができぬなら国際監視の下で再選挙を行い、結果次第で退陣するしかあるまい。
 かつて人気を誇った故チャベス大統領の社会主義運動はマドゥロ氏に受け継がれ、旧チャベス派の左派政権は通算四半世紀に及ぶ。この間に特権層の腐敗と経済の不振が重なり、民心も離れた。
 一時はハイパーインフレにも見舞われ、この10年で人口の約4分の1にあたる770万人が国外に逃れた。今回再び混乱に陥れば、さらに避難民が増えるとみられる。
 マドゥロ政権は、中国、ロシア、イランなどと近い関係を続ける一方、一貫して国民に反米感情をあおってきた。だが、そのベネズエラ難民は近隣諸国のほか、米国にも流入している。移民問題が今年の米大統領選の最大の争点の一つになるなど、米州全体に影響を広げている。
 ハリス米副大統領は移民問題について、国境の壁を築くよりも根本問題に目を向けるべきだと語ってきた。確かに、中南米の人々を米国に向かわせる主因は失政と経済的な苦境であり、その改善を支援することは理にかなう。(以下略)
全文は下記
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16001332.html?iref=pc_rensai_long_16_article

コメント:東京都も強権政治。



2600.株価暴落 8.5

何と言っても株価暴落が最大のニュースでしょう。米国の景気後退パニックに海外の投機筋が過敏に反応したとしか思えない。今個人に出来ることは冷静さを保つことです。むしろ証券会社は、投資家を安心させる声明を出すべきです。これ以上の混乱を避けるために、証券取引所も積極的にストップ安を掛けるべきです(実際に掛けました)。この大混乱の背景には、ゼロ金利でカネ余り状態を作り出した、安倍政権と黒田総裁による、アベノミクスという悪夢の、無責任な財政運営があると考えます。結果論ではあれ、経済も財政も本当に理解していたとは思えない4人(安倍+菅、黒田+竹中)に、日本を任せた結果がこの体たらくです。安倍を選んだ自民党にも、大きな責任があります。米国の大統領でも、プライベートはともかく、経済で失敗したら絶対に評価されません。それは資本主義の国だからです。

・日経平均4451円安。過去最大。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0556M0V00C24A8000000/
コメント:いずれにせよ、政府と日銀は、企業業績が悪化した訳でもないので、根拠のない恐慌などが起きないように配慮をして欲しい。まず日銀に出来ることは、株を買い上げることだ。しかも今はほぼ底値(多分)だから、買うことで日銀自身でも利益が見込まれる。そもそも黄金バット総裁が、今後も限度の無い利上げがあり得るなどと、全く余計な発言をするからこんなことになったのだ。この人に任せておいて、日本経済は本当に大丈夫なんだろうか。
追記:黄金バットを知らない人はググってみてください。見た目はともかく、昭和初期の正義のヒーローです。

関連記事:ウォール街がRの恐怖。
https://news.yahoo.co.jp/articles/032ed3394efca00befdcbdfda43490c3d5587fef
コメント:リセッションのRでしょう。

関連記事:世界株安。押し目買いの好機か否か。ジレンマ。
https://jp.reuters.com/markets/japan/IEINK4ULLBKM3BQ5OXASNNMT6A-2024-08-05/
コメント:著名な投資家がどう動くのかに興味がある。

関連記事:日本株の長期上昇インフレ相場は変わらない。
https://toyokeizai.net/articles/-/792789
コメント:今回の騒動で分かるように、いかなる見立ても信用できない。但しインフレについては早く正常化して欲しい。円安もしかり。