「オンライン・オピニオン」


「岸田政権4つの大罪」
「トランプは弱虫」
「総裁と代表」
「事故調の意義」
「ルールと息苦しさ」
「分断とリーダー」
「西の斎藤、東の小池」
「猿のライアー」
「万博への直言」
「立憲内の共闘」


2621.岸田政権4つの大罪 9.7

今回の前書きはサンデー毎日(9.15)岸田政権4つの大罪です。
安倍晋三元首相の国葬から始まった迷走、場当たり的な3年。鈴木哲夫から
(前略)
三権の一つの国会の場で、国民から選ばれた各党が安倍政権と銃?事件の関係性を総括する。内閣はそれを真撃に聞いた上で、国葬を決定するか否かを決めるのが筋だ。しかし、岸田首相はその手続きを踏まなかった。
岸田首相の国会軽視はまだある。防衛費の増額、日米2プラス 2での防衛協力体制の確認、原発の再稼働や新設。安全保障もエネルギー政策の転換も、国会で十分議論していない。
二つ目は「場当たり」な政策や法律だ。例えば、旧統一教会に関する対応。裁判所への解散命令請求の要件を巡って、当初は「民法の不法行為は入らない」と答弁していたにもかかわらず、世論が厳しくなると「入りうる」と答弁を変えた。
L G B T Q (性的少数者)に関してもそう。岸田首相は同性婚に対して、「慎重に検討すべき。社会が変わってしまう」と言い切ったにもかかわらず、側近の一人が L G B T Qで差別発言をして猛批判されると態度をー変。理解増進法なるものを与党に指示して作らせた。ところが、「差別はなくしましょう」的な理念法にすぎず、同性婚を認める民法改正などの具体性に欠ける。
そして三つ目は「官僚主導政治」の復活。中身は別として、それまでの安倍政権や菅政権は、「政治主導」だった。しかし岸田政権では財務省や外務省、経産省など霞が関の手のひらに乗り、多くの政策が進められてきた。財務省で挙げれば、防衛費など各種の税や国民の負担増を強いる一方で、ガソリン税を一部軽減する「卜リガー条項」の凍結解除などには踏み込まない……。
自民党積極財政派のべテランは「首相は自分の親戚、官邸や党の側近に財務省関係者が多い。増税路線は財務省の意向で、岸田首相も納得している」と話す。外務省は米国追従路線を強化。元外務政務三役は「防衛費を43兆円、G D P (国内総生産)の 2 %にするというのは、トランプ政権が安倍元首相に要求してきたもので宿題だった。NATOへの協力などもそう。いずれも外務省が米国第一主義で進めたい路線に、岸田首相が乗った」と言う。
経産省では、原発の再稼働や新設が挙げられる。岸田首相は9月上旬に関係閣僚会議を開き、6月に安全確認検査を終えた柏崎刈羽原発の再膏に向けて、地元自治体が再膏に同意する方向にもっていく方針だ。立憲民主党幹部は「ー昨年からの原油価格高騰やウクライナ戦争でエネルギ?確保が課題になったころから、経産省の原発推進派
が『国内エネルギーとして原発再稼働のチャンス』と動き出した。国会の議論もなく、再稼働や新設へ動いている」と憤る。
(中略)
能登半島地震では、被災者にホテルや旅館への「 2次避難」を促したが、「コミュニティーを大事にして励まし合いたい人にとっては、体育館など近くの避難所にいたい。 2次避難は精神的に災害関連死を増やす」 (減災・復興支援機構理事 )と指摘された。復旧・復興への施策も、進んでいない。総裁選で自民党や政権が生まれ変わるというなら、数々の大罪への総括と、失政を繰り返さない覚悟を見せる責任がある。

コメント:鈴木哲夫は最もまともな政治評論家の一人です。




2622.トランプは弱虫 9.9

今回の前書きは週刊文春(9.12)の町山智浩の言霊USAです。
「トランプは強がる弱虫、大物ぶった小物」から

(前略)カマラ・ハリス大統領候補、出馬表明以来、支持率は伸び続け、接戰州の大半で既にトランプを超え、共和党のテキサス州でもトランプに迫っている。
彼女を大統領に指名する民主党大会が8月19日からシカゴで開かれた。「後戻りしない」「前進」をテーマにした、まったく新しい大会だった。
まず異例だったのはロール・コール。州ごとに候補者を読み上げる定例の手続きだが、DJが各州のご当地ソングを次々とかける。(中略)
みんな歌ったり踊ったりノリノリ。7月の共和党全国大会の葬式のようなロール・コールとは正反対だ。そして接戦州ジョージア州の番では同州出身のラッパー、リル・ジョンがサプライズで登場、聴衆と「後戻りはしないぜ!」と合唱した。
次に画期的だったのは共和党関係者が毎日登壇したこと。トランプが2021年1月6日、信者たちに連邦議会を襲?させた時、共和党の議員たちも一緒に殺されかけたが、その後トランプ彈劾に参加した共和党員たちは粛清され、党を追われた。
そんな人々が招待されたのだ。
「共和党は北朝鮮のようにトランブ個人崇拝党になってしまった」
そう嘆いたアダム・キンジンガー下院議員も共和党を迫い出され、民主党大会で演説した一人。
「トランプは強がっている弱虫です。大物ぶった小物です。信心深さを装った無信仰の男です。被害者ぶった加害者です。彼の根本的な弱さは共和党を脆弱にしました」
キンジンガーが「弱さ」を強調したのは、それがトランプと共和党を最も傷つける言葉だから。(中略)
民主党大会の三つ目の新しさはネット・インフルエンサー、それもZ世代の若者たちを招いたこと。(中略)
共和党大会も40人のインフルエンサーを招いたが、彼らは保守的政治アカウントばかりだった。しかし、民主党氏主党は民主党支持者に限らず、ランダムに200人を招待した。(中略)民主党としては、誰でもいいからとにかく拡散してくれる人が必要だったのだ。なぜなら、今のアメリカの若者はテレビは観ないし、そもそもテレビを持ってないし、新聞や雑誌も読まないから。(中略)
大会2日目。オバマ元大統領夫妻が登場。いつも温和なミシェルさんが「トランプが夫のことを「『ケニア生まれだから大統領の資格がない』とデマで傷つけたことは忘れません」と怒りを吐露して、こう言った。「黒人の仕事を移民に与えるな!と言ってるトランプが黒人の仕事を奪おうとしたのです」つまり、オバマとカマラの大統領の仕事を意味している。
 最終日はカマラ・ハリスの指名受諾演説。
「トランプはUnserious(不真面目)な男ですが、彼が再び政権を取ることはSerious(深刻)な問題です」ハリスはユーモアを交えながら、「生活必需品の値上げ禁止」などの中産階級のための経済政策を提示し、前進を強調した。何よりも彼女は約冶笑顔を忘れず、その声は明るさと希望と自信に満ちて堂々としていた。
これと比べると、共和党大会のトランプの演説は暗かった。演説というより脅迫とか呪文のように「移民が人を殺してる」「国を乗っ取られるぞ」「民主党が政権を取ったら共産主義になるぞ」「第3次世界大戦が起こるぞ」と恐ろしげなデマをブツブツうなりながら客席を睨みつけた。
ニールセンの調査によればカマラ・ハリスの演説は全米で2890万人が視聴してトランプのそれを上回った。
さて、そのカマラ・ハリスの演説を中継していたFOXニュースの記者席にトランプが直接電話をかけてきた。何度キャスターに制止されても「カマラは何も成果を挙げていない。私のほうが成果を挙げた」などと支離滅裂なことをうわごとのように叫び続けた。さすが、「弱い小物」!

コメント:現地時間10日(日本時間11日午前)の討論会は見逃せません。



2623.総裁と代表 9.10

今回の前書きは、素人の政治談議で失礼します。

・岸田内閣支持率。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6513101
コメント:上がったと言っても3%(以下に紹介するNHKの調査では5%減で多分そちらの方が現状に近い=素人の憶測)。連日の総裁選報道はまんま自民党の宣伝と同じ効果がある。多分岸田(または自民)にしてみれば、してやったりとほくそ笑んだことだろう。選挙になると自民はパワー全開、あらゆる手段を使う。そうでなければ総裁選で一人2億も掛かるわけがない。だから普通の(というよりまともな)やり方でこれを倒すのは至難の業だ。いくら小沢が苦渋の決断で、野田を担ぎ出したところで、自民党の選挙パワーを打倒できるとは思えない。

NHKの調査では、石破1位、小泉2位、高市3位だ。だが肝心の党内の調査は未だ分からない。でもメディアの後押しもあって、勢いがあるのは小泉だ。その小泉が自分が総裁になれば、すぐに解散すると言っている。これには二重の意味がある。党内の若返りを宣伝できることと、総裁選の結果(いわば信)を、今度は国民に問うことで、党内の不安定な立場を固めることになるからだ。そこで、仮に自民が過半数を取れば、小泉は、国の代表として(滝クリにどんな問題があろうとも)国民からお墨付きを得ることになる。

しかしなぜ立憲はこの時期に代表選をやるのか。しかも泉より若手を出すべきなのに、最有力候補が時代逆行で、しかも政党を分割した前科さえある超訳ありの人物を推薦。こんなあか抜けないセンスで、来るべき国政選挙で勝てるはずはない。今のままでは、衆院選は(野党が)負けるためにやるようなものだ。考えて見て欲しい。若い有権者にとって、野田立憲のどこに魅力を感じるというのだろう。しかも衆院選で負けたら、無理やり野田を担ぐ意味もない。衆院選で勝てない代表など無用の長物でしかない。

どうせ小沢が作った旧民主党だから、小沢が潰すのも仕方がないと割り切るべきなのかもしれない。一方で、立憲の支持率を上げる事が出来なかったのに、いかなる反省もない、あっけらかんとした泉を見ていると、怒りを通り越して、諦めの境地になる。

日本には(小沢が夢見た)二大政党制は結局根付かないのではないか。それに一番近づいたのは、自民党と社会党(+社民)の時代だったのではないか。なぜなら今はイデオロギーという言葉さえ死語の時代だからである(イデオロギーという言葉を私は好まない。だから政治思想という意味で理解している。それは学生運動に良い印象を持たなかった過去とも関係がある=自分は典型的な一般学生だった)。いまや社会主義と共産主義の区別もつかない人が大多数なのに、そのくせ共産党という名称だけで毛嫌いするというのは矛盾している。そういう時代に、保守だ革新だという区別をいくら論じても仕方がない。それどころかリベラルという言葉でさえ、死語になるのは時間の問題だ。しかもこの傾向は、日本だけでなく、世界中で政治思想や人間の価値観が冬の時代を迎えているようにも思われる。

総裁選+衆院選に話を戻すと、一周遅れの時代感覚しかない立憲のセンスは、もはや理解不能だ。これでは、野党連合もへったくれもない。折角の野党の好機だった、裏金問題はもはやどっかに飛んでしまった。メディアの関心は(自民党の)総裁選一色だ。しかもその裏金問題でさえ、元は神戸の教授が発見し、共産党が国会で問題提起して始まったものだ。部分的にしか立件しなかった検察も、現職の自民党政権を敵に回すことに神経を使ったことが推測できる。そういう時にこそ、野党が検察の背中を押すべきなのに、その努力は見られなかった。

結論を言えば、野党の立ち位置を整理し、上手に分業し、共同戦線を組むことが、本当の野党の一本化につながるのである。それが今は実にチグハグで中途半端な状態になっているように見える。問題を掘り起こし、政府を批判するのは、それが得意な共産党や令和新選組に任せて、立憲はいつでも自民に取って代われるように、まずは魅力ある人材をそろえ、新人は養成し、与党議員に相応しい知識と見識を備えさせる。その結果として、具体的な戦術はまず、影の内閣づくりである。国民が常に表の内閣と影の内閣を、政策面で比較できるように、常に政策の代案とその効果を準備して国会で提示できれば、国民にとって判断がしやすくなる。しかも国民が現与党に疑義の念を持ったら、間髪を置かず政権交代が出来る。国会で質問に立つ時も、直接攻撃は共産党などの切り込み隊に任せて、対案の提示に専念する方が良い。

以前の民主党は、実力が十分でないのに、突然政権が転がりこんできたので、新鮮さを除けば、実力不足(経験がないのだから仕方がないのかもしれないが)の内閣で、惨憺たる結果になった。蓮舫が暴れ回った記憶もある。自公さ政権の方が未だ政権らしい体裁だった。

ところで、岸田政権の最も恥ずべき部分は、なんでも省庁のいいなりになっていることだ。安倍政権でさえそんなことはなかった。菅が官邸で官僚の人事権を握っていたからだが、これは元はと言えば、小沢が実権のあったころに実現したことだ。しかもその時の反発は半端ではなく、(自民に恩を売りたい一心も手伝って)検察の小沢冤罪事件に発展した。ところが小沢が身の危険も顧みずに手に入れた官僚人事権を、棚ぼたの安倍政権では、こともあろうに、公益どころか、身内の利益の為に悪用したのである。人事権の私物化だ。黒川の定年延長事件がその一つである。

一方、安倍菅の後を継いだ岸田政権は、一転して官僚のいいなりだ。経産省の原発再稼働、防衛省の辺野古埋め立て、財務省の増税路線、総務省のマイナ押し付け、等々枚挙に暇がない。この状況は影の与党(ゆ党もしくは第二自民党の維新、国民民主、とは異なる)が突っ込み、提案できるポイントが満載の、絶好の機会なのだ。

というわけで、未来の展望も、命がけの決意も感じられない、日曜日のNHKの立憲代表選候補者の討論会など、全く見る気がしなかったという次第である。

関連記事:岸田内閣支持率。政党支持率。
https://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/
コメント:JNNの調査で自民はぬか喜び。NHKの調査で冷水。ちなみに政党支持率で、公明は、維新はおろか、共産さえ下回っているのに、危機感が全くないようだ。

関連記事:次の総裁に相応しいのは誰。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240909/k10014577121000.html

関連記事:次の立民代表に相応しいのは誰。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240909/k10014577131000.html

関連記事:立民代表選で相次ぐねじれ。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6513163



2624.事故調の意義 9.11

今回の前書きは朝日新聞(9.10)のオピニオン&フォーラムです。
原発事故後、変わらぬ日本「独立性と調査権限駆使し練った提言生かされず回帰」
元国会事故調調査統括 宇田左近

―2011年の原発事故を受け、政府・国会・民間・東電と、いくつもの事故調査委員会 ができました。その中で国会事故調は、どんな存在でしたか.

「当事者からの独立性は、政府と東電の事故調は弱く、国会と民間の事故調は強かったといえます。一方で調査権限は、民間と東電は弱く、政府と国会の事故調は強く広範だった。つまり、独立性と調査権限を兼ね備えていたのが国会事故調でした。だからこそ、その結論は海外からも信頼されました」

「委員10人は各党推薦で、私を含め調査実務を担った約80人は全員民間からの参加でした。政治家や政府関係者による接触も制限し、独立性を担保。調査権限では、いざとなれば国会に国政調査を要請できることが効き、広く協力が得られました」

「省庁の審議会と違い、結論ありきではありません。調査結果に基づき、委員全員が全体に責任を持つ形で報告書をまとめました。その結果、歴代の規制当局と東電の間で、津波や地震、過酷事故などの対策を見直す機会が何度もあったにもかかわらず、してこなかったことから『人災』だったと結論づけたわけです。また、いつしか規制 当局が圧倒的に情報量が多い電力事業者の言いなりになってしまっていたことを『規制の虜』という言葉で指摘しました」

―その後への提言もありましたね。

「提言は@規制当局に対する国会の監視A政府の危機管理体制の見直しB被災住民に対する政府の対応C電気事業者の監視D新しい規制組織の要件E原子力法規制の見直しF独立調査委員会の活用ーの七つでした。国会事故調は、実質半年で報告をまとめることが法律で定められており、12年7月に報告書を両院議長に提出すると翌日には解散しました。以降のボールは 国会にあると考えています」

―提言の実施状況を、どう見ていますか。原子力規制委員会という独立性の高い規制組織は整備されたものの、事故や原子力のあり方について国会に検証や監視・議論を続けていくことを求めた提言は、ほとんど実現していないようにみえます。

「提言@に沿い、衆院原子力問題調査特別委員会が13年に設置されましたが、実質的な議論の機会は限定的に思えます。何を実施したのか、しないのならばその理由などを、国民に明らかにすべきです。関係者の証言記録を含め、集めた膨大な調査資料は、今も非公開のまま国会図書館に眠ったままです。提言の背景や趣旨について国民の理解を深めてもらうためにも、扱いを早急に判断すべきです」

「米国では、スリーマイル島の原発事故の際に民間人を活用した独立調査委員会が報告書をまとめ、規制当局と原子力事業者の関係見直しにつなげていま す。英国は、狂牛病やイラク戦争などの重大事には独立委員会で政府対応を検証し、批判も含めて報告書にしています。日本の国会も、政府が言ったことだけを議論するのではなく、自分たちで対案を出して議論していくということが大いにあっていい。そうでないと、世界の信頼はなかなか得られません」(中略)

「企業に限らず国会も政府 、独立性と調査能力のある人を活用しながら、複数の議論ができるような材料を作るのが、日本の民主主義の進歩のためにも大事だと考えています」

―原発政策では、そうした議論もないまま政府が原発回帰を鮮明にして経済界が歓迎し、世論もそちらに何となくなびく状況に見えます。

「経済界が原発再稼働の推進を主張するのには、エネルギーコストを抑えたい、脱炭素を進めたい、電力会社から発注を受けたい、といった理由があります。これは、利害関係者の主張です。かつて国会事故調は、東電が『原発が止まること』を経営上のリスクとしており、『原発事故のリスク』を経営として 考えていなかったことを指摘しました。経済界は今、原発のリスクについて考えたうえで主張しているのでしょうか」

「国民としても、この事故からの学びを踏まえたうえでの判断力は身についているのでしょうか。メディアも含め、政府あるいは電力事業者、産業界の言い分を、そのまま疑うことなく 受け取ってしまうマインドセットは変わったのでしょうか。安全神話や原子カムラ、危機管理・ガバナンスの不全といった元の流れに、なし崩し的に戻ることはないのでしょうか」

―「変わらぬ日本」を嘆きたくなります。何か解決の糸口はありませんか。

「国会は、今こそ提言Fの『独立調査委員会の活用』を考えるべき時だと思います。原発事故は今も続いています。今後も、独立した第三者によって継続して厳しく監視・検証されるべきです。事故調で扱わなかった、廃炉の道筋や使用済み核燃料の問題もそうです。さらに言えば、経済政策の評価や新型コロナ対応など、国民生活に重大な影響のあるテーマも対象になり得ます」
(以下略)
・我々は何を学んだ。
https://digital.asahi.com/articles/ASS9513X4S95UPQJ00LM.html?iref=comtop_Opinion_02

コメント:この紹介はインタビューの一部ですが(全体は朝日新聞を参照願います)、大事な指摘が2つあります。ひとつは、全国民に関わる重大な案件については、政界・財界から距離を置いた第三者委員会による、科学的で論理的、かつ国民の視点に立つ調査が必要だという指摘。もう一つは、原発再稼働は岸田の独断だけでなく、関係省庁や業界の強い後押しがあるという事実関係に加えて、そういう政官財が作り上げた空気に、いつの間にか、国民まで押し流されているのに、その自覚がないという現状に関する認識です。だからと言って、一般市民には何から何まで、自分で正しい判断をすることはできない。だから国民は、国民に代わって、専門知識のある人達に委員会を立ち上げてもらい、委員には検察と同等の権限を与え、広く、深く調査して、結論を国民に示して欲しいということなのです。



2625.ルールと息苦しさ 9.12

今回の前書きは朝日新聞(9.11)耕論「ル−ル守れと息苦しさ」から。

@「攻撃 嫉妬と不公平感から」 住吉雅美(法哲学者)

(前略)バッシングされるのは当たり前の光景になりました。要請やモラルが社会の同調圧力によって強い縛りとして広まり、時に法律以上に厳しいまなざしが向けられています。

厳しさの背景には、嫉妬と不公平感があると私は考えています。「自分は守っているのに」「自分は我慢しているのに」という思いが、逸脱者への攻撃という形で強い制裁になっている。SNSでは、実は少数の執拗なネットユーザーに起因するという説があるものの、「自分こそが正しい」とばかりに「ルールを守れ」という側の声があふれ、異論を差し挟めない状況に陥っています。

経済学者のアダム・スミスは、人間の中には「公平な観察者」が存在していると記しています。客観的に自己を観察し、「これをやったらどうなるか」を判断する。ルールを守らせるのは自分自身というのが理想です。でも今は、別の力が大きくなりすぎているように感じています。

コメント:実は私もひがみ根性では引けを取らないので、どちらかというと攻撃側になりやすい。論破と叫ぶ、維新の創立者、あごひげや奇妙な眼鏡の若者も同類でしょう。でもその感覚は偏狭なもので、余裕や寛容とは真逆のものです。日本人(米国人も)の精神がどんどん退化しているように感じます。寛容から悲寛容へ。成熟から未熟へ。思いやりから独善へ。しかもここで言う別の力、それが世間に広まりつつある極右(今が戦前)の風潮と無関係ではないような気がします。コロナの時のマスク警察と同じです。もっと言えば戦時中の隣組です。


A「閉塞・傍観 米大統領選と比べて」佐野和彦(神奈川県)

日米両国で、政治のトップを選ぶ動きが同時に進んでいる。自民党総裁選と大統領選。国民の目線で比ベると、「傍観と熱狂」「根回しと主張」「閉塞と公開」と感じます。

ハリス氏を指名した米民主党全国大会の人々の熱狂からは、「我々のために我々の大統領を選ぶのだ」という心が塊のように見られました。 翻って我が国は、マスコミ報道で推薦人集めなど内輪の話題が続き、党員や国民は蚊帳の外です。政治の仕組みが違うから仕方がない面もありますが、各国で政権交代が容易に起こる状況を見ると、日本の選挙制度の問題を思わざるを得ません。

また、大統領候補は国民全体に向け、経済・社会など多岐にわたる課題や中東・ウクライナの問題まで、自身の考えを主張します。一方、総裁選では満足な主張を聞けず、心に響くものがありません。出馬するか否かが大問題で、国をどうしていくかは二の次なのでしょうか。

最後は、米国では選挙の準備段階から公開討論会やテレビ討論会が活発なことです。日本では形式的で数も少なく、国民には見えないところで決められていくようです。総裁の選ばれ方に憂慮する日々です。

コメント:首相は公選制にするべきです。小沢が主張する二大政党制も、本当はここから始めるべきだったのです。与党の代表が絶対的権限を持ち、暴虐、理不尽の限りを尽くす(安倍晋三を見よ)。それが出来るのは、国会で野党がいくら反対しても、与党の多数で押し切られてしまうからです。言い換えれば、日本の政治システムは、首相独裁政治体制なのです。それを改めるには、首相を公選制にするしかないのです。


B「平和の継続へ 歴史に真摯であれ」田川清(熊本県)

11年前、安倍晋三首相は国会で、過去に日本は侵略や植民地支配をしたのかを問われ、「専門家、歴史家に任せるべきだ」と述べた。50年前の国連総会で、日本も賛成して侵略の公的な定義を採択しているにもかかわらずだ。なぜ、国家の約束事をないがしろにする言動がなされるのか。国の責任で、過去の戦争の総括をしていないからではないか。

先の大戦では、首相直轄の「総力戦研究所」が「日本必敗」の結論をまとめたが、政府はこの貴重な報告を一顧だにせず、敗戦に至った。

次期自民党総裁は終戦80年の時点の首相になると思われる。就任後、平和の継続に力を尽くしてほしい。 歴史に倣い、各界の若き頭脳を結集して平和研究所を設け、まず、高齢の戦争体験者から多くの証言を集め、先の戦争を被害と加害の両面から徹底的に分析する。それを基に、79年続いた平和をどう継続していくか、特に防衛費のGDP比や食料自給率など国の骨格の在り方の報告を得る。これを国民で広く議論し、「新しい戦前」を生じさせないことを国民的合意にしなくてはならない。

歴史に真摯に対峙する思考と行動力を持つ人が総裁になるよう願う。

コメント:若者の意識の劣化が気になります。戦争はビデオゲームと同じように考えている節がある。平和研究所の案は抜群です。同研究所の設立は、平和憲法の国として必然だと思います。


C「正しいことを言い 堂々と実行を」佐藤美代子(東京都)

自民党の総裁に求めたいのは、経験や政策の前に、正しい判断ができるという「人としての基礎」だ。会見で立派な発言をしても、党内議員の顔色をうかがうようでは実現はおぼつかない。「白は白、黒は黒」と言い、堂々と実行する潔さと度量が必要だろう。

特に今回の裏金事件は、党の膿を出し切ってほしい。しかし、総裁を目指す候補のほとんどが、処分された議員の公認の是非について歯切れが悪い。

議員たちは事件にふたをしてくれる人を総裁にしたいのだろう。今の自民党には正しいことを言えない土壌があると感じる。この「悪の温床」を壊さない限り、党を刷新できないと思う。

森友学園の問題を国会で追及されるなどした安倍晋三元首相の「遺志を引き継ぐ」とか、裏金事件で役職を外された安倍派議員の登用を訴える議員には総裁になってほしくない。問題ある政治が何世代にもわたり影響するからだ。国民の気持ちに立ち、有言実行できる人が国のリーダーに、と願う。

コメント:遺志を引き継ぐとは小林と高市のことだろう。そもそも現在の自民党に社会正義の感覚はない。民主主義の理念もない。護憲の精神さえない。あるのは欲だけ。自己顕示欲、権力欲、金欲、物欲(カニ等)。ちなみに悪の温床とは、安倍派のドン、森喜朗その人のことではないか。宗教団体(日本会議)とも関係があり、体調不良なのに、なぜ引退しないのか、さっぱり分からない。



2626.分断とリーダー 9.13

今回の前書きは朝日新聞(9.12)交論「トランプ支持の底流」から

【信仰マッチョ化 暴力的な忠誠】森本あんり(神学者 東京女子大学長)

―トランプ氏がなぜ支持されるのか。ご専門である宗教の観点からは何が見えるのでしょうか。

「よく知られているのは、トランプ氏の有力な支持基盤の一つにキリスト教福音派があることです」

ー福音派とはどういう集団なのですか。

「米国はキリスト教、特にプロテスタント信仰を精神的基盤にした国家です。プロテスタントのうちの非主流派が総称的に福音派と呼ばれ、20世紀後半以降、存在感を増しています」(中略)

―そうした宗教的な違いは、いまの米国政治やトランプ支持の現象にどう反映されているのでしょう。

「進歩派と反進歩派の対立として表れています。20 世紀後半以降の米国では、平等な社会の実現に向けて女性や少数派の権利を尊重する流れが強まりました。他方それは、一連の流れを知的エリートによる進歩的な改革と見て反発する動きも引き起こしました。福音派の伸長は、エリート支配が固定化することへの反発や進歩に対する反動でもある。それがトランプ氏への支持とつながっています」 (中略)

「日本でよく理解されていないのは、それが彼らのキリスト教信仰と深く関わっていることです。彼らの中ではキリスト教と男性性の賛美、トランプ氏への忠誠がすべてつながっています」 (中略)

「 西部開拓(19世紀)が終わり、世相が軟弱化したことに反発を覚えた人々が、宗教を男性的に作り替える動きを進めたのです」

「強い忠誠心を重視し、信仰を『男のロマン』とみなす運動で、『筋肉質のキリスト教』とも呼ばれます。知的で洗練された都市文化への反感を基盤にする点で、現代の福音派や共和党支持者に重なります」 (中略)

「米国史を振り返ると、奴隷制に反対したり様々な権利を拡張したりする運動の背景には、キリスト教の改革運動がありました。困難な道ではありますが、宗教が米国社会を自省的・批判的に見直す契機になる可能性に期待しています」


【反エリート 不満と希望を託す】矢口祐人(アメリカ文化研究者)

―トランプ氏が根強い支持を受け続けていることをどう見ていますか。

「トランプ氏のような政治家は、米国ではまったく新しい存在ではありません。トランプ支持の根底にあるのは反知性主義です。反エリートのレトリックを使って、地方の人々の心をつかむ政治家はこれまでも数多くいました。反移民の主張も19世紀からずっとあるもので、選挙のたびに持ち出されてきました」(中略)

―しかし、トランプ氏の人気は際立っています。従来の反知性主義の政治家とどう違うのでしょう。 (中略)

「特にキリスト教原理主義者たちは、トランプ氏を神に選ばれた存在のように見ています。他の保守派政治家では代わりは務まらないので、共和党は『トランブ党』になってしまったJ

―2016年と現在を比べてどうでしょうか。

「さらに米国社会の分断が進んだと思います。MS NBCなどのリベラル系メディアを見ている人と、保守系のFoxニュースを見ている人では、まったくの別世界に生きています。コミュニケーションが成立しない。保守派の世界に生きる人たちにとっては、トランプ氏は絶対的な存在になっているのです」

「都市部と地方、白人と非白人などさまざまな分断がありますが、特に大学に行く層と行かない層では、未来への展望がまったく違うという調査結果があります。大学に行かず、社会の現状に不安と不満を持つ人たちには、トランプ氏が大きな希望なのでしょう」

―分断の稿渡しはでき ないのでしょうか。

「今回の大統領選で興味深いのは、民主党の副大統領候補になったウォルズ氏です。(中略)一方で、ウォルズ氏やハリス氏が、トランプ氏たちをWeird(ウィアード)、つまり『変な』人たちと呼んでいるのは気になります。トランプ氏はウィアードでも、その支持者がすべてウィアードなわけではありません。逆にトランプ支持者の反感を買って結束させ、分断が深まるだけでしょう」

―米国社会に、「トランプ的なもの」は生き続けるのでしょうか。

「今回の大統領選の結果がどうあれ、次の28年の選挙でも、トランプ的な人は出てくるでしょう。とはいえ、大統領選の総得票数を見ると、最近は一貫して民主党の方が多い。都市部の人口が増え、地方が衰退していくので、この傾向は変わらないでしょう」。

―長期的にはリベラルの方向に進んでいくと。

「民主党も一枚岩ではありません。それが明確に出たのがパレスチナ問題への対応です。民主党支持者でも若い世代はパレスチナ側に立つ人が多いのに、民主党大会ではイスラエル支持一色でした。参加者はUSAと連呼して愛国心を前面に出し、まるで共和党大会のようでした」

「東海岸や西渾岸の名門大学はリベラル色が強いとされてきました。しかしハーバード大では、イスラエルを襲ったイスラム組織ハマスの非難声明をすぐに出さなかった黒人女牲の学長が、反ユダヤ的な行動を許容したなどとして辞任に追い込まれました。大学はイスラエル支持者が多い富裕層からの寄付に支えられています。リベラルな価値観を教えながら、新自由主義的な経済の論理に依存していることの矛盾が大きくなっています」 (以下略)


続いて科学季評『サル型ゴリラ型 群れを率いる資質 ヒトが選ぶべきリーダーとは』山極寿一(霊長類学者)から

自民党の総裁、立憲民主党の代表を決める選挙が行われる。日本を代表する与党と野党のリーダーを決めるのだから、当然人々の関心は高まる。気候変動による自然災害が頻発し、軍事衝突によって国際的な緊張が高まり、VUCA(変動性、不確実牲、複雑性、あいまい性)の時代と呼ばれる現代に、どのようなリーダーがふさわしいか、じっくり考えなければならない。(中略)

ゴリラはメスが生まれ育った群れを離れて繁殖をするので、オスはメスに認められなければ群れをつくれない。ボスとは違い、力だけでは群れを率いることはできないのだ。リーダーの条件は、メスと子どもの安全を守ることである。これができなければ、メスたちはさっさと別のオスのもとへ去ってしまう。だから、ゴリラのリーダーはのんびり構えているように見えても、常にあたりに気を配っており、子どもが悲嗚を上げたら間髪入れずに飛んでくる。メスや子どもどうしのいさかいを仲裁し、外敵には身を挺して果敢に立ち向かう。だから、ゴリラのリーダーは年老いても群れを追われることなく、成長した息子と力を合わせながら群れを先導する。これがリーダーの本質だと私は思う。

かつて、人間の世界でもマキャベリの「君主論」のように、国の首長になるためには人徳ではなく、ボスのようなパワーポリティクスの戦略論が必要とされたことがあった。だから君主には権力を示す衣装や宮殿が必要だった。しかし、それは着脱可能な飾りであり、国民主権と基本的人権がうたわれる現代では、外見ではなく、平和と安全、福祉に気を配るリーダーが求められる。その条件とは何だろうか。

それは内憂外患を適切に処理できる能力だ。国内ではささいなトラブルでも機敏に察知し解決策を講じる。国外では自国の歴史と立場を主張して毅然とした態度で臨む。不幸はグローバルにやってくるが、幸福は人それぞれ違う。例えば気候変動による自然災害はグローバルな現象だが、対処の仕方は地域や集団ごとに異なる。的確に対処 するには敏速できめ細かな配慮と巨視的な視野が必要だ。もちろんそれはリーダーの個人的能力を超える。だから リーダーは有能な部下をいつも身近に置き、彼らが身を挺して働こうという気を起こさせるだけの魅力を備えていなければならない。民主主義とは多数決により押し切ることではなく、どんなささいなことにも目を向けて熟議を怠らない仕組みだ。民意をおろそかにし、派閥や党の方ばかり向いているリーダーではこの時代を乗り切れない。 (以下略)

コメント:安倍晋三がいかに最低のリーダーだったかがよく分かります。無論知事の斎藤なにがしもです。百合っぺもです。


前書きが長くなりましたが、良い機会なので、本を一冊紹介します。と言ってもだいぶ前に出版されたので、既にお読みの方も多いでしょう。

【くじ引き民主主義 政治にイノヴェーションを起こす】吉田徹 光文社新書

今回は、米国の分断に関する箇所のみを紹介します。

第一章 作動しない代表制民主主義
(中略)
『高まる党派的分断』
社会の分断も、代表制民主主義を機能不全に陥らせる。アメリカでトランプ大統領が、ヒスパニック系やイスラム系市民への侮蔑的発言を繰り返し、リベラル系メディアを攻撃し、さらに新型コロナウイルスの脅威を過小評価しても、これに少なくない支持が集まったことは、同国のいわゆる「分断」を改めて印象付けるものだった。

「分断」という言葉は、日本のメディアでも瞬く間にキーワードとなったが、これは何もトランプ大統領がもたらしたものではなく、それ以前からアメリカに深く根を下ろしていたものだ。共和党支持者と民主党支持者は、出生環境、ライフスタイル、学歴、居住地などですでに大きく分かれていたが、対立が顕在化したのは1990年代のことだ。

まず、移民増加に伴って人種による党派性が強化されていった。多くのヒスパニックやアジア系移民が民主党支持者となったことで、今度は共和党が白人層に集中して支持基盤を求めるようになった。宗教も影響し、大きな影響力を持つ福音派が共和党支持で固まるようになった。

さらに両党ともに、自党が有利になるような選挙区割りを進めたため、選挙区内の多様性が失われ、候補者は中庸で穏健な態度よりも、自党支持者に受けのよい政策やスローガンを繰り返すようになった。今では、アメリカの二大政党による「分極化」や「部族化」が当たり前のこととして語られるようになった。

こうして、議会のあるワシントンでは.1990年代から「分割政府」、すなわち大統領と上下両院の多数派が異なるという状況が常態化し、これに伴って両党が予算案等で合意できず政府機関の閉鎖が生じるようになった。両党間の対立に呼応するように、有権者の側も世論調査で共和党支持者、民主党支持者のイデオロギー的距離は拡大していき、人工妊娠中絶の是非、人種的・性的少数者への差別、死刑などの政策で、全く異なる志向を持つようになった。バンデミックにあっては、マスクを着用するかどうか、ワクチンを接種するかどうかの是非についてでさえも、共和党支持者と民主党支持者の間には態度に大きな違いが生まれるほどに、である。

アメリカの分断は、同国の多様性や政党の戦略によるところが多い。それでも、ヨーロッパ各国でも政党制の多党化と分極化が進んでおり、選挙での保革ニ大政党の得票率は減少、代わって右派・左派ポピュリスト政党や緑の党、リベラル政党などの間で有権者の支持が分散する傾向にある。

確かに複数の政党が議席を求めて競い合うのは、民主政治が健全に機能していることの証左でもある。しかし他方で、民主政治には最低限合意できる価値に基づく共通のルールを尊重し、互い意見を認め、自らの敗北を一時的にでも認めるという寛容と相互承認の精神がなければ「自分たちのことは自分たちで決める」という民主主義の「自分たち」が分裂してしまう。トランブ大統領が当初から吹聴し,多くの共和党員が未だにそう信じているように、2020年のアメリカ大統領選が不正に行われたといったように、民主的な決定のためのルールそのものを非難するような事態になると,代表制民主主義は機能しなくなってしまう。

また,やはりトランプが広めた「フェイク・ニュース」という言葉に見られるように、確実な情報は存在しない、物事はみる立楊によって異なるという見方が広がってしまうと、公共的な事柄について共同で決定することは、極めて難しくなってしまう。確かに、政治信条や価植観によって判断基準は違うだろう。しかし、そうした差異をすり合わせること、つまり相手を説得するとともに、相手から説得されて、初めて共同的な決定が可能になる。互いに共有できるものが客観的な事実や根拠を作り出し、これに基づく決定であるからこそ、相互の合意は尊重されることになるからだ。 (以下略)



2627.西の斎藤、東の小池 9.14

今回の前書きは朝日新聞(9.13)耕論「暴走する首長」です。

「政策よかろうが行動見て」津野香奈美(パワハラ研究者)から
首長も一般企業の管理職も、パワハラする人の特徴は共通しているように見えます。異なるのは、手にしているパワーの大きさでしょう。首長の場合パワーが大きい分、悪い影響も大きくなり、犠牲者も増えてしまいます。

あらゆる組織にとって重要なのは、共感性の欠如や強い支配欲、嗜虐性など邪悪な性格特性を持つ人に決してパワーを与えないことです。「地位が人を作る」からパワハラをするのではなく、そういう人がパワーを持つからいけないのです。

しかしトップが暴君の時、「パワーを与えない」のは難しい。さらにそういう揚合、その組織は有害な人が活躍しやすくなります。「破壊的リーダー」「影響されやすいフォロワー」「助長的な環境」の三つは「毒の三角形」と呼ばれています。誰かをつぶす 人がいたとしても、組織のトップが許さなかったり、それを止める人がいる環境だったりすれば、暴君化は止められる。しかしトップ自身が破壊的リーダーであれば、ついていく人も多く、暴走を止める力は弱くならざるを得ません。(中略)

ハラスメントする人を擁護する言説のトップ2は「仕事熱心」と「悪気はない」です。ここには大きな誤解があります。人格や背景にある要因から切り離して、行動を見なければいけません。どんなにやる気があるリーダーでも、罵倒して相手が会社に来られなくなったら処分されるべきです.

首長も同じです。熱心だろうと、政策がよかろうと、不適切な行動を処分できる仕組みが必要です。選挙で選ばれているため簡単ではありませんが、議会で不信任を決議したり、条例で定めたり、何もできないわけではないはずです。パワハラは人の尊厳を侵害する、非常にダメージの大きい行為です。危険な人が上に立った時のための事前の備えが必要です。
(聞き手・田中聡子)

「イメージだけで選ばない」西岡研介(ノンフィクションライター)
斎藤元彦・兵庫県知事は職員の間で「暴君」って呼ばれてたって? けど、それこそ「暴君」に対して、失礼な話とちゃいますか。

たとえば国鉄分割民営化後、JR東労組の絶対権力者となり「妖怪」と言われた松崎明氏。彼は間違いなく「暴君」でした。(中略)

それに比べりゃこの知事は、地位を利用して「下」の人に嫌がらせするだけの、「自意識過剰なイジメっ子」でしょ。信念も目的もなにもない。エレベーターの扉が閉まっただけで機嫌を損ねた?少し歩かされたぐらいで激怒した? 「小物」感が半端ない。

根底にあるんは「オレ様 知事だぞ」。12日までに県の全議員から辞職を突きつけられたけど、本人には辞職する気などまったくない。だって、彼の人生最大の目的は「知事になること」やったし、目下の最大の目標は「知事で居続けること」やから。

国会議員は、首相といえども、党や派閥から、多少なりともブレーキがかかる。けれども大統領型の首長は絶対的権力者。暴走しだしたら止められへんし、すぐに引導を渡せるもんもおらん。その恐ろしさを、有権者はちゃんと理解してないんとちがうかな。

僕も兵庫県民なんで分かります。旧自治省出身知事が2代35年も続き、県政に閉塞感があったんは事実で、「改革」や「刷新」を掲げるシュッとした“旗手”に 期待をかけたんやろうね。東京都知事選で石丸伸ニ前安芸高田市長が躍進したのも根っこは同じでしょ。

政治は本来、地味な利害調整の積み重ねやのに、維新の会が輩出してきたような、トップダウン型の「強い」リーダーを持ち上げてきたメディアの責任も大きい。(中略)

けど、さすがに今回は多くの人が学んだんとちゃいますか。「何か変えてくれそう」というイメージだけで首長を選んだらロクな事にならんと。亡くなられた職員の冥福を祈りつつ、これを教訓とするしかない。次は間違わんようにね。
(聞き手 編集委員・高橋純子)

コメント:同じことを東京都民に言いたい。愚かな都民が、自己顕示欲を取れば何も残らない中身のない知事を選ぶ。でもその責任は、宣伝とメディアに惑わされた都民にある。
ところでいまや著名人となった斎藤君は、自分が国民(県民ではなく)にどう思われているか想像したことはあるだろうか。現時点で1億3千万の全国民に嫌われ、蔑まれている。少なくとも滅多に経験できることでないことだけは確かだろう。

関連記事:兵庫知事への苦情やまず。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6513568

関連記事:想像力の欠如が絶望的。泉との違い。民意の支持なし。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d9b92859635309cc1bce4b43276ae1d71415ef9

関連記事:お台場に世界最大級の噴水整備。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6513569
コメント:また都民のお荷物、小池百合子の無駄遣いが始まった。都庁のプロジェクションマッピングだけでは足りない(しかも懲りない)らしい。空中に上る水柱を前にして、嬉々としてはしゃぐ彼女の姿が目に浮かぶようだ。都の宣伝の為だと言うのだろうが、どの都民がそんなものを望むと言うのか。しかも庁内で批判する者が出ようものなら、女帝人事で平気で飛ばすだろう。相手が記者なら出入り禁止にするだろう。それが小池の独裁体制だ。そもそも噴水の発想はスイスのベルン湖だから成り立つ(淡水)のであって、それでさえもはや誰も話題にはしない。スイスの噴水も常時機能しているわけではないし(私が行った時には放水していなかった、ましてそれをお台場の海水でやることにどんな意味があるのか分からない。仮に水道水でやるとしたら、この水資源の足りない時にとんでもない話だ。小池の場合、発想がいつも他人の物まねという点が、更に情けない点である。コロナ対策でさえ、大阪の真似で終始した記憶がある。しかも今回の計画に掛かる費用は、又も億単位だろうが、都民が一生かけて稼ぐ金も、彼女の眼にははした金としか見えないらしい。暴君という意味では、西の斎藤に東の小池だが、金額が少ないのは圧倒的に西の方だ。カニで満足してくれれば、小池百合子の道楽にくらべれば安いものだ。彼らは共に、もはや人災を超えて公害の域に達している。個人がこれほどの害を住民に与える(斎藤の場合は2名の職員の命だから、更に見過ごせない)事が可能だということは、知事の権限の見直しが必要だということである。せめてこれが東京都年末大花火大会なら、毎年見直しも出来るが、恒久的な設備となると、維持費だけでも馬鹿にならない。



2628.猿のライアー 9.16

今回の前書きは週刊文春(9.19)町山智浩の言霊USAです。
「すべての仕事の107%は不法移民に奪われている」から

(前略)さらにトランプは黒人の雇用について話した。
「バイデン政権下でアフリカ系アメリカ人は職を失っている。聞いたことはないかもしれないが、最新のデータがある。黒人のすべての仕事、107%くらいは不法移民に奪われているんだ!」

いや一、さすがに聞いたことないなあ。だって 107%って「すべて」以上じゃん。その7%はどこから奪ってるの? 実際はアフリカ系の失業率はバイデン政権下で下がり続けている。

ひどい遊説をしながら、トランブはSNSでもっとひどいデタラメを投稿し続けた。(中略)8月29日、トランブはスーパーマンの顔を自分と入れ替えたコラージュを拡散。もはや幼児退行を始めたのかな?

同じ頃、カマラ・ハリスはCNNのインタビューで「トランブはあなたがアフリカ系だとは知らなかった、と言っていますが、それについてご意見は?」と聞かれ、笑顔で「次の質問を」といなした。アホな言いがかりの相手をする必要はない。

あ、ちゃんとした質問にはちゃんと答えなきゃね、河野太郎さん。

コメント:嘘つき(ライアー)という表現は、米国では最大級の侮辱だと言われている。ならば口から出まかせのトランプを何と呼べばいいのか。一方でトランプ教の信者達の思考には測りがたいものがある。ハリスはペットを食べないでくれと書いた猫の写真のプラカードを持ち出す始末。討論会で、番組のMCが、そんな事実はないと言っているにも関わらずである。
今、人類はかつてないほど深刻な精神の危機、もしくは後退の時期にあると思う。常識は通用せず、はびこるのは論破と称する屁理屈ときめつけだけだ。そこに嘘情報(フェイク・ニュース)が加わるのだからたまったもんじゃない。
最近の欧州を見れば分かるように、世界は両極端に分裂してゆく。そうやって大地が傾いた状態では、もはや自分が平らな場所に立っているのかどうかさえ、分からなくなっているに違いない。
極端で不安定な世界では、真実や協力、調和などは意味をなさない。自分が考える正義だけが正しく、カルトの教祖の言うことだけが絶対となる。信者はただそれに従っていればいい。そこにすがっていれば、魂の平安が得られるからだ。しかしそういう人間は、主体性のある個人どころか、選択の自由を放棄し、なにも考えずに崖に向かって、一斉に行進するレミングの群れの一匹と変わらない。
とうとう米国も、世界最大の蒙昧な(国民の)国に成り下がってしまったのか。しかもその背景には、国民の経済格差を拡大した新自由主義があり、それが社会の分断を加速している。だからこそ、新自由主義を無批判に日本に持ち込んだ、小泉純一郎+竹中平蔵の罪は万死に値する。小泉進次郎が、間違ってもそれを引き継ぐことなどあってはならない。日本を、精神的に荒廃した米国(カネが全て)の後を追う国にしてはならないのである。



2629.万博への直言 9.18

今回の前書きは朝日新聞(9.18)耕論「万博への直言」です。
「開催前に問題点の検証を」松本創(ノンフィクション作家)から。

大阪・関西万博には問題が山積しています。

代表的なものとして、会場建設費は当初の1250 億円から2350億円に膨張し、海外パビリオンの建設は大幅に遅れ、参加国が独自に設計する「タイプ A」の出展は60カ国から47力国に減りました。3月には、会場内の別の建設現場でガス爆発が起きました。

大半は会場の大阪湾の人工島・夢洲に起因します。廃棄物を埋め立てた軟弱地盤、交通事情の悪さ、地中可燃性ガスの存在などです。島を所有する大阪市側はこうしたリスクを認識していたはずですが、2016年に松井一郎・大阪府知事(当時)の提案通りに夢洲が会場に選ばれました。

背景には、夢洲で先に動いていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致計画があります。バブル崩壊で頓挫した湾岸エリア開発計画に代わる振興策で、10年代に松井氏や橋下氏(元大阪府知事・大阪市長)ら維新の会が主導しました。維新が万博誘致にも積極的だったのは、夢洲のインフラ面などを一挙に整備して開発を加速させる思惑があったからです。

夢洲特有の問題を把握しながら、軌道修正せずに突き進む。大阪府・市の両卜ップが維新、両議会でも維新が圧倒的多数を占める一強体制のもとで、政と官の線引きが失われています。

他方で、運営主体の日本 国際博覧会協会の悪しき官僚体質にも問題があります。縦割り閉鎖的で、責任の所住も不明確。(中略)

深刻なトラブルが続出する現状を見れば、準備段階 での「失敗」は明らかです。(中略)終われば「開催して良かった」という空気が何となく生まれ、関わった人たちは 評価を都合良く語ります。 不透明な意恩決定や、なし崩し的に進められた事業の過程が詳細に検証される機会はほぼなく、「もう済んだこと」として見過されてしまう恐れがあります。

そうなる前に、批判的に問題点を検証し、事前に指摘しておくことが重要です。閉会後に汚職や談合の事件が相次いだ東京五輪の顛末を見ても、その必要性は明らかでしょう。厳しい評価なくしてアップデートはできません。このままでは、本番で本当に失敗してしまうと思います。(聞き手 岡野翔)

コメント:大阪府民は、いい加減に目を覚ましてくれないものか。府民は本当にカジノを望んでいるのか。それとも、それは欲の皮の突っ張った大阪の財界が望んでいるだけなのか。府民はこの機会に、最近の兵庫県知事の推薦問題を含め、維新がどんなことをしてきたかを冷静に見直してみて欲しい。何かといえば意地を張り、2回も3回も大阪都構想を持ち出す執拗で偏狭な姿勢のどこに府民の民意を尊重する姿勢があるのか。コロナで日本最多の死者を出した都道府県が、(維新の)大阪であったことも忘れられない。
自分がやってきたことを棚に上げて、TVで偉そうなことを言う橋下も、斎藤知事も、自我肥大という意味では同類ではないか。

関連記事:兵庫県議会が解散すれば、肝心の知事の違法行為は闇の中。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0d74924c00cc520c0dd87d202ce08121d24ab83?page=1



2630.立憲内の共闘 9.20

・恩讐を超えて共闘する立憲2人。
https://digital.asahi.com/articles/ASS9C1601S9CUZPS001M.html?iref=comtop_Rensai1_02
コメント:野田は自分は鯉ではなく、どじょう(庶民的)だと言うのが口癖だが、残念ながらその言葉を額面通りに受け取ることはできない。その代表例が国民の反対を押し切った消費増税だった。前回の野田政権では、事実上有能な側近に支えられていたに過ぎない。体質もどちらかといえばば独裁だ。おそらくまた野田政権が出来たら、官僚諸君は大歓迎だろう。なにしろ勝次官の時のように、自分達の言うことをきく人形が、ネギを背負ってやって来るのだから。他にも役者はいるのに、今回はあまりにもさみしい候補者の顔ぶれだ。女性なら辻元だっているだろう。こうなればせめて枝野の復活に期待するしかない。但し残念ながら、小沢が応援に回ったこともあって、野田党首が誕生する確率が極めて高い。仮にそうなれば、一層自民党に近い野党になってしまうおそれがある(反リベラル色)が、その時に、野田に出来るせめてものことは、維新を取り込むことだ。体質が近いのだから出来るはずだ。しかし、立憲は、なぜ共産党の支持率が公明を上回っている事実を認めようとしないのか。そこにも民意があることに、なぜ気が付かないのか。ちなみに我が家の塀には、巨大な立憲の候補者のポスターが貼ってある。今のところ、政党として他に選択肢がないからだ。場所を貸して気が付いたのは、防水になっていて、雨にも強いということだ。どうでもいいことだが。

・強権の副知事。
https://mainichi.jp/articles/20240918/k00/00m/040/247000c
コメント:しかも職員でもある副知事の細君には、配転で異例の優遇措置。違法行為に、依怙贔屓。それにあのお粗末な泣き真似。こうなると副知事もただでは済まされないだろう。百条委員会だけはご勘弁と言って逃げ回った理由が分かる。

・マイナ保険証69%で不具合。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/355193?rct=national
コメント:使い物にならないという実態をなぜ直視しないのか。無理やり国民に使わせるより、システムの見直しが先だろう。自分達の面子を優先して、国民に我慢を強いるな。しかも元凶の総務省は知らんぷり。当時の高市を含めて。 ・原発新増設の巨額コスト。電気料金にこっそり上乗せ。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/354987
コメント:デブリの取り出しさえできないのに、新増設とは。経産省の官僚の常識のネジは、どこかに飛んでしまったのだろうか。

・介護保険、改悪に次ぐ改悪の歴史。
https://digital.asahi.com/articles/ASS9J3HC4S9JUTFL004M.html?iref=comtop_Life_02
コメント:生活保護も。