「オンライン・オピニオン」


怒り心頭
森友文書
秩序の破壊
トランプのお粗末な子分達
力の時代だから兵平和を叫ぶ
ネットハラスメント
万博=IR
世界主義に背を向ける米国
正義と善は別物
トランプと古市


2741.怒り心頭 4.7

最初は朝日新聞(4.7)の社説から。
「中国軍の演習 威嚇を繰り返す愚かさ」

中国軍が再び台湾の周囲で軍事演習を実施した。昨年5月、10月に続くもので、台湾の頼清徳(ライチントー)政権に圧力をかける意図を隠そうともしない。頼政権との対話を拒み、威嚇を繰り返す姿勢は、東アジアの安定に責任を担うべき大国にふさわしいものではない。

 中国軍は1日から2日にかけて各軍を動員し、多方向から台湾への接近を図ったという。空母「山東」を含む艦船の台湾付近での航行、戦闘機や爆撃機などの飛来を台湾軍側は確認した。(中略)

 これは国際水域の安全にもかかわる重大な問題だ。米国務省が非難し、日本政府が懸念を伝えたのは当然だ。

 中国は台湾を領土の一部と見なしている。それを拒む頼政権は祖国統一を邪魔する者だから軍事的威嚇も正当化されるというのが中国側の理屈だ。(中略)

 やや特異なのは、中国側が頼氏個人への攻撃を強めている点だ。中国軍で演習の主体となった東部戦区は、頼氏に似せた虫が炎にあぶられる様子を描いたイラスト動画をSNSで公開した。あまりに品位を欠いている。(中略)

 だが頼氏は、自由で公正な選挙を通じて多くの市民の支持を得た指導者だ。

 台湾社会ではことさらに台湾独立を志向する者は少数だが、中国との統一を目指す者はさらに少数にとどまる。大半は中国との関係の現状維持を望んでいて、そのような人々から見れば中国軍の行動は現状破壊にしか見えないのではないか。(中略)
 挑発的な軍事演習を控えるとともに、16年以降途絶えたままになっている中台間の実務的な対話を復活させるよう望みたい。


次は雑誌選択の4月号の続きです。

「国民愚弄、茶番劇国会は続く 与野党合作の石破延命」から
(前略)
国民民主党の榛葉賀津也は歯に衣着せぬ物言いがSNSなどで注目と人気を集めたが、政策理解の点では財務省出身の玉木や旧大蔵省出身の代表代行古川元久には及ばない。怒る様子ばかりが拡散され、他党との駆け引きや調整を担う幹事長として適材適所とは言い難い。
与党の公明党で幹事長を務める西田実仁は、(中略)党代表だった石井啓一を当選させられず、党内掌握力の不安が尾を引く。自民党の森山とのコンビも、どこかぎこちない。

野党も、与党の「プレーキ役」を自任する公明党も、石破政権の低空飛行をやめさせることも修正することもできない。自民党内で「石破降ろし」を仕掛けたい勢力も、これでは動きようがない。石破の10万円問題をリークしたのは「ポスト石破」に意欲を示す前幹事長の茂木敏充だとする噂がまことしやかに流れたのも、党内に涸まる不満と不安と新展開を期待する空気ゆえだが、爆発力を持つほど濃い空気にはなりそうもない。

そもそも少数与党の苦境でも「ポスト石破」に意欲を示すのは、茂木と財務大臣の加藤勝信ぐらいしかいない。内閣官房長官の林芳正は、石破政権が倒れれば連帯責任を負う。

自民党総裁選で石破と決選投猥を演じた元総務大臣・高市早苗も、党外の右派層の期待の高さと裏腹に、国会議員の支持は相変わらず限定的だ。(中略)右傾化著しい党員票の影響力を期待できない。高市自身、「総裁選で勝っても今は総理になれない」と逹観している。

高市の支持層が、安倍の薫陶を受けたとアピールする保守右派の元経済安全保障担当大臣・小林鷹之に流れる傾向もある中で、小林も勝負は先と考える。自民党政治改革本部事務局長の小泉進次郎も同様だ。(中略)

こうなると、終盤国会でぬるま湯を追い焚きする要素は消える。転覆寸前の政権は永らえ、無責任な人気取り政策が幅を利かすポピュリズム政治の出口が見えない。(敬称略)


「政治家の犬笛に踊る群衆の狂気 野放しのネット中傷リンチ殺人」から

SNS上での誹謗中傷の投稿などについて、事業者に迅速な対応を義務づける「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)が今月から施行される。総務省は、権利を侵害された人からの削除の申し出を受けてから「7日以内に」事業者が対応を判断して通知しなければならないとする省令改正案も盛り込んでいる。

無法地幣となっているSNSをめぐっては「集団リンチ」同然の誹謗中傷・デマの拡散が繰り返されている。

広島県安芸高田市では今年1月下旬、前市長の石丸伸二氏に「居眠り議員」と攻撃された元市議・武岡隆文氏の妻が自宅で自死した。

「出勤しない妻を心配して訪れた同僚が、妻の親族とともに自宅を確認したところ母屋の隣にあるガレージで首を吊っていたそうです」(広島の地元関係者)

昨年の東京都知事選挙に電撃的に立候補し、議会と戦う新進気鋭の市長としてSNSでもてはやされた勢いに乗り次点につけた石丸氏。その石丸氏をネット上で有名にした出来事のひとつが「居眠り議員」を糾弾する議会での一幕だった。一連のやり取りはYouTubeで切り取られて広く拡散された。武岡氏宅には数年にわたり迷惑電話がが殺到。頼んでもいない商品が着払いで送りつけられた上、SNSでも誹謗中傷が相次いだ。さらに市議らに殺害予告をした人物が脅迫で逮捕されるにまで至った。その後も、誹謗中傷がやむことはなく、憔悴した武岡氏は持病を悪化させ、去年1月末に病死した。

そして1年後の今年1月、要は孤立と絶望の中で命を絶った。

前出の関係者は、「奥さんは武岡氏の葬儀で「石丸に殺された」と周囲に話していた。奥さんを含めた親族も執拗な誹謗中傷で精神的に疲弊し、躁鬱のような状態になっていたと聞く。夫の命日と兵庫県議の自死の報道が重なった時期で、限界だったのではないか」と語る。

ニュータイプの「サイコバス」

しかし、当の石丸氏は今年3 月に出演したYouTubeチャンネルで居眠り問題を「どう 始末してやろうと思った時に、上手く使った方がいいなと」などと武勇伝のごとく振り返っていた。その上、3月中旬に行われた会見でこの件について問われると、お悔やみの言葉―つないまま「支持者が誹謗中梃をしたというのは憶測にすぎない」などと吐き捨て、メディア批判に議論をすり替えた。

別の地元関係者は、「石丸氏の在任当時から議員への誹謗中偽は把握していたが、まともに諌めることはしなかった。石丸氏自身も県の水道事業の会議ではいつも居眠りをしているくせに、よく言えたものだ。たったひと言でも、支持者を諭すようなことをしていれば悲劇は防げたのではないか」と憤る。

こうしたことに加え、自らに批判的なメディアや記者への攻撃、「政治屋の一掃」などと掲げた本人も認めるところの炎上商法で、石丸氏はネット上の耳目を集め続けた。盛り上がりを政治的な力に変えることに躍起になる姿勢が、支持者の暴走を生んだ背景にあることは否定できまい。

兵廊県でも類似の悲劇が起きた件は記憶に新しい。兵庫県知事・齋藤元彦氏の疑惑をめぐる騒動の最中、元県議の竹内英明氏が今年1月、自死した。竹内氏は齋藤知事を巡る疑惑を追及する百条委貝会の委員だったが、

SNS上での誹謗中傷に耐えかねて辞職。周囲には「社会に絶望した」と漏らしていたという。 ネット攻撃を扇動したNHK党の立花孝志党首は、後に発言が誤りだったことを認めたが、デマは広範囲に拡散され取り返しのつかない状況となった。

「事実かどうかは関係ない。勝てば正義」という態度は、いまや選挙戦略の一つとして確立しつつある。これは、米国でトランプ大統領がSNSを駆使してフェイクニュースを流し、支持を集めた現象とも酷似している トランプ氏は事実が明らかでない陰謀論も含んだ情報を拡散し、社会を分断するような「納得しやすいストーリー」を提供した。支持者たちはその真偽を検証することなく熟狂的に受け入れ、結果として深刻な社会的亀裂を生んだ。安芸高田市や兵庫県で繰り広げられた手法も、こうしたトランプ現象と酷似しており、人が死んでも何の痛痒も感じないニュータイプのサイコパスだ。

ネットで拡散される情報は、一度広まれば真偽が問われることなく定滸し、人々は検証されていない情報を信じて投票行動に移る。結果として、正しい情報が埋もれ、冷静で建設的な議論は姿を消す。

厳罰化も効果なく

ネット上の誹謗中傷が人を死に追いやった例は枚挙にいとまがない。2020年にはフジテレピの番組に出演したプロレスラー・木村花さんがSNSで激しい誹謗中傷を受けて命を絶った。木村さんの母親に対しても継続的な中傷が続き、警視庁は名誉棄損容疑で投稿者を摘発。こうした事件を受けて22年には侮辱罪を厳罰化した改正刑法が施行され、罰則が強化されたが、実効性には依然として課題があり、ネット上でのリンチ同然の誹謗中偽は止まらない。

警察の対応の遅れも問題だ。被害者が自ら訴えなければ警察が動かないケースも多く、膨大な攻撃をそれぞれ申告する必要がある被害者側の負担は重い。結果、被害者の保護や救済が十分に行われていないのが実情だ。

冒頭の「情プラ法」も、権利侵害についての基準が曖味で、事業者が利用者からの要請をどう判断するかが難しく、萎縮や拡大した解釈を招くのではと実効性を疑問視する声がある。

インターネット上の誹謗中傷をはじめとする違法・有害情報をめぐっては、総務省が委託する違法・有害情報相談センクーに寄せられた相談件数が23年度に6463件と、過去最多を記録した。行政や警察には、より迅速で有効な措置が求められると同時に、本当の意味での情報リテラシー教育の充実が急務だ。

一方、こうした悲削を知ってなお、狂乱する支持者たちの姿勢は変わっていない。「信じたいものを信じる」と言わんばかりに、SNS上ではこうした政治家たちを擁護する声も数多く見られる。自分が好む情報を積極的に表示させるSNSのアルゴリズムが、現実世界の政治に深刻な影響を与え続けている。

社会はSNSという劇薬をどう扱うか、真剣に問われている。誹謗中傷を政治的利益のために放置し、「やった者勝ち」の現状をこのまま許してよいはずがない。自らが煽ったも同然の「集団リンチ」で犠牲者が出たにもかかわらず、人の心を持たない政治屋たちの顔色は何一つ変わらない。犬笛に酔いしれ、耳触りのいいことばかりをうそぶいて悦に入る者たちよ、恥を知れ。

コメント:最近胸につかえていたものがやっと少し取れたような気がする。人の心を持たないサイコパス(良心や共感性を喪失した精神障碍者)。よくぞ言ってくれた。石丸も、斎藤も、立花もである。粘土をこねたような無表情(目は血走っているが)も共通している。人間としての感性、判断力、想像力の欠如が、言葉のみならず外見にも表れている。

はっきり言って、『人でなしで人間のクズ』だ。この私の批判を誹謗中傷と言うのなら裁判所に提訴するが良い(どの口がそれを言うのか)。こちらは最高裁まで戦い、いかに彼らがクズであるかを証明し、それを世間に知らしめたいと思っているのである。

いつものように大声さえ出せば、皆が皆、委縮して泣き寝入りや自死すると思ったら大間違いだ。こちらの怒りは余りにも強く、それは民主主義の制度を彼らが悪用しているからだ。それはむしろ邪教の新興宗教(オウムや統一教会、或いはどこかの折伏)に近いものとも言える。だからあらゆる『手段』を動員して卑劣なサイコパスと闘う覚悟がある。国民を正気に戻さないと取り返しがつかなくなるからだ。その最近の例が米国であることは言うまでもなかろう。

従って、このメッセージは、三悪人だけでなく、匿名でなければ、悪口も言えないような日本中の小悪党、腰抜けに対する宣戦布告のメッセージでもある。こちらは半世紀上も、ネットで、実名で社会悪を告発してきたのだ。PCがなくワープロを使い、ネットがなく電子メールを使い、ガラケーさえない時代からの、情報発信の経験年数だけでもギネス級だ。これまでの情報を全て印刷すれば、高さは軽く3mを超える。
ところが大手のメディアは批判どころか、立花や石丸については言及する事さえしていない。そんな腰砕けの状態(無批判)で、歩く人災たちが、政治で影響力を持つようになったどんなとんでもない事が起きるか、想像してみたことはあるだろうか。いい加減に目を覚まして欲しい。日本の老若男女諸君、そして何よりいわゆる4マス各社に言いたい。

無責任で付和雷同の風潮下では、誰かが面白がって偽情報を流して、ちょっと煽りでもしたら、どんな騒ぎでも起こりかねない。例えば中国軍が沖縄を占領したとか、ロシア軍が北海道に上陸したとか、北朝鮮が核ミサイルを発射したとか。何でもいい。しかも嘘でも良い。何しろオレオレ詐欺や闇バイトに、容易に騙される国民なのだから。

メディアはメディアで、この際襟を糺し、自らの存在理由に立ち戻れ。立花に忖度しているようなメディアに、国民は用はない。SNSが腫物でもあるかのように遠巻きにしているメディアもお呼びではない。正面から堂々と勝負せよ。メディアは、国民の側に立つ批判者であり、その本懐はジャーナリズムであることを忘れてはならない。週刊文春を除けば、朝日だけが社説で斎藤と正面から向き合ったのである。

方向性を見失っているSNSの泥沼から、国民を引き上げることができるのも、メディアでしかない。私を含めた個人にはそれだけの力はない。今こそジャーナリズムの旗を打ち振り、国民を正気と正論に導く責任が、報道各社にはある。
その時に初めて、メディアが第4の権力として広く認められ、国家と国民の役に立つことになるだろう。

取り分け新聞は一流の論客を揃え、情報の収集、分析能力にも長けている。言い換えれば世論の先頭に立つ資格と潜在能力がある。ならばあとは国民に民主主義の先頭に立つ気概を見せて欲しい。

そしてメディアが目を覚ますまでの間は、たとえ無名でも、非力でも、大衆に埋没しない個人メディアが、国民の正気を支えるしかない。メディアが、一日も早く存在理由に目覚めて、本来の機能を十分に発揮することを切に願う所以である。

敢えて言わせて貰えば、日本のメディアが三流と言われるのは、その知性や能力不足(一部の右寄りの新聞・雑誌・TV局を除く)のせいではなく、理想を貫徹する熱意と覚悟(命がけの)が不足しているからだと、私には思えてならないのである。

この文は半世紀以上もネットの情報発信を続けてきた、私的メディアの草分けとしての立場だけでなく、一市民としての怒りの爆発でもある。ちなみに私はSNSを殆ど使わないので、SNSで何と言われようと知ったことではない。

皆が皆、立花や、斎藤や、石丸の口車に乗せられて踊る大衆ばかりではないということを思い知らせて、一矢を報いたいと考えている。それがネットの無法者に対する報復となり、無念の内に死を選んだ、善良な複数の市民への最善の追悼にもなると思う。



2742.森友文書 4.10

< font>今回の前書きは朝日新聞(4.9)の社説です。
「森友文書公開 政権の覚悟が問われる」

財務省は、鑑定価格から8割を超す値引きをしたうえで国有地を売却し、その取引をめぐる公文書を廃棄、改ざんした。森友問題にはなお不明な点が多い。今度こそ全容の解明につなげねばならない。
 先週、森友問題に関する文書の本格的な開示を財務省が始めた。改ざんに加担させられたことを苦に自死した元近畿財務局員赤木俊夫さんの妻、雅子さんが、検察庁に任意提出された文書を対象に情報公開請求していた。今後1年以内に17万ページ以上の紙文書と電子データを開示する。

 夫の死から7年。真実を知りたいという雅子さんの訴えを財務省は拒み続けた。文書の存否すら明らかにしないまま不開示を決めたが、今年1月に大阪高裁がこの決定を取り消し、財務省は方針をようやく変えた。

 第1弾として開示したのは政府と森友学園側との交渉記録など約2千ページ分で、開示済みの文書も多かった。6月には、俊夫さんがまとめたとみられる文書の開示が予定され、改ざんの経緯に関する内容が含まれる可能性がある。公開を尽くすべきだ。

 森友問題は、安倍政権時の17年2月、朝日新聞が大幅値引きでの国有地売却を報じ、明らかになった。学園が開設予定だった小学校の名誉校長に首相の妻、昭恵氏が就いていたため国会でも問題視され、安倍首相が「私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と答弁。その直後に財務省による文書の廃棄と改ざんが始まった。

 財務省は18年6月、「佐川宣寿理財局長(当時)が廃棄や改ざんの方向性を決定づけた」とする調査報告書を公表した。佐川氏らは告発されたが、大阪地検は不起訴とした。安倍政権をはじめ、続く菅、岸田政権も「森友問題は決着済み」との姿勢をとり、財務省は情報開示に背を向けてきた。

 5年前の自民党総裁選で「再調査」に言及した石破首相は、先月の国会答弁で「説明責任を果たすということにおいて遺漏(いろう)がないよう、財務省も私の指示を踏まえ、よく認識して、この開示に臨みたい」「最低限の不開示(黒塗り)処理の方針で臨んでいく」などと語った。
 国有地はもちろん、公文書も主権者たる国民共有の財産だ。それを傷つけ、さらに情報公開を拒むことは、国民の知る権利の否定であり、民主主義の根幹を揺るがす。
 石破首相は、歴代政権の対応を反省し、改め、国民本位の政治と行政を取り戻すつもりがあるのか。その覚悟が問われる。
原文:
https://www.asahi.com/articles/DA3S16190062.html?iref=comtop_Opinion_04
コメント:安倍晋三が断言した、それもみえすいた嘘のせいで、財務省の担当職員が自死した。ところが財務省の責任者は不起訴の上に栄転。籠池夫妻は寒い刑務所で刑に服した。この事件では、民間人だけが処罰され、政治家と上級官僚は責任を免れている。但し当事者の一人である晋三は、約束通り辞任するかどうかはついに分からなかったが、ともかくもうこの世にはいない。それでも政治家と官僚が明らかに犯罪に加担していながら、何のお咎めもなしで、責任を取らないというは、どうにも腑に落ちない。佐川の証人喚問も実現させたいし、財務省に忖度を強要したであろう閣僚(例えば菅や麻生)の責任も問うべきではないか。また高齢の籠池夫婦が労につながれ、同じ民間人、しかも当事者の昭恵にはお咎めがないというのも、はっきりっておかしい。しかもメディアを含めて、誰一人そういう見方をする者がいないのは更に異様だ。こういう場面で、言論の自由の弾圧が行われていたとしたら、大問題である。当時はSNSがないので助かったのかもしれない。



2743.秩序の破壊 4.11

今回の前書きは朝日新聞(4.10)の座標軸です。
「秩序破壊 法の支配説く時」論説主幹 佐藤武嗣から

「(戦後の)80年間の時代は終わった。これは悲劇だが、新たな現実でもある」。米国の同盟国カナダのカーニー首相がトランプ関税を批判した言葉が、その衝撃の大きさを物語っている。

世界は、関税競争や経済のブロック化が第2次世界大戦の引き金を引いたとの反省から、貿易自由化にかじを切り、ブレトンウッズ体制や世界貿易機関(WTO)を育んできた。その流れを主導した米国がいま、秩序の破壊に猛進する姿に、失望と危機感を抱く。

世界相手に貿易戦争を仕掛ける狙いは何か。思い当たるフシがある。

ワシントン特派員だった8年前、トランプ大統領の最初の就任演説で飛び出した「殺裁(carnage)」という耳慣れない言葉にぞっとした。自由貿易や寛容な移民政策に より米国市民が儀牲になったという文脈だった。

自らの主張を正当化するには、戦後秩序で他国に利用された「報復」としての関税発動が欠かせない。そんな執念を今回は米国の「解放記念日」と呼んで炸裂させた。

ただ、高関税は自国の首も絞める。物価は上がり、商品の選択肢も狭まる。代償は米国市民が払う。自縄自縛の関税は「米国第一」ですらない。

今回の措置は、米政権が目の敵にする中国の経済に打撃となる。だが、国際規範を無視する中国を「国際秩序を塗り替えようとしている」と批判してきた米国が、自ら秩序を壊しにかかる様を、中国は見逃さないだろう。

米国と経済の結びつきが強い国ほど、関税の打撃を受ける。米国が高い「壁」を築けば、東南アジアなどで米国離れが進む。中国は地政学的な地図を利に書き換える好機と見るのではないか。

米政権の行動は、自由主義の担い手である米欧をも引き裂く。世界経済に不確実性をもたらし、安全保障でも誤算から新たな紛争を呼び込みかねない危険なゲームだ。

米国の変貌は、日本にとっても試練となる。すべきことは三つある。

遅ればせだが、政府あげて情報分析を急ぎ、日本経済への悪影惑を最小化する策を練ることだ。 他国の経済的威圧から守る「経済安保」を練ったはずだが専ら中国対策で、米国を想定していなかったのは落ち度である。

対米関係では、高関税がアジア地域でいかに中国を利するか、地域の動きを熟知する日本が米国を説得し、自制を促すのは有効だ。中国とも対話外交を通じ、意思疎通を密にする必要がある。

同時に、多国間の結び付きはより重要になる。欧州やカナダはトランプ関税を踏まえ、連携を深めている。日本は価値観を共有する国々と連携し、世界、特にアジアで、国際法の順守、国の大小によらない国家主権の尊重など「法の支配」の旗手として行動していかなければ、秩序の地殻変動を許してしまう。

日本外交の「米国一本足打法」はもはや通用しない。より自立した、多角的・多層的な外交戦略を練る時だ。

コメント:まず問題意識と文章の流れの見事な調和に圧倒される。さすが論説主幹だ。特に最後の二行は、政府が肝に銘じるべきである。



2744.トランプのお粗末な子分達 4.12

今回の前書きは週刊文春(4.17)町山智浩の言霊USAです。
「トランプ政権が戦争の計画を間違って私に送信してきた」

目を疑うような見出しの記事が3月24日、『アトランティック』誌のウェブサイトに掲載された。アトランティックは創刊168年の由緒正しい総合誌。書いたのは編集長ジェフリー・ゴールドバーグ。

「3月11日火曜日、私はマイケル・ウォルツから『シグナル』への接続リクエストを受け取った」

シグナルは暗号化でプライバシーが守られるメッセージ・サーピス。マイケル・ウォルツはトランプ政権の国家安全保障担当大統領補佐官。ゴールドバーグ編集長はウォルツと面識はあるが親しくはない。だが、トランブ政権に批判的な『アトランティック』誌に何か言いたいのだろうと接続を認可した。

そして、ゴールドバーグはトランプの閣僚たちのオンライン国防会議に巻き込まれた。3月14日、国防長官ピート・ヘグセスはイエメンで紅悔を航行する船舶を襲っている反政府武装組織「フーシ派」の拠点を今すぐ攻撃すべきだと主張した。

ヘグセス「早くしないと情報が漏れます」
JDヴァンス副大統領「ヘグセスがやるべきだと思うなら、レッツゴー」

フェイクかも?ゴールドバーグは思った。トランプ政権は素人ばかりだ。特にヘグセス国防長官は国軍を指揮した経験も国家機密を扱ったこともなく、そもそも公務経験ゼロの元テレビタレント。しかもアルコール依存症で数々の問題を起こしレイプで警察に通報されて被害者に和解金を払っている。そんなクズでも、軍事機密会議を民間サービスのチャットで行うなんてありえない。

だが、フェイクではなかった。
翌朝、3月15日、ヘグセス国防長官がシグナルにフーシ派空爆計画の詳細を投稿し、「空爆開始は2時間後の米国東部標準時午後1時45分」と予告すると、その通りに爆撃が始まった。

ゴールドバーグがシグナルのグルーブ・チャットを覗くと、トランプの閣僚たちが大はしゃぎしていた。それをゴールドバーグはスクショして、3月24日の記事で全部暴露した。

これはトランプ政権に戦争を遂行する能力がないことの決定的な証拠だった。閣僚を経験や能力よりもトランプヘの忠誠心だけで選んだからだ。記事が出ると国防長官ヘグセスはゴールドバーグを嘘つき呼ばわりした。「あれは戦争の計画じゃない! 単なる攻撃計画だ!」
攻撃計画は戦争の計画の一部でしょ?

でも、トランプ政権はこのレトリックに乗っかって、事態を矮小化Lようとした。国家機密の責任者である情報長官トゥルシ・ギャバードとCIA長官ジョン・ラトクリフも上院の公聴会で「ゴールドバーグが参加したシグナルには重要な機密は含まれていません」と主張した。

作戦決行時刻はそれだけで最高機密だろ!
それがもし敵に漏れたら単に急襲が失敗するだけでなく、迎撃されて米兵が沢山死ぬだろう。

「機密じゃないならヘグセス国防長官の投稿を全文公開しますが、よろしいですか?」
『アトランティック』誌はホワイトハウスに直接問い合わせた。
返信してきたのは、「エアーへッド・バービー(頭空っぽのお人形ちゃん)」の異名をとるカロライン・レヴィット報道官。彼女はまず「何度も述べてきたように、機密情報は送信されていません」と言い張りながらも後半にはこう書いた。
「これは上級スタッフによる非公開の協議で、機密情報が話し合われたため、公開には反対します」…やっば機密じゃん!

肝心のトランプ御大は、シグナルというサービス自体を知らなかった。だが、子分たちを困らせているゴールドバーグを「卑劣漢だ」と罵倒した。ついでに「『アトランティック』なんて潰れそうな雑誌で、業績は最悪、誰も気にしていない」と八つ当たり。

*流出したものは他にも…*

これに対して『アトランティック』誌は毅然と「小誌と編集長の信用を失墜させようとするトランプ政権の試みは、ジャーナリストと報道の権利に対する権力の攻撃だ」と声明を発表し、3月26日、ヘグセスらの投稿を全文公開した。

「12時15分:F-18戦闘機出撃」
「13時45分:F-18による第一波攻撃開始。ストライク・ドローン(MQ-9)発進」
「15時36分: F-18による第二波攻撃開始。空母からトマホーク巡航ミサイル発射」
これ、どう見ても攻撃計画、最高機密だよね?

『アトランティック』が自己検閲したのはフーシ派側の情報を提供した人物の名前だけだった。彼の命を守るために。しかし、そんな名前まで流出していたのだから呆れてものが言えない。

ゴールドバーグをシグナルに招待してしまった張本人、マイケル・ウォルツ補佐官は全部をゴールドバーグのせいにしようとした。「そんな奴は1OO%知らん!断言できる1」「あいつはジャーナリストの最下層のクズ」「負け犬」と罵倒し、さらにはハッキングされたのかもしれないと濡れ衣まで着せた。もしハッキングされたのなら、民間向けチャット使ったお前らが悪いよ。

いや、本当に危険だった。SNSなどを通じてマイケル・ウォルツ、ヘグセス国防長官、ギャバード情報長官などの携帯番号、メールアドレス、そのパスワードまでが既にネットに流出しているというのだ。それを報じたのはドイツの雑誌『シュピーゲル』。アメリカの同盟国ドイツにしてみれば、こんな機密ガバガバの軍との共同作戦なんて、おっかなくてやってられないからね!

コメント:自衛隊だって同じだろう。この件は日本でも報道されたものの、扱いは驚くほど小さく、しかも実害はなかったとトランプが言い張ったところで報道は終わっている。一方米国では、共和党議員でさえこの情報漏洩を問題視した。それは国防上の問題だったからだ。この記事で思うのは、米国のジャーナリズムの意識とプライドが日本とは段違いであること、しかもジャーナリストの覚悟が全く違うということだ。ところが日本のメディアときたら、相手がフジの日枝はともかく、たかがチンピラの立花でさえ、腫れものに触るようにしており、そんな腰の引けた報道姿勢と理念で、日本の民主主義、国民の基本的人権、言論の自由が守れると思っているのだろうか。こんな調子では、政府の意向次第で、太平洋戦争の前科を忘れて、またも大政翼賛会に加わりかねないと思う。
この記事が何より怖ろしいのは、トランプ政権の閣僚が、驚くほど知能程度が低くて、戦車の玩具を手にした幼児のようにはしゃいでいることだ。戦争の悲惨さ等、彼らの幼稚な頭では、想像も出来ないのだろう。トランプは戦争を好まない(ビジネスマンだから?)と言われているので、(恫喝以外の目的で)核のボタンに手を伸ばすとは考えられない。ところが町山の情報では、閣僚たちは勝手に戦争を始められるらしいので、頭の足りない彼らが浅薄な智恵で軍隊を動かすこともありそうだ(今回の攻撃のように)。まさにキチガイ(トランプ政権)に、刃物(世界最大の軍事力)である。米国の愚民が選んだ、愚かな政治家のせいで、世界が大規模な戦争に巻き込まれる可能性が存在する。言い換えれば、人類の愚かさ(あるいは愚かな人類)が種を滅亡させるのである。
政治家の知能程度という意味では、日本もあまり褒められた状況ではない。杉田水脈、斎藤元彦、石丸伸二、日枝久は言うに及ばず、小池百合子も信用は出来ない。野党で言えば玉木が軽い凧のように舞い上がっている。
そもそも日本の国民は勉強が足りない。政党支持率を見るだけでそれが分る。また政治や歴史の、基本的な知識や関心も不足している。
情報と見識が不足していても、誰にでも手に入る、放送、新聞、週刊誌、雑誌だけでも、読み方さえ分かれば、真実にたどり着くのは不可能ではない。そして何がフェイクか気付くこともできる。SNSの狂乱に踊らされる愚行も避けられる。
ご同輩諸君、残り時間の少ない小生と同様、寿命が来て、この世におさらばする時には、愚者の大衆の一人としてではなく、賢者は無理でも、せめてプライドと良識を兼ね備えた一人前の市民として、一生を全うしたいものである。



2745.力の時代だから平和を叫ぶ 4.13

今回の前書きは雑誌世界5月号です。
「力の時代を直視せよ」対談 遠藤乾(東京大学大学院法学政治学研究科)、田中均(日本総研国際戦略研究所特別顧問、元外務審議官)から

(前略)
遠藤 実際、第二次トランプ政権の外交の新しさは、アメリカがヨーロッパを見放しただけではなく、ロシア側に歩み寄っていることにあります。

田中 今言われたように、アメリカはヨーロッパを裏切った面があります。たとえば、西側諸国はロシアがウクライナに対してなしてきたことを明々白々の侵略とみなし、断固ノーと言うのが通常の対応です。NATOもG7も国連決議でもこの基本的な姿勢が反映されてきました。ところが二月の国連総会特別会合では、ロシアを非難する決議に、アメリカがロシアとともに反対した。
この国連総会がいまの国際情勢をきわめて象徴的に表しています。従来のアメリカは、多くの批判にさらされながらも、国際秩序をつくり、守る、指導者の立場にあった。戦後80年間の国際関係をみてみると、共産主義との戦い、自由貿易の推進、大量破壊兵器の拡散防止、「テロとの戦い」…みんなアメリカがつくったアジェンダで、それが西側諸国を牽引してきたんです。
ところがいま、トランプ政権は、ロシアの侵略を非難せず、現実の利益のために戦争を止めようとしている。長年の外交努力で実現してきた自由貿易協定を反故にする形で、次から次へと理由を挙げて関税を上げていく。地球温暖化対策としてのパリ協定や疾病対策としてのWHOからも離脱する。国際協調で目的を達成するのではなく、二国間取引で、自国利益を担保する方向へ突き進んでいる。
ウクライナ停戦に向けた取組みにしても、レアアースの権利を担保したい思いが前面に出る。もはや世界のリーダーとしての行動ではないわけです。

遠藤 既存の国際秩序の担い手から破壊者ヘシフトし、剥き出しの自己利益で動くようになった。これまでもアメリ力は多くの外交的失敗をおかしてきましたが、それは一定程度の規範と、「国際社会の指導者」という自意識に基づいていた。しかし、核を含めた実存的脅威と世界的な「赤化」という緊張感があった時代もはるか過去になり、「正しさ」を意識した世界帝国としてのアメリカが、いま目に見える形で崩れていっている。
加えて、卜ランプには、第二次世界大戦後ずっとアメリ力から利益を吸っていた同盟国に対するある種のヘイトがあって、それが同盟国を戦棟させている。同盟国を引きつけていくという、かつて「利益」とみなされたものがトランプのアメリカではむしろ害悪としてみなされる。すさまじい転換期をわれわれは生きているといえるでしょう。

田中 トランプが突然、特異な大統領として現在の状況をつくっているわけではないということは、十分理解しておかなければならないと思っています。
先ほど外交上の失敗というお話がありましたが、アメリカの分断の原因をつくったのはイラク戦争ではないでしょうか。プッシュが始めた長年の戦争で、アメリカは膨大な資源と人命を浪費しました。それ以米、国外で戦争をすることに対する敷居がものすごく高くなった。
それからアメリカという国は、奴隷制廃止、公民権法制定に示されるように、リベラルな価値観を規範としてつくってきました。アファーマティブアクション、女性やLGBTQの権利を支えてきたのはリベラリズムですね。それに対し、トランプ政権の岩盤支持層と言われている人たちは保守主義者で、なおかつ自分たちがアメリカ社会の中で利益を受けていないと考える人たちです。こうした人々といわゆるリベラルな、エリートと目される人たちとの間の分断は、私は2000年代の初めから始まったと考えています。いま、米国民の半分以上の人たちがトランプを支えている現実がある。そのことに少なからぬ恐怖を感じます。(中略)

遠藤 立憲的な原理で結びついていたEU=NATO体制が保てなくなってしまうと、フランスのように相対的に自立できる国と、敗戦国として平和主義を身につけ、いまだ アメリカに依拠するドイツやイタリアなどの国々とで意見が割れてくるでしょう。
それでも、アメリカが従来の規範的な構えを外してしまったのに対し、ヨーロッバはまだ外していません。理念や共通の価値観が現実をつくってゆく面もヨーロッパにはあるので、ボピュリズムが席捲するまでは一定の構えをとりつづけるのではないか、ともみています。(中略)

還藤 ウクライナの視点から譲れないのは二つです。まず占領地の法的な地位について。これは日本が北方領土をロシアの領土と認めないのと同様、認められないわけです。バルト三国だって何十年と主権国家の地位を失っていましたが、約50年経ってーソ連が弱体化した際に回復した。そういう瞬間を待つぐらいの時間軸で、法的な地位は認めないとの姿勢を貫くしかないともいえます。(中略)

田中 よく政治家は「今日のウクライナは明日の東アジア」と表現して、軍拡に進むべきというけれど、それは違うと思います。中国は、ロシアとは異なる対応をする国なのではないでしょうか。中国にとって経済繁栄を損ねるのは共産党体制の危機と映る。中国とは一定程度、良好な関係を構築していくべきだと思います。日本が軍備拡張競争の片棒を担ぐようなことはあってはならない。日本の強みはやはり外交で安全保障を達成することであるべきです。(中略)

田中 日本は、米国が指導国らしさを失っていくことを前提にしながらも、やはりその流れを止めていかなければいけない。ヨーロッパは強い梃子をもっていないけれども、日本には戦略的な梃子があると思う。遠藤さんが言われたEU=NATO体制というのはアジアにも一定当てはまると思います。安保と経済ですね。だからョーロッバがEUをつくったように、日本は東アジアでより強い協力関係をー中国も巻き込んだ経済・賓易体制の構築を試みていい。それが米国との関係を強くする梃子になるという考え方も可能でしょう。防衛費を拡充するなら、戦争につながる軍拡としてではなくて、アメリカを制するための必要経費として捉え、同時に、中国に対しては日中関係を守るステークを高めていくべきです。

遠藤 日本が決して友好的ではない三つの核武装国に囲まれているのは事実です。そのうちの―つが相当に権威主義的で現状変更を企図しているなか、力の話をまるごと忌避していてよいのか。これまではアメリカの庇護のもとで軍事や安全保障の現実から目を背けていられた。しかしこれからは直視して、自分たちの民主主義がきちんと守れるのか、中道、リベラル、左派こそ考えていかなければいけないのではないでしょうか。

田中 日本という国が本当の問題に向き合おうとしていないというのはとても大事な指摘だと思います。GDP比で 約260%の借金がある国で、アメリカの求めに応じて防衛費をさらに増やすことが可能なのか。どこかで歳出を切るか、増税しなければ説明がつかないわけでしょう。しかし選挙に負けそうな課題には手をつけない。むしろ選挙に 勝つためにお金を使う。それは民主主義のありかたとは思えない。そういう本来必要な課題に向き合うためにも、安定した政権が望ましいといえるでしょう。

遠藤 もはや「国際社会」が主語として使いづらくなってしまっている。日本にとっての国際社会は多くの場合西側か国連を意味したわけですが、両者とも機能しなくなっている。いわゆるグローバルサウスを形成する大国もそれぞれ自国中心主義で、アメリカに代わるリーダーシップがみえない。長い目で見ればアメリカも少しは正気を取り戻すのでしょうが、この衝撃波はしばらく続く。一次政権と異なり、トランプに忠誠を尽くす者しかいない状況ですから。行政府もどんどんMAGA化し、カットされ、批判勢力も大学も含めて切り崩されていく。

田中 止める力がないというのはおっしゃる通りですが、たとえば今の関税政策や移民を追放する政策がインフレを招来し、結果として成長率が鈍化すれば、トランプ本人、 取り巻き、さらには支持者も考えなおすかもしれません。それが中間選挙で共和党の大敗を招くかもしれない。つまり市場の力ということですね。
どの時代も、実は力の時代だったと私は思います。ただ力を、単に軍事力だけと考えるのは間違いです。力というものは非常に多様なものです。軍事力はもちろんですが、経済力、技術力、知性、パートナーシップ、理念ーいずれも力です。ヨーロッパ、そして日本がいまの状況を放置していてはいけないとの認識を持ち、これら多様な力を尽くしていくことが重要でしょう。結果的にはそれがある程度、トランプの暴走を止めることにつながるかもしれません。これはもう、期待ですけどね。

(間き手=本誌編集部・犬飼裕貴、構成=前川仁之)

コメント:この二人の論調には問題がある。それは結局、世界でもトップクラスの自前の軍備を持つしかないという、妥協もしくは諦めの論調が裏に隠れているからだ。そうではないだろう。今こそ日本が立ち返るべきは平和憲法なのである。そして人命・人権を守るために已むを得ず武力(但し通常兵器)の行使が必要になったとしても、それはあくまで国連の平和維持軍としての行為でなければならない。幸いにして、紛争解決の手段として武力を用いないという、世界で最高の憲法を我々は持っている。保守的な政治家は、これが屈辱だと思っているようだが、これこそが戦後、米国が日本にもたらした最高の贈り物なのである。たとえ周囲の3か国が核兵器を持とうとも、日本だけは絶対に核を持たない。また国内に核を持ち込ませない(無論敵対国にも使わせない=迎撃)という決意表明を、いまこそ行うことが重要なのだ。非核三原則を一歩たりとも譲ってはならない。その時初めて日本は(米国の代わりに)世界平和のリーダーとして胸を張ることができる。トランプや、プーチン、習近平や金正恩に、いかに恫喝されようとも、平和主義の立場を譲歩したり、相手の利権に振り回されてはならない。核を持たないという日本の決意と勇気こそが、世界を正気に保ち、戦乱から人類を救う、唯一の希望なのである。



2746.ネットハラスメント 4.14

今回の前書きは昨日に引き続き雑誌世界5月号から、気になる論文のご紹介です。

片山善博の「日本を診る」
「改めて知事の資質を問う」兵庫県第三者調査委員会の報告書から
(前略)
報告書はまず、告発文をマスコミなどに配布した行為は公益通報に該当することを明らかにしている。一年前、知事はこれを単なる誹謗中傷であって公益通報には該当しないと決めつけていた。これに対して筆者は、その時点では公益通報に該当する可能性があるので、公益通報に該当するかどうかも含めて告発文の内容の真偽は、知事や県の息のかからない第三者委員会に判断してもらうべきだとした。案の定、その第三者調査委員会が告発文の配布は公益通報に該当すると判断したわけである。

次に、知事が通報者の探索を命じたこと、その探索を通じて通報者を特定し事情聴取したこと、通報者が使用していた公用パソコンを取り上げたことはいずれも違法だとしている。もとより通報者の探索などは公益通報者保護法が厳に禁じていることである。

かくして告発文の配布が公益通報に該当し、しかも知事の。パワハラ行為が認定されるなど通報の内容には真実相当性があったのだから、通報したことをもって、知事が通報者に対して不利益取り扱いである懲戒処分を行ったことは違法だと明言している。違法な処分だから、当然のことながら処分は無効となる。

報告書から最も強く印象づけられることは、告発文が配布された段階で知事は通報者探しなどをしないで、直ちに第三者委員会を設け、調査を委ねていれば、その後の事態は大きく違ったものになっただろうということである。(中略)

今となってはもう後の祭りだが、やってはならない通報者探しや違法な処分が、その後の県政をどれほど混乱させることになったか。しかも、守られなければならないはずの通報者の人権と名誉は甚だしく蹂躙され、取り返しのつかない結果を生じさせてしまった。

それでもなお、当の知事は自らの判断は正しかったとこの期に及んでも言い張り続けている。もはや呆れるのを通り越して、哀れみと痛々しさすら覚える。知事のこうした 見苦しい振る舞いを含めて、この事件は組織のトップリーダーの資質やそのあり方を考える上で格好の教材を提供しているといえる。

コメント:どうやら世間はもうこの問題を忘れかけているようだが、私には忘れることができない。3人の(善意の)人間が自死していて、原因を作った知事には責任がない(本人の主張)などという理不尽が大手を振って通るようなら、法治国家でもないし、社会正義が無いに等しいからだ。県議会は直ちに二度目の不信任案を提出せよ。なぜなら斎藤は自分から辞める気はないからだ。県民に二度選ばれたことが、彼の自己正当化の唯一の根拠になっている。ところが二度目の選挙は、とてもではないが民主的な選挙と呼べるような代物ではなかったことは誰でも知っている。不信任案が複数回提出されることは、地方自治体では珍しくない。それは正当性もないのに、その地位にしがみつく首長がいかに多いかを示している。斎藤元彦もその例外ではないということだ。


二つ目は、「著名人へのネットハラスメント」永田夏来(兵庫教育大学)高野雅典(サイバーエージェント)から
(前略)
ネットハラスメントに関する包括的ガイドの作成・公開も重要である。現在も様々な情報が存在するが、一般的・抽象的なものが多く、被害者が自身の状況に照らし合わせて適切な対応を選ぶためには相当の調査が必要となる。プラットフォームがそのサービス上で発生する具体的な問題に即した事例や手続き、相談窓口を整理して提示することで、被害者の負担は大きく軽減されるだろう。

こうしたガイドがもたらすもう―つの効果は、ネットハラスメントの範囲を明確化することである。この明確化により、被害者が受けた攻撃的・性的なメッセージをハラスメントとして認識しやすくなり、対抗措置を講じることへの心理的障壁が低くなると同時に、潜在的加害者に対しても自らの行動がハラスメントに該当することを認識させる効果がある。さらに、ネットハラスメントのリスク(アカウント停止や訴訟など)を明示することで抑止力となりうる。インターネットの匿名性は攻撃的行動を促進する要因だが、法的手続きによって発信者が特定される可能性があることを周知すれば、無貨任な行動は減少するだろう。また、ハラスメントを許容しないというプラットフォームの姿勢を明確に示すことも効果的である。

ネットハラスメントの定義や弊害を広く周知することは、社会全体の意識改革にもつながる。これによりネットハラスメントに対するスティグマや被害者非難が軽減され、攻撃行動の模倣・学習を防ぐ効果も期待できる。
(中略)

これらのプラットフォームによる対策は、ネットハラスメントの抑止や被害軽減に大きく寄与するものの、オンラインコミュニケーションがすでに社会参加や職業活動の基盤として機能している現状を踏まえると、さらなる検討が必要だ。以降では、インターネット空間における利用者の責任や社会的意義について考察し、より持続可能な解決策を探っていく。かつて公園や広揚、商店街などが地域社会の公共空間として機能してきたように、現在ではSNSやオンラインコミュニティが人々の交流や自己表現、社会参加の場となっている。改めて確認しておきたいのは、インターネットが単なる情報交換の場ではなく、すでに私たちの社会生活の重要な一部を構成する公共空問となっているという事実である。著名人およびインフルエンサーたちが「ネットを見たくなくなった」「アカウントを消したくなった」と感じながらも完全に離脱できないのも同様だ。これは現代社会においてデジタル空間が、選択的に利用するメディアという位置づけを超え、公共性という新しい側面をすでに保持していることを示している。物理的な公共空間からの排除が社会的排除につながるように、デジタルな公共空間からの排除もまた、社会的・職業的機会の喪失を意味するようになっているのだ。

このようなデジタルな公共空間においては、(中略)その健全性を維持するための共通理解と社会的しくみが必要となる。ネットハラスメントの問題を解決するためには、先述のプラットフォームによる対策は急務である。さらに、デジタル市民性という観点からのアプローチが求められるだろう。デジタル市民性とは、単にインターネットを使いこなすスキルではなく、オンライン上での倫理的・資任ある行動、情報リテラシー、批判的思考を持ち、他者と共存する意識を持つことを指す。適切な対話を促し、誹謗中術が広がることを防ぎ、ネット空間を健全なコミュニケーションのばとして維持するための積極的な関与が今後ますます必要となるのだ。

本稿で明らかになったように、ネットハラスメントは多様な形ですでに著名人およびインフルエンサーに深刻な影響を与えている。さらに、この問遁は有名人に限定されるものではなく、デジタル空間を利用するすべての人々に関わる社会課題であろう。私たちが目指すべきは、多様な意見や表現が尊重され、建設的な対話が可能なデジタル公共空間の実現だ。それはプラットフォーム提供者の技術的・制度的対応に加えて、利用者一人ひとりが「デジタル市民」としての意識を持ち、互いを尊重する文化を育むことで初めて可能となる。

今後、物理的空間とデジタル空間の境界はさらに曖味になり、メタバースなど新たなオンライン環境も広がっていくだろう。このような変化の中で、私たちは常に「人問中心」の視点を忘れず、テクノロジーが人々の幸福と社会的つながりを促進するツールとなるよう努めなければならない。ネットハラスメントの問題に取り組むことは、その被害を減らすということにとどまらず、より包摂的で創造的なデジタル社会の基盤を築くことにつながる。そのために、継続的な研究と実践、そして多様なステークホルダー問の対話と協力が不可欠である。デジタル空間が真に人々の可能性を広げ、社会参加を促進する場となるよう、私たち全員が責任をもって関わっていくことが求められている。

コメント:問題は言論の自由、批判の自由と、名誉棄損とのバランスをどう取るかに尽きると思う。現時点で出来る、誹謗中傷に対する防御策は、事実ではない(フェイク)情報に基づく批判は、これを取り下げて謝罪と、必要なら補償をさせるルールを作る事だろう。傷害や器物損壊ではないので、被害を評価する新しい法体系が必要になるかもしれない。無論、批判する側にも言葉の選択は必要だ。汚い言葉を使わなくとも批判は出来る。また今すぐプラットフォーム側に出来ることは、誹謗中傷の発信者に警告を出すことと、被害者側に反論の機会を与えることである。被害者に端末を使える技術がなければ、プラットフォームの苦情処理係が入力を代行すれば良い。
ところで兵庫知事選の再選挙で、最有力視されていて、卑劣な逆宣伝で敗れた女性の対立候補は、斎藤側の根拠のない誹謗中傷に対して、良くも我慢ができたものだ。私が同じ立場なら、立花と斎藤を法廷に引きずり出して、白黒つけているところだ。



2747.万博=IR 4.16

今回の前書きはサンデー毎日(4.27)です。

その1)牧太郎の青い空白い雲
「維新のおちょこ事件で始まった大阪・関西万博の悪夢の連鎖」から

日本維新の会にはおちょこ事件という名前の自慢話が残っている。
2015年12月19日のことである。東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急の中にある日本料理店「水簾」で、当時の維新のトッ プ・松井一郎、橋下徹、当時の安倍晋三首相、同じく菅義偉官房長官の4人が会食していた。松井さんが安倍さんのおちょこに酒を注いで「万博は必要ですよね!総理!」と切り出した。安倍さんはお酒が比較的弱い。「おちょこ」の連続にドギマギする。すると、松井さんは大きな声で「万博が誘致できれば、その経済効果は6兆円以上になりますよ」。

6兆円?大言壮語好きな「松井流」の言葉に安倍さんは反応した。
東京五輪後に経済を底上げする一手として万博は役に立つ?
安倍さんはその場で菅さんに(維新に)協力するようにと指示したという。

万博誘致は、当時「夢物語」だと思われていたが、この日で「流れ」が変わった。橋下、松井の後を継いだ大阪府の吉村洋文知事は「万博は酒を注ぎ倒して実現させた」と松井さんの酒宴の腕を高く評価。この日のことを「おちょこ事件」と話している。

それから10年。大阪?関西万博 は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、4月13日から大阪市の人工島「夢洲」でスタートした。松井さんの言ったように「6兆円の経済効果」が期待できるのか?直近の共同通信の世論調査では、大阪?関西万博に「行きたいとは思わない」が74.8%、「行きたいと思う」が24.6%。人気がまるでない。(中略)

前売り入場券は売れていないし(「売り上げ」とされる入場券の多くが企業・団体の購入分?)…ゴールデンウィークが終われば、万博会場に閑古烏が閉くかもしれない。

会場建設費もバカにならない。
夢洲は「埋め立て途上の湿地」。あちこちで基礎工事が難航。例の「大屋根リング」下の盛り土がどんどん削られ、土台がむき出しになる。 各国パビリオンの工事は次々に 「計画見直し」となっている。

維新は「夢物語を実現した」と自慢するが、現実は「悪夢の連鎖」ではないか。

でも、「維新」の面々は平気だ。
彼らの目的は万博後にカジノを建設すること?当方から見れば、公金を十分に注ぎ込んで「賭博場」を造っているように見える。

無理が通れば道理引っ込む!ではないが…道理に外れた事業が幅をきかせる?万博は「詐欺的イベント」で終わりそうな気がする。

コメント:ここにもあそこにも安倍晋三。

関連記事:24日からIR工事。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6535557
コメント:既成事実か。府民は賛成していないと思う。またもや維新の横車。

関連記事:万博のトイレに不満爆発。デザイン優先。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d57ddfc7c616941aed0f47a5c68c5e3c640ba3c
コメント:松井と橋下に最初に使わせて、ついでに外からロック。


その2)兵庫文書問題「斎藤知事に順法精神はあるのか!」ジャーナリスト 粟野仁雄
第三者委がパワハラ認定、告発対応の違法を知事は認めず、から。

主張譲らず、真摯に受け止める連呼。
第三者委報告は斎藤知事について「コミュニケーション不足を背景とする批判耐性の弱さ、冷瀞さの欠如」と指摘した。

端正で冷静そうな風貌とは衷腹「すぐ切れる(かんしゃくを起こす)」というのが職員 らの一致した見方のようだ。(中略)

兵庫県では1974年、 2期目を目指した当時の坂井時忠知事と一谷定之照氏が、県庁を二分する激しい選挙戦を演じた。勝った坂井氏は一谷派の象徴的な幹部一人を郡部に異動させたがそれほど時をおかず、特別職に戻したという。
この事情通は「報復人事はしないというのが歴代知事の暗黙の了解、一種の不文律でした。ところが斎藤さんと側近たちは4年前の初当選の後、対抗馬の金沢和夫元副知事を推した旧井戸(敏三前知事)派と思しき県庁幹部にあからさまな報復人事をしてしまった」と話す。
渡瀬氏は旧井戸派。今騒動の遠因でもあった。

鉄面皮知事をめぐる文書問題もすでに1年(中略)。

残念ながら斎藤知事には人間的な耐性欠如、度量不足を感じるばかりだ。他はさておき、渡瀬元局長の懲戒処分を撤回し、名誉回復をするだけで評価も変わろうが、この男には期待薄のようだ。

コメント:世間には結構います。小さな権力を振り回す、斎藤のような薄っぺらい人間が。しかももっと言えば良心と人間性を喪失した人物が。
関連記事:元百条委県議が中傷メールで被害届。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250415-OYT1T50148/
コメント:犯人を突き止め、損害賠償の請求を。


その3)世界透視術 毎日新聞客員編集委員 金子秀敏
「関税どころじゃない」
トランプ米大統領が全世界を相手に「相互関税」戦争を始めた。世界同時株安が起きようが反対デモが起きようが、どこ吹く風で「関税」砲を連射する。(中略)

だが、不思議なことが起きている。トランプ氏は連日、獅子吼しているのに、習氏の表情には全く覇気が見られない。共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)の招集が固まり習氏は正式に引退する、関税どころじゃないだろうという観測がある。

今月(中略)3日問、秘密会議を開いた後、8日と9日の両日に、李強首相の主催で「中央周辺工作会議」を開催、習氏が重要演説を行った。
その映像はテレビに流れた。習氏の顔は弱々しい。会場の党高官たちは全員緊張した面持ち。だれも箪記用具を持っていないので、メモや録音が禁止されていることがわかる。3月に習氏が貴州省と雲南省を視察した際もメモが禁じられ、習氏から「病気引退」の意向が示されたという。

今回も引退の話が出た可能性が高い。習氏側近の高官たちはうつむいて演説を問いている。(中略)

すでに3月31日、党政治局会議でふたりの政治局委員(中略)の役職が入れ替わる人事異動があった。習派は中央組織部長を失い、軍権に続いて党の人事権も失ったことを意味している。(中略)

石泰峰氏は胡氏や温氏ら改革派党長老の支持を受け、党の再建に着手すると期待されている。だが、党の再建は10年単位の課題。いまの危機に間に合うのか。トランプ氏はそこを突いたが、米国債売りのリスクが出て相互関税の上乗せ分は中国を除いて一時停止に。どちらも関税戦争どころではない?

コメント:習近平の病気引退の話は今回初めてです。確かにトランプどころではないでしょう。



2748.世界主義に背を向ける米国 4.17

今回の前書きは朝日新聞(4.16)コラムニストの眼 ディビッド・ブルックス
(ニューヨーク・タイムズ)「米国の偉大さ、関税が停滞させる冒険心」から

トランプ米大統領の関税がすでに引き起こし始めている経済的な惨事については、他の人たちに語ってもらうこととして、私はここで、その関税がアメリカ人の精神と魂に与えるダメージについて説明したい。

トランプ氏は壁を築いている。彼の貿易政策が妨げているのは商品の流れだけでない。アイデアや人との交流、技術、そして友情といったものの流れまでも妨げてしまっている。彼の移民政策も同様だ。トランプ氏は、国際的な交流に深く関わっている機関やコミュニティーを攻撃している。対象になっているのは、科学研究者や大学、外交団、海外援助機関、それに北大西洋条約機構(NATO)のような国際的な同盟関係もそうだ。

トランプ氏の政策の本質とは「あのいまいましい外国人たちは嫌いだ」ということなのかもしれない。

ただ、西洋文明の歴史において、偉大な国家というものは常に十字路のような存在であった。あらゆるところからの人々が出会い、アイデアを交換し、新しいアイデアを生み出してきた場所だった。(中略)

十字路の国として、行動的な場所を求める意欲的な移民を、この国は引きつけてきた。自由貿易も擁護した。英国の植民地主義と米国の国際主義によって、英語は世界言語に最も近い存在となった。

かつてはこれが私たちの未来だった。(中略)
米国には世界的なつながりを持つ多様な国民がおり、二つの大洋を超えた同盟関係があり、そして多くの留学生を抱える一流大学がある。

いま、全てが損なわれている。私の最大の懸念は、この国の精神と価値観についてである。問題なのは、最盛期にある社会の文化を見ると、現在の米国のメンタリティーとは正反対であるということだ。

例えば、イノベーションやダイナミズムを推進する人たちのことを考えてみてほしい。彼らはどんな人たちだろうか。

末知の状況に身を置くことをいとわないー。彼らは新しいものに強い関心を持っている。(中略)

多様な好奇心を持っているー。彼らの関心や情熱は多岐にわたる。(中略)

社交の幅が広く、多様な友人関係を築いているー。(中略)

全く異なる世界観を組み合わせることができるー。(中略)

常に成長に向かって突き進んでいるー。(中略)

米国の哲学者ラルフ・ワルド・エマーソンは「人は、その目標ではなく、その変遷において偉大である」と書いたが、まさにその通りだ。

こうした価値観や姿勢には名前がある。コスモポリタニズム(世界主義)だ。01年の9・11同時多発テロ以降、21世紀はコスモポリタニズムに次々と攻撃が繰り返されてきたように思える。指導者という指導者が人々の恐怖をあおり続けている。このような非情な世界の雰囲気は、人々の交流を妨げるだけでなく、米国の最大の特徴だった冒険心すらも抑え込んでしまう。トランプ氏は、関税の詳細を発表した4月2日の水曜日を「解放の日」と呼んだが、「停滞の日」の方がよりふさわしいかもしれない。

もし米国が今もまだ米国であるのなら、これらの関税はトランプ政権の転換点となるだろう。関税がもたらす無意味な経済的苦痛に人々は慨慨し、関説が象徴するひきょうな価値観に反感を抱くだろう。

(NYタイムズ、4月3日電子版抄訳から)

コメント:トランプは、彼なりの思想や価値観を追求しているわけではない。単に世界の半分を占領し、その王様になって、権力を振りかざしたいだけだ。尊敬するのはナポレオン(共和制専制君主)らしいが、やっていることはヒットラー(ファシズムによる恐怖政治、外国人の弾圧と排除)と変わらない。富裕層に搾取され、経済的に差別されている民衆が、(トランプは富裕層なのに)英雄が現れたかのように奉っているのは理解に苦しむ。トランプの論法は、自分に都合の悪い事は、全て他人のせいにするという幼稚なすり替えであり、そんなトリックで簡単に騙される米国民が憐れである。


【注目記事】

・立憲の党内対立深まる。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6535581
コメント:対立上等。思い切って分裂し、右派(含む野田、枝野、長妻)は自民党に合流すれば良い。その結果連合は自民党支持となるだろう。維新も自民党に合流する方が、国民には分かりやすい。もとより自民より更に右寄りの政党だ。立憲が左右に分裂することで、初めてリベラルな国民の為の、真の民主党が誕生する可能性が出て来る。しかも新民主党こそが真に中道の政党である。これ以上保守的な自民党に中道(偽物の)を名乗らせるわけにはいかない。
新民主党は国民民主と、れいわと、共産党をまとめるべきだ。国民の選択肢を保守と革新に簡素化することで、ダイナミックで有意義な政権交代が可能になる。これは私がこの50年主張してきたことでもある。立憲の分裂は、保守と革新の線を引き直す前に、避けて通れないプロセスであるとも言える。
但し、最重要課題の経済的格差の是正は、経済政策と税制で調整するべきだ。それはイデオロギー、とりわけ硬直した共産主義では解決は無理。社会主義でも難しい。規制で締め付けを図った途端に、やる気をなくすのが人間だからである。とは言え、誰が金持ちになるかは結果論にしても、生活権を脅かすような貧困が許されてはならない。

・TVのコメンテーターでは、国民の生活は救えない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/13ec0d54f8d17eba4f941b0bb70fa19c2cf72d94
コメント:ましてそれが自分の発言に責任が持てない精神不安定な橋下(みゃくみゃくの兄弟)なら一層のこと。



2749.正義と善は別物 4.18

今回の前書きは朝日新聞(4.17)オピニオン&フォーラム 正義を乗りこなす
哲学者 朱喜哲(ちゅひちょる)から

編者コメント:毎日のようにトランプの宣伝文句を聞かされていると、ひょっとしたらトランプにも3分の理があるのかもしれないと思うようになる。今回紹介するのは(哲学による)正義の再定義である。

横行する屁理屈 正しさ苦手な日本 倫理の実装が必要

(中略)
「法律に反していなくても企業倫理が問われて炎上するケースは多々あります。新しい技術がどんどん出てきて、法規制が追いつかない分野もある。どうすべきか判断するための言葉遣いを堅備するのも、企業内哲学者の大きな役割のひとつです」

「『正義』『公正』といった、哲学や倫理学が培ってきた言葉群は重要かつ有用です。『なんかずるい』『おかしい』という私たちの素朴な感覚をうまく表現してくれ、どんな問題があるかを抽出するのに役立つ。ただ、日本語話者は総じて、そのような『正しさ』にまつわる言葉遣いが不得手です。企業のコンサルティングをしていても、『そんな強い言葉、怖くて使えません』なんて言われることがありますから」

「以前に実施した調査で、倫理とは@できれば守った方がいい『努力目標』A絶対守らなきゃいけない『義務』のどちらに近いと思いますかーと二択で聞くと、きれいに半々に分かれました。欧米での同様の調査をみると、当たり前ですが大半がA。よしあしは別として、@のようなフニャフニャとした倫理観では世界で戦えません」

「もうひとつ、日本では『正義』『公正』を個人の努力や気持ちの問題に帰箸させる傾向が強いので、『正義』の反対は悪ではなく『別の正義』みたいな屁理屈が横行しやすい。日本語 の、この、正しさにまつわる言葉の使いづらさを何とかしたいという思いが、哲学者としても企業人としてもあります」

―NHK党が2022年参院選で暴露系ユーチューバーを擁立した時のキャッチコピー「嘘の正義より真実の悪」を思い出します。「屁理屈」にはどう反論すればいいですか?

「『善』と『正義』は分けて考えましょうね、と。なにを『善』と考えるかは人それぞれ、まさに気持ちの問題です。ゆえに時に対立するから、それぞれの利害を調整し、バランスを取りながら、なんとか一緒に社会を営んでいくための合意点を見いださなければならない。万人が合意に達しうる状態で実現するのが『正義』です」

「ちなみに『公正』とは、わたしたちが『正義』について合意するために、場に求められる条件であり、各人に課せられた責務です。社会という『みんなで取り組む命がけの挑戦』に参画するためには順守し、具体的なふるまいとして示されねばなりません。内心の問題では全くないのです」(中略)

ー朱さんにとってのマジョリティーの責任とは?

「いつも、そしていま現在も言葉にならない叫びがこの社会にはあふれている。それを聴きとろうとする態度をもつこと。そして、バザール(編者注:市場=生活の糧を得るために誰もがそこで生きざるを得ない場所。いろんな客がいるけれども、稼ぎを得るためにはつくり笑顔で耐えなければならない)が壊れてしまわないよう地道にクラブ(編者注:気を許せる相手との会話を楽しむ場所)的な場を開き続け、私的な会話を絶やさないことでしょう」

「こんな時代に言葉を紡いでもむなしいという声もよく聞きますが、そんなはずはない。言葉をあやつることは車の運転と似て、練習次第でうまくなるし、うまくなった方がより安全に楽しく遠くへ行ける。言葉をあきらめてはいけない。どんな言葉を使うかが『わたし』をかたちづくり、どんな言葉が使われているかが『社会』のあり方 を決定づけるのですから」

(聞き手 編集委員・高橋純子)



2750.トランプと古市 4.19

今回の前書きは週刊文春(4.24)から2件の紹介です。
ちなみに同誌の目玉記事は玉木と広末と畠山ですが、私は個人のゴシップには関心がないので、取り上げていません。ちなみに同誌の目次は以下のサイトで確認できます。私も購読している楽天マガジンでは、誌面の紹介はほぼのり弁状態(白抜き)なので、内容確認の役には立ちません。
但し斎藤の続報があり、斎藤が県庁内で誰が週間文春以情報を流したのか、犯人探しを命じたという内容です。このどこが真摯に受け止める態度なのでしょうか、3人も犠牲者を出したのに、いささかの反省もなく、事件当時の意識から少しも変わっていない。可愛いのは自分だけ。自分を批判する者は、今後も追い詰めて殺すつもりなのか。心底腐っている。人間性を失った知事はもはや人間とは思えない。悪魔、もしくは巨大な毒蛾です。

文春オンライン:
https://bunshun.jp/list/magazine/shukan-bunshun

町山智浩の言霊USA「トランプは世界の貿易システムに核爆弾を投下した」から

(前略)
「すべての輸入品に基本関税10%をかける。最悪の違反者には、もっと高い関税税率を適用する」とトランプは言う。トランプがいう「違反者」のトップは中国で、現行の20%に今回の34%の関税を上乗せすると54%!台湾には32%、インドには26%、EUには20%、アメリカに忠実な日本にはなぜか24%!この数字はどこから来るの?

トランブはこれは「相互」関税だという。つまり各国がアメリカ製品にかけている関税率などへの報復として、その半分の関税率をかけるという。その表を見ると日本がアメリカ製品にかけている税率は46%…そんなの聴いたとないよ!

実はこれ、税率でも何でもなく、アメリカの各国に対する貿易赤字額を対米輸出額で割り、それを2で割った数字なのだ! 経済ジャーナリストのジェームズ・スロウィッキがそれを発見した。「相互関税」ってウソじゃん!何が「違反者」だよ!

だから、アメリカ製品が買えない貧しい国ほど税率が高い。アメリカヘの衣類輸出に依存して いるバングラデシュに37%、震災で苦しむミャンマーにも44%、マダガスカル47%、カンポジア49 %、トランプが「誰も関いたことがない」とパカにしたアフリカ南部のレソト(輸出品はダイヤ)に50%。これではただの弱い者イジメだ。

「トランプは世界の貿易システムに核煤弾を投下した」国際通貨基金(IMF)元チーフエコノミスト、ケン・ロゴフはBBCテレピでそう言った。投資銀行JPモルガンはこの関税導入で世界的な景気後退が始まる可能性は60%と予想した。

翌日、全世界の株価が下落した。コロナ以来最大の下げ幅だった。

いちばん被害が大きいのは、なんとアメリカ。関税を払うのは外国ではなく、アメリカの輸入業者だから企業はコスト高に苦しむだろう。(中略)

このままだと世昇は関税戦争に突入する。
「アメリカの各世帯は年間5000ドルの負担増になる」
ミシガン大学のジャスティン・ウォルファーズ教授は、企業がコストを価格に転嫁するため、庶民の生活費は6%上昇すると予想。

トランプはこの関税で6兆ドル以上を得ると期待しているが、それを払うのはアメリカ国民。この関税で得た金はトランブが公約している大減税にあてられるといわれる。クリントン政権の労働長官だった経済学者ロバート・ライシュは、「物価高と富裕層への減税で、アメリカの貧富の格差はますます悪化する」と言う。(中略)

そうなってもトランブは何の責任も取りはしないだろう、と、ニューヨークタイムズ紙のビンヤミン・アペルバウムは言う。「彼は自分が作った混乱を他人に片付けさせてきた人なのだ」

トランブの暴走を止めるため、連邦議会の上下院はやっと動きだした。まず民主党議員によるカナダヘの関税撒回法案に、今までトランプの言いなりだった共和党議員も賛成票を投じて可決。続いて、大統領が関税をかける場合、議会への説明と承認を義務づける法案が提出された。だが、どちらもトランブが拒否権を発動するはず…。

そもそもトランプの関税率リストは雑すぎる。Alで適当に作ったらしく、南インド洋の南極近くの無人島2島が含まれていた。そこにはアザラシやペンギンしか住んでない。ペンギン村が何を輸出するの?

すると10日、前日に発動したばかりのこの関税 の一部を90日間停止するという速報が飛び込んできた…その後、どうなりましたか?

コメント:赤澤が交渉から戻りました。世界中が成り行きに注目しているので、今や世界の時の人です。米国の最初の交渉相手だから、見せしめの意味もあって、トランプにぺちゃこにされることが決まっているという意味で、最も不幸な大臣でもあります。


お次は私も苦手な古市の研究です。

能町みね子の言葉尻とらえ隊「古市憲寿」から

古市憲寿に対して、私はとんでもない思い違いをしていた。今回このことに気づき、筆を執った次第です。

彼は、中居正広事件で「文春の(軽微な)誤報」が報じられた際、ことさらにこれを 問題視し「『週刊文春』は廃刊にした方がいい」とぶち上げていた。3月末に詳細な報 告書が出ていよいよ中居の「性暴力」が確実になり、この件をどう振り返るのかと思 いきや、関西テレピの番組で「性暴力っていうことにWHOのすごい広い定義をひいてきてる」「上司が部下を飲みに誘うことも性暴力になりうる」と言い放ったのだった。

性暴力の内容が分からないのは中居本人が守秘義務の解除に応じないせいなのに、それをいいことに「中居くんほんとは無罪かもよ?」とほのめかし、中居ファンに犬笛を吹いているのだ。

この期に及んでこんな無理な論法で堂々と擁護するなんて、私は少々異様さも感じた。彼は冷笑的でリアリストに見えるのに、なぜここまで中居の味方という立場に拘泥するんだろう?

彼は14年に「ワイドナショー」に出演し、新奇な淡泊さが松本人志に気に入られてイメージ作りに成功した印象がある。選択的夫婦別姓に賛成し、万博には大筋で反対するなど、主張からしても長らく「新世代の人」という印象があった。

が、やっと私は気づいたよ。クールでドライに見えるが、彼の根本は昭和の芸能人なのだ。

彼は権力者や有名人と仲良くなるのが本当に大好きで、安倍晋三夫妻、秋元、林真理子、松本人志、中居正広、佐藤他らとの交流を隠さない。単にこういう派手な世界が好きなのだろう。(中略)

大物に取り入り、メディアに出て発言力を高め…小学生の頃からずっと、同じ手段で世渡りしてきたわけだ。

芸能人との派手な交流が大好きなパリピで、権力者に取り入るのも大得意。こんな人 なら、「世話になった人には恩義を返そう」と熱くなるのも当然だ。自分を活躍させてくれた松本・中居のためなら、少々無理があろうが仁義を通すと頑張っているわけだ。(以下略)

コメント:友達を見れば本人が分かる。私の古市評はそれに尽きる。ちなみに彼は週刊新潮にコラムを載せているが、言葉通りに受け取れない事を、この記事は教えてくれる。ちなみに「すごい広い定義」という言葉はない。「とても」か、百歩譲っても「すごく」だろう。
一方で、若手にも優れた論客はいる。安部敏樹(いつもTシャツ、羽鳥のモーニングショウ)、荻上チキ(時々サンデー・モーニング)等がそれだ。古市のようなミーハーなどとは、信念も根性も、社会貢献度も全く違う。
いかに顔が売れていても、お笑いタレント(加藤、竹山)やスポーツ選手(一茂)は、意見を聞くのは、国民の時間の無駄遣いである。
私は日本の国民の世論が定まらず、また次元が低いのは、半可通なのにTVで大きな顔をしているコメンテーターが多過ぎるからだと考えている。国民の世論形成に大きな影響力がある以上、TV局は登用に当たって慎重を期し、せめて高校程度の政治経済歴史一般常識の簡単な試験くらいは実施して欲しい。実際に試験すれば多くの論者が失格するはずだ。
ちなみにNHKから民放に出たアナウンサーの中でも、首をかしげたくなる者が結構いる(青井、有働他)。
TVでクズの論者(やMC)に付き合っている時間があったら、WTWの一行でも二行でもご覧頂きたい。その方がよほどその後の人生でお役に立つものと考える。