「オンライン・オピニオン」


新自由主義の30年
フェイクファシズム
森友文書隠蔽疑惑
乱入男の正体
トランプと法の支配
学術会議解体法案
軍政の腐敗、インフラの老朽化
対米基軸外交
富士山噴火
有望な対立候補が必要


2761.新自由主義の30年 5.8

今回はシリアスなテーマです。長いのでご容赦下さい。雑誌地平5月号特集記事、「新自由主義の30年」から

1995年5月に日本経団連が公表した政策文書「新時代の日本的経営」は、今の日本における労働と生活に、もっとも大きな影響をもたらした文書かもしれない。
「新時代の日本的経営は労働者を三層にー会社の幹部候補の正社員、技能やスキルをもつ専門職、そして多数の不安定な非正規雇用―分けることを提唱した。

それから30年、社会はどうなったか。
非正規雇用は激増し、多くの安定した雇用が失われた。
実質賃金は下がりつづけ、格差が広がった。
事故責任論が広がり、社会の連帯が失われている。
多くの悲惨な事件が起こされた。
少子高齢化が進み、地方の過疎化が進んだ。
特に若者や女性、単身の高齢者などが貧困に直面している。
大企業の支配力が強化され、労働組合は弱体化した。

この現在地からどのように反転していくのかを考えるため、この30年を総括する。

(中略)1950年代前半、男女間賃金格差は大きかったが、その他の格差(ジニ係数、規模別賃金格差、産業別賃金格差)はおおむね小さかった。日本全体が貧しく、みんなが貧しさを分かち合う時代であり、しかも農地改革や労働改革によって農民層と被雇用者の内部の格差が縮小していたからである。(編集者注:ジニ係数とは所得の格差を示す指標。0から1までの値で表され、0に近づくほど所得の格差が小さく、1に近づくほど所得の格差が大きいことを示す)

しかし50年代後半に入ると、格差は拡大する。ようやく本格化した戦後復興が、大企業と都市部で早く進行し、中小企業と地方が取り残されたからである。

高度経済成長が始まると、格差は縮小に転じる。経済成長の成果が中小企業や地方にまで波及し、また人手不足のため全体に賃金が底上げされたからである。高度経済成長は70年代半ばに終わるが、格差が小さい状態はしばらく続き、各指標は1975年から80年ごろ底に達する。「一億総中流」がいわれたのが、このころである。

ところがその後、格差は急拡大を始める。とくにジニ係数の上昇はすさまじく、規模別賃金格差と産業別賃金格差も2000年代半ばまで急速に拡大を続けた。男女間賃金格差さえも、70年代後半から拡大に転じた。近年、産業別賃金格差と男女間賃金格差はやや縮小傾向にあるが、にもかかわらずジニ係数が上昇を続けているのは、各産業や男性・女性それぞれの内部の格差が拡大したことを示している。その主要な原因は、非正規労働者の増加である。

一格差拡大とアンダークラスの形成一

こうした格差拡大は、経済のグローバリゼーションとサービス経済化というマクロな背景をもっとはいえ、かなりの程度まで意図的に引き起こされ、または放置されてきたものである。ここでは二点だけ指摘しておこう。

1995年、主に労働問題と組合対策を担当していた財界団体の日本経営者団体連盟が、「新時代の『日本的経営』という報告書を発表する。報告害は被雇用者を、@長期蓄積能力活用型、A高度専門能力活用型、B雇用柔軟型の三タイプに分け、従来型の安定雇用にあたる@は管理職・総合職・基幹職に限定し、専門・技術職はA、一般職・営業職・技能職はBとして、有期雇用で退職金も年金も支給しない、切り捨て可能な存在にすることを提案した。

AやBのような労働者は従来からいたが、あくまでも限られた存在だった。とくにBは主に学生アルばイトやパート主婦、定年後の嘱託など、人生の一時期のみに適用される雇用形態だった。報告書はこのような雇用形態を、より一般的なものとすることを提案したのである。そして実際にその後、非正規労働者は激増した。

さらに忌まわしい文書は、1995年の経済戦略会議答申「日本経済再生への戦略」である。この答申は、日本の経済成長を妨げているのは「行き過ぎた平等社会」であり、これと決別して、「個々人の自己責任と自助努力」をベースとした「健全で創造的な競争社会」を実現すべきだと宣言した。

(中略)すでに格差は十分すぎるほど拡大していた。就職氷河期が到来し、就職できない若者たちが激増し、フリーターたちが街を覆い始めていた。そこにさらなる労働の規制緩和、そして富裕層の減税と低所得者の増税が打ち出されたのである。しかも日本は「行き過ぎた平等社会」だというのが、いわば政府の公式見解となったことから、格差拡大を食い止める政策が実行される可能性はなくなってしまった。(編集者注:新自由主義ですぐに思い出すのは竹中平蔵)

とくに非正規労働者の増加の影響は大きい。労働者階級を正規と非正規に大きく分断し、日本の階級構造を大きく変えてしまったからである。

これまで資本主義社会には、一般に四つの階級が存在するとされてきた。両極に位置するのは、企業の経営者からなる階級である資本家階級と、現場で働く人々からなる労働者階級だが、それ以外に二つの中間階級が存在する。ひとつは企業とは別に、独立自営の農業や商工サービス業などを営む人々、もうひとつは企業で働く専門職・管理職・事務職などの人々である。前者の人々は旧中間階級、後者の人々は新中間階級と呼ばれる。

労働者階級はこれまで、資本家階級と並ぶ資本主義社会の一大階級のひとつとされてきた。ところが今日では雇用形態の違いによって、その内部に大きな格差が生まれ、事実上は二つの階級に分裂している。上位に位置するのは正規労働者階級、下位に位置する非正規雇用の労働者階級は、ここではアンダークラスと呼んでおこう。

(中略)アンダークラスの窮状は明らかだろう。就業人口の13.9%を占め、すでに旧中間階級を上回る巨大な集群なのだが、正規労働者階級と比べると個人年収は四割強に過ぎず、世帯年収も六割を大幅に下回り、貧困率は実に37.2%にも達している。パート主婦以外の非正規労働者といえば、フリーターなど若者のイメージが強いが、実際にはその平均年齢は正規労働者階級を上回り、新中問階級と大差がない。就職氷河期から30年近くを経て、多くが中年期を迎えているのである。そしてアンダークラスの未婚率は、69.2%と極端に高い。経済的理由から、結婚することも子どもを産み育てることも困難な人々なのである。

これらの人々の窮状が放置されるなら、やがて貧困や住宅問題、健康問題など、さまざまな問題を抱えた巨大な高齢貧困層が形成されることに疑いはない。しかもアンダークラスは、学卒後に安定した職を得ることのできなかった若者たちを中心に、いまも生み出されつつある。そうである限り、少子高齢化の流れが止まることはない。日本社会は、いままさに危機的状況にある。しかもアンダークラスは次世代を再生産しないから、その子どもたちがアンダークラスになるわけではない。したがってアンダークラスがいまの規模で存続する限り、他の階級の子どもたちがアンダークラスに転落することになる。アンダークラスの窮状は、他の階級の人々にとって他人事ではない。

それでは、どうすればいいのか。不安定な雇用の拡大に歯止めをかけ、最低賃金を大幅に引き上げて非正規雇用でも十分な生活ができるようにし、さらに所得再分配によって経済格差を縮小することが必要である。

しかし現状では、非正規雇用者の比率は高止まりし、最低貨金の引き上げは遅々として進まず、税制は所得再分配の手段としてはまったく機能していない。政治を大きく変えない限り、事態が改善することはないだろう。調査結果から、政治を変えるための道を探ってみよう。(中略)

以上からみると、平和主義以外に特徴のない「平和主義者」、明確な立場をもたない「無関心層」を除く、「リベラル」「伝統保守」「新自由主義右翼]が現代日本における 主要な政治主体だと考えていいだろう。

それにしても、伝統的な保守の政治的立場に加えて、新自由主義的な自己責任論を振りかざし、極端に排外主義的な態度を示す「新自由主義右翼」のユニークさはきわだっている。いわゆる「岩盤保守」の実体がこれだろう。

どのような人々なのか。男性比率が67.3%と3分の2を超えており、男性中心のクラスターといえる。大卒者比率は66.8%と高く、他を大きく上回る。平均世帯年収は812万円、資産総額は3370万円で、他を大きく上回っており、その豊かさはきわだっている。

「国政選挙でいつも投票している」という人の比率は、「新自由主義右翼」がもっとも高く、「リベラル」と「伝統保守」がこれに続いている。「平和主義者」と「無関心層」は低い。各クラスターが自民党支持者に占める比率をみてみよう。もっとも小さなクラスターである新自由主義右翼が自民党支持者に占める比率は23.5%で、規模の上では大きい「伝統保守」(28.5%)に近い。これは「新自由主義右哀」の自民党支持率が格段に高いからである。しかも「新自由主義右翼」の投票率は他のクラスターより高いのだから、自民党の得票に「新自由主義右翼」の票が占める比率は、さらに高いはずだ。

このように自民党は「伝統保守」と「新自由主義右翼」を主要な支持基盤としているのだが、自民党の現実の路線は、2009年に政権を奪われ、安倍元首相の下で政権を 奪還したあと、岸田政権に至るまでをみる限り、「新自由主義右翼」に近かった。特定秘密保護法、集団的自衛権行使の閣議決定、安全保障関連法など、国民の多くが反対した施策を次々に打ち出す一方で、格差解消や所得再分配に対しては消極的な姿勢をとり続けた。公明党も、これに追随した。

政治学者の谷口将紀によると、保守ー革新の軸からみた場合、国会議員の政治的態度の分布は、有権者のそれよりも保守側にずれている。自民党の国会議員の政治的態度が、大きく保守に傾いているからである。そしてこれは、民主党に政権を奪われた党勢衰退期から反転攻勢に出る過程で、自民党が保守層の地盤強化を優先させた結果だという。

この保守層の中核に位置するのが「新自由主義右翼」だろう。こうして本来少数派であるはずの「新自由主義右翼」は、自民党の支持基盤の中核としての位置を獲得し、その主張は不釣り合いに強く政府の施策に反映され、事実上は自民党政権を乗っ取った。これが、民主党政権の崩壊以来しばしば指摘されてきた「日本政治の保守化」の真相だろう。

一政党システムの転換を

つまり日本の政治はこの十数年の間、「リベラル」「伝統保守」という多数派の民意を反映してこなかった。「リベラル」は野党を支持するのが自然と思われるが、現実には 野党は「リベラル」の支持を必ずしも獲得し得ていない。このため現状では、野党が政権を握ることは難しい。「伝統保守」は、難しい位置にある。憲法改正を望んではいるが、憲法改正を掲げる自民党は「新自由主義右翼」に迎合し、所得再分配に消極的で格差拡大を放置している。だから不満を抱えながら自民党を支持するか、無党派になるしかない。

変化の兆候はある。2024年の衆議院議員選挙では、自民党が大きく得票と議席を減らした。巖大の要因は旧安倍派を中心とする「裏金」問題だったとみられるが、これとは別の要因を指摘する声も多かった。いわゆる「岩盤保守」の一部が自民党から離れ、日本保守党など新興の右派政党に投票したことである。

新興の右派政党が定着し「新自由主義右翼」の支持を得るようになれば、自民党はその票をあてにすることができなくなる。そうなれば右派的な政策を掲げることは得策ではなくなり、自民党はより多数派の「伝統保守」に近い立場をとるようになるかもしれない。

このとき、一方に「リベラル」を主要な支持基盤とし、 所得再分配を通じた格差の縮小を目指すとともに、憲法改正に反対し、日米軍事同盟の強化に慎重な野党、他方に「伝統保守」を主要な支持基盤とし、野党と同じく所得再分配による格差の縮小には積極的である反面、憲法を改正して日米軍事同盟を強化しようとする自民党、というクリアな対立軸が生まれることになる。これを不満に思う自民党の右派勢力は、新興の右派政党に合流するか、新たに右派政党を作ればよい。

このように格差の縮小と貧困の解消が必要だという社会的合意のもとで、野党と自民党が対峙する政党システムが実現すれば、日本社会は大きく変わるだろう。格差は大幅に縮小し、人々は格差拡大の弊害から解放される。アンダークラスを含めてすべての人々が、次世代を再生産することのできるだけの所得を手にし、出生率は回復する。消費の拡大によって経済は安定し、社会保障システムが破綻する心配もなくなる。そして憲法や外交など重要な政治的課題について、一部の人々の主張が過剰に代表されることはなくなり、異なる立場が偏りなく代表されて対話が展開される、健全な政治社会が実現するだろう。これが日本社会を現在の危機から救う、最善の方法ではなかろうか。

コメント:長々と論文にお付き合い頂いた読者に感謝する。最近日本で起きた悲惨な事件も、その多くは容疑者が経済的に恵まれないか、またはその家庭環境が正常でなかった背景から生じている
格差の元凶である、新自由主義を日本に持ち込んだのは、小泉純一郎と竹中平蔵(歩く浅智恵)だった。上記の論文にあるように、新自由主義は、利点(企業の活性化)より欠点の方が遥かに多い。しかし未だに竹中(リクルート)はがんとして自分の過ちを認めない。
今後世界各国が直面するのはこの右傾化した新自由主義層をどう扱うかである。
しかもそれ以上に右傾化の激しい、極右政党が世界中で(日本では保守党、参政党、維新も)台頭しており、世界の民主主義は「右傾化の嵐」の中で、かつてない危機に直面している。
人類が同じ宇宙で共に暮らす相手としては相応しくないと判断した「誰か」に、大洪水や隕石の衝突なおで、いつ何時一掃されないとは限らないのである。




2762.フェイクファシズム 5.9

今回はサンデー毎日(5.18/25)の冒頭記事です。
人事統制、メディア支配、思想信条介入…安倍政治を逆輸入したトランプのフェイク・ファシズムとどう戦うか
倉重篤郎のニュース最前線、金子勝慶應大名誉教授が日米関税交渉を掘り下げる、

歴史は繰り返すか。どこかで見た光景ではないか。

トランプ、石破茂両政権下で始まった日米関税交渉だ。訪米した赤沢亮正経済再生相に対しトランプ大統領が要求したのは、在日米軍の駐留経費負担増、米国製自動車の日本での販売促進、685億ドル(9.7兆円)にのぼる対日貿易赤字の解消だった。(中略)だが、どの課題も過去の日米交渉で散々議論され、落着したものばかり。どう蒸し返せというのだろうか。

駐留経費負担は、(中略)本来米国側が負担すべき経費を日本側が肩代わりしてきたもので、1978年、金丸信防衛庁長官時代に労務費一部62億円の負担で始まり、金丸氏により「思いやり予算」と命名されたが87年には特別協定で制度化、(中略)その後何度も増額され、今では2000億円規模に膨れ上がった。面倒見の良さは、米国の同盟国の中でも群を抜いており、これ以上の負担は米国の傭兵化になると言われるところまで来ている。

日米の自動車摩擦の歴史も1970年代に遡る。石油危機で米国の消費者が低燃費の日本製小型車を求め対米輪出が急増、米大手「ビッグスリー」の業績が悪化し、これが両国間の最大の経済摩擦となり、81年から93年まで日本側が輸出台数を制限する「自主規制」を導入すると共に、日本車メーカーは米国での現地生産を加速した。当然のことながら米車の日本での販売促進も焦点化、ビッグスリーが右ハンドル車を投入す るなど、日本市場開拓に力を入れた時期もあったが、結局は嗚かず飛ばずに終わっている。米国からは安全基準が厳格すぎるとの不満が出るが、欧州車が人気を博す中では説得力を欠く。

そして、対米赤字の解消要求だ。(中略)自動車輪出自主規制に始まり、プラザ合意(85年)で劇的な円高シフトを、前川リポート(86年)で内需振興を迫られ、日米半導体協定(86〜95年)では、2割という外国製品の輸入割り当てを強制され、世界シェア7割(81年)の日本の半導体産業を衰亡させた。

この苦難の歴史を知ってか知らずか、日本にとっては過去の悪霊を再び呼び起こせ、というのがトランプ威令である。だが、いまや貿易赤字国に転落した日本側に乾いた雑巾を再度絞り込む余地はあるのだろうか。

これに加えて、もう一つのデジャブ(既視感)が我々の目を捉える。第2次トランプ政権と第2次安倍晋三政権の類似点である。中央銀行トップに対する人事介入、メディア統制、学術教育への強権行使…。(中略)意外やトランプは安倍手法を取り入れているのか。同じ見立ての金子勝慶應大名誉教授に解説をお願いした。

どうも既視感拭えない。

「米国側から出てきている要求は、メニュー的には80年代の輸出自主規制から構造協議に至る一連の日米経済摩擦の時と何ら変わっていない。日本は国益を削り一定の回答を出してきた。あの時代と何が違うかというと、日本が米国以上の『双子の赤字』を抱えていることだ。基軸通貨国でもないのに、財政赤字も貿易赤字もしこたま出しており、80年代の『ジャバン・アズ・ナンバーワン』と言われた時代のように譲歩するゆとりがなくなっている」

「80年代はまだ日本財政は健全で、一時は赤字国債発行ゼロの年もあったくらいだ。それが今や累積債務高が対GDP比で2.57倍、第二次大戦末期の水準だ。膨大な黒字を謳歌していた貿易収支も様変わり、輸出額が増えても化石燃料、農産物輸入などそれを上回る輸入額増で赤字体質化した。産業競争力も劣化、ハイブリッド自動車の後は、半導体の製造装置と、シリコンウェハー、各種レジスト(電子回路保護材料)など半導体素材の生産分野くらいしか残らない。その中で何を譲るのか。6兆円稼いでいる自動車でまた譲ると、さらなる貿易赤字を生み、雇用を失うことになる」

「防衛費も同様だ。米国の意向をも受け、すでに5年間43兆円と倍増路線を走っている。いわゆる思いやり予算に 在日米軍関連経費もなどを加えた在日米軍関連経費もすでに8000億円を超えている。要は、財政余力をどう考えるかだ。今日銀の政策金利が0.5%。長期金利が1.5%。金融正常化やインフレ対応で政策的には利上げ方向だが、財 務省試算では長期金利が2.5%になると、楽観シナリオでも国債利払い費が 3年後に16.1兆円と現行より7兆円、消費税でいうと3%分増える。ない袖をどう振るのかという局面だ」

半導体協定が致命的?

「輸入割り当てをかけられ、世界最大シェアを誇っていた日本の半導体産業が、その技術と人材を台湾、韓国、中国メーカーヘ流出させ、壊滅的に駄目になった。自動車だけ守ればいいというスタンスが、日本経済の知識産業化、IT化を決定的に遅らせる原因となった。自民党と経産省の日米交渉、産業政策の失敗のツケを追わされてきた形だ」

「ここ10年のアベノミクスが状況をさらに悪化させた。日本が食べていくための高付加価値産業の創出が必須なのに、反省もないまま、麻薬のような金融緩和と法人税減税や給付金などバラマキ政策に堕す以外のことをしてこなかった。EUや中国が対ASEAN外交を強化、アジア経済パワーの取り込みに注力したのに、日本の動きは鈍かった。

多国間協議により自由貿易体制をどう守るかという局面で、日本はカードを持たない無為無策のまま、90日問に向かっている。自動車一本足の案山子打法が、さらにトランプのけたぐりに引っ掛けられようとしている」

トランプと安倍似てる?

「バノンの言う通り、トランプが安倍手法を逆輸入しているように見える。安倍氏は自らの政策目的に人事を目いっぱい使った。日銀総裁を黒田東彦氏にして異次元金融政策(アベミクス)をやらせ、内閣法制局長官を小松一郎元外務省国際法局長に挿げ替え、集団的自衛権憲法解釈を引っ繰り返し(2015年9月新安保法制として成立)、NHK会長に籾井勝人元三井物産副社長を起用、あるいは放送法の解釈変更(高市早苗総務相による15年5月の「停波」答弁)でメディアを支配、内閣人事局で官僚を掌握した。大学の運営費抑制や日本学術会譜の人事介入で教育・学術の自由に容喙、思想信条をチェックし、巣団的自衛権に反対する学者を排除した」

「僕はこれを2015年体制と名付けたが、よく見るとトランプも似たようなことをやっている。人事を側近で固め、バウエルFRB譜長には利下げしろと脅しをかけ、更迭までにおわせた。官僚統治はイーロン・マスクを使い、言う事を聞かないやつはやめさせる。メディアには、ビッグテック、GAFAを手なずけ、SNSを棠握し、表現の自由名目で、ファクトチェックをはずしフェイクだらけにした。学術にも介入、ハーバード大には、多様性や 反ユダヤ運動を認めているとして補助金を凍結した」

「他にもある。司法長官、 CIA、FBIといった捜査機関の長を子飼いに代えた点も、安倍氏が検事総長人事にまで手を付けようとしていたのに似ているし、自らが講会襲撃事件などで訴追されたことを『ディープステート』に貶められたと陰謀論化しているのも、安倍氏が財務省について+『彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない』と回顧録で述べている点と通じ合うものがある」

「僕はこれをフェイク・ファシズムの時代と言っている。フェイク情報がチェックされないまま、それを根拠に大衆が動いてしまう。トランプは間違いを認めず、司法を無視する。不正選挙だと言って、支持者を譲事堂に突っ込ませた。ナチスがやったのと同じだが、ナチスがメディア弾圧後に行ったのに対し、トランプは SNSという新メディアを使って嘘や差別や暴力を肯定、拡散して同じことをした。新しいファシズムの形を作ってしまった」(中略)

「リフレ派の言う『消費増税したからアベノミクスがうまくいかなかった』というのも嘘だ。増税分を社会保障に回せば安心感が増え消費効果も上がっただろうが、法人税減税にあててしまった。企業が賃上げや設備投資、技術開発すればまだGDPが増えたが、内部留保が2013年以降急激に増えついに600兆円を超えた。世界一企業が活耀 しやすい国にするという名目で減税したが全部それが貯金に回ってしまった。デフレになるに決まっている。本当の原因を隠している」

「フェイク・ファシズムが世界規模で広がると、これまで作り上げてきた自由で開かれた国際秩序が持続不能になる。(中略)」

なぜ持続不能に?

「米国がその覇権の条件を全部投げ捨てた。三つある。―つは、世界の警察官としての役割だが、NATOも嫌だ、日本も自己負担しろと。二つに、戦後の自由貿易体制の旗頭としての立場を関税戦争の言い出しっぺとして放棄した。三つに、戦後民主主義のモデルだったのが、僕の言うところのフェイク・ファシズムに塗り替えられつつある」(中略)

米国と世界はどうなる?

「米国はトランプ関税により、物価上昇と景気後退が同時に起きるスタグフレーションが長引くのではないか。90日聞で各国から妥協を引き出せるか、それが最初のハードルだ。世界は、米国とEUと中国の3極軸にブロック経済化していく。EUと中国がASEANを奪い合う形だ。新しい戦前に近い。不況になってトランプが戦争を挑発する 可能性も否定できない」

日本はどうする?

「四つの点で平等を実現すべきだ。一つは地域間平等だ。本当の意味で国の安全保障を考えるなら、エネルギーと食料の輸入依存を解消、再生可能エネルギーと蓄電池、スマートグリッドで分散型エネルギー体制を確立、化石燃料25兆円の輪入を半分以下にし、11兆円もの輸入超の農産物を自給する。それを担う地方がすそ野の広い経済を作り、どこに住んでも等しい条件の下で生きていけるようにする。裏金企業に法人税減税したり、円安誘導で経団連企業を救済、天下りを入れるのではなく、政府のGX やDXを根本的に新しい形に変えていく必要がある」

「二つに人生の出発点での平等だ。教育無償化や出産時、出産後のケアを手厚くする。三つに命の平等だ。国民皆保険を守る。高額医療費制度を維持して貧富の差なく癌治療が受けられるようにする一方、ゲノム診療を皆保険で実行することで世界で冠たる癌のデータバンクを作り、それをベースに分子標的薬のようなゲノム創薬で日本の薬産業を再生する。四つに男女平等だ。女性を正社員化、働き方を根本的に改革する」

歴史は韻を踏む、との視点は前号でも開陳された。ただ、同じ日米経済摩擦でも80年代に比べ、日本の衰退は目を覆うものがある。

コメント:安倍のしたことは民主主義に対する悪質な挑戦であり、決して許されることではない。平成のファシスト。



2763.森友文書隠蔽疑惑 5.10

今回の前書きは週間文春最新号(5.15)から4件ご紹介です。

森友事件、赤木雅子さんの大恩人、阪口徳雄弁護士、逝去直前の重大指摘、フリー記者、相澤冬樹から

(前略)森友事件で財務省は検察に大量の関連文書を任意提出。その開示を求めていた雅子さんに一部が開示された。ところが右上に手書で記された通し番号が70個余りも欠落している。検察から財務省に文書が戻った後、抜き取られたのではないか?その時、阪口弁護士が別の見方を示した。

「我々が告発した段階でも、同じ通し番号が打ってありますよ」
阪口弁護士は七年前、上脇教授の代理人として告発を行っている。その時の文書に同じ番号があるから、抜き取りはさらに前だという指摘だ。

それを確認する間もなく阪口弁護士が亡くなり、4月26日の通夜。雅子さんは、同じく参列していた上脇教授にこの話を伝えた。すると翌27日、上脇教授が文書を確認して私に連絡してきた。
「確かに文書の右上に鉛筆書きと思われる番号が記載されています」

7年前の告発で使われた文書は当時、財務省が事件発覚時に廃棄していたことがわかったとして公表したものだ。当時の太田充理財局長(後に事務次官)が国会で笞弁している。
「職員の手控えとして紙媒体であったりあるいは個人のパソコンの中ということで残っておったものを、押収されておった文書の写しを入手するなど、捜査当局の御協力も頂戴をして提出させていただいたものです」

つまり任意提出先の検察から文書を取り寄せ公表したということだ。その文書に同じ通し番号があるのだから、番号が書かれたのは検察への提出前ということになる。さらに今回の文書欠落について加藤勝信財務相は会見で「我々はまさに検察に提出した資料をそのまま開示した」と述べた上で、欠落は発覚当初に交渉記録を廃棄したことで生じたと説明している。とすれば文書の抜き取りは検察への提出前に行われたことになる。

しかも抜き取られた文書は特定の時期に巣中している。例えば、安倍昭恵氏とのスリーショット写真を森友学園の理事長が近畿財務局に示した14年4月の前後。それに昭恵氏が学固の小学校の名誉校長に就任した15年9月の前後だ。「財務省が検察への任意提出前に、最も知られたくない文書をピンポイントで抜き取った」疑いが、阪口弁護士の最後の発言で浮上したのだ。

ことは情報開示の問題を超え、財務省は困民への説明責任がある。欠落について弁護団は財務省に質問状を送り、二週間後までの回答を求めた。ところが期限前の24日、折しも阪口弁護士が亡くなった当日、国有財産審理室長が弁護団に電話で期限までに答えられないと伝えてきた。次回の文書開示の6月上旬頃になるという。時間稼ぎと言われても仕方ない。

今、雅子さんの念頭にあるのは新たな情報開示請求だ。事件には国土交通省と出先の大阪航空局も関わっている。この両者に財務省と同じ形で開示硝求をすれば、拒む理由はないはずだ。阪口弁護士が最後まで望んだ森友事件の真相解明は、ここからが勝負所だ。

関連記事:財務省からの回答。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6538229
コメント:実際には6月上旬ではなく今日あった。これは文春の記事も影響していると想像される。無論これでは答えになっていないが、欠落を認めただけ半歩前進。問題は失われた文書をどこまで回収できるかだ。


池上彰のそこからですか? リベラル大学を潰せ作戦始動から

(前略)また、アメリカの底流には伝統的に「反知性主義」もあります。知的エリートヘの反感や、民衆の索朴な感性を重視する感覚です。知性ある人は、いわゆる「大衆」から敬遠されたり軽侮されたりする存在なのです。

こうした人々にとって、トランプ大統領がエリート大学への攻撃を始めたことは、喝采すベきことなのでしょう。今年一月から、トランプ政権はトランプ大統領が「極左だ」と主張する50もの大学に対し、DEI(多様性、公平性、包括性)への取り組みは「逆差別だ」として撤廃を求めてきました。

特にハーバード大学に対しては、反ユダヤ主義への対応をめぐる調査の一環として90億ドル(約一兆3500億円)近い連邦助成金と契約の見直しを行うと発表しました。ここでいう「反ユダヤ主義」とは、イスラエルがパレスチナ自治区のガザを攻撃し、多数の女性や子どもが犠牲になったことを受けて、学内で学生たちがイスラエルを非難する集会を開いたことを意味します。反イスラエル=反ユダヤ主義と決めつけているのです。

それだけではありません。4月14日になって、トランブ政権がハーバード大学に突きつけた内容の詳細が明らかになりました。それによると、ハーバード大学は、連邦政府が承認した第三者を雇い、学生、教職員、スタッフ、指導部の「視点の多様性」を監査し、今年末までに報告書を連邦政府に提出しなければならないというものでした。これは政府がハーバード大学の思想をチェックするというものですが、更に驚くべき内容が盛り込まれていました。(中略)要はハーバード大学が誰を教員として採用したのかを政府に通告しなければならないのです。(以下略)

コメント:当然ハーバードは政権の要求を拒否しましたが、こうなるともはやトランプは狂っていると思わざるを得ません。自分だって一応アイビーリーグを出ているのにです。私たちは最悪のポピュリズムの姿を見せつけられているのです。こういう文章になると池上彰の独壇場です。林修には真似できません。


新家の履歴書、渡辺潤一 天文学者から
(前略)91年、ハワイ大学天文学研究所の客員研究員として十カ月の赴任が決まる と、前年に生まれた娘も連れて、家族三人でオアフ島へ。

国立天文台の観測所をハワイに開設L、大型光学赤外線望遠鋭「すばる」を設置するための下準備を兼ねての派遣でした。こちらの職員宿舎は、きれいだった。ベッドルームは二部屋、家具付きでリビングも広々。広いベランダもある。帰りたくないくら い快適だったんですが、それより忘れられないのは、この時、後の二代目台長になる小平桂一教授から思いもしなかった打診を受けたことです。それは、「国立天文台の広報の仕事をやってくれないか」。

国立天文台は、今では開かれた研究機関として、地域との交流も情報発信もしっかり行っていますが、当時はそういう発想がなかった。専門家だけの閉じた世界で、まあ、質問されれば答えるけど、こちらから何かを発信する必要はないという考えが主流でした。それじゃいけないといち早く気づかれていたんですね。でも、その時は固辞しました。そんなことをしていたら、自分の研究ができなくなることは自明だったので。それでも「君しかいない!」と折に触れては説得され…結局、小平さんが台長に就任された94年、広報普及室を開設。その室長を務める羽目になってしまいました。

以来、これまでと同じベースでの研究続行は難しくなり、後方支援的な役割にまわることが増えました。と思っていたら、94年7月、彗星の破片が次々と木星に衝突する現象が起きると、広報普及室はフル稼働。連日メディアで引っ張りだことなりました。さらに、96年に百武彗星、97年にはヘール・ボッブ彗星の出現など、宇宙にまつわるニュースが続いたことも後押しになって、僕はいつしか「彗星研究の第一人者」と呼ばれるようになっていました。だんだん天文台内、天文学界でも、広報の需要と必要性が認識されていき、公開望遠鏡による定例天体観望会は96年から開始、2000 年には天文台の一般公開を実現することができました。

思えば、広報の仕事は、確かに自分に向いていたのだと思います。テレビや雑誌から、「この天体の話を一般の人にもわかりやすく解説できる専門家を紹介してほしい」と求められた時、いろいろな意味で対応できる人は限られている。だったら僕がやりましょうか、という感じでした。そして、それが案外、苦でもない(苦笑)。今となっては引き受けてよかったなと。それに、長く揉めていた冥王星問題に決着をつけた「惑星の定義委員会」の委員7名の中に、アジア地区を代表して選出されたのは、そういった研究者としての僕の姿勢が認められたからだと思っています。(以下略)

コメント:地域で天文同好会を立ち上げた時、名誉会長をお願いしたのが、たまたま当時ご近所に住んでおられた海部宣男先生(19年すい臓がんで逝去)でした。そして先生の先導で我々地域の有象無象もハワイまで行き、スバル望遠鏡を見学させて頂いた経験もあります。
渡辺先生と最初にお目にかかったのはその後のことで、確か海部先生の講演会の時だったと思います。既に有名人だったので、無理を言って一緒に写真を撮らせて頂きました。ちなみにガリレオを想定しているようですが、今の髭は全く似合わないので、お止めになった方が良いと思います。
実は私は天文以外で、UFOにも強い関心を持っており、実際に少年時代に目撃もしているのですが、海部先生に冗談半分に存在を質問した時に、真面目な表情で、科学的には未だ確認されていないという趣旨の御答えを頂戴した覚えがあります。
アマチュア天文家の端くれとして、拙宅の物干し台には未だ天体望遠鏡が雨ざらしになっていますので、早く世話をしてやらないと可哀そうです。


読売山口社長をキレさせた新入社員の望月衣塑子風質問から

4月3日、読売グループの新入社員向け研修が実施された。場所は、読売新聞ビルのよみうり大手町ホール。同社だけでなく、日本テレピや中央公論新社、報知新聞社など読売グルーブの27社・法人の新入社員ら計約350人が一堂に会していた。

彼らの前に登壇したのが、読売新聞グループ本社の山口寿一社長(68)だ。「山口氏は社会部出身で法務部長などを歴任後、2016年から読売新聞グループ本社社長を務めています。巨人軍球団オーナーも兼務し、事実上、昨年末に亡くなった渡辺恒雄主筆の後継者。現在の読売は社内外から山口組と呼ばれるほど、圧倒的な権力を握っています」

山口氏は「読売グループの経営について」と題して講義を行った。「大量の情報が飛び交う社会では正しい情報が必変だ」などと述べたうえで、「最大、最強のメディアグループである読売グループが果たす役割は大きい」「日本が穏やかで落ち着いた社会であるためには読売新聞と日本テレビの存在が極めて大事」と強調。例年であれば質疑応答を経て滞りなく終わるのだが、この日は違った。

「質疑応答の際、日本テレビの新入社員Aさんが矢継ぎ早に何度も山口社長に質問を浴びせたのです。さながら東京新問の名物記者、望月衣塑子氏のようだった。もちろん、大半の新入社員は山口氏がグループ内でどのような存在か理解しており、その場は凍りついたのです」(日テレ関係者)

ライバル紙の朝日新間が運営する「朝日新聞デジタル」についてなど建設的な質問もあったが、とりわけ山口氏をキレさせたのが、「亡くなった渡辺主筆は政界を動かすフィクサーのような存在でした。渡辺主筆が亡くなった後はどうなるのでしょうか」という趣旨の質問だった。

「それに対し、山口氏はムッとするのを押し殺すように、『そんなことはないですから』などと応じていました」(同前)
さらに.望月衣塑子風質問を重ねた新入社員に対して、こんな苦言も呈していた。
「君、ちょっとしつこかったよね」
最後に壇上から引き上げる際には、Aさんの方向を一瞥する場面もあったという。

別の読売関係者が言う。
「メディア業界に厳しい視線が注がれている中、場を弁える常識を身に付けてほしいとの思いもあった。何より山口社長にとってナペツネさんは特別な存在ですから、揶揄するような質問は看過できなかったのではないでしょうか」

実際、渡辺氏が亡くなった直後に行った小誌の単独取材でも、記者が「山口社長にとって、主筆は父親のような存在ということ?」と問うと、きっぱりとこう応じていた。「ああ、そうです」(以下略)

コメント:人間の器の大小は本人が思ってもいなかった場所で突然露呈することがある。一方で件の新入記者は大いに期待が持てる。山口社長との勝負では、明らかに新入社員が上手だ。敢えて言わして貰えば、我々国民は優秀な記者は必要としているが、ミニツネなどに用はないのである
ナベツネが政治に容喙したことは良く知られているが、政治面や、あるい「本業」の報道で、なにか国民にとって有意義な、大きなことを成し遂げたという記憶がない。単なるボスの為のボスなら、意味がない。
関連記事:検証、戦争責任。
https://www.yomiuri.co.jp/sengo/war-responsibility/
コメント:しっかり読まないと、判断のしようがない。何しろナベツネの提唱だから、額面通りには受け取れない。


最後はサンデー毎日(5.18/25)のコラムから1件。
青木理のカウンタージャーナリズム 治安法100年の教訓と現在から
(前略)その通りだと深く頷く。当時も反対の声が根強かった治安法が、以後いかに改正され拡張され、ついには悪辣さを全面発揮してファッショ体制の縦横な刃と化したかを、いまからでも知りぬき、考えぬいておく必要がある。

それは現在を考える作業でもある。先述した共謀罪法はもとより、特定秘密保護法や重要土地規制法等々、かつての悪辣な治安法と同様に反対の声を押し切り、ろくな歯止めもないまま整えられた現在、私たちはまたも「分岐点」に立ってはいないか。状況の展開次第ではまた悪辣さを全面発揮させてしまいはしないか。これも100年の節目に「考えぬいて」おくのは決して無駄な作業ではない。

コメント:我々国民は、軍国主義、国家主義の兆候を僅かでも感じ取ったら、直ちに反対運動を起こさなければならない。それが治安維持法の教訓である。



2764.乱入男の正体 5.16

今回の前書きは週刊文春(5.22)から

@立川小学校侵入酒乱2人組の正体
(前略)「母親は娘のいじめ被害を訴えるため、この日来校。しかし、納得のいく対応を得られずAに連絡。Aは立川駅周辺の自身が経営するカラオケラウンジでBと飲酒していた。母親の話を聞いて、激高した二人はタクシーを使って小学校を訪れた。焼酎の酒瓶を片手に教室へ入り、母親からいじめ加害者だと聞いた女児の名を呼び恫喝。さらに酒瓶を割ったり、椅子で殴りかかったりし、止めに入った教師らの顔などにけがを負わせた。どちらも見境がなく、60代の校長にまで手をあげた。50代の教員は鼻の骨を折る重傷を負いました」(学校関係者)

立川署は事件の翌九日、暴行容疑で逮捕したAとBの容疑を偽害と建造物侵入などに切り替えて東京地検立川支部に送検した。なお警察は児童の特定につながる恐れがあるとして二人の名前や職業を一切明かしていない。一体男らはどんな人物なのか。
(中略)立川市で飲食店、カラオケラウンジ、ビリヤード場の3店舗を経営しており、親分肌で、困った知り合いがいるとつい口を出しちゃうタイプ。女児の母親は以前、立川で水商売をしていて、その時にAと出会った。シングルマザーになってからも、私生活上の相談をしていたようです」(同業の従業員)

(中略)別のAの知人が明かす。
「Aの店の従業員らから、『辞めたい』という相談を日々受けている。酒を飲むと、口調も態度も豹変する。すぐ手も出るし、妻子ある身だが女関係もだらしない」

(中略)実はAが逮捕されたのは今回が初めてではない。
「3年前、立川駅南口にある朝キャバで客として入ったAは、『会計が高い』とボーイに難癖をつけ、暴行を繰り返したのです」(被害を受けたキャバクラ店舗の元従業員)
店は従業員2名が顔や腹部にけがをしたとして、警察に被害届を提出。Aは傷害の容疑で逮捕された。
「それ以降、うちのグループは出禁になりました。なのに、釈放後も酔っぱらって平気で来店してきたことがあった。他の店でもAを出禁にしているとこは多いみたいですよ」(同前)

そんなAが「舎弟」のように従えていたのが、二十歳ほどの年の差があるBだった。
「BはAが経営するカラオケラウンジで店長をしている。キックボクシングの経験者でガタイのいい奴だが小心者。Aに言われるがまま、従う他ないといった感じでいつもくっついている」(Bの知人)
(以下略)

コメント:コメントの必要もないが、昭和のチンピラが未だに生き残っていたことに驚くだけ。


A古賀長男に利益供与の空港ビル会長辞任直前の無責任釈明

「週刊文春鼈子版」では4月11日、鷹城氏による会社の私物化を報道。(中略)
記者が「在任が長すぎる」と指摘すると、「僕はね、この会社に精一杯のことはやってるつもりですよ。在任期間長いのは 私物化っていうの?」
同社関係者によれば、鷹城氏は20年間、毎日の昼食を会社経費で落としていたという。関連会社が経営する羽田空港第一ターミナルの和食と中華の店がお気に入りで、客が行列を作っているのを横目に我が物顔で入店し、席に着いていたというのだ。

ー昼食代はすベて会社経費で落としている?
「僕はレストランの会長ですよ。サービスであったり食事の内容だったり。ウチの役員を連れて行って、試食をして食べて。彼らに『直すところは直せ』と」

ータダですよね。
「『交際費』ですよ」

今後の同社は悪しき風土を払拭できるかが課題だ。

コメント:これまた昭和のワンマン経営者。しかも顧客第一主義でさえない俗物を目の当たりにして、もはやこちらには言う言葉もない。せこさは人物の小ささである。しかも自分だけは特別扱い。法を超越した自己中は斎藤知事の生きざまでもある。国民民主の玉木の党員に接する態度も、完全に自分を棚に上げている。


B最後は町山智浩の言霊USAで,無論トランプの話題です。私がほぼ毎週のように町山の情報を紹介するのは、TVや新聞など、一般のメディアは中庸な報道に終始してトランプの真の姿が、一般市民の我々には見にくいものになっているからです。ついでに言えば、石破の特使の赤澤経済再生相は、他国の交渉団と比べ、何の成果も挙げておらず、この人、本当に無能なのではないかと思えてきます。だとすれば最悪のミスキャストであり、石破には人を見る目がないということになります。それで迷惑するのは国民であり、日本の企業です。

4月29日、大統領就任から100日目、トランプの支持率はすベての世論調査で40%台に低迷している。1953年以降、これほど人気のない大統領は他に1人しかいない。一期目のトランプ自身だけ。

そんななか、トランプはABCニュースの独占インタビューに応じた。キャスターのテリー・モランは、悪趣味な金びかに改装された大統領執務室に入ると壁にかけられたアメリカ独立宜言の写しを指さして「これは?」と尋ねた。
「宣言だよ宣言」面倒くさそうにトランプは答えた。「団結と愛の」。違う!「すべての人間は生まれながらに平等である」という人権宣言だよ!
あんたが攻撃してるDEIだよ!(編集者注:さすがにこれには呆れました。アメリカ合衆国の大統領として最低限必要な知識も良識も、しかも品格さえも、この人物には欠けている。要は無責任極まる、ホワイトハウスの歩く赤恥ということです。こういう危険人物が世界的に重大な案件で決定権を持ち、しかも法を無視する。見方を変えれば、冷戦終了後に世界が今ほど危険な状態になったことはないのです。何しろ判断能力のない者が決定するのだから、非人道的な措置を含めて、何が起きてもおかしくない。もっと言えば気違いに刃物の状態なのです。ただ米国に忖度して、それを指摘しないだけです)

この後もいつもどおりデタラメとウソばかり。(中略)
「大統領が輸入品に課す関税による物価高で、各家庭の負担は年間数千ドル増になります。あなたに投票した人ですら関税には同意してないと言っています」
ナビゲーター・リサーチの4月下旬の世論調査では、2024年にトランプに投票した人の27%が後悔、または失望していると回答した。
「同意したから投票したんだろ。私は選挙中ずっと訴えて来たんだから。アメリカは貿易で年間1兆5000億ドル以上失っていると」
それは貿易赤字。アメリカは代わりに金融とITでそれ以上の利益を上げている。(中略)

「バイデンは2100万人の不法移民を流入させた」
在米の不法移民の合計が1300万人なのに?

「大統領、あなたは不法移民としてキルマー・アブレゴ・ガルシア氏を逮捕して裁判なしでエルサルバドルの刑務所に送りました。彼は母国エルサルバドルのギャングに命を狙われているのでアメリカの裁判所から保護されていました。先日、連邦最高裁判所は、彼をアメリカに戻すよう命令しましたが、あなたはそれに従っていません。すぐに電話で彼を釈放させられるのに」(中略)

「…大統領、イーロン・マスクによる政府事業の支出削減で、がんやアルツハイマー病の研究が中止、発展途上困への支援も打ち切られました。無謀すぎたのでは?」
「無駄の削減だ。不正行為もいっぱいあった!」
不正ならなぜ起訴しないんですか? その動きはないようですが」
「なぜ君にそれがわかる?」
実際は不正はひとつも確認されていない。

「自分の敵を罰する大統領令も出しましたね」
トランプはレイプや詐欺などで180もの訴訟を起こされているが、それらを担当した法律事務所各社と所属弁護士を処罰する大統領令を出した。彼らと連邦政府との契約を解除、禁止するだけでなく、機密取扱資格を停止。これをやられると弁護士が政府機関から裁判に必変な資料を引き出すこともできなくなる。

「これは個人的な復讐では?」
「勝てば職務権限で政敵を追及していいと?」
「バイデンがそれを私にしたんだ!」
「あなたが独裁者になると懸念する国民が増えています」

公共宗教研究所(PRRI)の世論調査では、52% が「トランプは民主主義を破壊する危険な独裁者」と答えた。
「私はアメリカをグレートにしているのだ。バイデンは選挙を不正に操作したが…」
「アメリカヘの旅行者が減っていますね」
「いや、順調だ。旅行者は大幅に増加している」
米商務省の国際貿易局によると、3月の訪米者数は1昨年比で約12%減少した。

「アメリカの評判を下げていると思いませんか?」
「飛行機のタラップも上がれないバイデンよりましだ!」
このインタビューでトランプはバイデンの名前を合計14回も出した。

この後、政府の経済分析局(BEA)は、アメリカのGDPはトランプ就任からの3カ月で0.3%減少したと発表した。トランプの反応は予想どおり。
「バイデンのせいだ!」

コメント:米国民が、全部が全部、トランプを盲信する愚か者ばかりではないこと、また大統領の権威や復讐を恐れず、突っ込んだ質問をするメディアもあることに、意を強くします。全土がトランプ一色に染まった時、その時は国家としての米国が終わる時です。



2765.トランプと法の支配 5.17

今回の前書きは朝日新聞(5.16)耕論 トランプ氏と法の支配
「大統領令乱発 憲法の軽視」憲法学者 大林啓吾から
歴代の米国の大統領は、共和党、民主党問わず、その権限を拡大してきました。ブッシュ(子)大統領は対テロ戦争、オバマ大統領は移民政策で顕著でしたが、領域が限られていました。ところが、トランプ大統領は、様々な分野で大統領令を乱発し、政策を実現しようとしている。その「量」が際だっていることが大きな特徴です。

「法の支配」にとって深刻なのは、憲法を気にかけている様子がトランプ氏にあまりうかがえないことです。これまでの大統領は権限を拡大する際に憲法解釈という作業を通して自分の権限を正当化しようとしてきましたが、トランプ氏は憲法による正当化よりも、選挙で選ばれたことを強調することに熱心な印象があります。

また、トランプ氏は法律の制定を待たずに命令だけで迅速な政策実現をはかっています。法律の制定を待っていると時間がかかる上に妥協が必要になるからです。けれども、スピードが重視され過ぎると、時間のかかる手続き保障がおろそかになり、個人の権利が制約されやすくなります。拙速に対応して誤った判断がなされると、回復不能な損害が生じかねません。

「法の支配」が機能するには、権力が分散していないといけません。何人も法の下にあるからです。ところが、議会は上下両院で共和党が多数を占めてチェック機能が十分に働かない。

一方、司法には一定の役割を期待できるかもしれません。司法も保守化が進んでいるといわれますが、政治的な立場を超え、裁判官として公正・中立に判断すべきだという職業倫理があるからです。

特に注目されるのが、下級審の「全国的差し止め」です。たとえば、移民政策や連邦予鍔の削減などをめぐり、数多くの訴訟が起こされ、政権の政策を全国レベルで差し止める判決がいくつも出ています。矢継ぎ早に出される大統領令に、司法を通じて対抗するという構図が生まれているのです。

日本にとって対岸の火事ではありません。トランプ氏のようなポピュリスト政治家が権力を持ち、政権が憲法と抵触しかねない強引な政策を進めてきたときにどうするのか。政治にからむ統治の分野では沈黙しがちな日本の司法は、歯止めになりうるのか。政治が危機に陥ったときに「法の支配」が守られる仕組みを、私たちは考えていく必要があります。(聞き手編集委員・豊秀一)

コメント:同じ紙面のもう一つの論説、「市民にこそ力 忘れないで」翻訳家・米国弁護士 秋元由紀によれば…「法がなければ権力と暴力だけが物を言うことになる」と述べています。まさに米国の現状そのものです。
しかも我ら日本国民には憲法の解釈変更を強引に推し進めた極右の政治家の悪い例を目の当たりにした経験があります。それは故安倍晋三です。しかも未だに自民党の誰一人、安倍の悪政を批判する者がいない。仮に安倍の夫人が存命だということが批判を封じているとしたら、それは不適切な判断にもほどがあるというものです。どの首相夫人も、夫が役職を離れれば一般人に戻っているのです。
中でも呆れたのは、自民党政権がトランプ再選時に安倍夫人を特使として派遣したことです。おそらく先方は対応に困ったと思います。なぜなら以前安倍夫妻がトランプ夫妻に会った時に、英語が喋れないとイバンカに言われてしまったのです(ちなみに小池百合子も英語は不得意、だから首相は無理)。おそらく大使館が通訳を付けているとは思いますが、本人が気の毒と言えば気の毒です。
それより彼女の最大の問題点は、自身が森友学園の事件、ひいては赤木氏の自死に深く関わっており、財務省がなりふり構わず文書を黒塗り、削除、意図的な紛失迄して大騒ぎしているのに、一切自分には関係がないと思っているように見えることです。但し、そこを百歩譲って、考えることにあまり慣れていないだけだとしたら、悪いのは周囲、即ち自民党の重鎮たちということになります。
とにかく、もういい加減に日本の政治家は安倍一族に気を遣うのは止めにしてほしい。それでなくともアベノミクスの後始末で官民ともに散々苦労しているのだから。国民が安倍晋三に感謝する理由が思いつかない。逆に集団的自衛権に秘密保護法、消費増税、加計学園など、マイナスは数え挙げればきりがない。国会に未だに怨霊が取り付いているとしか思えない。議事堂全体の御祓いが必要。自分から進んで腰巾着になった萩生田は別にして、複数の有能な議員が、元安倍派だというだけで、事実上冷や飯を食わされているという例もある。



2766.学術会議解体法案 5.18

今回の最初の前書きは朝日新聞(5.17)天声人語です。

もくもくと黒い煙が空にあがる光景を悲しく想像する。80年前、この国は大量の公文書を廃棄した。軍は言うに及ばない。外務省でも敗戦前後、6698 冊に上る外交の記録が失われ、その大部分が焼却廃棄によるものだった ▼当時の高官たちが恐れたのは、文書が 第三者に渡ることだった。廃棄に反対の声もあったが、戦争責任の回避を優先させたか。1945年8月7日、焼却の方針が決まる。広島への原爆投下の翌日のことである(服部龍二『外交を記録し 公開する』)▼さて、こちらはどれだけの公文書が廃棄されたのだろう。森友問題で財務省が開示した文書のうち、一部の欠落が判明した。多くは政治家やその妻にかかわる内容とみられる。財務省はそれらを廃棄したと認め、不適切だったとする▼当世の高官たちが恐れたのは、国会での野党の追及だった。当時の安倍首相は「私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と言っていた。政治家の関与や付度はなかったか▼ときの政府にとって不都合な記録でも、長い時間軸でみれば、歴史の教訓を伝える重要な証人となる。いまと未来を生きる者の貴重な財産であるだけではない。それは星霜を重ね、不正に抗った死者の名誉も厳かに守る▼なぜ、異様な値引きで国有地が売却されたのか。身内による甘い調べでお茶を濁し、文書を廃棄したから分からないでは済まされない。記録を作った人も、廃棄した人もそこにいる。改めて徹底した調査を、すべきである。

コメント:昨日の前書きのコメントを参照願います。奇しくも同じテーマです。


もう一件は雑誌世界6月号「学術会議解体法案は、日本の科学の死だ」
日本学術会議元会長 山極壽一から

―任命拒否問題の延長から出てきた法案

―日本学術会議を現在の「国の特別機関」から「特殊法人」へ移行させることを柱とする新しい日本学術会議法案が今国会に提出されました。法案のどこが問題だと考えますか。

法案の問題点に入る前に、まず議論の前提がおかしいと指摘しておかなければなりません。
2020年に日本学術会議が新会員のリストを更新する際、菅義偉総理大臣(当時)は6名の任命を拒否しました。これに関し、菅総理は記者会見の楊で、「自分は新会員の リストを見ていない」と発言しました。直後に「話は聞いている」と訂正しましたが、誰から聞いたのかは一切答えていません。当時、学術会議の会長だった私は、退任する二日前に6名が任命拒否されたと知り、すぐさまその理由を総理に尋ね、総理官邸に出向こうとしましたが、「その必要はない」といわれました。

6人の任命拒否という事案があり、その理由が説明されないまま、まかり通ってしまうのは重大な問題です。任命権のある人が理由なく、好き勝手に人事を拒否できるとなると、我々はその理由を自分たちで「付度」しなければいけなくなる。官邸が決めたことをお前たちは付度して受け入れろ、というのは、民主主義の根本原則からの逸脱です。

その後の岸田政権、石破政権でも任命拒否の理由は説明されず、「終わったこと」の一言で片づけています。この件を不問に付したまま、日本学術会議の現在の体制あるい は会員の推薦というブロセスが間違いで、それを変えなければいけないと論点をすり替え、任命拒否の事態を覆い隠そうとしている。これを認めるわけにはいきません。

もうーつ、日本学術会議の運営体制については、2005年と15年に外部の有識者会議によって既に熟議されています。その結論は、いずれも現在の体制を変える必要はないというものでした。それをいまなぜ変える必要があるのか、その根拠をまったく示さないまま法案を提出している。これもおかしい。

一アカデミーの性質を無視した「学術会議管理」

その上で今度の新法案の第一の問題点としては、「総理大臣が監督する法人」という形式が、ナショナル・アカデミーのありかたに合っていないことが挙げられます。今度 の法案では、内閣総理大臣に法人としての学術会議を監督する地位を与える、つまり内閣総理大臣による「学術会議管理法案」になっている。新法案には総理という言葉がたくさん出てきます。主務大臣は内閣総理大臣です。

法案では監事を設置しています。他の民主主義国のアカデミーでも監査を行なう監事は存在しますが、その仕事は会計監査のみです。ところが今回予定されている監事は、財務監査だけでなく業務監査も行なう。監事はいつでも会員に事務事業の報告を求めて、必要があれば内閣総理大臣に意見を提出し、不正の行為あるいは不当な事実があると認められるときは、内関総理大臣に報告する。

さらに内閣総理大臣は、内閣府に日本学術会議評価委員会を設置し、学術会議に六年の中期的な計画および年度計画をつくらせて、年度ことの自己点検・自己評価を行なわせ、これを評価委員会に報告させることになっている。これはどう考えてもおかしい。

たとえば、中国で「遺伝子編集ベビー」の誕生が発覚したとき、日本学術会議は一部から三部まで全会員を集めて、この問題に対する態度を議論しました。学術会議は、その時どきに起こるさまざまなことについて、文理融合、すべての学者が集まって、どういう提案をすべきかを審議します。だから「学者の国会」といわれるわけです。国会が予め中期計画を立てて、それに沿った活動をしますか。アカデミーの何たるかを理解していないとしか思えません。

そして評価委員会の評価を受けて内閣総理大臣が意見を述べたら、学術会議はその意見をきちんと次の計画に反映させなければならないとしている。何を評価するのでしょうか。しかも必要があると認めるときは、学術会議に立入検査できる権限も持っている。

さらに、学術会議に不正の行為や行為をするおそれがあると認める場合は学術会議にその行為の是正措置を講じることを求め、学術会議はこれに応じて措置し、内開総理 大臣に報告しなければいけない。しかも罰則の規定まで設けられています。たとえば秘密保持義務違反に一年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられる。

我々は、日本のアカデミアの方向性について、審議・宣言をしているだけで、なにか行動するわけではありません。

立入検査を受けたり、是正措置を講じたりする理由がわからない。加えて、秘密保持義務を課すのは、学術の自由なテーマ設定や審議に大きな負の影響を与えるでしょう。

一「国費を投じる以上、介入は当然」か

このような管理を行なうことについて、政府は「国費が投じられている以上、当然のこと」と説明していますが、そもそもこのような考えかたが、ナショナル・アカデミーとしての学術会議に適合的なのでしょうか。
ナショナル・アカデミーというのは政府に対する活動の独立性を本質的な要件とします。

各国の例を見てみますと、世界で最も長い歴史を持つイギリスの英国王立協会の会員は外国人会員を含めて約1700名います。イギリスも会計監査のみで、年間予算は総 額で約148億円もある。会員が2200人いる日本学術会議の年間予算は10億円。日本の1O倍以上です。学術会議の会員は会議などがあることに旅費を支給されるだけで、圧倒的に予算が足りません。一回、総会あるいは分科会に集まるだけで予算を使い果たしてしまい、多くの会貝が手弁当で活動しています。

それからアメリカの全米科学アカデミー。会員約2100人のうち外国人会員が500人いますが、年間予算は約472億円です。つまり日本の予算の40倍。ドイツには1652年設立のドイツ科学アカデミーがあり、2007年に国家アカデミーとしてドイツ政府から認定されています。会員数は外国人会員を含めて約1600名。日本よりやや小さいぐらいですが、予算は約21億円で日本の二倍。 日本政府はアカデミーに「金は出さないが、口は出す」。 国費を投じているという、ただそれだけの理由で、他の自由主義諸国の例を見ないほどに、政府による強い管理下におこうとしているのです。

日本は、自分たちは民主主義国だと自負しているわけですから、なぜその代表たるヨーロッパやアメリカのナショナル・アカデミーをフォローアップしないのでしょうか。 まるで中国やロシアの体制を取り入れようとしているかのように見えます。ロシアや中国がアカデミアに対する管理を厳しくしているのは、政府の方針に対して批判的な言動をされたら困るからです。私たちアカデミアの人間は、提言はもちろんします。しかしそれは政府への参考意見に過ぎず、政治的な力をもつことはほとんどありません。なぜそこまで管理したがるのか、理解できません。

―狙いは学術会議の解体

第二の問題点は学術会議解体の動きです。現在の日本学術会議は、210名の会員(執行役員)と約2000名の連携会員(非常勤の会員)から構成されています。そして会長と3名の副会長、それから第一部(人文・社会科学系)・第二部(生命科学系)・第三部(理学・工学系)、それぞれの部会から部長と副部長と監事二人が出席し、計一六人で毎月の会議(幹部会)を開催しており、学術会議の機能の中枢を担っています。

しかし今回の法案では、総会・役員会・会員候補者選定委員会・会員外の委員からなる選定助言委員会および運営助言委員会を設置するとしています。監事は役員会のメンバーからは外れていますが、監査のためにいつでも役員会に出席できる。役員会は会長と副会長および会長が指名する会員からなっていますが、部会からの出席者はなく、現行の幹事会に代わる機能を果たしうるとは考えにくい。

会員数は250人に増えるとしていますが、新法案には 連携会員制度の規定もありません。要するに現在の会員と 連携会員、そして幹事会を解体してしまうということです。

そしてそれらの人事が、会長・副会長および運営助言委員会、選定助言委員会に任せられる。会員外から構成される二つの助言委員会の意見を常に聴かなくてはならないことになるとともに、日本学術会議が、会長を基点とした、非常に上意下達的な組織に変わってしまうおそれが強い。

第三の問題点は会員の選考プロセスです。これまで学術会議は、現会員が会員候補者を推薦するコ・オプテーション方式をとってきました。まずは会員、連携会員から推薦を受け付け、その上で日本学術会議に登録されている約2000ある学協会(学会)からも推薦を受け付けます。以上の推薦に基づいて、日本学術会議が各部会からの代表者を含めた選考委員会を組織して、分野・地域・性別のバランスを考慮して選んできました。

しかし新法案では、特別の候補者選考委員会を設置するとしており、コ・オプテーション方式を完全に無視しています。しかも、この選考委員会を会員が組織するという項目もなく、会員による選考権は排除されています。

この特別の候補者選考委員会は、現職会長が内閣総理大臣の指定する二人の有識者と協議して任命するとされています。現職の会員や連携会員は排除して、内閣総理大臣の指定する二人の外部有識者を通して会員を任命する。日本学術会議の自律性は奪われることになります。

一政府はなぜ学術会謹におびえる?

―任命拒否事件が起きた時、拒否された6名の学者は安保法制に批判的だったからではないかという声がありました。軍事研究に賛成する学者を増やしたいというのが、政府の狙いなのではないでしょうか。

政府や自民党議員は、軍事研究に対する日本学術会議の意見を必要以上に恐れているようですが、2017年に出した「軍事的安全保障研究に関する声明」は、1950年と67年の学術会議の声明をそのまま踏襲しただけです。

また、日本国憲法前文にはこうあります。〈日本国民は、 正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する〉。戦争というのは、政府が起こすものであって、国民が起こすものではない。だから、国民は政府の行為をきちんと監視し、行き過ぎた行為があればそれを止めなければいけない。それが国会の役割だということです。「学者の国会」といわれている日本学術会議も、政府が度を越せばそれに意見を述べる自由は持っているはずです。だからこそ戦争の惨禍を直接経験した世代が日本学術会議を作ったのです。その当時の声明を継承しますと宣言したに過ぎません。

2017年の声明は、防衛装備庁の研究費公募において政府による研究への介入が行き過ぎていることを指摘したものであって、公募への対応としては、それぞれの学会や大学がその研究費に応募するときに検討をするよう述べたものです。研究をやめなさいとは全然言っていない。

その後、私が学術会議会長を引き継ぎましたが、声明についてはそれぞれの大学や学会で議論をしてその結果を報告することをお願いしました。その結果、さまざまな学会で審議され、防衛装備庁の研究に応募すべきだという結論を出した学会もあります。日本の防衛装備庁に限らず、アメリカやフランス、イスラエルなど国際的な研究費で軍事につながる可能性のあるものについては、それぞれの大学の審査委員会の議を経て判断する。私も京都大学の学長でしたから審査委員会をつくって承認した研究もあります。それぞれの大学で独自に検討すればよいだけです。

政府と学術会議の関係は全面的に悪いわけではありません。日本学術会議は、私が会長の三年間は、CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)に議員として参加しました。学術会議の提言を見ていただければ、常に政府に反対する態度をとっているわけではないことはわかると思います。

重要なのは、日本学術会議が政府から自立した存在であるということが、国際的な信用を得ることにもつながっている点です。だから他の国のアカデミアは、日本学術会議の意見を、日本政府の意向を反映した意見ではなく、中立的な意見として聴いてくれる。それを政府が管理してしまったら、アカデミアとしての信用は失墜してしまいます。

―日本の学術の終わりの始まり

1990年代にバブルが崩壊し、経済が悪化するなか、 ほとんどの日本企業が中央研究所を廃止しました。それでまず企業の研究力がガタ落ちになった。これまで自前の組 織で研究し、大学を当てにしてこなかった企業が「研究力が落ちたのは大学が企業に協力しないせいだ」と言い始めた。大学改革をしなければ、というので、民営化・法人化が叫ばれるようになり、政府による大学改革が始まりました。その目的は、大学を「経営体」にすることでした。

法人化により、大学は学長の権限を高め、教員の意見を教育研究評議会にとどめるなど、トップダウン方式に変わり、学長を通じて政府の方針が行き渡るような体制になりました。選択と集中で組織間を競争させ、優秀な「成績」をおさめた組織にお金を集中させる。運営費や交付金を削る一方で政府の言うとおりの組織改革を呑めば助成する、といったことが行なわれました。これが組織の脆弱さを生んだ。予算が削られ、人員も削減。報告書をいっぱい書かせられて、研究時間が減る。結果、研究力が落ちてしまった。先進国の中で唯一日本は、博士後期課程に進学する学生数がどんどん減っていく事態になった。政府が改革すればするほど、研究力が劣化していったわけです。

研究現場や教育現場といったものは、本来、経営体とは適合しにくい組織なのだと思います。時間をかけなければいけないし、役に立たないと思われていることでも将来大きなイノベーションを生む可能性があります。

裾野を豊かにして、広い分野で多くの場所で、研究者が自由に研究し、それが連携して新たな発想を生み出せる環境を作らなければいけません。その中心にいるのが日本学術会讃なんです。学術会議が政府に管理され、政府の言うとおりに動くとしたら、日本の研究者すべてが失望してしまいます。私の次の梶田隆章会長が、この法案は「日本の学術の終わりの始まり」と言ったのはまさにそのとおりです。

今の時代、SNSで様々な情報が発信、受信できるようになった結果、フェイクニュースが蔓延し、何が真実かわからなくなりました。トランブ大統領は科学を信じられな い人々に向けて、エビデンスの乏しい情報で政策を決め、世界に混乱をもたらしています。こういう時代だからこそ世界のアカデミアが手を組んで、我々は何をすべきかを文理融合で考えていかなければいけません。専制主義国家でもなく、21世紀以降、ノーベル賞科学者も世界第二位の実績を誇る日本はその先頭に立つべきです。そうした誇りや築き上げてきた実績を破壊してはなりません。

―ありがとうございました。

(間き手 本誌編集部 伊藤耕太郎 犬飼裕貴)

コメント:談話全体が長いので、短縮に努めたものの、削れるところが見つからない。そこで敢えて原文のままご紹介することになりました。それはひとえに編集者の要約能力の不足のせいです。
ところで学術会議の任命拒否については、どうしても気になることがあります。それは菅元官房長官と、杉田元官房副長官の存在です。彼らが任命を拒否しておきながら、その理由を明かさないだけでも、民主主義の政治家としては失格だが、その背景に右翼思想があることくらい誰にでもすぐ分かるのです。即ち不正な判断で排除したから説明ができないのでしょう(今日奇しくも裁判所で一つの見解が出ています)。
その後杉田は、余りにも警察官僚的な価値観を振り回しすぎたので、メディアからも国民からも嫌気され、政治の場を去えることになりました。確かに菅や杉田にとっては、アカデミックな学術会議は理解を超えた目障りな存在だったことでしょう。
しかし、いやだからこそ、我々国民は学術会議の独立性だけは何としても守らなければならないのです。なぜならそれが国家主義者が仕掛けようとする戦争に反対する理論的、思想的な根拠になるからです。世界中で人権と人道が危機的状況にある今ほど、国民の判断の拠り所になる、政府の影響の及ばない言論機関や研究機関が必要な時代はないのです。
それが、ひいては国民が自分の国の安全を守り、人権と主権を守る時の心の支えになるのです。吉田、岸、中曽根、安倍と続いてきた危険な極右の思想の流れに掉さすためにも、日頃の理論的な武装が欠かせないのです。

関連記事:学術会議、国に解釈整理の文書開示命令。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6539038
コメント:のり弁か。



2767.軍政の腐敗、インフラの老朽化 5.19

今回の前書きは雑誌世界6月号の記事の一部の紹介です。

「戦争を糧に増殖を遂げるロシア経済」 北海道大学教授 服部倫卓から

…トランプ政権が今後、対ロシア制裁を維持・強化するのか、逆に緩和・撒廃するのかは、まったく先が読めない。(中略)ーつ確実に言えるのは、トランプ氏の常套手段である関税攻撃は、ロシアには通用しないという点である。早めに米市場や米ドルとのデカップリングを遂げていたロシアには、ある種の余裕がある。(中略)米国の対ロシア輸入は、激減している。残っている品目は、濃縮ウラン、パラジウム、肥料くらいであり、これらのアイテムはどうしても必要だから翰入を続けているのであって、関 税を課して苦しむのは米国の需要家である。

世界的な関税戦争が、ロシア経済に打撃を与えるとすれば、国際貿易が麻痺することで石油価格が下落し、それが産地国ロシアを苦しめるというシナリオであろうという見方が多い。トランプ大統領は政権発足当初から、ロシアにウクライナ和平をのませるために、米国の増産を通じて国際石袖価格を引き下げると脅しをかけていた。(中略)もし仮に関税戦争がこのまま石油価格を引き下げていけば、トランプ政権の衝撃波が実際にロシア経済を圧迫する事態が、期せずして現実のものとなる。

このように、トランプ氏の君臨する世界では何もかもが不透明だが、ロシアとしては米国の停戦仲介には一応聞く耳を持つふりをしてトランプ大統領を持ち上げて味方につけつつ、その実は難しい条件を付けて交渉を長引かせ、その間にウクライナ侵攻をさらに続けるというのが基本路線だろう。ウクライナを破壊するだけでなく、ロシア自身の過去の遺産を食い潰し、未来の可能性も台無しにする戦争は、まだ終わりが見えない。

コメント:経済制裁が効き目がない事はもう分かっている。プーチンのロシア皇帝への野望を打ち砕かない限り、侵略は止まらない。それは多分プーチンの死迄続く白日夢だろう。


「トランプ関税 国際経済体制を揺るがす政権内対立」 高橋和宏から

(前略)第一期トランプ政権が自由貿易に背を向けたことは鮮明に記憶されている。そのトランプを2020年の大統領選挙で破ったバイデン民主党政権は、国際協調を掲げて前政権との違いを打ち出したが、自由貿易の推進には消極的だった。通商代表を務めたキャサリン・タイが、自由貿易政策は効率性と低コストを追求する「底辺への競争」を招くと公言したように、バイデン政権には自由貿易はアメリカの中間層、労働者の利益を損なうという認識が広く共有されていた。

そのため、バイデン政権はトランプが離脱したTPPへの復帰やWT0の機能回復といった課題に取り組むことはなかった。トランプ政権が課した中国に対する関税もそのまま引き継ぎ、半導体や重要鉱物といった戦略品目などにはさらに関税を引き上げた。また、巨額の補助金を用いた産業政策によって半導体産業の国内回帰を試みたが、そこにも保護主義的な思惑が潜んでいた。日本製鉄のUSスチール買収を阻止したのも、国際的な投資の自由よりも労働者・労働組合への配慮を優先した結果であった。

国内に製造業を取り戻し、グローバル化から取り残された労働者層を救済するという政策目標において、バイデン政権とトランプ政権との間に大きな差異はない。現在のアメリカでは、党派を超えて自由貿易への不信や保護主義の黙認が広がっており、自由貿易原則という理念はすでに訴求力を失っている。アメリカにおける自由貿易体制 の変容は長期的なトレンドとして捉えるべきであろう。

コメント:専門家である筆者に素人がたてつくのはおこがましいが、中間階級の所得を改善する方法は一つだけではない。根本的な解決は生産性の向上であり、当該産業の構造の見直しにある。しかし短期的には税制もあれば、研究開発への投資など、複数の対応策がある。だからなんでもかんでも貿易=外国=他人のせいにするのは、政府の無能・無策を棚に上げていると言われても仕方がない。


「軍政下のミャンマー大地震 人道支援のジレンマ」今村真央から

(前略)この国では、世紀の大震災でさえ「紛争の罠」から逃れることができないのだ。
ミャンマー軍政に「戦闘を一時停止して市民の救助に集中する」という発想は希薄である。むしろ、「我々は戦闘で手一杯なので、民間人の救援は他の誰かに任せる」といった思考が支配的だ。日本政府は自衛隊を被災地に派遣したが、報道によれば、本来なら救援活動に動員されるべきミャンマー国軍兵士や重機の組織的動員はなかったようだ。軍政は、災害対策や被災者支援を国家の基本的責務とはみなしていないように見える。 (以下略)

コメント:怒りと吐き気がこみ上げてくる。国の利益は全部自分達が私物化し、支援物資の行き先さえ定かではない。武力により国民を支配し、学校をクラスター爆弾で攻撃する。この腐った連中のどこに人間性が残っているのだろう。それに加担する自衛隊とはどういう存在か。何より腹立たしいのは、この実態をきちんと報道するメディアがないことだ。軍政府に抗議する政府関係者も皆無だ。一体日本政府はどんな弱みを軍部に握られているのか。


「国民の選択としてのインフラ老朽化」 関西大学 杉浦勉から

(前略)私たちの生活を支えてきたインフラが次々に壊れていく。
明日はどこの橋梁が壊れるのか、その次の日はどこの水道管路が壊れるのか、ミクロ的な予測は困難であるが、マクロ的な傾向はある程度見通すことができる。建設後50年が経過したインフラがどれくらいあるかをみればよい。(中略)

このデータからは、修理や建て替えが必要なインフラは、今後に減少することはなく、増加する一方であることが示されている。しかも、その比率は一部と呼ぶにはあまりにも大きな規模であり、橋梁では現在でも3分の1を超えており、将来的には4分の3に至る。トンネルも半数以上が建設後50年以上経過することになる。

最大の警戒をすべきは、水道管路である。インフラのなかでも、水道管路は地中に埋設されているため、維持管理や施設更新が容易ではない。橋梁やトンネルのように状態を目で見て確認できるわけではなく、点検するだけでも多額の費用がかかる。したがって、どうしても事故に対する対応が事後的になってしまう。だが、全体の四割以上が老朽化するなかでは、事後対応にも限界がある。

日本水道協会による調査では、水漏れなどの小さな事故は2022年度に19万件以上、主要な管路に限っても3900件弱の事故が発生している。私たちの感覚からすれば、水道管路は気づかぬうちに壊れているインフラである。
ある日突然に水が出なくなる、出てくる水が濁る、水流が弱くなる、などなど。異変を感じた住民からの通報を受けて、水道局が対応に走る。このようなやり方がいつまで続けられるだろうか。

ィンフラの老朽化は、ある意味では、わかりきった未来である。施設が50年で老朽化することは、建設した時点でほぼ確定している。にもかかわらず、なぜここまで放置 されているのか。それは意図的な選択の結果なのか、あるいは無策による失敗なのか。私は、どちらかといえば、前者であると考える。

日本中に建設されたインフラが次第に壊れ始める2000年代から2010年代は、インフラに対する公的資金投入が減少した時期でもあった(中略)日本中が公共事業に対する批判にあふれかえっていた。(中略)

一年分の公共事業関係既をすべてつぎ込まなければ、現状の維持すら困難となっているのが日本のインフラである。

こうした動向は私たち国民の意思である。インフラに対する投資を含め、公的資金の配分が国民の意見をどこまで反映しているかは議論があるものの、国会で審議され了承された結果であるとすれば、それは国民の意思である。老朽化に対応しなければならない時期に、私たちはインフラ投資を減少させるという意志決定をしてきた。その決定により生み出された費用をいま後払いしているのである。

インフラに公的賓金が流れなくなったことにより、それに関わる建設業界は深刻な弊害を経験することになった。業者数が急激に減少していったのである。これも当然の結果である。仕事がなくなれば、企業は立ちゆかない。市場から撤退していくしかない。それは建設業界であっても例外ではない。(以下略)

コメント:国交省を中心に一大国家プロジェクトを立ち上げる必要がある。防衛費等を増額する前に、まずやるべきは、国土の保全である。人も住めない国土など誰の役にも立たない。



2768.対米基軸外交 5.20

今回の前書きは朝日新聞(5.19)記者解説「揺らぐ対米基軸外交」
もはや通じない価値の共有と裏交渉 編集委員 藤田直央から

戦後日本は共通の価値と密約に象徴される裏交渉で、対米外交を基軸としてきた 米国第一主義のトランプ政権再来で、そうした惰性の外交は通じなくなっている 米国と適度に距離を置きつつ、得意分野を生かして国際社会の安定に尽くすべきだ 。

(前略)日米は法の支配を強調し始めた。この法の支配は民主主義や自由貿易より広い意味になった。海洋進出を図る中国を、国際法に反し現状変更をしないよう牽制する狙いからだ。安倍晋三内閣はこれを「自由で開かれたインド太平洋」構想として打ち出し、米国と共有。今年2月の石破・トランプ共同声明でも冒頭で「堅持する」とされた。

貿易摩擦や米軍基地問題といった難しい課題があっても、共通の価値に基づく日米の信頼関係はこれまでは保たれてきた。対米基軸が揺るがぬよう、裏交渉も重ねてきた。岸氏は安保条約改定で、米軍が日本の防衛以外で出撃する場合や、核兵器を持ち込む場合の事前協議導入にこだわった。「対等」を国民に示すためだが、密約で米側に妥協し、朝鮮半島有事への出撃や艦船寄港による核持ち込みは例外になった。

沖縄返還交渉では69年に佐藤栄作・ニクソン両首脳が、本島から撤去する核を緊急時に再び持ち込むことに関する密約を交わす。

貿易摩擦をめぐっても裏交渉はあった。ニクソン氏は72年の沖縄返還の見返りに、日本からの繊維製品輸出抑制を要望。密約を練ったがうまくいかず、佐藤氏との首脳間の関係が悪化した。

80年代にはレーガン氏が中曽根氏に半導体における市場開放を求め、日本が輸入の数値目標に言及した非公開文書が交わされた。

これらの事実は後に両政府の文書開示などで判明していくが、裏交渉がなくなることはなかった。

「核兵器のない世界」を掲げるオバマ政権が2009年に発足すると、日本側はひそかに核戦力維持を要請。米国の核戦力と通常戦力による「日米同盟の抑止力」の構築と、それについて話し合う非公開の日米拡大抑止協議の発足につながった。09年の要請が発覚しても日本政府はコメントを避けている。

だが、トランプ政権になり共通の価値は語られなくなった。石破・トランプ声明に法の支配や自由貿易という言葉はない。

法の支配は権力者の専横を防ぎ、国際社会における慣行や制度を重んじるものだ。日米が中口に説いてきたこの理念に、トランプ氏自身が背を向けている。

自由貿易にも逆らう。貿易赤字は不公正だとして、関税の引き上げを宣言。日本も対象になった。安保体制についても理解が進まず、米国は日本を守るが逆はなく不公正だと言い続けている。(中略)

トランプ政権再来をふまえ、日本外交を再構築する必要がある。海洋国家日本にとって自由貿易と法の支配は欠かせない。米国とそうした価値を共有できないなら、裏交渉は一層危うくなる。適度な距離を置くべきだ。

トランプ氏は法の支配を担う国際刑事裁判所(ICC)の関係者を制裁する大統領令に2月に署名した。ICC加盟の79カ国・地域 が批判声明を出したが、日本政府はトランプ氏を刺激しないよう加わらなかった。こうした対応が積み重なれば、対米外交は説明不能の理念なき追従になってしまう。

関税交渉で安易に妥協すれば、トランプ氏は成果としてアピールしてしまう。自由貿易こそ互いの繁栄になることを、他国と連携し粘り強く呼びかけるしかない。

対米交渉の枠組みも限界だ。旧軍の専横への反省から、米国との安全保障協議は防衛省ではなく外務省が主に担ってきた。守ってくれるはずの米国との関係は崩せないというおそれが、時には密約すら生んだ。冷戦期に長期政権の土台を固めた自民党も、米国との関係に縛られている。

米国が唯一の超大国として国際秩序を築こうとしている時は、日本は伴走者でよかった。今や中国やインドが台頭し、国際社会は多極化の様相を強める。

防衛省が政策能力を高めても、外務省との役割分担は進まない。歴代首相が「基軸」としてきた日米関係は惰性に陥っている。

2〜4月の朝日新聞の世論調査では、日本外交が米国から「なるべく自立したほうがよい」とする意見が68%にのぼった。

戦後日本には多国間外交や途上国支援といった得意分野もある。非軍事で国家の枠を超えた「人間の安全保障」にも取り組んできた。今こそ政府の機能を総動員して、トランプ政権が揺るがす国際社会の安定に尽くすべきだ。

コメント:こうして日米関係の歴史を振り返ると、日本政府の、卑屈な隷属の姿勢に改めて絶望的になる。米国はカナダを51番目の州にしたいなどとカナダ国民の気持ちを逆なでして平気で言っているが、日本を51番目の州にするという話は出てこない。なぜならその必要はなく、既に日本は事実以上米国の属国になっているからである。体裁だけは独立国でも、せいぜい米国の自治領に過ぎない。一体戦後の70年はいかなる年月だったのか。沖縄の少女暴行事件一つ取っても、納得できる解決は得られていない。CIAがしこたま暴れても、存在そのものが国民に知られてはならないという「密約」迄ある。これでは革新的な政党が政権を取る可能性はないに等しい。万が一「事故で」そういうことがあったにしても、最初に新首相が言う言葉は決まっている。日米関係の最重要視というのが政権の決まり文句になっており、野党もそれを口にする。まかり間違って中ソ関係を重視するとでも言おうものなら、CIAの日本支部が黙ってはいないだろう。逆らえば危険を覚悟する必要がある。安全は保証されない(国鉄の下山総裁が死後列車に轢かれた有名な事件があり、自殺・他殺で意見が入り乱れた。当時上向きだった共産党や、日本を支配していたGHQとの関係が噂されたが、時効で捜査は終結)。 この記事の最後に記者が書いているように、もういい加減、日本は米国から心身ともに独立すべきであり、トランプ政権になって唯一有難いのは、「親」が「子ども」を見離してくれたことだ。日本がいかにとりすがろうとも、「有難いことに」米国の方から先にソッポを向いてくれた。この機会を逃す手はない。言い換えれば、トランプこそ近代民主主義国家日本の救世主なのかもしれないのである。



2769.富士山噴火 5.21

今回の前書きは朝日新聞(5.20)の社説です
「富士山噴火 火山灰への備えが急務」

この半世紀、日本は多くの火山災害に見舞われてきたが、科学的には中、小規模の噴火だった。大規模な噴火はしばらくは経験していないものの、いずれは直面する。備えを急がなければならない。

火山灰への対策として、内閣府は防災指針をまとめた。気象庁は火山灰警報を導入する方針を決めた。

大規模噴火は富士山などで繰り返されてきた。火山から遠くても被害がある。1914年の桜島噴火では関東、東北にも火山灰が降った。1783年の浅間山噴火は関東平野でも大きな被害があった。

複合災害の恐れもある。1707年の富士山噴火は南海トラフ地震の49日後だった。

火山灰は、普通の灰とは違い、ガラスの破片のような砂で、吸い込んだり目に入ったりすれば健康にも影響する。

自然には消えず、雨でも流れにくく、除去するのは難しい。水を含めば重くなり、道は滑りやすくなる。

電力設備や電子機器にも影響し、停電、航空機や鉄道の運休、通信の障害、上下水道 の被害などで社会、経済活動が深刻な打撃を受ける。噴火時の風向きで影響を受ける地域も大きく変わる。どれぐらい続くかの予測も難しい。

内閣府の有識者検討会がまとめた指針は、富士山の大規模噴火に備え、危険度を4段 階に分けた避難の必要性を示した。自宅で生活を続けることを基本としつつ、降灰が30センチ以上になれば原則避難を求める。全国の活火山への応用も想定している。

気象庁は火山灰の警報や注意報の運用を数年後に始めることを目指す。火山灰の積もる深さが0.1ミリ以上3センチ未満で注意報、3センチ以上30センチ未満は警報。降雨時に木造住宅の倒懐の恐れがある30センチ以上は、「一段強い呼びかけ」を発表する。

1707年の富士山と同程度の墳火が起きた場合、降灰は静岡〜福島県まで11都県に及び、相模原市付近で30センチ以上、東京・新宿付近で3センチ以上と予測される。除去が必要な火山灰は東京ドーム400 杯分、東日本大震災の廃棄物の約10倍で、除去する手段も廃棄方法も難題を抱える。

物流への影響も深刻で、政府は1週間以上の備蓄を呼びかける。地震や風水害への備 えに加えて、火山灰対策も必要だ。目の保護やマスクの準備、積もった火山灰の処理なども考えておく必要がある。

日本の都市が高度に発展した後では未経験の災害だけに、防災対応の計画や準備を急ぐ必要がある。国から自治体に対しての情報提供や計画作りの支援も欠かせない。

コメント:大新聞の社説に異を唱えるつもりは毛頭ないが、これだけでは、単に気をつけましょうねと言っているに過ぎない。国民の実際の役には殆ど立たない。幸いマスクだけはコロナの時の買い置きがあり、ゴーグルもあるが、仮に目や肺に灰が入ったらどうすればいいのか。食物に混入したらどうなるのか。水道・ガスは止まるのか、電気はどうか。そもそも交通機関が全滅だとすれば、救急車は来るのか。食材の買い置きはどうするのか。除雪ならぬ除灰は誰がやってくれるのか。何もかも分からない。とは言え、それはもはや社説のレベルではなくしかるべき小冊子、ガイドブックの分野だろう。地方自治体が、手引書を作り配布して、初めて対策が形になる。現に東京都でも来るべき大震災に備えたガイドブックを制作し、全戸に配布したことがある。火山大国であればこそ、世界に率先した対策のマニュアルと、必要な重機の備えがなければおかしい。

関連記事:土砂・洪水氾濫、ハザードマップを全国整備へ。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6539361
コメント:同じ地図の噴火版が必要。しかもそれが数年先では到底間に合わない。



2770.有望な対立候補が必要 5.22

今回の前書きはサンデー毎日(6.1)です
「寺島実郎がトランプ・消費税政局を徹底解析」から
…「反米反安保という単純な話をしているのではない。安保環境が激変する東アジアの安全保障をどう再構築するか、日本がどう関わるかを考え抜く絶好のチャンスになる。冷戦終結後の1990年代にドイツが行ったように、在日米軍基地を目的別に検証、本当に必要なものに絞り込む努力を始める。残る米軍基地も『自衛隊との共同管理』に順次移行させる。日本が米国の『保護領』でも『周辺国』でもなく、意志を持つ独立国であることが、中国やアジアの国々との外交を拓く前提になる」(以下略)


サンデー時評 村薫 「対米輸出依存から内需で食べて行ける国へ」から
…誰もが問題の在り処を知りながら改革できない日本の農政とはいったい何か。石破首相がどんなに笛を吹いても、自民党農水族と農協は頑として踊らず、関税交渉でも輪入米のカードだけは切らず、コメ農家を守るために何としてもコメの価格を下げさせない。この異様な農政は、コメ農家を票田とする政治家の、国民への背信そのものであり、日本の農業を衰退させ、コメ農家を弱らせてきた当のものでもある。これを打破せずしてコメに未来はなく、主食の自給も食糧安保もない以上、いまも続く減反と直ちに決別することである。コメ生産の大規模化、効率化を図り、海外との競争力を強化することである。コメが安くなれば、それこそ農家に現金で補償すればよい。私たちはいまこそ長年の農政と訣別する大英断を自民党に迫るときだし、自民党の再生のカギ もここにしかないと思う。

さて世界はいま、ロシアが堂々と他国を侵略して領土を拡大し、アメリカもまたカナダやグリーンランドの領有を本気で主張し、イスラエルは何の大義もなくガザを飢えさせ、カシミール地方では核保有国のインドとバキスタンが対峙する。国際法に基づいた世界秩序はすでに失われ、国連は機能せず、公正や正義は死語になった。(以下略)


兵庫県斎藤知事告発文書問題 元百条委員の議員が語る真相  誹謗中傷メール1万通 ジャーナリスト粟野仁雄から

…丸尾 誹謗中傷メールは4月8日までの9日間で合計約1万 2400通です。アドレスはすべてSaitofanとあり、@以下はどこかの会社のアドレスを乗っ取った感じです。「斎藤ファン」とはいかにもシンプルですが、自動送信でしょう。僕のコメントが 犯行動機かなと思いました。

迷惑メールホルダーに自動的に入る設定をし、目には入らないのですが、すさまじい数でパソコンがパンクしかねない。でも証拠として残さなくてはならないので完全消去もできず、迷惑メールに移し替えたりする作業が必要でした。(中略)

ー他にどんな脅迫や嫌がらせがありましたか?

丸尾 昨年12月には注文してもいない健康食品が着払いで送りつけられ、市民共済のがん特約保険が勝手に申し込まれたりしました。留守電メッセージはいろんな人ががなり立てています。嫌がらせの専門チームなのでしょうか。 (中略)

ー今も斎藤人気は高い印象です。今後の兵庫県政についてお聞かせください。

丸尾 6月に行われる尼崎の市議選に「N党」が候補を立てるので一波乱ありそうです。

なぜ今も誹謗中傷が続くのか、ですが、立花党首は次の参院選挙を有利にするために攻撃を継続していると思います。そのステップとして先日の赤穂の市長選があり、今後は尼崎市議選があります。そこで「斎藤県政を支える」とする候補を次々と立てて知名度を上げ、参院選で1議席を取るための布石ではと想像します。そのための材料として奥谷さんや私を叩くのでしょう。あくまで推測ですが。

昨年の知事選で斎藤候補を勝たせたなどの成功体験から、こちらを黙らせて自分らを有利にしようと思っているのでしょう。でも、これでは世も末で社会が壊れてしまいます。立花氏の存在は以前から知っていましたが、ここまでする人とは思わなかった。

彼は千策県知市選で8万票近く取っており、全国で 100万票は取れるかもしれません。ただ、立花氏に批判的な人も増え、これまでのように得票が重ねられるかはわかりません。

県議会での再度の知事不信任案は共産党と「ひょうご県民連合」(立憲民主党系)は提出する方向ですが。

丸尾 全議員の3分の2以上の出席で4分の3以上の賛成に達しなければ知事信任です。仮に不信任が可決されても、選挙で斎藤氏が「再再選」されるかもしれません。斎藤候補に敗れた稲村さん(稲村和美前尼崎市長)は有力ですが就職もされ、出馬は難しい。不信任案を提出するなら、新しい、魅力のある知事候補が必要では。それが現れれば一気に動く。手続きだけが先行して候補がいないとか、「急造候補」などでは斎藤知事には勝てません。昨年と同様の経緯で選挙になり、斎藤知事が再々当選したらそれこそ、強大な権力になってしまう。

不信任案は、あくまでも 有望な対立候補が見つかってからの話ですね。

コメント:斎藤蛇彦+豚花孝志の話題になるたびに不快感がこみ上げる。しかし丸尾義員のように、誹謗中傷にもめげず、淡々と事務的に処理し、しかも冷静に情勢を見極めている。こういう議員がいる限り、県政も未だ大丈夫だろうと思われる。私が自死した職員や議員の関係者なら、絶対に二人を許さず、地の果てまでも追い詰め、彼らが、罪を恥じて、自分で崖から転落するところまで見届けるだろう。但しお情けで浮き輪くらいは投げてやるかもしれない。無論これはあくまで個人的な印象と仮定の話であり、その前にしかるべき法的な裁きが執行されることが望ましい。そうでなければ、彼らに侮られた日本の選挙制度など、いかなる意味もなくなってしまう。そしてその結果、民意を反映しないどころか、反映する民意そのものがおかしい、時間の無駄な選挙などには、誰も行かなくなるだろう。いかなる理性的な根拠もないのに、立花に踊らされて斎藤に投票するような土地柄こそが、まさに悪しきポピュりズムに他ならない。


お次は週刊ポスト(5.30)です。
「中居正広、反撃文書に被害女性が悲痛告白、話が違います」
3月末の第一1一者委貝会 の「報告杏」発表から約 1か月。一連のフジテレビの問題は収束に向かうかと思いきや、事態が一変した。

5月12日、元タレントの中居正広氏の代理人弁護士が報告害への、反論文書を公表したのだ。

第三者委の報告書は、中居氏側が「守秘義務の範囲内の事項についてはヒアリングに応じない」 などと回答したことを、性暴力を認定する根拠の一つとしていた。

しかし、中居氏側は今回の声明で、「当初守秘義務解除を提案していましたが、第三者委員会から「2 人の密室で何が行なわれたかが直接の調査対象ではない」との回答があったとの経緯がありました」とし、人権救済のために関連する証拠の開示を求めている。

元テレピ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が言う。
「証拠を揃えた第三者委の報告書に対して反論するケースは非常に珍しいです」

中居氏の「守秘義務解除の意思を持っていた」とする主張を、被害女性の元フジテレビアナAさんはどう受け止めているのか。

本誌がAさんを直撃すると「今回は第三者委員会に対する異議申し立てなので、私が何かを言う立場ではないのですが …」としたうえで、心境を吐露した。

「私は第三者委員会から守秘義務解除を求められた際に、「こちらは大丈夫です」と先に答えました。ですが、当時の相手方の弁護士さんから「こちらは解除に応じない」 と代理人弁護士を通じて、直接連絡を受けていました。

今回の反論は、これまで私が聞いていた内容と違うので困惑しています。『調査報告書』について言えば、私の発言は語尾まで話したことと変わらず記載されていました」

中居氏側が声明を出した後、Aさんへの心ない中傷や批判の声が増えているという。

「今回の反論を受けて、また誹謗中傷が私のもとにたくさんきています。そうしたひとつひとつが、過去の嫌な思いをフラッシュバックさせます」

第三者委委員長の竹内朗弁護士の事務所に見解を求めたが、「この件についてはお答えしないことになっている」、フジテレピは「第三者委員会による調査を受けた立場でありますので、回答は差し控えさせていただきます」(企業広報部)と言うのみだった。(以下略)

コメント:中居は、カムバックしたいのかもしれない。問題は前にも後にもたった一つ。性行為の内容ではなく、意に添わぬ性行為を「強要した」という「事実」だ。それを世間ではレイプという。幼稚園児と同じ知能程度の中居には理解できないかもしれない。ところで慰謝料の9千万は、もはや口止め料の意味はなくなったが、支払われたのか。途中でやめたという噂もあるが。但しもし支払いが完了した後で、この騒ぎなら、確かに中居も釈然とはしないだろう。でもどこにでもありそうな婦女暴行事件が、大きな騒ぎになったのは、フジテレの管理体制と経営方針に問題があったからだ。だからこそ第三者委員会が開催されたのだ。その時点で、もはや問題は中居の火遊びとは別の次元に移行しており、中居は問題の主人公ですらなくなっていたのである。彼の相も変らぬ自己中のピンボケ振りには呆れるほかはない。