「WTWオピニオン」

【第69巻の内容】


「米中間選挙」
「情報にも品質と品格を」
「日本政治の現状と課題」
「偽りの保守、安倍晋三の正体」
「国権と民権」
「ゴーンの不正」
「大阪万博は本当に必要か」
「入管法改正案強行採決」
「NHK受信料の値下げ」


1361.米中間選挙。18/11/8

注目の中間選挙ですが、既にご存じのように、上院では共和党、下院では民主党が勝ちました。今回は予想通りでした。下院で野党が勝つのは、現状に不満を持つ人の方が投票に行く確率が高いことと、今回は2/3が若者だったことが挙げられます。中でもNYでは史上最年少の女性議員が誕生しました。これから一層トランプがいきり立って強硬姿勢を取ろうとも、大統領が自分で決定できるのは外交など限られた分野だということでもあり、何より平均的米国人が皆、知的に後退したわけではなく、未だ米国では民主主義が機能している可能性があるという希望を持てたことが「世界にとって」最大のメリットです。そういう意味でも、枝野が大学を回っていることは正しいアプローチだと思います。今回の中間選挙が、来年の日本の参院選にも影響を与えるでしょうし、またそうでなければ困ります。安倍首相がなりふり構わずトランプにすり寄ることが出来にくくなると良いのですが、逆に、追い詰められたトランプに縋りつかれる可能性も出てくるかもしれません。
関連記事。予算伴う政策は困難に。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20181107-OYT1T50096.html?from=ytop_top
関連記事。両院勢力。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110700973&g=int
関連記事。7つのポイント。CNN。
https://www.cnn.co.jp/usa/35128283.html
関連記事。多くの史上初。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181107-00000117-mai-n_ame
関連記事。各国の反応。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181108-00000505-san-n_ame
関連記事。予想通りでNY株価続伸。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110701349&g=int
関連記事。アメリカ中西部の苦悩。
https://toyokeizai.net/articles/-/247628

昨日の国会で、共産党の小池が麻生を指さしたたことに、無礼だとキレていました。でも国民と国会に対して「無礼」なのはどちらでしょう。
関連記事。有田議員も指差し。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110700945&g=pol



1362.情報にも品質と品格を。18/11/13

WTWの使命の一つは、市民の立場からメディアの行き過ぎを批判することにあります。
私は様々なプライベートなメディアが登場して、市民にとって情報の選択肢が増えることを
期待しています。中でもネットメディアで一番評価しているものがヤフーです。記者の経験の
ある社員が複数在籍しており、肝心の記事の選択でもいわゆる中道路線で、過不足の
ないものです。もし時間がないときはヤフーのネット記事だけを読んでいても、それほど
大きく世間を見誤ることはないはずです。

それに比べると、マイクロソフトのニュースはゴシップ色が強く、とてもメインには出来ません。
ハフィントン・ポストもネットに特化したメディアですが、朝日が拾わない記事を中心に取り上げる
ので、比較的センセーショナルな話題に振っているようです。私が朝日新聞の経営者なら
むしろアエラのネット版を創刊します。その方が読者のサービスになります。

最近のハフポストでで気になるのは、以前の女性編集長時代にはあまり感じなかった、
ある種のカラーを感じることです。同社のアサヒ出身の編集長は、TBSをはじめTVでも意見を
述べています。若々しくていいのですが、2回ほど聞いた範囲では、「だからどうした、
何を言いたい」と突っ込みを入れたくなる内容でした。観念的で足が地についていないという
印象を受けました。頭でっかちな論客なら、既に古市というお荷物がいます。他山の石にして
下さい。若手で正常な感覚の持ち主には、荻上チキがいます。


【注目記事】

・便乗支出、官民ファンドなど、会計検査院が指摘。無駄を減らさず増税
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111002000145.html
コメント:安倍政権も少しは真摯に受け止めたらどうか。

・豊洲、客足遠のき、仕入れ代行業が繁盛。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181110-00000068-mai-soci
コメント:使う人たちのことを考えず、独善的な政策を強行(石原元知事)した結果です。安倍首相も同じように国民不在の政策を繰り返しています。

・東証1部、利益合計が過去最高。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181109-00000128-mai-bus_all
コメント:ならば国民所得も過去最高でないとおかしい。

・ミシェル・オバマ、トランプを決して許さない。
https://www.cnn.co.jp/usa/35128440.html
コメント:私も許しません。

・中間線、フロリダ州、再集計。
https://www.asahi.com/articles/ASLCB5JY5LCBUHBI031.html?iref=comtop_8_01
コメント:ブッシュがアル・ゴアに勝った時には、ブッシュ寄りの州知事が、フロリダの再集計を強制的に中断したことがあります。


【政治】

・2閣僚、不安定さ一段と。
https://www.jiji.com/jc/v7?id=201810cabinet
コメント:片山は災害雨の赤坂自民亭で、最前列に映っていました。

・軽減税率に困惑。
https://www.jiji.com/jc/v7?id=1810shouhizei

・NHK,また映像を誤送信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018111000594&g=soc
コメント:NHKのたがが緩んできています。前回は、よりにもよってアレフに送信。しかも毎回、お詫びだけで責任は取らないのもNHKらしい。

イッテQ(やらせが外交問題)が問題になっているのに、内村を総合司会に起用というのは世間の常識から考えていかがなものか。それは彼の直接的な責任ではないし、以前彼が司会したときはその父性が高い評価を受けたことも事実です。でも内村のNHKのお笑い番組、人生に捧げるコントで、笑った試しがない。彼は、少なくも喜劇の制作と出演には向いていないと思います。

ついでにイッテQの問題です。問題点が一般には理解されていないようです。実際にバラエティだからやらせも当然という意見さえ出ていますが、番組の演出方法が問題なのではなく、言い訳したことに問題があるのです。日本の国民とラオス政府に対する、説明と謝罪が、事実と異なるから問題なのです。

安倍首相の場合、ウソもつき続ければ、いずれ真実になるとでも思っているようです。でもいかなる場合でも、その種の居直りで通ると思えば大間違いです。それほど世間は甘くありません。そもそも事実や真実を伝えることが使命のメディアが、自分で進んで嘘をつき始めたら、社会はどうなると思いますか。言い訳で、すぐにばれるような嘘をついた(これも安倍首相と同じ)ことが、恥の上塗りであると同時に、メディアであるがゆえに、重大な問題なのです。

素直に謝っておけば、笑って済ますこともできたでしょうに、それができない体質(言い張る)に危機感を感じます。同じ事(虚偽説明)が報道や解説で行われている可能性を暗示しているからです。一度振り上げた手を下せない(体裁にこだわる)ということが理由なら、それは戦争を泥沼化した、大本営発表と同じです。これも渡辺恒雄の体質なのでしょうか。
注目の中間選挙ですが、既にご存じのように、上院では共和党、下院では民主党が勝ちました。今回は予想通りでした。下院で野党が勝つのは、現状に不満を持つ人の方が投票に行く確率が高いことと、今回は2/3が若者だったことが挙げられます。中でもNYでは史上最年少の女性議員が誕生しました。これから一層トランプがいきり立って強硬姿勢を取ろうとも、大統領が自分で決定できるのは外交など限られた分野だということでもあり、何より平均的米国人が皆、知的に後退したわけではなく、未だ米国では民主主義が機能している可能性があるという希望を持てたことが「世界にとって」最大のメリットです。そういう意味でも、枝野が大学を回っていることは正しいアプローチだと思います。今回の中間選挙が、来年の日本の参院選にも影響を与えるでしょうし、またそうでなければ困ります。安倍首相がなりふり構わずトランプにすり寄ることが出来にくくなると良いのですが、逆に、追い詰められたトランプに縋りつかれる可能性も出てくるかもしれません。
関連記事。予算伴う政策は困難に。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20181107-OYT1T50096.html?from=ytop_top
関連記事。両院勢力。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110700973&g=int
関連記事。7つのポイント。CNN。
https://www.cnn.co.jp/usa/35128283.html
関連記事。多くの史上初。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181107-00000117-mai-n_ame
関連記事。各国の反応。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181108-00000505-san-n_ame
関連記事。予想通りでNY株価続伸。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110701349&g=int
関連記事。アメリカ中西部の苦悩。
https://toyokeizai.net/articles/-/247628

昨日の国会で、共産党の小池が麻生を指さしたたことに、無礼だとキレていました。でも国民と国会に対して「無礼」なのはどちらでしょう。
関連記事。有田議員も指差し。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110700945&g=pol


【経済】

・三菱UFJと三井住友がATM共通化。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6302609

・新型レクサス量産。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181107-00000125-kyodonews-bus_all
関連記事。中国市場に傾斜。
https://jp.reuters.com/article/toyota-china-idJPKCN1NC0NU
コメント:こう言ってはなんですが、トヨタは慎重で、多角化や新分野は苦手です。それがSBとの違和感のある提携にも現れています。それは同社の将来にとっての懸念材料でもあります。


昨日に続き、ハフポストの話題です。11/11のサンデーモーニングで、ハフポストの編集長が「民主主義を急ぐな」と言っていたので絶句しました。その真意を聞く時間がなかったのは残念ですが、言葉通りなら時代にそぐわないからです。なぜならトランプが荒れ狂い、各国で全体主義、国家主義が噴出している現在、民主主義への回帰を、地球レベルで急がなければならないからです。民主主義のあるべき姿は、「走りながら」考えるしかなく、また本当の問題は経済システム(金融資本主義)にあるからです。
新編集長がそうだとは言いませんけれど、政治経済歴史に半可通の論客は、国民にとっては負担なのです。なぜなら若者をミスリードするからです。その悪い例が三浦瑠璃です。彼女の場合、自分が保守、親米だという旗を、自らきちんと掲げれば、まだしも保守派の論客としての存在理由はあると思います。
ハフポストは従来と違うメディアという意味で、可能性を秘めています。しかし今は編集長が個人的な意見を言うべき時期ではないと思います。またいかにそれが親会社(朝日新聞)の意図だとしても、ネットの三面記事専門メディアに堕してはならないと思います。
歴史のあるニューズウィークと比べても意味がありませんが、今のところ、かなり見劣りしていることも事実です。でもはっきり言えば、どうでもいいというより、むしろ違和感さえある特色を出すことに躍起になるよりも、逆に直接の主張は封印して、(今迄と同じように)各界の、これという論客のブログを見つけては紹介するという立場を取ることで、国民が日々、訪問する意味のあるサイトになると思います。何故ならその手法は、他のメディアでは取れない(紙面の関係で)からです。
関連記事。トランプに迫る次の逆風。
https://diamond.jp/articles/-/185031
関連記事。トランプよりヤバい米最高裁保守化。
https://toyokeizai.net/articles/-/248457
関連記事。マクロン、悪魔が再び目覚めつつある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37635220S8A111C1000000/
関連記事。投資家の暴走で世界でゾンビ企業が急増。
https://toyokeizai.net/articles/-/247917
関連記事。教養として読むべき経済学の名著。
https://toyokeizai.net/articles/-/248374
コメント:教養というより殆ど常識でしょう。ところで麻生大臣がこれらを読んだことがあるのか、または読んでも理解出来たのかどうかを、訊いてみたいと思います。



1363.日本政治の現状と課題。18/11/13

11/9の、寺島実郎の未来先見塾では、今年の5月に亡くなった毎日新聞の岸井成格の言葉を、録画で紹介しています。

「…私は、安倍首相を、彼の祖父、父親の代から知っており、助言も頼まれた。その時に安倍首相に話したことだが、宮沢総理に一番尊敬できる首相は誰かと聞いた時に、福田首相は、鈴木善幸の名前を挙げたので驚いたことがある。その理由を尋ねたところ、鈴木ほど権力の使用に慎重だった首相はいなかったからだと語った。権力の怖さを知っている人だと言った。
これが大事な事ではないかと安倍さんに申し上げたところ、安倍首相は言下に宮沢は間違いだと言った。権力は行使するためにあるんだ、特に人事権だと言っていた。その後やっていることはその時に言った通りだと思った。戦後レジュームからの脱却は憲法改正というが、それをどう考えるのかと尋ねたら、今の憲法でいざ日本が戦争をするときに、本当にやれるのかと答えた。自衛隊の国際貢献に反対する国民やメディアがいたら戦争にならないと力説していた。
安倍総理の根には、権力の行使と、戦争になったら国民は戦ってくれるのかという発想がある。それは民主主義とは違うという感じを一貫して感じた…」

岸井が言い残したかった事は、権力者の禁欲(=権力の抑制)が民主主義には大事だという事と、日本は戦争のできる国に戻ろうとしているのではないかという懸念だと、寺島が解説していました。

即ち安倍首相にとって、権力の「濫用」は当然の権利行使であり、しかも国民の権利を国家権力から守る憲法が、自らの権力行使の邪魔だと言っているのに等しいのです。そんな政治理念とも、民主主義とも無縁な二流の政治家が、日本を仕切っているという実態が、どれほど恐ろしい事であり、それゆえ、今後どんなことでも起こり得るということを、国民は理解する必要があると、「私は」思います。因みに私事ですが、宮沢総理には大臣時代にNYで一度お目に掛かった事があります。同行していた菅直人(当時も不機嫌=イラ菅)からも名刺を貰いました。

寺島は、田中角栄がダーティー(金権政治)だというイメージだけが強調されており、満州での従軍経験、中国との国交回復、対沖縄問題等のハト派の側面が軽視されていると指摘していました。同時に親中の首相は、米国から追われるという側面があったと言っていました。

一方、同席していた佐高信は、その後の自民党の小泉純一郎が、小泉単純一郎と呼ばれたことと、歴代首相に関する自作のジョークを紹介していました。それは日米、日中の関係は二次方程式であり、どんなに困難でも日本はそれを解いていかなければならない。小泉は(米国一辺倒で)二次方程式を解けなかった。ところが小泉が引き上げた安倍は一次方程式も解けない。福田康夫を余り解く気がなくて、麻生太郎は方程式の意味が分からなかった、というもので、講演会では大受けしたとのことです。

これを受けて寺島が、西部邁の言葉を紹介しています。それはナショナリストなら、米国に対してある種の緊張感を持つはずなのに、親米ナショナリズムなどというものがあるのは、戦後の冗談だというものです。安倍首相という存在そのものが、戦後で最大、最悪の冗談に思えてきます。

佐高が、人質から解放された安田純平の言葉を紹介しています。それはなんで、日本は米国の言うことばかり聞くのか、広島や長崎があるのに、それでもついていくのかと訊かれて、返す言葉がなかったというものです。寺島は、海外と付き合う時に、その質問は必ず聞かれる試金石だと言っていました。私は安倍首相にはこの問いに答える義務があると思います。麻生や二階なら、聞くだけ時間の無駄でしょう。

ちなみに日本政治の現状という、極めて分かり易いフリップが使われていたので、参考までに画面を紹介します。



上記の中で、寺島と佐高は、決められない政治が悪いというが、即座に決めて貰っては困るものもある、拙速が正しいとは言えないと指摘しています。一見、愚かに見える議論にも付き合う辛抱が、民主主義には求められている。議会での議論をすっ飛ばして、なんでも官邸主導で決めるという政治になっている。そして再び、民権主義から(戦前のような)国権主義に戻り始める動きがある。

国家と個人の中間に公(パブリック)という概念がある。しかし戦後の個人主義に対して、国権主義が、圧力を加える理由にこの公(おおやけ)を使い始めている。高齢者が投票数の半数を占めている。戦後世代(=私たち)が、次の世代に何を残すべきかを考えなければならないと締めくくっていました。

私も、公と私の関係を整理すべき時期に来ていると思います。それは私と公と国の責任分担の議論でもあります。但しこの二人は、おそらく「公」を本当には理解していないと思います。公とは、個人が自らの意志で進んで行う共助だと私は理解しています。だから参加でも不参加でも自由に選べなければならないのです。そういう意味でもNHKは公共放送ではありません。国営放送なのです。

それにしても、今回のこの番組は、(全部ではないが)常日ごろ私が感じていることを網羅していました。ちなみに、私が、と書きましたが、これを「少なからぬ数の国民が」と言い換えても、それほど的外れではないと思います。


【気になる記事】

・景気優先、来年度予算過去最高。
https://this.kiji.is/434656702832198753?c=39546741839462401
コメント:行革は死語か。

・厚労省、障害者水増しでも処分せず。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018111201002377.html
コメント:行政は治外法権か。

・マクロンがナショナリズム批判。
https://www.bbc.com/japanese/46175660

・インドで完成した世界一の彫像の意味を日本のメディアは理解せず。
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/11/post-48.php



1364.偽りの保守、安倍晋三の正体。18/11/18

寺島の未来先見塾で紹介していた「偽りの保守・安倍晋三の正体」(講談社プラスアルファ新書)を読みました。全編が岸井成格と佐高信の対談で構成されています。老若男女を問わず、政治の本当の姿を知りたい現代日本人必読の書だと思います。岸井は今年の5月にがんで他界していますが、来るべき参院選や安田純平への言及もあります。

(いつものように)同書から気になった部分を抜き書きして、(長くなると誰も読まないと家人が言うので)二回に分けてお届けします。ちなみに苦情を言われても、いまのところ、私にはこの「仕事=平成の語り部=戦後世代の責任と義務」を辞めるつもりはありません。幸い、私を首にする社長はいません。自営業(Self employment)ですので。

佐高:岸井がアンカーを務めるNEWS23で、農業を営んでいた東日本大震災の被災者が「5年たって、こみ上げるのは怒りだけ。原発のどこが安全でクリーンなエネルギーなのか。馬鹿じゃないか、この国は。こんな国に生まれてしまったから仕方ねえけど」と言っていた。

岸井:あれは強烈だった。そのさなか、大津地裁の高浜原発運転の差し止め仮処分は画期的な決定だった。処分の理由として、福島原発事故の終息が、未だ全く見通しが立っていないこと、事故それ自体の原因究明が不十分であること、それゆえ再稼働はあり得ないとしている。

岸井:環境問題を考えれば考えるほど、いったん事故になれば原発ほどの環境破壊、人命軽視の施設はない。

岸井:NEWS23で、政府与党がいちばん怖じ気をふるったのは2015年のアーミテージのインタビューだったらしい。それまで与党は「安保法制は日本の安全のためである」と説明し、公明党は歯止めが掛かっていると言い続けてきたんだけれども、アーミテージの話はそれが嘘だと暴露した。
今までアメリカ軍が自衛隊に協力してくれと言うと、憲法第九条を持ち出して、先に進まなかった。ところが安保法制によって、自衛隊は米軍の為に命を賭けると初めて約束した。そしてこれから日本が一流の国としてやっていくためには、アメリカ軍のために役立ってほしいと発言した。
安倍政権が安保法制をつくった最大の理由は、アメリカ兵の若い血をこれ以上流させたくないという、アメリカ側の要請だということが明るみに出た。PKOにおいても、今は危険地帯には米軍は送られていない。
一方、日本は危険な南スーダンへのPKO派遣をはじめ、武力行使を想定した駆け付け警護に道を開いた。しかも今は、敵は誰なのか、全く分からない。安保法制とは、日本は米軍の肩代わりや下請けをやってくださいというアメリカの要求に応えたものなんだ。
(編者注:安部首相がことあるごとに、自衛隊をほめそやし、9条を変えようとしている理由がはっきりと分かります。そんなことをするより自分が率先して紛争地帯に行ってみればいいのです。臆病な=ヒトラーも臆病だった、首相に、それが出来ればですが)

佐高:東芝の不正会計問題は、明らかに粉飾決算だけど、あんなことをやっても司直の手が入らないということは、東芝が国家産業であり、安部政権に保護されているということを示している。

岸井:軍事を中心に日本経済が大きく変わりつつある。極めて不気味な動きだ。

岸井:安倍の支持者は「中国なんかとつき合う必要ない」という遮中ばかりだ。

佐高:磁場が緊張しているほうがいい。ナショナリズムを煽れるし、タカ派的な政策・法案がすべて通る。安倍のそういう空気の掴み方は拉致問題からでしょう。

岸井:拉致問題だって、安倍は本気でやる気があるのか、ないのか。これは大問題だよ。

佐高:蓮池透が『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談杜)という本を出したけど、安倍は拉致を政治的に利用し尽くしただけでしょう。むしろ本音は解決しては困ると思っている。

岸井:本当に蓮池透が書いた通りだな。

佐高:小泉の罪も深い。

岸井:いや、小泉はそれなりにやる気はあったと思う。

佐高:そうじゃなくて、安倍を後継者にした罪だ。

佐高:私もそう思う。それにしても、安倍政権にとっては緊張していたほうがいいというのは、なるほどだね。

岸井:むしろ、それこそが政権の基盤になっている。その一方でアメリカには言いなりになってしまうわけだろう。辺野古の問題も大きい。しかし、アメリカの記者たちも変わってき た。沖繩の現状を見るたびに、アメリカはやりすぎなんじゃないかと彼ら自身が思うようになってきている。沖縄の現状は日米安保の枠を超えている。基本的人権の問題であり、民主 主義の根幹に関わると、彼らにもようやくわかりかけてきたんだ。

佐高:しかし安倍に人権という感覚はない。

岸井:感じられないね。少なくとも沖縄については「アメとムチ」で、アメの振輿築ばかり優先する。米軍基地と原発の誘致はまったく同じ構造、差別そのものだ。

佐高:沖縄に関しても野中広務と菅の違いがやっぱりあるね。

岸井:全然達うよ。野中は情を大事にするという保守政冶家の一つの基本精神を持っていた。それはつまりそれぞれが持っている事情や歴史を重んじるということだ。だから野中は、沖縄の見捨てられた歴史に涙を流し、本気でなんとかしたいと思っているところがあった。菅はまったく逆だ。片づくものは早く片づけたい、金で決着がつくのなら金で解決しよう。合理主義といえば合理主義だし、解決型の政治、そこが「何も解決できなかった」民主党政権との違いだと強調している面もある。まさに札束や脅しで人脈を握る感覚に通じる。

岸井:自分が金をあれだけ出して沖縄のことをやってきたのに、と。菅は沖縄のためにいちばん苦労したのは自分だと思い込んでいるんだ。でも、それは心や情や相互理解に基づく政策ではなくて金だけだ。この間の普天間基地のある宜野湾市長選でも辺野古移設を焦点化させなかった。何をしたかというと、ディズニーランド誘致計画だろ。ああいうことを今の官邸ほ平気でやるんだよ。

佐高:『未完の敗者田中角栄』(光文社)で書いたけど、金というのは貰うほうの屈辱感を拭い去らなければ生き金にならない。しかし菅や今の官邸は極めて下劣だ。相手を札束で叩いている。沖縄を理解するどころか、まさに植民地主義者が属国を見下すやり口としか思えない。

(編者注:拉致問題は未だに進展はないが、沖縄知事選で自民党が敗北した結果、安倍は相変わらずですが、菅は微妙に態度を変化させていることはご承知の通りです。私が自民党で一番警戒しているのも、政治手腕では安倍・麻生を軽くしのぐのに、二番手でいいと言っている菅義偉です)
関連記事。拉致解決済みを批判。蓮池氏。
https://this.kiji.is/435778459647935585?c=39546741839462401


「安倍独裁」

岸井:日本会議について佐高はどう見る?

佐高:私は日本会議は風呂敷はでかいけれど、実動部隊としてはJC(日本青年会議所)も見逃せないと思っている。経営者の二世ポンボンで名前を上げたい人たちの集まりだよね。改憲運動や教育現場への右顔的介入も露骨になってきている。日本会議と共闘する局面も増えていると聞く。…副総裁の高村正彦は、弁謹士時代は統一蓑万の顧問弁謹士だった.

岸井:安保法制を強く主導してきたのも高村だ。岸信介以来の、外交・防衛の情報畑なんだ。情報畑というのはアメリカと一体だからね。後藤健二さんの事件の時も、「金を出すつもりはない」と言い、殺害後には「あれは勇気ではなく蛮勇で、自己責任だ」と言い放った。安倍が中東まで行って、イスラエルの首相と並んで会見をしたことへの反省がまるでない。こういうところも無神経になっているよな。 安田純平さんが拘束されても、政府は助けようとしていない。メディアもほとんど報じない。


「政府が助ける人間と助けない人間」

佐高:安田純平には去年「佐高信政治塾」の講師を三回頼んだ。三回目の時、連絡が取れな
くなって、調べたら中東で拘束されている可能性があると言われたんだ。岸井は人質事件への安倍政権の対応を「無神経」と言ったけど、それどころではなくて、今の政府は助けるべき人間と助けない人間をはっきり分けている。一括して「国民」と呼びはするけれど、政府が「非国民」と思う人間は殺されてもいいと思っているわけで、「非国民」とされた側からすると、この国は税金だけタダ取りされているようなものだよ。

岸井:湯川遥菜さんが拘束された時、後藤さんの「責任はすべて自分にあります」というメッセージが出ると、官邸は「よかった」と言ったものな。そして「後藤さん本人があそこまで言っているなら、何もしなくて大丈夫だ」とばかり、自己責任論に徹したんだ。

佐高:親の財産で暮らしているような甘ったれタカ派の政治家が、他人に対して自己責任論を説いて強要しているわけでしょう。痛憤にかられてならないね。


「安倍晋三の自己弁護癖と執念深さ」

岸井:今の自民党の政治家は常軌を逸している。私は「政治的公平から逸脱したメディアに対しては、電波停止命令もあり得る」と言った高市早苗に対して辞任要求するつもりだ。あれは異常すぎるほどに異常だよ。たしかに官邸が報道番組をすべてチェックしているとは聞いていたが、あそこまで無法な暴論が出てくるとはまったく購きだ。
メディア動向のチェックを徹底しているのと同時に、今の官邸はダメージコントロール
のチームでもある。総理がどんな発言をし、それが国民にどんな波及の仕方をするかを毎日検討している。安倍は話すべきことを覚える能力〜暗記する能力は天才的なんだよ。それは晋太郎が本当に感心していた。

佐高:自己弁解はたしかにうまいんじゃないか。子どもの頃から言い訳の天才だったとよく聞くからね。何か言うと五つくらい自己弁謹が返ってくると。

岸井:晋三は情がわかるタイプではないから、親父さんは晋三を政治家にするのをためらっていたんだ。

佐高:安倍の場合は安借個人の非常に怨みがましい体質が、第一次安倍内閣挫折の復讐戦とか、侵略戦争の象徴のような岸の復権とか、戦後レジームからの脱却とか、とんでもない巨大なルサンチマンにつながってしまっている。
安倍という災厄を生むに至った自民党の変質は、やはり小選挙区とともに始まったと私は思っている。

佐高:第二次安倍内閣ができた時にも私は岸井と対談したけど、岸井は、側近について「一に菅義偉、二に甘利明」と言っていた。

岸井:本当の側近という意味では、やはり甘利だったんだろう。菅は命賭けで安倍を守り立てているというわけじゃなくて、たまたま「今は安倍だ」という機を見抜いて担いだ。菅はそのあたりを冷倣に計算していると思う。

岸井:だから安倍もどこかで菅を警戒していると思うよ。でも今くらい菅がカを持ってしまうと切れないだろう。逆に安倍が切られてしまう。

佐高:菅には総理への色気はないの?

岸井:ないんじゃないか。そこが強いんだよ。前にも話したけど、政界では昔からそう言われている。ナンバーlを目指さないナンバー2ほど強い奴はいない。だから副総裁が力を持っていたんだ。菅はどこかでその権力構造のありようを学んだのだと思う。


関連記事。陸上イージス反対44%。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6303595
コメント:国民は馬鹿ではありません。安倍首相の口先一つ(その片棒担いでいるのがNHK)で、国民の気持ちを支配出来ると思っていたら大間違いです。首相の思惑と全く別のところに民意はあるのです。単に、安倍政権がその「現実」を見て見ぬ振りをし、意識的に無視しているだけなのです。



「安倍晋三の自己弁護癖と執念深さ」

岸井:今の自民党の政治家は常軌を逸している。私は「政治的公平から逸脱したメディアに対しては、電波停止命令もあり得る」と言った高市早苗に対して辞任要求するつもりだ。あれは異常すぎるほどに異常だよ。たしかに官邸が報道番組をすべてチェックしているとは聞いていたが、あそこまで無法な暴論が出てくるとはまったく購きだ。
メディア動向のチェックを徹底しているのと同時に、今の官邸はダメージコントロール
のチームでもある。総理がどんな発言をし、それが国民にどんな波及の仕方をするかを毎日検討している。安倍は話すべきことを覚える能力〜暗記する能力は天才的なんだよ。それは晋太郎が本当に感心していた。

佐高:自己弁解はたしかにうまいんじゃないか。子どもの頃から言い訳の天才だったとよく聞くからね。何か言うと五つくらい自己弁謹が返ってくると。

岸井:晋三は情がわかるタイプではないから、親父さんは晋三を政治家にするのをためらっていたんだ。

佐高:安倍の場合は安借個人の非常に怨みがましい体質が、第一次安倍内閣挫折の復讐戦とか、侵略戦争の象徴のような岸の復権とか、戦後レジームからの脱却とか、とんでもない巨大なルサンチマンにつながってしまっている。
安倍という災厄を生むに至った自民党の変質は、やはり小選挙区とともに始まったと私は思っている。

佐高:第二次安倍内閣ができた時にも私は岸井と対談したけど、岸井は、側近について「一に菅義偉、二に甘利明」と言っていた。

岸井:本当の側近という意味では、やはり甘利だったんだろう。菅は命賭けで安倍を守り立てているというわけじゃなくて、たまたま「今は安倍だ」という機を見抜いて担いだ。菅はそのあたりを冷倣に計算していると思う。

岸井:だから安倍もどこかで菅を警戒していると思うよ。でも今くらい菅がカを持ってしまうと切れないだろう。逆に安倍が切られてしまう。

佐高:菅には総理への色気はないの?

岸井:ないんじゃないか。そこが強いんだよ。前にも話したけど、政界では昔からそう言われている。ナンバーlを目指さないナンバー2ほど強い奴はいない。だから副総裁が力を持っていたんだ。菅はどこかでその権力構造のありようを学んだのだと思う。

関連記事。陸上イージス反対44%。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6303595
コメント:国民は馬鹿ではありません。安倍首相の口先一つ(その片棒担いでいるのがNHK)で、国民の気持ちを支配出来ると思っていたら大間違いです。首相の思惑と全く別のところに民意はあるのです。単に、安倍政権がその「現実」を見て見ぬ振りをし、意識的に無視しているだけなのです。


寺島実郎が、11/16の未来先見塾で、100歳時代にあって、知の再武装が必要だと説いています。WTWが多少でも、そのお役に立てれば幸いです。

今日の前書きは「安倍晋三の正体」の最終回です。

岸井:冷静に見て、この政治状況に対して仕掛けが出来るのは、いまだに小沢しかいない。共産党の志位和夫が候補者を降ろすことに納得したのは小沢の影響が大きい。そんなこと、小沢以外誰も考えなかった。

岸井:野党連合で一番面白かったのは、平和の党という名前にして、党首・吉永小百合という案だな。

佐高:官邸前のデモのエネルギーを汲み上げたという意味では、私は岡田克也を多少見直した。野田みたいなのが小沢と共産党はだめだとかでかい顔して、危機感の欠片もないことを言っている中で、がんばっているとは思う。

岸井:私としては、学会婦人部を中心とした創価学会反対派の反乱と、共産党と無党派届の結びつき、そのあたりが状況を動かすかもしれないという展望だな。

佐高:岡田が野党共闘に踏み込んだのも、国会前の集会に何回も来て、今ここで民主党だ何だとこだわっていたら状況から見放されるだけだと肌で感じたからでしょう。SEALDsに対する評価がいろいろあるけれども、私からすると肯定派も批判派も、過大な期待と、過大な批判だという印象がある。今の学生がやっていることなんだから、出発点はあのくらいでいいんじゃないか。

岸井:官邸前デモの再現が与党には悪夢なんだ。吉永小百合党首の平和の党なんて、最悪の存在だろう。今度の選挙のカギを握っているのは無党派層と若者だよ。今、無党派層が四割近くいる。彼らが選挙に行くかどうかだ。

佐高:今の若い人には共産党アレルギーが少ない。

岸井:これから最も大事な視点は、安倍内閣の最大の目的、「戦後レジームからの脱却」の本性が、いよいよ明らかになったということだ。つまり戦時体制づくりのための国家統制型政治が本番を迎えている。一に憲法改正、二に教育、三に言論統制だな。特定秘密保護法と安保法制にはじまり、「防衛装備」と言葉を換えた武器輸出解禁、沖縄の辺野古問題、原発再稼働と、戦後日本は極めて大きな曲がり角に立っている。特に、「電波停止発言」で露わになったメディア支配の野望は、憲法が保障する「表現の自由」「言論の自由」「国民の知る権利」の根本的な侵害になる。この問題は、海外のメディアと国連人権理事会が強い関心と懸念を示しているわけだけど、日本は鈍感すぎるよ。


「おわりに」岸井成格

たまたま佐高と十年前と三年前に長時間討議をする機会があった。それぞれ安倍が首相に就任した直後と、一年で政権を投げ出し、七年後に“返り咲き”を果した直後だった。よほど安倍とは縁が深いと感じると同時に、安倍という存在が、戦後保守政治の本質を探るうえで欠かせない“異端”であることを、今思い知らされた気がしている。
佐高と私の対談を読んだ田原総一朗は「安倍さんは趣味の右翼を封印すべきだ」と語った。しかしそれは結果的に甘かった。

せっかく政権交代で誕生した民主党政権は、鳩山、菅、野田と、東日本大震災と福島原発の事故に見舞われ、その対応が国民から厳しく批判された。辺野古への米軍基地移設問題や消費税増税などで大きく揺れ、国民の期待は一気に失望に変わった。さらに北朝鮮の核・ミサイル開発、竹島、尖閣諸島の領有権問題、中国の軍事力強化などもあって、日本の“右傾化”が進んだことも、安倍再登板の下支えになったことは確かだ。

それにしても、と思う展開が待っていた。まず特定秘密保護法の採決強行だった。今なお『何が秘密化か、それが秘密だ』と言わんばかりの国会への報告は、国会軽視、国民無視の暴挙だ。

その後も安倍政権は、武器輸出の解禁、原発の再稼働と輸出というように、次々に守るべき線を超えた。その極め付きが集団的自衛権を合憲とする閤議決定による解釈改憲でありそれを具体化するとともに、自衛隊がいつでもどこでも海外に派遣され、必要に応じて武器使用や戦闘に参加する途を開いた安保関連法の強行採決だった。

圧倒的多数の憲法学者・法律家が「憲法違反」と断じ、世論の六、七割が「反対」「慎重」で「審議不十分」との意見が八割超という状況の中、多くの国民、市民が反安保法制のデモや集会に参加していった。メディアとして反対、批判の論陣を張るのは当然であり、それをやらなかったら、逆に権力を監視し、暴走にブレーキをかけるというジャーナリズムの使命を放棄したことになる。

ところが、私を放送法違反として、非難・攻撃するカラーの全面広告が二紙に相次いで掲載された。異様な意見広告で、呼びかけ人はほとんど安倍シンパの入たちだった。

「私たちは怒っています!」という横断幕とともに私は田原、鳥越俊太郎、大谷昭宏、田勢康弘、金平茂紀、青木理のキャスター、コメンテーターとともに、日本記者クラブ、続いて外国人特派員協会で抗議の会見にのぞんだ。「特定秘密保謹法」の時も同じメンバーで会見した。

外国のメディアは安倍政権のみならず、こうした暴挙を許している日本のメディアにも厳 しく、それは諸外国からの日本の国民への不信感にもつながりかねない様相だ。

「国境なき記者団」は、今年の日本における「報道の自由度」を世界で第72位にまで低下させた。ほぽ発展途上の独裁国家なみの扱いである。国連の人権理事会の調査団も、私への攻撃に使われた放送法四条の「公平・公正な報道」は、本来は報道する側の自主的な倫理規範であるということを承知のうえで、「国家権力の介入の口実に使われるようであれぱ削除・廃棄すべきだ」と勧告するほどだった。

自民党の憲法改正草案を読んでもわかるが、今、自民党から「保守」らしい「保守」が消え、国権主義剥き出しの「右派」「タカ派」が、憲法のみならず、教育、行政、そしてメディア統制に動いている。それはすでに総仕上げの段階に入りつつあるのかもしれない。


(編者注:翁長知事の遺志を沖縄県民が引き継いだように、私たちは志半ばで他界した岸井の遺志を引き継ぎ、日本がファシズムの国に立ち戻り、戦争をする国にならないように、全力で防がねばなりません。私たちが生きている間にそれをしなければ、一体他の誰がそれを成し遂げてくれるというのでしょうか。広島の慰霊碑にあるように、私たちは同じ過ちを繰り返す訳にはいかないのです



1365.国権と民権。18/11/21

大河ドラマの西郷もいよいよ大詰めです。悪役の大久保を、瑛太が熱演しています。最近、神ナントカという言葉が流行っていますが、神がかりを略したものと理解しています。ところで西郷と言えば「敬天愛人」という言葉が有名ですが、こと安部晋三と麻生太郎には、それは当てはまりません。自分ファースト(自分だけが可愛い)の面々で、安倍首相に至っては、自分の演説に自分で酔っているようにさえお見受けします。無論、トランプにも小池知事にも、天を敬い、人を愛する気持ちなど、どこかにあるようには思えません。単に声が大きい(主張が強い)だけで、精神的には幼児から一歩も出ていないという(個人的な)印象です。

今日の前書きは「国権と民権、人物で読み解く平成自民党30年史」佐高信、早野透、集英社新書のご紹介(抜粋)の前半です。同書はWTWの主張と軌を一にしており、読んで損はないと思います。安倍政権が国民の前に並べて見せる日本の政治の風景とは違う世界がそこにはあります。信じるか、信じないかは国民次第です。


佐高:靖国の話で言うと、小沢は参拝を主張したりしない。つまり彼は南部藩で賊軍なんだ。南部藩出身で靖国を参拝したら、選挙民から大反対を食らうわけです。靖国というのは官軍、戦勝した人しか祀ってないんだから。特に東北は、いまだに「靖国なんて何言ってんだ」という気分なんですよ。感情的と言われると不本意ですが、あれは国を代表するものなどではない。もとは諸藩が戦死者を祀った特殊な神社を大きくしただけだ。私はそういう正当な歴史観に基づいて言っているんです。


「小沢一郎の革命」

佐高:民権派としての小沢の存在感を私は目の当たりにしたことがあります。安保法制反対の国会前の集会で、野党として小沢が来てしゃべった。政治は数でいくから、自分の弟分だった民主党の岡田克也がまず最初にしゃべる。共産党の志位がしゃべる。それで社民党の吉田忠智がしゃべる。岡田よりも何番目も後のほうで、小沢はマイクを握り、一生 懸命演説するわけですよ。自己卑下するでも衒うでもなく、小沢は力を込めて話していた。私は小沢は立派だと思ったし、ある種の凄みを感じもしましたね。


「小沢は死んでも死にきれない」

佐高:小沢は原敬を尊敬している。原敬は、日本の立憲政治を壊すのは軍部と検察だと言っているんです。軍部は一応は戦後にはなくなったとして、検察が民主主義をおかしくするというのは小沢の頭の中に残ったと思う。(編者注:最近の不可解で説明の無い、起訴、不起訴を見ていると、私もそれを感じます)

早野:小沢が望むような状況がつくれないまま、いまはまた官僚支配が貫徹しているし、安倍一強というのは、政治家は安倍だけでいい、あとは官僚が仕切るという政治でもある。本来政治というのは多元的な価値の相克が大事なのに、いまはそんなものは不必要とされてしまっている。(編者注:官僚が腐敗しているのは、特権があるからでしょう。唯一のチェック機関が官邸だから、官僚はなりふり構わずに政権=安倍首相にゴマをするのです。となると官邸以外に国民が官僚をチェックする仕組みが必要だという事でもあります。例えば行政不服審査及び起訴の為の第三者委員会などです)

早野:国権派から民権派に転向したという、僕はそういう認識だったけど、日本には数少ない革命派でもあったということですね。しかし小沢は死んでも死にきれない思いだろうな。何ひとつ革命できていなくて、全部元に戻っちゃって、こんな反動的な政権が続いているんだから。(編者注:同感です)


「丸山眞男の射程」

早野:国家というものができると、それは肥大して非常に強いものになり、とうとう超国家主義なんて呼ばれる現実としてあらわれるようになる。こうなると、個人が国家の中に完全に埋め込まれてしまう。個人がなくなれば個人の自由なんてものはありえないわけです。

佐高:だから「超国家主義の論理と心理」は、国家が個人の内面まで入り込んでくる時代には、それを押し戻すことからしか民主主載は始まらないということで審かれるわけでしよう。

早野:丸山先生は戦後民主主幾というものの理念をつくり出したひとりと言っていいと思うけれど、彼は「超国家主義の論理と心理」を書いてファシズムを分析する。そして、「ある自由主養者への手紙」で、民主主義の根底にあるのは個人の自由なんだという原点を訴え、いわばそれらをワンセットで我が国の民衆に知らしめたんじゃないだろうか。それまでの日本の、国家=政府=軍隊、そしてそこに付き従う人々という構図は、民主主義ではありえない、と。


「民とは誰か」

佐高:早野さんもちょっと触れたけど、土井たか子という人は、労組支援というよりは、市民派の流れから出てくる。そこもまた新しさだったでしょう。

佐高:久野先生が言っていたけれども、市民というのは消えていく泡のようなものだと。泡のように出てきて、泡のように消えていく。組織されていないからですね。

佐高:でも時代は徐々に、まさに個人の意思表示としての市民というものを大事にしなければ、現代の政治は変わっていかないという認識になっていく。

早野 そうすると、市民主義というものが日本政治の中で明碓な存在感を持ったのは、60年安保以後、それから1958年の大学紛争、そのくらいの世代からということですね。俺たちお前たち、そのへんで生活している普通の人間の立脚点、それが民主主養の基盤であるべきではないのか、と。

早野:そこで政治の世界にそれを体現してあらわれたのが土井たか子であり、その後の土井チルドレンなんだ。辻元清美、保坂展人、中州智子…。

佐高:そう。保坂はいま(2017年9月現在)は世田谷区長、中州智子は宝塚市長ですね。

早野:辻元清美は立憲民主党の国会対策委員長。


「民主主義は支配と抵抗の組み合わせ」

佐高:国権と民権といっても、区分けがはっきりしない領域がある。むしろそういう部分のほうが大きいと言ってもいい。

早野:政治というのはいわばgovernするものだから、僕らがそれを見るときも、支配するほうにどうしても偏りがちなんだ。でも、そこで絶対に必須な要素として、抵抗という部分が組み合わさっていないと、これは独裁権力になり唯我独尊になってしまうわけだな。
民主主義は支配と抵抗の組み合わせによって形成されるということだ。そういう意味では土井さんがいなければ中曽根・竹下という自民党が爛熟してきた時代、あのころは下手すると一直線に戦前に戻りかねない状況だったかもしれない。そしていまの安倍晋三は、明確にそういう資質を持って好きなように戦前回帰的な政治をやっている。(編者注:同感です。だからWTWは安倍首相を批判しているのです)

佐高:そして、社会党の組合的でない部分を、いまこそ見直す必要があります。いまの政治情況を見ると、希望の党と民進党の合流話のときに、そこに連合会長が同席するという構図でしょう。しかし、保坂、辻元というのは組合でないところから出てきた人たちです。飛鳥田は弁護士出身だし、いまの枝野も弁護士出身ですよね。民権側が、そういう部分をあまり育ててこなかったことが問題なんです。 一方、自民党は自民党で官僚と二世にほとんど占領されてしまった。(編者注:労組が有名無実になっているという実態から、私はどうしても内部の腐敗を想像してしまうのですが。誰か内実にメスを入れてくれないものでしょうか)

早野:まったくそのとおりだね。

佐高:国家というのは、集団主義を主張しながら、一方で自己責任というのをやたらと言うでしょう。国権は、個人をつまみ食いするんだ。自分たちの都合のいいときと悪いときで、使い分けている。

早野:土井さんの系譜がいまは枝野幸男に繋がっているわけか。たしかに彼はその流れを汲み取っている。枝野はパワーがあるからね。立憲民主党をつくって、そして大きくするところに繋がっていると言うべきだな。(編者注:申し訳ないが原理主義の枝野については、評価が若干異なります。私は「の」がつかない、江田の方が、観念的でなく、地に足が着いているので、評価しています)



「小沢の側からの個人主義」

佐高:国権対民権という図式と、官権対民権という図式。国と官が一緒になって民権を圧迫する。あるいは個人の生活、命を圧迫する。これはいまだに変わってないよね。

早野:枝野は空理空論じゃなくて具体的な政策実行者タイプだ。それが今度、野党第一党の党首になって、いわば野党全体の発信者になっている。これは安倍にとっては与しやすい相手じゃないですよ。

早野:土井たか子から辻元清美に至る流れ、その中で生み出された個人の自由を拠り所とする民主主義、それは裏返せば個人の責任ということでもあるんだが、それを角栄の系列から言い出したのが小沢一郎なんだ。

佐高:小沢が土井さんの流れの裏返しというのはどういう意味?

早野:個人は集団への自己埋没の代債として、生活と安全を集団から保障されてきた、と小沢は日本社会を語っている。集団への自己埋没、そこから日本は抜け出さなくてはいけない。全体の中に自己埋没するのではなくて、個人に自己責任の自覚を求める。
もちろんそこから具体的に、政治のリーダーシップ、地方分権、規制の撤廃、そういう改革の内実に議論が繋がっていくわけだけど。小沢の勢力伸長、これは一方で土井たか子のもとで辻元清美ら市民派が日本の政治のありようにチャレンジしたことに対して、いわば権力の側から自己変革をしなくてはならんということを告げたのではなかっただろうか。
小沢一郎は角栄に育てられて、角栄政治をつぶさに見て、しかし考えるところがあって、角栄政治はこのままでいいのかと問うてきた。そして、いや民主主義の根っこには、もっと個人の自由と個人の自覚、個人の自立と個人の責任がなければいけないというところに、彼はたどり着く。そして『日本改造計画」を書き、彼は自民党を割って新しい政党をつくる。そして細川政権という大きなドラマに繋げていく。

佐高:「集団に埋没しない」というところ、「集団」と書くところが小沢の味噌だよね。つまり、集団を国家に限定していない。それは村落共同体かもしれないし、隣組的な組織かもしれないし、労働組合かもしれないし、政党かもしれない。

早野:そう。もっと普遍的に見ているんだ。

佐高:ある意味でこれは、自己責任という両刃の剣的な発想を使って、個人も変え、同時に葉団も変えていこうという戦略でしょう。それが小沢流の日本改造計画だった。私は必ずしも共感しないけれど、たぶんその先に、国連第一主義が出てくるんでしょう。

早野:さらに踏み込んで言えば、小沢からすると、これまでの日本の国家というのは、無責任国家だった。個人の自立に支えられた国家ではなく、集団のリーダーが自分勝手につくっていく体制。それが無惨な戦争に突入していった日本の政治の悪弊というものだった。そういう反省がある。だから小沢の『日本改造計画』は、戦後民主主義の浅はかさへの挑戦でもあるけれども、より本質的に言うと、戦前の戦争国家との決別だね。
(編者注:だから官僚主導も危ないのです)


「自衛隊と平和思想の止揚」

早野:真の民主主義を支える人間の思想のありようとは、どうあるべきなのか。それは、市民としての個の自由また責任だ、というところに小沢はたどり着いた。実はそれはこの時代の共通認識だったんだ。土井さんの側から、辻元以下が市民運動を現実政治へ突出させるというかたちで紡ぎ出したもの、小沢はこれと対面しながら、問題意識を分かち合っている。

佐高:戦後民主主義をめぐって、土井さんのポジと小沢のネガが対峠している、と。

早野:そう。そこには市民的な個人への信頼という共通基盤があるわけだ。でも決定的に違うのは、土井さんは非戦なんだ。再び武器は取らない、手にしない。
でも小沢一郎は「普通の国」を目指す。そこがもうひとつの小沢の持ち味になっていた。戦後民主主義の弱さを突くとき、どうやって国を守っていくのか、という迫り方があるわけだ。やはり軍備が必要だという考え方を小沢は持っている。そこで自衛隊をどう位置づけるか。
ひとつには、九条を改正して、九条の第三項に自衛隊を明記するというのが一案だと言っている。すると、これはいま安倍が言っていることの先駆的なブレインストーミングをやっていたということにもなる。しかし小沢案の独自性はもうひとつのほうにある。それは、九条は変えない、平和安全保障基本法をつくって、海外での紛争の際に日本がどういうふうに関わるのかを定めておく、というものです。
日本が攻められたら守る、これは国家の権利ということになるけれども、集団的自衛権をどう取り扱うのかということが、当時もいまも問題になっている。小沢は、外国で紛争が起きたときに日本がどうするかについて、平和安全保障基本法に基づいて協力体制をつくると言うわけだ。これはどういう範囲かというと、「日本が許される海外における武力活動は、世界の大多数の国々がその権威を認めている国連の旗の下に行われる平和活動のみである。其れが日本国憲法の理念であり、わが国が生き残る唯一の道である」と結論づけている。自衛隊の存在を認めるという事と、戦後の平和思想とをアウフヘーベンしようとしたのでしょう。

佐高:小沢の国家改造計画はアメリカの旗の下ではない。これは安倍との明確で大きな違いです。
もうひとつ直接関係ないかもしれないけれど、小沢の息子は自衛隊に人っているんですね。もう辞めたようだけれども、首相や大臣の息子というのは、自衛隊には行かないものです。そういうところも小沢は莫剣だということ。

(編者注:ここが大事なところです。防衛力まで放棄するのは、小林節ではないが、非現実的です。要はその軍備を正しくコントロールできるかどうかです。国家の暴力装置が、安倍や日本会議のナショナリズムや戦前回帰思想に結び付くと、いかなる不測の事態が生じるか分からない。それを良識のある国民は心配しているのです。戦争の記憶のある我々戦後世代としては、その危険性を座して見守ることはできないのです。
安倍政権はどんなに国民が反対しても、数々の右傾化法案を、数の力で無理やり押し通してきました。富裕層であれ、権力層であれ、私利私欲のために、その「事実」から目を背けようとする人たちを、私は「日本人」と認めたくありません)

そして三つめ。これはまた東北の話になるんだけど、政府というものは真っ当な者がつくるわけではないということが、小沢は骨身に染みているんだよ。安倍は長州でしょう。

早野:繰り返すけど、僕は小沢はやはり田中派の系譜だと思うんですよ。民衆の中から出てきて、下から権力を奪い取るという系譜のひとつのあらわれとして、小沢一郎の『日本改造計画』を再読した。「普通の国」という思想もそこから生み出されたと恩うんだ。


「政治は誰を代表しているのか?」

早野:やはり政治家というのはいろいろな背景を背負っていればいるほど魅力的だな。

佐高:それが代議制民主主義の奥行きでなければならないわけですよね。政冶は誰を代表しているのか、と。
そうするとやはり土井さんという女性の民権派の特殊性に改めて注目しなくては。土井さんは社会党の委員長になるときに、「女を党首にするほど社会党は落ちぶれてないよ」と言われたという。辻元の秘害給与問題にしても、最近の山尾の「不倫」問題にしても、狙い撃ちにされるのは女性なんですよね。
(編者注:しかも安倍政権の女性閣僚は、揃って頭の中身のない人形、だから操り人形です)

早野 やはりそういうことなのかね。

佐高:繰り返すけど、民権という場合、女性のほうがより敏感に反応すると思う。国権に痛めつけられて、それこそ戦前は普通の人だと認められていない。参政権も何も認められていないところから政治に対する目覚めがあったわけだから。だから民権派における女性の位置づけを、きちんとしておかないといけない。

佐高:安倍は、山尾、辻元、福島を徹底的に嫌うじゃない。それは、男ならどこかで話か通じると思っているところがあるんですよ。

早野:国権と民権と分けて、民権の側から語っているつもりでも、男と女というときに旧来の男の見方しかできないのでは、それは真の民権とは言えない、ということだな。

佐高:そういうことだね。民権というときの「民」、あるいは市民主裁というときの「市民」とは何かを考える必要がありますね。それは、権利をないがしろにされたさまざまな人たちと出会っていく塊であるべきです。私なんかも意織が古いところがあるから、やはり常に意識的に学んでいかなくてはと思っています。


「女であれば徹頭徹尾・民権」

佐高:辻元にしろ、山尾にしろ、再選しているよね。

早野:そのしぷとさがすごい。

佐高:あれだけ叩かれても、その根性の据わり方はやはり違うよね。

早野:この世をつくっているのは男と女だからな。そういう出発点に、政治も逆にたどり着きつつある感じもあるね。

佐高:森友問題の明らかな主役のひとりである安倍昭恵と、たとえば辻元でも山尾でもいいけど、対比させる視点。また、山尾対小池百合子的生き方という観点も必要だと思うね。
小池は完全に民権を捨てて国権に行ったんだよ。関東大震災で朝鮮人が虐殺されたことに対して、まがりなりにも歴代都知事が追悼の言葉を送っていたのを小池はやめた。これは弱者を踏みつける側に足場を置くという宣言ですよ。
小池は、痛みを理解できる側である「女」を捨てたわけだ。女を捨てて男の道を歩いて
いる。(編者注:母性の無い女帝です)

佐高:「女であれば徹頭徹尾、民権」これはひとつの結語じゃない。意外な方向に話がいきましたね。

早野:女性論になるとは恩わなかったな。オッサンである我々一人ひとりからは絶対に出てこない結論だ。これも、対話という、民主主義のひとつの効用ですかね。
(編者注:二人には申し訳ないが、私は山尾を余り評価していません。枝野もです)


「あとがき」早野透

ことし2018年の8月15日は、そう、あの太平洋戦争の敗戦の日から73年になる。
日本の現代史は、「戦後何年」という数え方をしてきたから、ことしは「戦後73年」である。いやはや、もうそろそろ、あの戦争を起点とする、そういう言い方は止めどきかもしれない。ほとんどの日本国民が戦争の話など親にきいただけになっているのに、このままいけば、「戦後80年」とか「戦後700年」ということにもなる。それは、さすがにおかしい。

しかし、どうも我が世代、自分たちの生きている時代の意識は、「戦後」というのがいちばん合っている。実は、この本、『国権と民権』の著者である佐高信も早野遊も、あの敗戦の年、昭和20年、1945年の生まれなのであって、当年とって73歳、「戦後」と同い年なのである。(編者注:私も20年生まれです)

いろいろあったなあ、戦後すぐの幼年期はひもじかったなあ、60年安保閲争というのがあって、あれで「政治」に目覚めたなあ、大学紛争でもみくちゃになったなあ、中国とも国交回復、なんだかうれしかったなあ、そんなこんなしているうちに、えっ七三歳!

時代区分のことをいえば、むろん、日本には元号がある。この間、「昭和」から「平成」に移った。来年2019年にはまた、元号が変わるらしい。しかし、実は、我々の世代は、これらの元号では、「自分たちの時代」を表現しにくい。どういうことか。

昭和は1945年、昭和20年の8月15日の敗戦の日を境に、二分される。それ以前は「戦前」、国民はうっかりモノも言えない軍部支配の世の中だった。「戦後」は、アメリカ軍が日本に進駐する中で、民主主義憲法ができて、いまの自由な世の中に変わった。敗戦の前と後では、時代像が正反対、従って「昭和」は、ひとつのイメージを結ばない。

まあむろん、戦争に苦しめられた時代が終わってよかった、しかし、戦地に死に、空襲で死んだ300万人の同胞を思うと、うん、我々の生きている時代は「昭和」より、むしろ「戦後」という呼称を続けたほうがいいかもしれない。歴史を忘れるべきではないという想いをこめた時代認識として、それがいいかもしれない。

さて、「昭和」を継ぐ「平成」は来年で終わり、その31年間はなんだか知らない間にあっという問にすぎたようで、その間に何があったか、平成とはどんな時代だったか、これまた、ひとつのイメージを結ばない。そんなわけで、元号ではなかなか時代の区切りがつかない。依然として「戦後」が生き延びるゆえんである。

そして今回、ふたりで『国権と民権』と題する本害をつくった。『国椎と民権』は、いわぱ『丸山眞男と田中角栄』の続編といえるかもしれない。この二冊は、ぽくたちが生きてきた「戦後」の日本政治に関する、佐高と早野によるひと繋がり考察であり、論稿なのである。

私が一線の政治記者だった時代、日本政治は、「三角大福中」の五派閥の攻防、合従連衡で政権が形成されていた。それは、日本国憲法の民主主養のもとで営まれながら、実は、自分たちの利害損得、狭い仲間意識、オモテよりウラの駆け引きといった側面をあわせもっていた。

加藤紘一は、そんな時代にたてついて、そんな時代の政治を変えようとした先駆だったといっていい。旧時代の残滓ともいうべき、往時の森喜朗首相を退陣に追い込むべく、いささか未熟さを感じる政治行動に立ちあがったが、やはり未熟さゆえに敗れたといえるかもしれない。加藤紘一をその一人とするYKK-山崎拓、小泉純一郎、そして加藤紘一、この三人は、旧派閥時代から日本政治を脱皮させるべく、それぞれのやりかたで挑戦した。小泉は内閣総理大臣になって、ひと時代を築いた。三人の影には、小沢一郎という人物が存在していた。田中角栄という「戦後」を彩った稀代の人物のもとで政治を学んだ小沢は、「国権と民権」のはざまにいて、時代形成にかかわり続けた。

これら自民党の系列だけではない。一方では、社民党の土井たか子が辻元清美や保坂展人らを率いて、「市民政治」のありようを示し、求めた。その流れが、いまも枝野幸男らに引き継がれている。「国権と民権」、その関係はいかにあるべきか、その問いも彼らに引き継がれているのである…。

日本政治が真の民主主義に育っていくかどうか、ふたりはさらに「国権と民権」のありようを注視していかねばならない。2018年7月23日。



1366.ゴーンの不正。18/11/22,23,29

・日産、報酬制度変更、ルノーとの連合見直し。
https://this.kiji.is/437935883624105057?c=39546741839462401
関連記事。豪華な別宅。
https://this.kiji.is/437960970603070561?c=39546741839462401
関連記事。ゴーンが虚偽記載を指示。
https://www.asahi.com/articles/ASLCP5QVWLCPUTIL03P.html?iref=comtop_8_01
関連記事。権力集中だけが原因か。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112102000193.html
関連記事。ゴーンは常にフランスを向いていた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54734
関連記事。豪華な晩餐会。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/11/20/ghosn-celebrity_a_23595380/?utm_hp_ref=jp-homepage
関連記事。日本のメディアにも責任。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/11/20/who-lifted-ghosn_a_23594432/?utm_hp_ref=jp-homepage
関連記事。本丸は何処か。
https://toyokeizai.net/articles/-/250898
関連記事。ゴーン排除の仰天策。
https://diamond.jp/articles/-/186352
コメント:西川(さいかわ)社長の捨て身の造反です。業績の悪いルノーが、株主として日産を支配、統合して、日産が吸収されてしまう危機的な状況だったのだから、当然と言えば当然です。むしろ日産の利益に相反する行為をしたことで、ゴーンは特別背任で起訴されるべきなのです。これまでこの状況を看過してきた経産省にも問題があります。少しは国益も考えないと。安倍政権にゴマを擦って、原発再稼働を推進するだけが能ではないでしょう。そもそもゴーンを雇わなければならなくなった日産(や三菱)の経営の病理を、いまのうちに精査して解き明かし、対策を講じておかないと、第二、第三の犠牲者(日本の自動車メーカー)が出る可能性があります。


・日産、臨時取締役会でゴーン解任。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38121070S8A121C1MM8000/
関連記事。日産、ゴーンの姉に毎年10万ドル。実態ないアドバイザー。
https://this.kiji.is/438324130044331105?c=39546741839462401
関連記事。ゴーン会長報酬に関与する事が日産に残った理由。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181123/k10011720881000.html
コメント:ここまで腐っていたとは、驚きを禁じ得ません。

・経産相、日産ルノー連合を強く支持。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181123-00000006-kyodonews-bus_all
関連記事。日本の集団手の平返し。
https://diamond.jp/articles/-/186457
関連記事。ゴーン逮捕、3つの謎。
https://diamond.jp/articles/-/186429
コメント:世耕経産相は、底なしの間Xけです。まず西川社長の苦悩を全く理解できていない。それに日産は今更ルノーから何を学べというのか。しかも最近のゴーンの経営方針にはまるで内容がなかった。自動車のことも、メーカーの事も、まして国益が何かも、まるで分かっていない。WTWは10年も前から、ゴーンの退任を求めてきています。世耕とはEQ(教養レベル)が違うのです。その程度の頭(しかもこれが安倍政権の閣僚の平均値)なら、閣僚はもう無理でしょう。WTWは財務、経産、五輪、地方創生の各大臣の交代を求めます。日本をこれ以上悪くすれば眼も当てられないからです。しかも日産について、未だに安倍首相からコメントはありません。それが大きな違和感を与えています。


・仏財務相、ルノーと日産の権力配分の変更望まず。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181128/k10011727261000.html
コメント:日産の株を手放さない、ルノーの株も売らないというのなら、日産はシトロエンの買収を考えた方が良いと思います。無論フランスでルノーと競争させる為にです。こういう時に世耕と河野は、脳力不足で役に立ちません。実業界の人間が必要です。IBMと戦った、F社の鳴戸副会長が存命していてくれたらと思わざるを得ません。

・ゴーン不正。商法違反、脱税、特別背任。
https://diamond.jp/articles/-/186764
コメント:いまだにゴーンを擁護する意見が、日本のメディアでさえ散見されるのは、理解できません。彼らが異口同音に言うことは、何故日産の取締役会で、ゴーンの不正を追及しなかったのかという点と、報酬が高くないという説明です。
仮に自分が平取(取締役)だとして、絶対君主のゴーンに意見できるかどうかという事です。だから今回が、最高経営責任者の、最初で最後の不正追及の機会なのです。西川はそこに身体を張ったのです。ルノーから学ぶものなど何もないのに、ルノ―への吸収が秒読みの段階に入っていたからです。但し、ゴーンのパイプ役だった志賀は責任を問われても仕方がないと思います。ゴーンは自分のしているお手盛り行為が、不正行為だと分かっていたからこそ、トンネル会社まで作ってカネの流れを隠そうとしたのです。ゴーンと側近に関しては、無実というのはあり得ないのです。
ついでに日本のニュースショウです。ろくすっぽ本も読まず、企業勤務の経験もないコメンテーターが、自分が大衆の意見を代表しているかのように、浅薄な意見を吐き散らしています。しかもたまにリベラルなタレント(ウーマンラッシュアワーの村本、ロンブー淳)などが現れると、自民党が苦情を言う前に局側が自主規制という名前の忖度で、つぶしに掛かります。毒舌で生き残っているのは爆問くらいのものです。後は外国人のパトリック・ハーランですが、もともと学歴が少し違います。敢えて少しというのは、T大卒のタレントや政治家(片山など)にも、結構偽物の知識人が多いからです。それやこれやで、男女やニューハーフを問わず、ニュースショウでコメントする者の知的レベルは日に日に低下の一途を辿っています。だから日本のジャーナリズムは最低だと言われるのです。新旧お笑い芸人と、本業を疎かにした二流の芸能人が、ひな壇を占拠し、あるいはMCを勤める。そういうTV放送の現状を一目見れば、外国人ならずとも、一目で「こりゃ駄目だ」と思うでしょう。



1367.大阪万博は本当に必要か。18/11/25,26

大阪万博招致の世耕大臣の英語のスピーチを聞いて仰天しました。何を言っているのかさっぱりわからなかったからです。世界中に恥を曝していました。今時の小学生でも、もっとましな発音をします。私が過去聞いた政治家の英語の中で、間違いなく最悪でした。原稿を棒読みしてくれた方が未だましでした。側近はなぜ止めなかったのか。
しかも日産ルノーの問題では、ロクに経緯も調べずに、仏に勝手に協力を約束しています。ゴーンが決めた日産とルノーの技術統合で(技術の劣る)ルノーから大勢日本に来て指図を始めた。そして大量の技術者が辞めていった。日産は我慢の限界だったとNHK11/25特番が伝えています。日産が自ら検察に証拠を提出し、告発したのです。ゴーン側は、ペーパーカンパニーを作って不正流用。否定のしようがありません。
最後の企業経験のない司会者の見当違いのまとめ方がいささか気になりました。トップに歯向かえば出される。それが企業の論理です。トップが白いと言えば、カラスも白いのです。だからこそ今回の告発には意味があるのです。
経産大臣が無知蒙昧だと国民が大損します。しかも組み合わせの相手が、松井知事です。
関連記事。連合トップはルノー。
https://this.kiji.is/439469915150976097?c=39546741839462401
関連記事。大阪万博会場整備に140億円。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181125-00000003-mai-soci
コメント:それを国に負担せよとでも。



1368.入管法改正案強行採決。18/11/27,28,29

昨日(11/26)の入管法の改正案の国会審議で明らかになったことは、政府が留学生の立場に立って考えたことはなく、不法労働させている企業側の立場に立ってきたことです。野党の質問は皆、ほぼ同じ内容でしたが、共産党の辰巳議員の質問がもっとも整理されていました。
関連記事。27日採決に野党猛反発。映像。
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20181126-00000037-ann-pol

入国管理局長の誠意の無い態度は、モリカケの時の財務省の官僚の態度と共通しています。答えりゃいいんだろという態度は、お前どこで誰に向って口をきいてんだとつっこみたくなるものでした。もはや見飽きた安倍政権への忖度の構図でもあります。こういうお役人が局長なら、省庁も世の末です。

無礼で思い出すのは、何度も同じ事を言うがと自分でも「同じことを言う」麻生大臣です。なぜ同じ質問をするのかと言えば、自分の答が答になっていないからなのです。これは馬Xに馬Xと言われているようなものです。

更に辰巳は、森友の説明で使われた試掘の穴の写真が、同じ写真を使いまわしていた事実を指摘していました。政府は、資料は業者が作った、業者に聞いているの一点張りでした。更に辰巳は、近畿財務局と業者の間で、穴からはゴミが出たことにせよという指示があったことも指摘しています。

維新の藤巻議員は紙幣を印刷するだけでは財政は改善しないと指摘していました。黒田総裁の答は、バランスを取っているというだけで、国民の納得とは程遠いものでした。

福島みずほ議員は、水道民営化を指摘し、麻生(首相も)の答えは質問者を馬鹿にしたものでした。この二人の、野党の女性議員に対する態度は、「早く質問しろよ」という野次を飛ばしたときから、少しも変ってはいません。安倍内閣を退陣させることしか、日本に「まともな」政治を取り戻す方法はないという思いを強く持ちました。



・入管法案で、衆院議長が追加質疑指示。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181128-00000001-mai-pol
関連記事。入管法が衆院通過。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018112700828&g=pol
コメント:今や大島議長が数少ない自民党の良心です。またも自民党の強行採決。ならばいっそ質疑もやめたらどうか。野党の言うことなどハナから、尊重どころか聞く気もない(福島みずほに対する安倍・麻生の傲慢な態度を見よ)からです。首相が二言目には言う、「議論を深める」が、聞いてあきれます。そもそも国会会期中の首相の外遊の都合で、2日で審議打ち切りなんてありえないことです。首相の都合が、全てに優先とは、一体何様のつもりですか。神様ですか。



・入管法、国会は責任放棄するな。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112802000185.html



1369.NHK受信料の値下げ。18/11/28

・NHK受信料、月額35円下げ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181127-00000100-asahi-soci
コメント:なら下げなくて結構です。こんなことで値下げしましたと胸を張られたら、国民は堪ったものではありません。国民は1兆円で米国から戦闘機を買わされるのです。それより安倍首相の専属宣伝係の小池報道局長と、自民党から参院選出馬のうわさもある、同じく首相番の、岩田明子記者を左遷してくれた方が、国民は助かります。
35円は、NHKの常識が世間の非常識だという証拠です。それでも未だ分からなければ、経営者としても二流のNHKの経営陣に教えてさしあげるが、こういう場合の値下げとは100円単位で行なうものです。浮世離れ=これは公営放送としては絶対にあってはならない、のNHKの経営陣の総入れ替えを、「顧客」の一人として要求します。彼らには、労働時間とは不釣り合いな額の報酬が支払われているはずです。しかも、我々よりさして優秀なわけでもないのです。