「WTWオピニオン」
【第73巻の内容】
「防衛大綱」
「安倍官邸vsNHK」
「『世界』の世界」
「ヘリで行く蕎麦屋」
「天皇誕生日」
1376.防衛大綱ほか 18/12/12-21
・防衛大綱、空母導入。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181212/k10011743791000.html
関連記事。憲法との整合性図る。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/11/kubo-kempo-sento_a_23614786/?utm_hp_ref=jp-homepage
関連記事。過去最大の27兆円規模。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/f3527.php
コメント:これは痛しかゆしです。何故ならヘリ空母は災害対策で役に立つからです。但しなぜか未だに実績はありません。しかし本来空母は、「敵地攻撃」の為に、「敵国」の近くに空港を移動する為の仕組みです。一方、防衛面で考えると、日本には守るべき海域が広すぎるという特殊事情があります。だから領海の維持に空母を使うという理屈も成り立たないことはありません。であるならば「専守防衛のために」、空母がどれだけ必要かを国民に説明して、納得と同意を得るしかないでしょう。ところが内閣も防衛省もその手順(同意)を省略しています。だから国民が不信感を持つのです。いずれにせよ、なんでもかんでも、なし崩しで既成事実にしてしまうという、自民党お得意の手法では、民主主義も法治国家もへったくれも、あったものではないのです。
すべての兵器は攻撃に使い、防御にも使う。しかしいずれにしても、「人間の殺傷行為」に変わりはないのです。世界中で有志(心ある市民)が非武装運動を展開することが、武器を揃えた国同士が、突然戦火を交える不慮の事故(戦争)を起こさない為にも、必要なのです。
・改正入管法部による外国人受け入れはブラック企業を延命させる。
https://diamond.jp/articles/-/188173
・ゴーン流人事・報酬の歪み。権力維持装置。
https://diamond.jp/articles/-/187953
コメント:一読を。
・ファーウェイ早わかり。
https://diamond.jp/articles/-/187921
・元関脇がギャンブル依存症に警鐘。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/10/casino-izon-japan_a_23614770/?utm_hp_ref=jp-homepage
・2018年を振り返る。抗議活動。スライド。
https://jp.reuters.com/news/picture/pictures-of-the-year-protests-idJPRTX6HWC9
・AIとデータに絡んだ騒動。
https://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/ai-date_a_23612208/?utm_hp_ref=jp-homepage
2019年の防衛大綱の説明で、「珍しく」首相は専守防衛という言葉を使いました。安保法案を強行採決する時には散々使っていたのに、法案成立後は一切首相の口からは出てこなくなった言葉です。それは、安倍首相の心の中には、自衛隊は(自分が指揮を執る)軍隊であり、専守防衛でなく攻撃にも使える軍事力だという理解が本音にあるからでしょう。首相が一言「有事だ、非常事態だ」と言いさえすれば、自衛隊は攻撃の火ぶたを切る事が出来ます。何故なら国民投票が必要な本当の改憲の前に、安倍首相が閣議で解釈改憲をしてしまっているからです。敵国が不穏な動きを見せたから、自国防衛のためにやむなく先制攻撃に踏み切ったと、「後で」釈明すれば済むと考えているとしか思えません。今回の防衛大綱では、ヘリ空母を攻撃空母化したいという悲願があるので、専守防衛という言葉を「いやいやながら」使わざるを得なかったのです。100機もの戦闘機は、艦載機を予定しないと数が合いません。しかもNHKを含む大手メディアはそこに一切踏み込もうとしません。一方で日本中に米軍基地があるから、日本列島は既にハリネズミのような状態にある。だから防衛の為なら空母は必要ないのです。自力で日本を守りたいのなら、米軍は米国にお引き取り願い、普天間基地もいらないのです。普天間基地の騒動を、米国はむしろ呆れて見ているのです。いま両手に戦車と戦闘機のおもちゃを持って喜んでいる安倍少年は、いつか実際に使ってみたいと思っている。私はそう確信しています。
録画しておいた「ミッドウェイ」という映画を見ました。日米のそうそうたる俳優が出ています。但し相当昔の映画なので、特撮は大したことはありません。また山本長官の三船より、南雲中将のジェームス繁田の方が好演しています。映画の最後で、ヘンリー・フォンダ演じるニミッツ提督がこう言います。山本の方が戦力でも、知力でも勝った、米軍が勝ったのは幸運だったと。でも米軍が勝ったのは情報収集能力が勝っており、そのために努力もしていたからです。かたや「帝国海軍」はろくに索敵も行わず、あてずっぽうの判断で米軍に遅れを取った。しかもミッドウェイ島の基地攻撃を優先し、守りがおろそかになっていた。だから艦載機の兵装の切り替えが間に合わず、完膚なきまでに叩かれたのです。入管法で分かるように、情報を集めようとせず、集めても分析せず、政権に都合の良い結論だけ持ち出す。しかもその結果に誰も責任を取らない。日本の官僚の体質は80年前と変わっていないようです(80年前は軍事官僚)。ミッドウェイと同じことが「平時の」日本でも起きているのです。NHKという国営放送は、あたかも安倍政権の政策と説明には誤謬が一切ないかのように日々報道しています。正にその姿は大本営発表に他ならないのです。週刊文春の最新号で、「やっと」小池報道局長の偏向した報道姿勢が批判され始めました。NHKに情報収集を任せていたら、情報は安倍政権の脚色のしたい放題になり、国民は視聴料を払って、自分の首を絞めることになるのです。
・戦後初の空母。閣議決定で。
https://www.cnn.co.jp/world/35130325.html
コメント:またもや国民が納得できる説明はありません。災害対応でも、離島奪還でも、少なくとも戦闘機はいらないはずです。戦闘機は敵基地を叩くときにしか意味がないからです。何処まで国民不在で好き勝手に振る舞えば安倍政権は満足するのでしょうか。しかも航空甲板だけでは空母としては機能しない。格納庫やエレベーターも、F35が搭載できる大きさでなければならない。米軍のF35への給油が目的という見方さえ不十分ではないのか。建造開始当時から、今の筋書きが出来ていたとしか思えないのです。いずもが帝国海軍の復活のシンボルになる恐れがあります。韓国との間で問題になった自衛艦の旭日旗の問題もそこに帰着するのではないか。日本にも空母があると安倍晋三ははしゃぎたいのでしょうが、それにしては中途半端な大きさです。とはいいつつも巨艦の戦艦ヤマトとは全長で15mしか違いません。帝国軍と言えばスターウォーズ。皇帝が安倍首相ならダースベイダーは麻生か。そろそろ反乱軍を率いるジェダイが現れてもいい時期かもしれないのです。但しそれが排他の論理の枝野でないことだけは確かでしょう。
フリーの国際情勢解説者、田中 宇(たなか・さかい)によれば、ヘリ空母いずもには同型艦のかががあり、この二隻を空母化する計画とのことです。しかしさらに調べると海自にはヘリ空母が計4隻もあることが分かりました。残りはどうするつもりなのでしょうか。
関連記事。
https://trafficnews.jp/post/66780
ならば戦闘機の大量発注も頷けます。空母が4隻あれば、立派(?)な海軍大国です。しかし田中宇によれば、省庁側は専守防衛からの逸脱には消極的(護憲)で、本件で前のめりになっているのは自民党とのことです。日本の政治を自民党の好きなようにさせておくことが、どんなに危険なことかを、国民にもそろそろ理解して欲しいものです。
1377.安倍官邸vsNHK 18/12/17-19
NHKの大河ドラマ「西郷どん」が最終回を迎えました。番組では城山にこもった西郷は、新政府軍の猛攻を受け、銃弾を浴びてその場で息絶えることになっていますが、実際は銃弾をう受けて負傷した後で、最早これまでと、仲間に介錯されて亡くなっているのです。歴史には様々な解釈があるのは致し方ないが、事実まで曲げたらもはや歴史ではありません。原作者(林真理子=ミーハー作家)と脚本家の猛省を促します。
今日からは「安倍官邸vsNHK」相澤冬樹 文芸春秋の紹介兼引用です。森友学園問題の裏側を知りたいという気持ちでこの本を手に取りました。前書きとあとがきには、通常、著者の強い思いが込められているので、前書きの紹介から始めます。
…と、その前に、週間文春(12月20日号)の関連記事の冒頭部分を紹介します。
「森友スクープ記者はなぜNHKを辞めたか」
「私は間いてない。なぜ出したんだ」
電話の向こうで激怒する声が響く。声の主は、全国のNHKの報道部門を束ねる小池英夫報道局長。電話を受けているのはNHK大阪放送局のA報道部長だ。
私はたまたまA部長のそばにいたため、電話の内容を知ることになった。「なぜ出したのか」と問われているのは、私が報じた森友事件の特ダネ。近畿財務局が森友学圃に国有地を売却する前に、学圏が支払える上限額を事前に聞き出していたというニュースだ。
ところが、その特ダネに鞭道局長が激怒しているという。なぜか。
NHK報道局で広く知られた言葉がある.「Kアラート」だ。Kは小池局長の頭文字。小池局長がニュースの内客に細かく指示を出してくることを指す。
「また官邸から何か言われたに連いない」
Kアラートが出るたびに、報道局内ではそう囁かれている。政治部畑を歩み、政治部長も経験した小池局長。安倍官邸中枢に太いパイプがあるのは知られたところだ。Kアラートが出たということは、この特ダネは官邸が嫌がるニュースだったのだろうか。
小池局長との電話が終わった後、A部長は苦笑しながら私に言った。
「あなたの将来はないと思えと言われちゃいました」
その瞬間、それは私のことだ、と悟った。翌年六月の人事で私は記者を外され、考査部へ異動する。そして今年八月末、NHKを辞めることにした。
NHK大阪報道部の司法担当紀者だった私は、発覚時から森友事件を追い続けてきた。その間、感じてきたのは、事実をあるがままに報じようとしないNHKの姿勢だ。
森友事件が公になったのは、昨年二月八日、木村真豊中市議による記者会見だった。学園の小学校用地として売却された国有地の金額について情報公開請求をしたのに、開示されないのは不当だと訴えたのだ。
だが、私が最も驚いたのは、小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が就任していたこと。それがこのニュースの最大のポイントだろう。だから私は原稿に昭恵氏のことを害き、本文でも事実として明記した。ところが、デスクの判断でこの部分が削られてしまう。
それでも関西では、当日夕方の報道番組でこのニュースが報じられたからまだよかった。私はこの原橘を「全中(全国ニュース)に送るべき」と進言したが、東京には送られなかった。昭恵氏の名誉校長就任が核心なのに、それゆえに放送を躊躇ったとしか思えない。
その二日後のことだ。鑑定価格九億五千六百万円だった国有地が、約八億二千万円も値引きされ、一億三干四百万円で売却されていたという驚きの事実が判明する。だが、この「八億円値引き」も放送は関西のみ。全国放送は報じない。
NHKの森友柑道は忖度で姶まったのだった。
「はじめに」
この夏、2018年(平成30年)8月31日、私はNHKを辞めた。31年間、記者として勤めたNHKを退職した。
…では、なぜ私はNHKを辞めたのか?それは記者を外されたから。記者の仕事を続けるため、森友事件の取材を続けるため、私はNHKを辞めて大阪日日新聞に移った。
…事件の本場、神戸でサツ回りの修業を重ね、阪神淡路大震災に直面。震災半年で避難所を閉鎖しようとする神戸市に対し、神戸局の記者が家族まで総出で避難所での聞き取り調査を行い、避難所を出られない被災者の思いを私が右代表でリポートした。NHK神戸ニュースの総力を挙げた調査報道だったと思う。
震災半年で異動した東京社会部では、介護保険制度創設、日の出町ごみ処分場の汚水漏れ、医療保険制度改革を取材、旧厚生省担当となり、初の脳死臓器移植を経駿したほか、歯科医師国家試駿漏洩事件で漏洩源を特定する特ダネを出して、13年間の記者生活にいったんピリオドを打ちニュースデスクとなって徳島へ。
3年の徳島勤務では、なぜか3回の県知事選を経験する。
…徳島1区避出の民主党の仙谷由人衆誠院議員(当時)が「男の子は売られた喧嘩は買わなきゃだめでしょ」と言い切ったのが懐かしい。対する自民党は総務省から徳島県庁に出向していた部長を擁立。大接戦の末、20万対19万で自民が激戦を制した。
その直後、私は大阪府警キャップに。
…2005年(平成17年)に107人が死亡するJR福知山線脱線軍故が発生。その日から脱線事故担当デスクとなり、さらにアスベスト健康被害問題、発達障害のシリーズ企画も担当。同和行政の問題を追及する番組では部落解放同盟と、部落差別の実態に迫る番組では、解放同盟と対峙し「部落差別は解消した」と主張する民権連=民主主義と人権を守る府民連合と、がっぷり四つに組んだ。脱北者の悲劇を描く番組では朝鮮総連と切り結び、在日差別発言訴訟では差別発言者と対峙。いずれも相手方の主張をはね返した。真実の報道を貫き、圧力に負けなかったと自負している。
その後、取材現場を外れて東京でBSニュースの制作担当者の一人になるが、11年(平成23
年)の東日本大蔑災で「やっぱり現場取材」と思い定め、翌年、志願して記者に戻してもらい、再度、大阪へ。子どもの自殺をなかったことにする学校現場と教委を告発する番組、大阪市立桜宮高校の体罰自殺事件、生活保護の現場の取材を経て、大阪府北西部の豊中市と近隣市町の地域担当に。
そして16年(平成28年)7月、大阪司法担当キャップを任された。ここで森友事件と出会い、「これは天命」と感じて取材する。そして迎えた18年(平成30年)6月の人事異動。記者を外された私は、NHKを辞めて大阪日日新聞に移籍することを決意した。
森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である。こう言うと違和感を持つ方が多いかもしれないが、おかしなことをしたのは森友学園ではなく、むしろ国と大阪府の方だ。なぜそう言えるのか? それを読者 視聴者に説明するのが私たち記者の務めだ。そのためには、根拠を示すことが欠かせない。
この本で私は、自分が森友事件をどのように取材し報道したか、そのプロセス、つまり記者の企業秘密を明かすことにする。根拠を示すためにそれが欠かせないと考えるからだ。取材源の秘匿との兼ね合いに配廠しつつ、取材先や関係各方面の方々のご理解もできる限り頂いて、極力明かすことにする。そして、森友事件の報道の背後で何が起きていたのか、森友事件の真の問糎点は何かを明らかにしたいと思う。
(編者注:以下次号)
「安倍官邸vs NHK」ですが、著者には悪いが、新書版ならともかく、ハードカバーでこの内容はいかがなものか。記者の独白で,
国民には「関心のない」枝葉末節のやりとりが大部分を占めています。
最大の問題点は、題名と内容が一致していないことです。安倍官邸は愚か、小池報道局長の批判にさえなっていません。買ってしまった以上、仕方がないので「国民にとって」多少とでも参考になりそうな個所だけを選んで、御紹介します。
東京の報遺局社会番組部の担当者からチーム全員にメールが届いた。
「皆様、昨夜はクロ現本当にお疲れ様でした。
いろいろとデリケートなネタで取材現場のご苦労も多かったかと思いますが、NHKの取材力を示す、冷静かつ深い企画になったかと思います。
放送直後から様々な反響が寄せられていますが、高い評価のものが目立ちます。
以下、かなり熱い反応も寄せられていますのでご参考までに…。
>今日はNHKが国民に帰ってきた記念日です。
「クロ現」を見ましたが、かなり掘り下げて放送していました。
勇気を持って放送してくださり、ありがとうございました。
もうNHKは死んだのかと、諦めかけていました。
しかし、NHKも本心では放送したかったのですね。
多くの有識者が今の日本は戦争前夜の匂いがすると言っています。
二度と戦争へ突き進んだ同じ過ちを犯してはならないのです。
そのためには、メディアが政権を批判する当たり前のスタンスを取り戻す必要があります。
上からの圧力があるかと思いますが、私たち国民はあなたたちの妹方です。
どうかどうか、政権の嘘に騙されている多くの人に、真実を伝えてください。
衷心よりお願いいたします。
>>
視聴率は世帯7.4%でした。
22時台の視聴率としてはかなり良いです。
関心の高さを示したと思います。
とりいそぎ、お礼まで…。
この頃、NHKは攻めの報道をしていたと思う。
「検察内部の東京vs大阪」
事件の本質は、なぜ学校は認可されるところだったか、なぜ国有地は格安で売られたか、に尽きる。国有地の格安売却は、財務省、近畿財務局の背任行為の疑いがある。その捜査が最重点であるべきだ。
ところがこの頃から、大阪府がしきりに、森友学園の補助金不正をめぐる情報を報道各社に流し始めた。大阪府が森友学園の幼稚園に交付していた2つの補助金、教員を確保するための補助金と、障害のある子どもを受け入れた場合の補助金に、教員や障害児の水増しなどの不正の疑いがあるという話だ。大阪市も同様に、市の補助金も不正に受け取っていた疑いがあると言い始めた。
なるほど、補助金不正はあったのかもしれない。しかし、それは国有地の格安売却とはまったく関係のない話だ。そもそも森友学園が多額の補助金を受けていることは大阪府も大阪市もとっくにわかっていたことで、その申請内容がおかしいとすれば、これまでまったく気づかなかったという方が不自然だ。なぜ今になって、このタイミングで、急に騒ぎ始めたのか?
私から言わせると、新たな詐欺事件に注目を集め、本筋の背任事件から世間の目をそらす狙いとしか思えなかった。大阪府も大阪市もトップは大阪維新の会。維新と安倍官邸が近いのは周知のこと。つまり、これは維新が国のためにナイスアシストをしている陽動作戦としか、私には思えなかった。
ところが検察の捜査は、当初こそ背任を意識していたものの、次第に詐欺優先に切り替わっていく。事件の焦点は、いつ近畿財務局をガサするかではなく、いつ森友学園をガサするか、いつ籠池前理事長を逮捕するかに、すっかり変わってしまった。
5月から6月にかけて、私は、我々大阪の検察担当記者と東京社会部の検察担当記者の取材結果を俯瞰して、あることに気がついた。それは、検察当局内での大阪と東京の食い違いである。東京は、とにかく早く詐欺事件の捜査を進めさせたい。そして早く森友学園をガサし、早く籠池前理事長を逮捕させたい。そういう意向の情報が次々と伝わってくる。5月の時点ですでに「まもなくガサする」という情報が流れていた。
この頃、籠池前理事長は、それまでの安倍首相シンパ路線を一転させ、盛んにマスコミで首相批判の論陣を張るようになっていた。安倍首相に切られたことを意識したからだろう。東京の検察当局(法務省、最高検)は、籠池氏を早く逮捕させて口封じをしたいのではないか?そう受け止められてもおかしくない姿勢だった。
一方、大阪の検察はというと、現場の捜査の都合優先、必要な捜査が整わない限り着手はできないというスタンスを保ち続けた。極めて真っ当な判断だが、私には意外だった。東京と地方の意向が食い違うのはNHKでもよくある。そして常に、権限の集中している東京の意向が勝つ。
検察もそうかと思っていたが、今回はどうもそうではなさそうだ。はっきりとしないが、大阪地検トップの検事正が体を張って現場を守り、東京からの圧力をかわしているのではないかという感触があった。
着手予定日2日前の金曜日、とんでもないことが起きた。産経新聞の朝刊に「森友学園、近く強制捜査へ」という記事が出たのである。しかも本文の中で、着手日を明記している。
捜査妨害もいいところだ。捜査批判は大いにすべきだが、捜査妨害は違う。記者の仁義も何もあったもんじゃない。自分たちの手柄を焦っただけだ。
いずれにせよ、こんなことをされて特捜部長は激怒するだろう。案の定、山本特捜部長は激怒した。
(編者注:次号が本書の最終回です)
何をする、または何が出来るでもない上沼恵美子は、芸能界と視聴者にとって必要な存在なのでしょうか。ボスはいらないのです。スポーツ界でも芸能界でも。むしろ自民党から出て、府議会議員にでもなった方がましではないか。国政は勘弁して欲しい。但し松井知事との交代なら可能性もあるし、府民にもメリットがあるかもしれない。
「安倍官邸vs NHK」の最終回です。この本は著者が意図しなかった形で、国民の役に立つかもしれません。それは事件とその背景を整理し、国民の記憶を風化させないことです。しかし同書の最後は余りにもあっけない幕切れです。この本のエッセンスは、この前書きでも紹介している、最後の問答集に集約されています。
…それから半月ほどたって、疑問の一つについて、ようやく具体的な情報が得られた。
「国有地の売却前に、近畿財務局は森友学園との売却交渉の過程で学園がめいっぱい出していくらまでなら出せるのかを聞き出している。そして実際にその金額以下で売っている」
耳を疑った。そんなことが本当にあるのか?私たちは、森友学園側が近畿財務局に買い取り希望額や支払い可能額を伝えて、自分たちの意向通りになるよう求めたとことはありうると考えていた。そのために政治家や安倍昭恵名誉校長の名前を使ったり、巨額の損害賠償請求の可能性をにおわせたりして、近畿財務局を自分たちに従わせようとした可能性はあるだろうと。ところが、実際には森友側ではなく、近畿財務局の方から支払い可能額を聞き出していたというのか! そんなことを役所が率先してするなんて。しかも実際にその上限額に収まる範囲で売ったなんて、まさに背任行為そのものだ。
阪口弁護団は、森友事件をめぐり上脇教授が起こした情報公開請求訴訟や国家賠償訴訟などを手がける一方で、早い時点から、事件の本丸は国有地の格安売却だと狙いを定めていた。
法律の専門家集団として、誰にどういう責任を問うべきか、慎重に議論と検討を重ねた末、この年の7月13日に、売買当時の近畿財務局長や担当者ら合わせて7人を背任の疑いで、また役所の何者かが証拠を廃棄したとして証拠隠滅の疑いで、大阪地検特捜部に刑事告発した。
しかしながら結論を先に言ってしまえば、弁護団のあの手この手の作戦も、特捜部の不起訴処分を変える事は出来なかった。
そもそも財務省の出先機関である近畿財務局は、日頃から一事が万事、本省にお伺いを立てる文化だ。上を恐れ、自分たちの責任が問われないよう徹底して報告して指示を仰ぐ。つまり、今回の改ざんのような大それたことを近畿財務局が主導することはありえない。
一方、書き換え前のもともとの文書をみて、ある財務局経験者は「担当官の矜持を感じる」と指摘した。「この契約は異例だー」というメッセージが、使っている単語や行間に強くにじんでいる。だからこそ、書き換え、改ざんを命じられたのではないか? 我々は推測した。
そのころ再び、衝撃の事実が発覚した。「近畿財務局職員が自殺」亡くなったのは3月7日。改ざん発覚の5日後。そしてこの事実が明らかになったのは、その2日後の3月9日だった。
3月2日の朝日新聞の「改ざん」報道を受け、3月6日に、休職中のA上席が近畿財務局に呼び出された。実際に庁舎内で彼の姿を見かけた人がいる。そして翌7日、A氏は自ら命を絶った。
精神的な問題で休職しているのに、A上席はなぜ呼び出されたのか? 役所では誰とどういう話をしたのか? 何か指示されたのか? 實任感が強かったというA上席。改ざんのしわ寄せで精神的に追い込まれて休職し、さらには死に追い込まれたのではないのか? これは必ず解明して、彼の無念を晴らさねばならない。
遺書ではなく、メモが問題で、そこに重大な事実が書かれているのだ。とある記者がようやく情報をつかんできた。メモはA4で数枚程度。そこには以下のように書かれていたという。
・改ざんは財務局が勝手にしたのではなく、本省からの指示があった。佐川(前理財局長)の指示で書き換えた。
・決裁文書の調書の内容について、上から、詳しく書きすぎていると言われて書き直させられた。
・このままでは私一人の責任にされてしまう。冷たい。
・国会答弁では関係書類はないとしているが、確かに当該書類は1年保存だが、通例で執務資料として残しており、ないということはありえない。
・上司と思われる人物や複数の議員の名前。麻生財務大臣についての記載も。
やはり大変な内容だ。そして彼が残したメモには麻生財務大臣の名前が書かれていた。それも「嘘つきだ」と指摘する形で。
すったもんだの末、ようやく4月4日(水)のクロ現放送が正式に決まったのは、3月も終わりに近い頃だった。森友事件で2本目のクロ現。そして前回と違い報道局幹部の中には、明らかに後ろ向きで、なんとか番組を骨抜きにしようとしている人たちがいると、私やディレクター陣は感じていた。
そこでキャッチしたのが、前年の2月、森友事件の発覚から間もない時期に、財務省側が直接、森友学園側に「トラック何千台もごみを搬出したことにしてほしい」という電話をかけていたという事実だった。つまり財務省の方が虚偽の口裏合わせを学園側に求めていたのだ。学園側は「そんな事実はないからできない」と断っている。世間の認識とは裏腹に、財務省がうそをつくよう持ちかけ、森友学園側が断っていたのだ。
これは改ざん同様、財務省がいかに行政のルールをねじ曲げていたかを明るみに出す新事実だ。特捜部は過去に無理矢理の起訴を繰り返してきたのに、今回に限って無理矢理の不起訴で証拠を闇に葬った。私はそう感じていた。
「急転直下の検察捜査、財務省は全員不起訴 〜そして私は記者を外された〜」
「NHK最後の仕事」
最後の仕事は特捜部長の記者会見だ。会見にも出てやりとりをした私自身が書かねばならない。解説コメントはおおむね以下の通りだ。
キャスター 「スタジオには森友学園の問題発覚当初から取材にあたってきた相澤記者です。相澤さん、発覚から1年3か月あまりがたつ中で余りにも多くの疑惑が次々と出ていましたが、検察は何をどう判断したんでしょうか?」
相澤 「捜査の焦点は大きく2つありました。一つは、国有地を大幅に値引きしたことが犯罪にあたるかどうか。もう一つは国有地の取引に関する公文書の改ざんや廃棄が犯罪にあたるかどうかです。
まず国有地の値引きについて。森友学園に売却された国有地は鑑定価格が9億5600万円だったのに、8億2000万円値引きされていました。近畿財務局は、地下に埋まっていたごみの撤去費用などを差し引いただけで、適切な価格だとしていました」
キャスター 「その説明と矛盾する事実が次々と明るみに出ましたよね」
相澤 「そうです。近畿財務局は、事前の価格交渉はしていないと説明していましたが、実際には学園側が支払える予算の上限額をあらかじめ聞き出していました。また大阪航空局が算定したごみの撤去費用の見積もりについて、近畿財務局が増額を求めていました。特捜部はこれが、国有地を不当に安く売って国に損害を与えた背任の罪にあたるかどうか捜査してきました。しかし、結論は不起訴でした」
キャスター 「それはなぜでしょう? 理由はなんと?」
相澤 「背任罪に問うためには、ごみの撤去費用が不当だという根拠や、国に損害を与える意図が売却担当者にあったことなどを立証する必要があります。しかし特捜部の山本真千子部長は、ごみの撤去費用が不適正だとするのが困難だったことに加え、学園側に損害賠償を支払う義務を売却によって免れた可能性も否定できない」と説明しました。つまり、ごみの撤去費用が不当に多すぎるとは言えないし、国に損害を与える意図があったとも言えないという判断です」(編者注:ごみの撤去費用が正当性を欠いたものであったことは国会でも証明されています。不起訴にする理由はないのです)
キャスター「国有地の取引に関する公文書の改ざんはどうでしょう?」
相澤 「財務省の担当者は特捜部の任意の事情聴取に対し、『決裁文書の改ざんは佐川前理財局の指示だったと認識している』と証言したということです。
また、本省の理財局から近畿財務局にメールで改ざんを指示していたこともつかんでいました」
キャスター「財務省の根深い隠蔽体質がうかがえますが、特捜部はこれらも罪に問えないとしたわけですね。これはどうしてでしょう?」
相澤「改ざんが罪に問えるとすれば、虚偽公文書作成罪、公文書変造罪、公用文書毀棄罪、このいずれかと見られていました。
まず虚偽公文書作成罪ですが特捜部は、『文書の改変によってうその文曾を作ったと認めるのは困難だと判断した』と説明しましだ。改ざん後も文書の本質的な部分が変わっていないから立件は難しいという判断です。
次に公文書変造罪ですが、行政文書の本質的ではない部分に変更を加え、本来とは別の効力を持つ行政文書に作り替えたとは言えないから、罪を問うのは困難だと説明しました。
そして公用文書罪。文字通り公文書を廃棄したり隠したりした場合に適用されますが、廃棄された交渉記録が1年未満と定めた保存間を過ぎてから廃葉しているので、罪に問えないなどと判断しました。
その他の証拠隠滅などについても、罪に問えないという判断です」
(編者注:検察が無理矢理不起訴にするために屁理屈をこねている様子がまざまざと浮かんできます。意図がどうであれ、公文書改ざんの行為そのものが違法行為です。そもそも起訴の目的が、財務省の組織ぐるみの「国民と国に対する」背任行為の立証なのだから、背任の意図があったことが物的証拠で立証された以上、起訴しなければ検察の職場放棄です)
キャスター 「注目された特捜部の捜査で、国民は一連の問題の真相が明らかになることを期待していたと思いますが、今回、すべて不起訴になりました。その点はどうなんでしょうか?」
相澤 「きょうの会見で私は特捜部長に、『すべて不起訴で終わったことを特捜部長としてどう考えていますか』と質問しました。特捜部長は「必要かつ充分な捜査を遂げた結果、真相を解明し、それが犯罪になるかどうかを判断して不起訴にした』と答えました。
『真相を解明したと言うが、その真相は明らかにできるのか?』と尋ねたところ、「関係者の名誉やプライバシー、捜査の内容に関わるため、それは明らかにできない」という答えでした」
ここからがアドリブだ。
「多数の証拠を集め、膨大な国費が費やされました。しかし全員不起訴では、集められた証拠は一切日の目を見ません。起訴すれば法廷で明らかにされるのです。
国有地の値引きの根拠の説明もなかったこと、決裁文書の改ざんが300か所以上と膨大なこと、佐川氏が『交渉記録は廃棄した』と、うその答弁をしていたことからして、国民から納得が得られるかは大いに疑問です。一連の問題を告発したグループは、検察の不起訴の判断が妥当かどうかを審査する検察審査会に、近く申し立てを行う方針です」
私のNHK記者としての仕事はすべて終わった。
こうして会話は終わった。すべてを不起訴にして山本部長は栄転するのだろう。事実、3週間後、同期のトップを切って(3人同時だが)函館の検事正になった。
だが山本特捜部長が最初から不起訴ありきで捜査を指揮していたとは思わない。東京からやいのやいの言われてもギリギリまで捜査を続けていたこと自体が、そのことを物語ると思う。ギリギリになって一転、全員不起訴が決まったのは、何か大きな力が働いたのではないか? そんな気配を感じさせるものがある。
(編者注:こんな終わり方で読者が満足すると思っているとしたら大間違いです。これでは検察と官邸批判の体を成していません)
・NHK元記者、森友報道で上層部が介入。
https://www.asahi.com/articles/ASLDM5F85LDMUCLV00T.html?iref=comtop_8_02
関連記事。NHKが「安倍官邸vs NHK」にクレーム。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181219-35130347-cnn-int
コメント:具体的な反論はない上に、誰がどういう発言をしているかも明らかにしていない。相変わらずの上から目線。小池局長はどこまで視聴者から隠れおおせるつもりなのか。先に紹介したように、告発本としては体を成していませんが、初めてNHKの前記者が書いた、既成の権力に歯向かったという「事実」は、決して小さいものではありません。文科省の前川、NHKの相澤です。物申すことに意味があるのです。
・内部告発の握り潰しに加担する法改正。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6307271
1378.「世界」の世界 18/12/20-23
今日は雑誌「世界」から2つ、興味ある記事を要約でご紹介します。
正直、岩波の「世界」は、最近まで敷居の高い雑誌でした。文春の方がゴシップ色は強いものの、とりつきやすい印象でした。それでも門前の小僧が習わぬ経を詠んでいるうちに、少しずつですが、政治経済国際関係の用語の意味くらいはなんとなく分かるようになりました。という事で、背伸びを続けている内に、正統派の雑誌にもやっと手が届くようになったという次第です。
私は安倍政権の閣僚も、この雑誌の内容は十分に理解できなくても、手に取るくらいの知的好奇心は持てないものかと思います。自民赤坂邸で首相にゴマをするだけが能ではないでしょう。そうなれば、高学歴のくせに間抜けな答えをして、枝野(首相になりたい発言と、以前から主張している草の根のボトムアップがどこで結びつくのか)や、一般市民に馬鹿にされることも少なくなるでしょう。しかも、敢えて歯に衣を着せずに言えば、有権者についても同じことが言えるのです。国民の知識と理解力、そして広い意味での教養だけが、独裁政治とナショナリズム、そしてその延長上にある全体主義を、草の根レベルから阻止できるのです。
今日の最初の紹介は、「世界」1月号の冒頭の記事です。私は韓国の徴用工の判決が日本政府と日本企業にとって不都合なものであるばかりでなく、一国民としても納得のいかない印象が強かったのですが、一方で「被害者」の状況と言い分は、良く理解できていなかったことも事実です。弁護士の山本晴太が、この問題を俯瞰しており、日本政府の主張には欠陥と矛盾があり、しかもその論理矛盾の被害者は、韓国の徴用工に留まらず、日本の国民(私の両親は引揚者=大陸に資産を残してきた)でもあることが分かったのです。
「日本側の異常な韓国非灘」
2018年10月30日の韓国大法院(最高裁)判決は、新日鉄住金の上告を棄却して元徴用工への損害賠償を命ずる判決を確定させた。
原告らのうち二人は未成年のときに甘言に乗せられて応募して大阪で現地徴用され、日本製鉄大阪工場で生死にかかわる危険な重労働に従事させられ、賃金も支払われなかったという。その他の原告も逃亡を企てて殴打されるなど、過酷な労働と虐待を経験した人々である。被害から70余年、日本の裁判所に提訴して以来20年余、八回目の判決でようやく勝訴を確定させたのである。
たった一人生きて大法院判決を聴くことができた94歳の原告李春植さんは、判決当日にソウルで記者会見を行なった。しかし、それを日本で報じたのは通信社の配信を受けたいくつかの地方紙だけであり、日本の政治家やマスコミから原告らの長年の苦難に対する慰労の言葉や植民地支配と苛烈な人権侵害に対する反省の言葉が聞かれることはなかった。
それどころか、判決に対し安倍首相は「国際法上ありえない判断」、河野外相は「両国関係の法的基盤を根本から覆す暴挙」などと非難し、大部分のマスコミや「識者」もこれに追随して韓国非難の大合唱を行なった。これを聞いた多くの人々は、日韓請求権協定締結以来、50余年に及ぶ両国の固い約束を韓国が一方的に反故にしたと思って憤慨している。
しかし、政府もマスコミも日韓請求権協定に関する最も重要な事実について沈黙している。実は日韓請求権協定の締結以来「請求権協定では個人の請求権は消減しない」と力説してきたのは日本政府であり、2000年前後に被害者を裏切るような解釈の転換を行なったのも日本政府なのである。
「個人請求権を認めてきた日本政府」
日韓請求権協定に先行する1951年のサンフランシスコ平和条約や1956年の日ソ共同宣言にも「その国民のすべての請求権を放棄し……」という条項があった。これについて、広島の原爆被爆者やシベリア抑留被害者が日本国に対して補償請求の訴訟を起こした。被燥者やシベリア抑留被害者のアメリカ合衆国やソ連に対する損害賠償請求権を日本政府が条約で消滅させたので、日本国は被害者に対して米国からの賠償に代わる補償をすべきであるというのである。
これに対し日本政府は、「条約によって放棄したのは個人の賠償請求権を基礎として外国と交渉する国家の権利(外交保護権)のみであ」り、「国民自身の請求権はこれによって消滅しない」から日本国は被害者に補償する責任はないと主張した(東京地裁1963年3月7日判決参照)。
1965年の日韓請求権協定は両国と国民の財産、権利、利益及び請求権の問題が「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定している.が、日本政府は締結当時からこれも個人の権利を消滅させるものではなく外交保護権の放棄を意味すると解釈していた。
そうでなければ朝鮮半昂に資産を残してきた日本人から日本政府が補償を求められる可能性があったからである(『時の法令』別冊1966年3月10日号)。
…また、日本政府は国際司法裁判所への提訴を検討するとも発言している。しかし、両当事国の合意がなければ国際司法裁判所が受理することはない。…日本も韓国も世界人権宣言と国際人権規約(自由権規約)によって裁判を受ける権利を保障する義務を負っている。人権保障のためにはまず関係国における裁判を受ける権利をできるかぎり保障し、それでも救済が及ばない場合に人権条約機関や国際裁判所で救済していこうというのが国際人権法の考え方である。
…日本のメディアがほとんど報道しなかった一人の生存被害者の後ろに、恨みをのんで死んでいった数千人の被害者が、さらにその後ろには故郷に帰ることもできなかった数多くの被害者がいることを.忘れてはならない。そして企業は国家政策にしたがって徴用工を使用したのである…
関連記事。中国人女工哀史。
https://diamond.jp/articles/-/189063
関連記事。 元徴用工ら、自国政府を提訴。
https://this.kiji.is/448338476401673313?c=39546741839462401
コメント:日本の援助金は徴用工の手には渡らず、韓国政府がインフラに使ったと言われています。
二番目の記事は、トランプがパニックを起こしているという内容で、最近、最も胸がすく思いがした記事です。著者はジャーナリストの北丸雄二です。
「狂騒のトランプ」
中間選挙から二週間ほど経った時点でも、トランプはずっと憤懣を爆発させている。選挙翌日の記者会見で(また)ロシア疑惑の質問をしてきたCNNホワイトハウス担当キャップのジム・アコスタから記者証を取り上げ、その週末に第一次世界大戦の終結百年式典に向かうエアフォース・ワンの中では上院選勝利を祝って電話をかけてきたメイ英首相に対してイラン対抗策などで突然怒鳴り始め、到着したフランスでは昨今の国粋主義再台頭を批判したマクロン仏大統領の演説を自分への当てこすりと勘繰って悪態をつき、2月10日には雨を理由にパリ郊外の米軍戦死者墓地への訪問を取り止めてチャーチルの孫の英保守党下院議員から、あの(編者注:that)惨めったらしい不適格者のトランプと「あの」呼ばわりのツイッタ一名で非難され、それでも在パリ米大使館公邸スイートでテレビを見続けては未だ決しない州や選挙区での票の行方に「選挙泥棒!」「民主党の不正!」と罵倒ツイートを連発し、帰国した途端に墓地訪問キャンセルがおおごとになっていると知るや早速「補佐官が大問題になると教えてくれなかった」と泣き言を言い、しかもその翌日にずらした「復員軍人の日」恒例の大統領によるアーリントン無名戦士の墓参拝も(やはり雨が降っていて)パスし、そして17日には、山火事被災で視察したばかりのカリフォルニアの町の名「パラダイス」を二度も「プレジャー(喜び)」と間違えた…。
私は中間選挙取材を終えて米国から日本に戻り、「トランプは勝った」「トランプの事実上の勝利」「反トランプのうねりは起きなかった」等々の論調に接した。その日本の論者や識者たちはトランプのこれらパニック症例をどう説明するのだろう。まあすでに「痙攣発作的」と形容句の定まったトランプの連射ツイートの滅裂さには驚きもないのだが。
トランプは、その「苦渋と憤懣の繭」の中で何をしていたのか、NYタイムズが11月15日付けで詳報している。要は「私設弁護士たちと私的ミーティングを重ね、モラー特別検察官から出された(ロシア疑惑などに関する最終的な)質問書への回答を準備していた」以外には、心ここに在らずだったのである。
…ニューヨーク市は二年前の大統領選挙で85%がヒラリー・クリントン(つまりは反トランプ)に投票した。「二年間ずっとこの選挙を待っていたんだ」とすでに投票所に20分並んだAV技師の男性は言う。すると前後の老婦人たちも大きくうなずいて会話に入ってくる。「とにかくトランプは(彼を生んだ)ニューヨークの恥なの。私たちがその片をつけなきゃならないの」。彼女たちが「若い頃からのトランプの傍若無人ぶり」「詐欺師まがいのビジネス醜聞」「とんでもない女性遍歴」を教えてくれようとする。その種の話はニューヨーカーには共有されている。「どうして他の州の人たちにはそれがわからないのかしら」と一人が憤慨する。「テレビのせいね」ともう一人が応える。
…下院を民主党が押さえたことはこの二年間のトランプ政治の流れを、180度転換させる契機となる。冒頭で紹介したトランプの混乱の根源はここにある。
…つまり大統領の"疑惑"に対する強制調査権が下院・民主党に与えられることになる。その第一はもちろんロシア疑惑、さらには脱税やマネーロンダリング、利益相反、司法妨害、女性醜聞などの倫理問題、等々。
…マキシン・ウォーターズ議員はトランプ周辺のマネーロンダリングが噂される「ドイツ銀行」経由のカネの流れを徹底解明したいと意気込んでいる。もちろんトランプがこの二年間ずっと拒んできた納税申告書の議会提出も、彼女が歳入庁に命じればわずか数十分で出てくるはずだ。
いずれにしても下院が民主党に取られたことで、メキシコ国境の壁建設の可能性が消滅、オバマケア撤廃の可能性もゼロ、これ以上の富裕層向け減税もなし、下院共和党が行なってきた情報委員会、司法委員会によるロシア疑惑捜査への圧力も消える、ことになるどころか、数々のトランプ"疑惑"の真相がモラー特別検察官の捜査と下院各委員会での調査の両面から明るみに出て、下院が大統領弾劾を発議する展開も可能になる。
…すべてが「中間選挙」原理主義で突っ走ってきたが、ここに来て対中国、対北朝鮮政策も宙ぶらりん状態。内政にしてもケリー首席補佐官やマティス国防長官のクピに向けてうごめくだけで前に進みそうもない。そこをツイートだけがけたたましく行ったり来たりしている。
関連記事。トランプ財団、解散へ。違法行為横行。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181219-00000000-jij_afp-int
関連記事。ウォール街の景況感はトランプ下で最悪。来年は景気後退か。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/post-11440.php
関連記事。米国内で、トランプ政権に興ざめ。寺島実郎。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20181219-OYT1T50116.html?from=ytop_main2
今日の前書きも「世界」からで、今回はメルケル(と緑の党)と田原総一朗の記事です。
「メルケル首相の引退宣言と緑の党の躍進」 在ベルリンジャーナリスト 梶村太一郎
2017年9月のドイツ総選挙で連立与党が大幅に後退し、一方で極右政党が連邦議会に進出した結果、新政権が連立交渉で混乱を極めた。総選挙から1年あまりの2018年10月29日、メルケル首相は、前日行われたヘッセン州議会選挙でのキリスト教民主同盟の惨敗結果を受けて党本部で記者会見し、驚くべき決断を表明した。来る12月の定期党大会では党首への立候補はしない。また首相は次期総選挙までは続けるが、そこで政界から完全に引退すると宣言したのである。この決断が驚かれたのは、戦後ドイツの七人の首相のうち、自主的に首相の地位を譲る決断を表明した者は、保革を問わず誰一人としていないからだ。アデナウワー、ブラント、シュミット、コール、シュレダーなど、この国の政治史に多くの実績を残した首相たちは最後まで政権にしがみつき、総選挙での敗北、スキャンダル、ないしは議会での不信任決議によって引退を余儀なくされている。メルケルは彼ら男性政治家を尻目に、初めて女性首相として後進に地位を譲る意思表示をしたのである。これにより彼女が、100万人を超える難民を断固として受け入れて社会統合させた女性宰相として政治史に残ることだけは間違いない。この首相引退宣言は、潔く立派で敬意に値するとの評価が多く、低迷していた彼女の支持率は一挙に上昇しているが、それも遅きに失したと言えよう。
しかしこのような冷戦後最大の政治危機の渦中で、注目すべきことが起こっている。緑の党が躍進し、次回の総選挙では同党の連邦政権参加が実現性を持ってきたことである。大連立の政府与党であるキリスト教民主・社会同盟と社会民主党がともに大きく後退して、いずれも史上最低となり、およそその減少分の合計が緑の党の支持率の増加となっている。他の政党の支持率には大きな変化が見られず、極右政党もほぼ頭打ちになっている。
この緑の党のいわば一人勝ちはなぜ起きているのだろうか。それは、ここに来てドイツの緑の党が、欧州の啓蒙主義伝統の若く新しい申し子としての地位を獲得しつつあるからであ る。その質を示す一例として哲学博士で作家でもあるハベック新党首は「政治は言葉である。言葉は政治である」と定義し、世界に広がる極右ポピュリストの言葉を、それに対抗する左派の言葉も含めて厳しく批判し「民主主義には開かれて多様で対話が可能な言葉が必要だ」と訴えている。
10月13日の「分裂させないデモ」には、予想されていた4万人を遥かに超えて、なんと24万人の市民が中心街の大通りを埋めた。大勢の移民も難民もドイツ人も家族連れで行進した。文字どおり「開かれて多様で対話が可能な市民の連帯の姿」が展開されたのである。その明るい光景に、幾多の歴史的大デモを知っている私も瞠目した。緑の党を耀進させている市民の連帯の言葉が飛び交っていたからだ。
(編者注:日本でも、もう一度オリーブの木を検討することは出来ないものでしょうか。リベラルな市民にとって、排除の論理の立憲民主しか選択肢がないというのは、公正=フェアではないと思います)
「我が総括、体験的戦後メディア史」第一回 田原総一朗
冷戦が終わることで世界情勢が大きく変わり、たとえば、それまでは議論の基軸であった資本主義か社会・共産主義かという対立がなくなり、新しい議論の基軸が必要になると、当時の私にも思われた。これまでは日本の政治の世界においても、保守と革新が対立していたのだが、ソ連崩壊によって、革新勢力の理念は刷新を迫られるであろう。新しい基軸さがしはいったいどのように展開されるのか。そのような思いでテレビ朝日の幹部たちと相談し、深夜の長時間討論蕃組「朝まで生テレビ!」を企画したのである。番組は1987年4月にスタートした。
乎成の時代は、「神が与えた休暇」どころではない展開となった。米ソの管理体制が弱まったためか、世界の各地で紛争と戦乱が起こり、社会主義に「勝った」形になったアメリカは傲慢な姿勢を強め、明らかに誤れる戦争を次々に引き起こし、中東をはじめとする世界各地を混乱に陥らせた。大失敗である。そのことは少なからぬアメリカ国民が認めて反省せざるを得なかった。そして、史上初の黒人大統領、オパマが登場したのである。
一方のロシアも、プーチン大統領はかつてのペレストロイカとは正反対といえる姿勢を強め、国民の言論・表現に対する弾圧を強化し、クリミア半島を強引にロシアの手中に収めて、世界中から強い顰蹙を買っている。
アメリカでは、露骨な自国第一主義をぶち上げ、意見の異なる人間をことごとく敵視し、民主主義や言論の自由を訴えるニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNなどのメディアを"敵"ときめつけ、パリ協定やINFといった国際協力の枠組みからの離脱を宣言する人物が大統領として君臨している。ドナルド・トランプだ。いかにも民主主義とは肌合いの悪い人物だが、アメリカで一定の支持を保ちつづけている。
アメリカだけではない。世界各国で、トランプのような反民主主義的な人物が、次々に権力の座についている。
日本政治もこうした流れの外にあるわけではない。安倍政権は、集団的自衛権の行使容認、秘密保護法、共謀罪などで野党やリベラル派の強い批判を浴び、森友・加計疑惑では国民の70%以上から問題あり、納得できない、と疑いを持たれながら、しかし、その任期は、戦前・戦後を問わず日本の歴代の首相の誰よりも長くなる可能性がある。
そして、いま安倍政権は、池田勇人以降の歴代首相がタブーのようにして封じてきた改憲を強く打ち出している。
そこで、平成が終わるこの時に、日本の戦後政治を、私自身の反省をこめ、時間をかけて、総括したいと考えている。
(編者注:この文は田原の総括の初回の、しかもごく一部だけです。WTWでは、今後も同氏の連載を注意深くウォッチし、参考になる部分があれば随時、紹介してゆきたいと思っています)
今日も雑誌「世界」からの紹介です。まず明治150年という、精彩のない、安倍首相の個人的なイベント、及び入管法について、神保太郎がストレートにパンチを繰り出しています。
「メディア批評」神保太郎
「明治150年、国権と人権の分かれ道で」
安倍首相は、党規約を変えてまで首相三選を果たした。一度ならず「立法府の長」と失言するも、憲法改正を語ってめげない。明治150年の祝典を催し(2018年10月23日)、自分の先祖が明治天皇をかついで近代日本を築いたことを宣揚した。しかし、そこに天皇の姿はなかった。宮内庁は「政府からお声がけがなかったから」と受け流し、首相は「約200年ぷりに天皇陛下がご退位され」と、明治の相対化が行われたことを牽制。誰もが両者の不協和を感じた。
2016年夏、天皇は生前退位の意向を、テレビを通して直接国民に語りかけた。その趣旨は、戦地や被災地を訪問する「公的行為」が健康上の理由で困難になったからというもので、さまざまな議論を呼んだ。リベラル派は、天皇が首相の右傾化を諌めたのだと言い、右派陣営は、天皇の左瀕化、反日化を憂いている。
(編者注:天皇が直接国民に語りかけた「責任」を問われ、当時の宮内庁長官は、官邸の意向=安倍首相の意向、で、後に秋篠宮から聞く耳持たないと批判された無能な新長官に交代させらました。人権の無い=無論神権もない、日本の皇室です)
「入管難民法改正案の落とし穴」
折から、法務省は「入管難民法改正案」を国会に提出した。審議過程から見えてくるのは、人口減の日本社会を多様性に向け開いていこうというより、当面の労働力(人材)不足を補いたい経済界の思惑と、国内労働者の雇用条件を守りたい労働側の要請とのせめぎあいである。この社会が「外国人」の人権をどう考えるかという点は後回しである。
メディアも、この問題の底流や背景を取材していない。その悪しき事例は、前回もふれたフジテレビの『密着24時タイキョの瞬間』である。入管と一体となって「不法滞在者の摘発」に狂奔する姿は醜悪でさえある。そのため、職場から逃げだした技能実習生にも気づかなかった。最近、技能実習生が福島第一原発の周辺で除染作業や下水の配管工をしていたことが明るみに出た。東京電力は元請け、下請けの申告に任せているとして、実態把握を怠っている。その記者会見場はほぽ空席であった。
11月16日、法務省が用意した技能実習生の失綜に関する調査結果に「誤り」があったことが判明した。山下法相は、参院予算委(7日)で、「より高い貢金を求めた失綜が86.9%」と答弁していた。つまり自己責任。しかし、実際には「低賃金を理由とした失綜が約67%」であった。そもそも謂査用紙に、「より高い賃金を求めて」というチェックボックスがなかったことも分かった。法案のために、技能実習生の劣悪な就労実態を薄めようとした疑いは拭えない。
さて次は五輪です。WTWは最初から東京五輪には反対の立場で、出自が良くない。石原慎太郎が誘致活動に100億円を湯水のように使いました。しかもその大半が電通に支払われたのです。過労死で問題になったブラック企業です。都民の税金を浪費したことから、既に相当にきな臭かったのに加えて、怪しげな中東のデザイナー(その後隈研吾に交代)による新国立競技場の設計、小池知事の豹変、森元首相の暴走など、スキャンダルを数えればキリがありません。酷暑の時期に開催するという問題もあり、日本国民にとって何より迷惑なのは、膨大な赤字が出る事です。このどこがコンパクト五輪なのでしょうか。五輪関係者の中にはクーベルタンの名前さえ知らない者がいるのではないかと思わせます。そんな時に、雑誌世界に(珍しく)東京五輪を批判した記事がありましたので、要点を紹介します。
「大衆動員の社会実験としての東京五輪」
「翼賛報道と無償ボランティア」本間龍 著述家
東京五輸が厄災を撤き散らしながら近づいている。
招致決定時はコンパクト五輪、復興五輪などともてはやされたが、その後いくつもの問題が勃発し、今や当初の熱気は完全に雲散霧消した感がある。それでも、国やJOCは批判に背を向け、さらにはその究極の狙いをひた隠しにしながら、開催に向け遮二無二突進しようとしている。その姿はまるで、敗戦を知りながら国民を塗炭の苦しみに引きずり込んでいった、かつての軍部のようである。
本稿では、そうした愚行の中で最も醜悪な「ボランティア無償労働」問題を中心に、東京五輪の隠された狙いと構造を解説したい。
「ボランティア原則を無視する東京五輸」
2018年7月26日、スポーツ庁と文部科学省は東京五輪・パラリンピック期間中にボランティアに参加しやすいよう、全国の大学と高等専門学校に七月の授業や試験期間繰り上げなどの対応を求める通知を出した。通知は学生がボランティアをすることの意義を説き、大会に参加するよう大学が促すことを要請している。スポーツ庁や文科省まで駆り出しての通知を出したのだ。
またこれとほぼ同時に、社会人のボランティア休暇制度導入を経済界に働きかけたり、さらには国民生活への悪影響を無視してサマータイム導入を政府自民党に要請するなど、「五輪のためなら何をしてもいい」という傍若無人な振る舞いを展開した。
だがこれはさすがにやりすぎで、それまで五輪に無関心だった層からも反発を受けるなど、結局のところ五輪のさらなるイメージダウンにつながった。そうした中で、9月26日からボランティアの募集が開始されたのである。
そもそもボランティアには無償という意味はない。わが国では「ボランティア」イコール「無償」という誤った認識があるが、そもそもボランティアのもともとの意味は「志願する・志願兵・自主的な参加」などであって、無償という意味はない。我が国の「青年海外協力隊」などは有償ボランティアの代表的な形である。
それにもかかわらず「ボランティアはタダ」という認識が国民の問に根強いのは、特に阪神淡路大震災以降、全国の行政機関がボランティアを無報酬の労働力として積極的に活用してきたことに起因する。予算不足の行政の手助けだから無償もやむなしという善意に便乗し、本来であれば無償でやらせるべきではないレベルの仕事でさえ、「ボランティアなら何をやらせても無償奉仕」という固定観念を国民に植えつけてきたのだから、行政の責任は極めて重い。
まずはっきりさせなければならないのは、現在の五輪は非営利の対極にある、巨大商業イベントだということだ。これは東京大会だけではなく、1984年のロサンゼルス大会以降、五輪は完全に商業化してスポンサー企業からの協賛金と巨額のテレビ放映権で運営されるようになった。
人気競技に出場する選手の多くはプロであり、彼らは五輪以外の国内、国際大会でも稼いで名をあげている。そうした有名選手を集めて競技させるのは「興行」であり、利益を追求するための商業イベントなのだから、その運営のためには給与を支払うアルバイトを雇うべきであり、雇用関係を結ぶのが当然である。つまりこれは、非営利性とはどうみても対極にあるものだ。
肝心の公益性についても疑問符がつく。前回の東京五輪の際は、商業主義はまだ見られず、国立競技場や代々木体育館などの建設に加えて新幹線や首都高速道路などの社会的インフラが整備され、それらはその後の国民生活に大きな恩恵をもたらした。名実ともに戦後の混乱からの復興を世界にアピールし、その後の高度経済成長の起爆剤となったのだから、開催には公益性があったと言えるだろう。
しかし今度の東京五輪で新設されるのは新国立競技場やいくつかの体育館程度で、さらにそれらの施設の殆どは、五輪後赤字経営に陥ると予想ざれている。つまりは一部のスポンサーと建設業界、JOCだけが収益をあげるためのイベントなのだから、ほとんどの国民にはさしたる恩恵もない。したがって、公益性という点でも極めて怪しい。
以上の点から、東京五輪のボランティアは、その根本原則から完全に逸脱しているのは明白である。
実は1964の東京五輪でも、当時の文部省が国立大学の学長や高校長、高専校長に宛てた文書を出していたのが、こちらは「オリンピック東京大会開催の-全期間を休業日とするなど大幅な授業変更を加えて学校教育に支障をきたすことがないようにすること」というもので、今回の通知とはまったく真逆の内容だった。半世紀の間、いかに文部行政が劣化したかの証左であろう。
しかも、灼熱の暑さの下で一日八時間も働かされれば、熱中症で倒れる者が続出することは容易に想像できる。そうなれば、学生を送り出した大学当局の責任が厳しく追及される
だが大手メディアはそうした粗織委の姿勢や、ボランティア問題の重要性を報道もしなければ批判もしない。それもそのはずで、朝日・侮日・読売・日経・産経の全国紙全紙が揃って東京五輪のスポンサーに収まっているのだ。つまりは組織委の「身内」になってしまっているわけで、これでは真に批判的な報道などできるはずもない。
言うまでもないが、七、八月の東京は、命に関わるような酷暑の時期である。余りの暑さに「この酷暑での五輪開催は無理ではないか」との懸念が高まり、ついに11月下旬、暑さの影響が推も懸念されるマラソンのスタート時間を早朝五時〜五時半に前倒しにすることを検討すると発表された。
組織委は、これまで酷暑に対して具体的にどのような備えをするのかという発表は一切してこなかった。僅かに小池知事が、首に濡れタオルを巻けとか打ち水すればなどと小手先の発言で失笑を買った程度だったが、それは、どのような手段をもってしても、東京の酷暑をなくすことはできないからだ。
そのことを組識委側も十分に分かっており、何を発表してもどうせ叩かれるだけなので、とにかく酷暑開催批判はスルーし続けるのが適切と判断したに違いない。具体的対策はぎりぎりになってから発表され、「足りなくてもこれで頑張るしかない」という報道になるだろう。
それらの広告宣伝領域も全て電通の一社独占事業だから、それらのイベントにボランティア参加するということは、電通という私企業に、自らの時間と労力を貢ぐということに他ならない。
前述したが、彼らが「ボランティア」という呼称にこだわるのは、ボランティアであれば事故や熱中症で死亡しても全て自己責任で片づけることができ、責任を負う必要がないからだ。自らの責任は限りなくゼロにしながら、東京五輪だけでなくその先のあらゆるイベントまで"タダボラ"を集めて、儲けまくりたいというのが、彼らの真の狙いなのだ。そしてこれから先、より一層の無償労働力が欲しい政府も、これを全力で後押しする。国、JOC、そして電通という体制側の利害が一致し、そこにメディアをも取り込んで国民を扇動しょうとする。これこそが五輪を最大限に活用する、究極の大衆動員実験の姿である。
(編者注:今までに聞いた、或いは聞かされた意見の中で、最も国民の常識に近いものだと思います)
今日は雑誌世界1月号の最終回です。
「報道の未来は、弱さを見せる強さにかかっている」対談、林香里×永田浩三
2019年は、改元があり、オリンピックを間近に控え、改憲の国民投票の可能性もあるので、メディア、特に大きい影響を持つテレビ報道がその役割を果たしうるか、問題は山積しています。
林:最近では韓国の徴用工訴訟の問題がそうですが、政治的な問題についてNHKの腰が引けているというのはよく言われていますし、私もそう感じます。
永田:硬直したところに、権力が強く入り込んできていて、現場を振り回しています。もう一つ、不自然に放送のリソースが割かれているのが、「安倍総理が何をしたか」です。この間の北海道胆振東部地震の時には、死者数まで「安倍総理「死者何名」」と、時の総理の名前を冠したスーパーを出しましたよね。また総裁選の出馬表明を大河ドラマの「西郷どん」の桜烏をパックに生中継した。まったく前代未聞ですよ。付度しすぎです。
林:何でそんなことになっちゃうんですか。
永田:明らかに官邸の惰報コントロールの掌の上にいるということだと思います。森友学園や加計学園にしても官邸の意向をあまりにも汲みすぎている気がします。
林:予算が国会に握られているからですかね。
永田:2001年のETV番組改変事件の時には、その影響が明らかにあったと思います。でもここまで酷くなったのは明らかに第二次安倍政権以後です。NHKのトップの一部が官邸の意を受けて、現場を過剰にコントロールしている。
報道局長が直に指示を出すという異例のことが常態化している。森友学園についてのスクープを連打していた大阪放送局の記者に対しても、その記者によれば、東京の報道局長から大阪の報道部長に「あれは一体何だ」と。「これで当該の記者の将来はないと思え」という露骨な恫喝が行われたといいます。記者はその後異動を命じられ退職しました。NHKは人事についてコメントを避けていますが、私は記者の言うことの方が正確だと思います。
林:政権からの介入に対して誰も抵抗しないのですか?
たとえば韓国の公共放送のように。アメリカのニユーヨーク・タイムズも、スタンドプレーかもしれないけれども、アンチ・トランプの立場で闘い続けていますよね。
永田:異常なことだと受け止めている人間は多いと聞いています。ただ、こんな愚かなことはいずれ上が変わったら終わるんだからしばらく静観しようという、機を見るに敏な賢いい人がNHKには多いので、この悲惨な状況が続くのだと思います。
ワーディングひとつとっても凄いんです。入管法改正の話なのに、「外国人材拡大法案」という官邸のフレームをそのまま踏襲する。日テレだってそこまで酷くない。
でもね、考え.てみて欲しいんですが、NHK政治部は、岩田明子記者を典型に、官邸に深く食い込んでいるわけですよ。日ロ交渉にしても、官邸がTAGと言い張るFTA交渉にしても、実態を見て分かっているはずです。だからこれは誤報じゃなくて、「虚報」と言わざるを得ない。百も承知の上で、官邸の都合のよい方向に誘導しているわけですから。
(編者注:公共放送がフェイク・ニュースの垂れ流し状態。洒落にもなりません)
永田:NHK.について言えば、そもそも国策を伝えるメディアとして始まり、戦時下では戦争の旗振りをしたわけです。その後占領下にあっても、占領政策に抗うことはできない時代が続きました。戦後ようやく報道記者というのが出てきて、自立を模素していくわけです。取材力もすごく弱いところからスタートしている。
ややきつい言い方になりますが、NHKは自立を夢見ながらもそれが果たせないまま、今日に至っているというのだと思うんですよ。ニュースを発する覚悟をもって、権力に向き合いながら放送してきた、というような成果が、ロッキード報道などいくつかの例外を除けば、NHKには多くありません。英国のBBCや韓国の公営放送と比べてもそう思います。
林:そうはいっても、NHKは日本の報道機関の王様として君臨しています。それでNHKは、絶対に間違っちゃいけないという執念から完全無欠という隘路に入っていく。これがいろんな意味での閉鎖性を招き、識論の余地をなくす背景をつくっているように見えます。その拳句、自分たちの権威を守るためにより強い権力にすがりついてしまう。
永田:放送法第一条三項に、「放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」とあります。健全な民主主義のために放送があるということは、多様な議論を提供するとことです。政権の進めようとする政策の旗振りをするというのとは全く違います。しかし今のNHKの政治ニュースは、NHKを国営放送だと誤解している視聴者や、公共放送はコントロールできると考えている不埒な政治家の方しか見ていないわけです。
永田:わたしたちが生きていくための知的な基盤を提供するのが公共放送だとすれば、恥ずかしがったり自分を卑下したりしないで、冒険を党悟で自分をさらけだし、さざなみを起こしてみることが大事だと思います。
「独立した公共放送は可能か」岡本有佳
韓国では、李明博政権から朴槿恵政権の約九年間にわたり、メディアとジャーナリズムへの圧迫が続いた。その主な標的は、公共放送KBS(韓国放送)と準公営のMBC(文化放送)。日本のNHKにあたるようなこの二つの放送局に対して、たえまなく権力からの圧迫が加えられた。権力からの独立を多少なりとも指向する経営陣はその座を追われ、抗う社内の記者たちは次々に解雇されていった。
韓国における公共放送のジャーナリズムを壊滅状態に追いやったのは、権力側の圧力だけではない。社内から呼応した「共犯者たち」の存在が決定的であったことを、元MBCのプロデューサーであり、解雇された当事者であるチェ・スンホ(崔承浩)氏によるドキュメンタリー映画『共犯省たち』は報告している。
(編者注:さしずめ小池報道局長のような人でしょう)
1379.ヘリで行く蕎麦屋 18/12/22
・ヘリで行ける蕎麦屋、本当にあった。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/post-11441.php
コメント:あるよ。ウチの山小屋にも近い。無論車も停められる。千曲川越しに浅間山が良く見える。メニューは少ないが本格的なそばを出すので良く行く。営業時間短いので注意。写真手前に写っているのは通りすがりらしい近所の変なオヤジで、無論ヘリのオーナーではない。
1380.天皇誕生日 18/12/24
岡本行夫は右派、または保守派なので、私は苦手ですが(但しルックスとファッションは中高年の手本)、昨日のサンデーモーニング(TBS)の、象徴天皇に関する見解では、珍しく共感を覚えました。
「…国体護持を要求して、軍部が回答を引き延ばしているうちに、ヒロシマが起き、ナガサキが起きた。そして戦後は一億総ざんげという事で、軍部だけではなくて、国民も皆、悪いんだという風に、軍部と政府がすり込みを行っていて、結局我々は自分自身で戦争犯罪者を裁くこともなく、衆議院も参議院も、戦犯赦免決議というものまで出した。その中で天皇はご自分で背負ってきた日本の業というものを忘れてはいけないという事で、ああしてお独りで続けておられることに頭が下がります」。
関連記事。一般参賀、過去最多。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181223/k10011757811000.html
関連記事。沖縄の苦難忘れず。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39318590T21C18A2000000/
天皇誕生日の記者会見の全体を視聴願います。右傾化と歴史修正主義、戦前回帰が留まるところを知らない安倍政治の下で、最後まで国民の心情と民意に寄り添ってこられた陛下の思いが伝わってきます。そのお気持ちが理解できない者(安倍晋三、麻生太郎などの逆臣)は日本人どころか、人間でさえないのです。
https://www.youtube.com/watch?v=sbruHFATMDw
・天皇陛下、国民に感謝。映像。
https://www.asahi.com/articles/ASLD54D0JLD5UTIL01Q.html?iref=comtop_8_01
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