「オンライン・オピニオン」
2756.AIと民主主義 4.26
今回の前書きは朝日新聞(425)インタビュー歴史家ユヴァル・ノア・ハラリです。以下のサイトに抄訳がありますが、重要な内容はその後にあるので、部分的にかいつまんで紹介します。
『AIは民主主義の脅威? 大量の偽の人間が対話に入り込み合意形成に影響』から
(前略=前半は以下のサイト参照)
https://www.asahi.com/articles/AST4S1CLMT4SUCVL017M.html?iref=pc_opinion_top
「ーつが帝国主義です。農耕社会は自国で必要なものを育てるだけなので小規模で済みます。しかし産業は、製造するための原材料が必要で市場が必要です。だから、それらを提供してくれる大帝国を持つ必要があると考えられ、帝国主義の波につながりました。帝国がなくても豊かな産業社会を築くことができると気づくまでには何十年もかかりました。同じような過ちとして、産業社会を築くためには全体主義体制が必要と考えたことがあげられます。産業社会においても自由民主主義を築くことができると理解するのに長い時間がかかりました。これらは新技術に適応することの難しさを示しています」 (中略)
「人類の力は、個々の知性からではなく、大規模な協力によって生まれます。月へ行くにしてもワクチンを開発するにしても協力に依存しています。この協力のためには情報が重要です。民主主義を可能にしたのも新しい情報技術です」
ーどういうことですか。
「民主主義とは対話による合意形成です。しかし何百万の人が何千キロにわたって広がっている状態では対話は難しい。だから大規模な民主主義はなかなか生まれませんでした」
「しかし、新しい情報技術が生まれ、新聞を皮切りに、その後ラジオやテレビ、そしてインターネットが登場します。それにより、広い範囲で人々が対話することが可能になった。外交政策や経済政策を議論できるようになった。これで多くの人や組織が意思決定に関与できるようになったのです。しかし近年、この人間同士の対話にAIなどのエージェントが大量に入り込み影響を与えている。『偽の人間』によって民主主義の土台が崩されています」
ー権威主義体制では、そもそも対話は必要ないですね。
「民主主義の土台が対話だとすれば、独裁は命令です。権威主義体制では、すべての情報が1カ所に集中し、そこで意思決定が下され、指示として送り返されます。非常に単純です。だから歴史上ほとんどの大規模な社会は権威主義で運営されてきました」
「この情報の流れのほかにも民主主義と権威主義の間の重要な達いがあります」
ーなんでしょうか。
「『自己修正能力』があるかどうかです。権威主義体制では『独裁者は天オで完壁。決して間違えない』という前提があります。本来誰しも間違いは犯すのに、例えばロシアでは誰もプーチン大統領に『あなたは間遮っています』と言えません」
「民主主義では選挙で交代させることができる。自由な報道や学問によって批判することができる。独立した裁判所が間違った決定を覆すこともできる。この自己修正能力のおかげで民主主義国家は、間違いを特定して、修正していくことでより繁栄してきました」
?しかし民主主義は今、魅力を失っているように思えます。あなたは以前からイスラエ ルの民主主義が崩壊の危機にあると訴えてきましたね。
「最大の問題は、政府の権力を抑制する唯一の実質的な機関が最高裁判所しかないということです。イスラエルには憲法がなく、一院制です。連邦制度もありません。国会の多数派がアラブ系市民の投票権を奪う法律を可決した揚合、『民主的でない』として阻止できる唯一の機関が最高裁なのです。それなのにネタニヤフ政権はこの2年間、最高裁を掌握しようとしてきました。最高裁が持つ法律を無効にする権限を奪おうとしています。まだ崩壊はしていませんが、確実に民主主義の危機に向かっています。このことは世界レベルで生じています」(以下略)(聞き手 田島知樹)
コメント:ここではAI云々より、イスラエルが民主主義の危機にあるという指摘が重要です。即ちガザの虐殺を止めることができるのは、トランプが権威主義に加担しているので、イスラエルの国民以外にいないということです。でもどうやれば我々一般市民がイスラエルの国民に働きかけて、イスラエルの政策を変えることができるのか。その方法が見つかれば世界が変わる。無論良い方向にです。